〜sideアキト〜
「うおおおおお!美味ぇぇぇ!」
「本当においしいです!」
今日一日の修行を終え、僕たちは夕食をとっていた。
「あらあら、おかわりもあるからたくさん食べてくださいね」
ここに並んでるのは、朱乃さんが作ってくれたらしい。本当においしいなぁ。
「さて、食事を終えたらお風呂に入りましょうか。ここの温泉は素敵なのよ」
温泉かー。久しぶりに入るなぁ。
「お、お風呂っ!」
「僕は覗かないよ、イッセー君」
イッセー君が興奮してる。顔が凄いよ。
「あら、イッセー。私たちの入浴を覗きたいの?なら、一緒に入る?私はかまわないわよ」
イッセー君が号泣してる。嬉しいのかな?
「朱乃はどう?」
「殿方のお背中を流してみたいですわ」
「アーシアは?愛しのイッセーとなら大丈夫よね?」
アーシアちゃんは顔を赤くしてうつむいてしまったが小さくうなずいている。
「最後に小猫。どう?」
「いやです」
即答!イッセー君、ドンマイ!
「じゃあ、なしね。残念、イッセー」
イッセーくんが血の涙を流してる。そんなに一緒に入りたかったのかな?
「では、お風呂に行きましょうか。アキト、行くわよ」
「ほえ?なんで僕も?」
「あなたはトラブル体質なんだから、私たちが見張っておかないと」
えーー!そんな理由で!
「お風呂ぐらいちゃんと入れますよ!」
「さっ、行きますわよ。アキト君」
朱乃さん、無視しないで!
「ちくしょー!羨ましいぞーーー!」
「イッセーくん、僕と裸の付き合いをしよう。背中、流すよ」
「木場ぁぁぁ!黙れぇぇぇ!」
イッセー君の叫びが別荘に響きわたりました。
+ +
……どうしよう。
みんな楽しそうにお風呂に入ってる。僕、男の子だし入りづらいよ。
「あらあらアキト君。そんなところでウロウロしてないで、早く入りましょう?」
ぎゃーー!朱乃さん、前隠して!女の子の裸、初めて見たよぉ。か、顔が熱い。
「うふふ、赤くなって可愛いですわ。行きますわよ♪」
朱乃さんが僕の腕を引っ張る。
「朱乃さん、待ってください!お風呂場で引っ張られるとー」
そう、トラブル体質故にーー
ズベッ
「ふぎゃ」
……こけるのだ。
あれ?転んだはずなのに痛くない。むしろ柔らかいというか。一面が肌色だし。
うーん、なんだろコレ?とりあえず、触ってみる。
柔らかくて、丸くて、大きくて……。
「あっ!………あんっ……ぃやんっ……」
も、もしかして、コレって!
《顔あげてみたら?》
そこには、朱乃さんを押し倒して、胸を揉んでる僕の姿が……
「ぎゃーーー!ごめんなさいぃぃぃ」
「あらあら大丈夫ですわよ」
僕、朱乃さんの胸、揉んじゃったよ。あれ、なんか体が熱いような……。天井が見…え……る…。
それ以降の記憶は僕にはなかった。
+ +
「ふぅ、お風呂の時は大変だったなぁ」
《アキトってば、気失って倒れちゃったもんね》
「まだ、顔が熱いよぉ。ちょっと夜風にあってこようかな」
「あー、気持ちいい。星がキレイだなー」
「あら、アキトくん?」
うん?だれだろう?
「あ、朱乃さん!」
顔があわせづらい。うぅ。
「お隣よろしいですか?」
「あ、はい。ど、どうぞ」
「失礼しますわ」
どうしよう。何か話さないと。
「アキトくん」
「は、はい。なんでしょうか?」
「アキトくんが抱えてるものってなんですか?」
「え?」
朱乃さんが真剣な顔で聞いてきた。
「アキトくんってすごく明るくていつも笑ってるんです。同じオカルト研究部になってからよくわかりましたわ。でも、時々、無理に笑ってるような……悲しそうな顔をするんです」
僕、そんな顔をしてたんだ……。
「悩みがあるのなら何か話してくれませんか?お役に立てるかもしれません」
「・・・・」
……正直話したくない。これを話したらもう一緒にいてくれないかもしれない。
《素直に話そ?朱乃ちゃんはそんな人じゃないでしょ?アキトの仲間なんだから》
仲間、か。よし、朱乃さんを信じて話してみるか!
「……僕、家族がいないんです。僕のトラブル体質は、一年で一日だけ、周りの人を巻き込むようないつも以上に危険なものになるんです。その日が……僕の生まれた日ーーようするに誕生日なんです」
朱乃さんは静かに聞いている。
「僕が十歳になる日、家族みんなでお祝いするために出かけていました。タクシーに乗って移動している時、急に道路に人が現れて、運転手さんが避けるために方向を変えたら建物にぶつかったんです。僕の家族ー父と母と姉は僕をかばうように死んでしまいました。そのおかげで僕は重傷はなく助かったんです」
あの光景を思い出すと今にも泣きたくなる。
「道路には黒い翼が残っていました。今思えば、それは堕天使だったのかもしれませんね」
「っ!そんな……」
「それ以来、僕は一人で暮らしています。誕生日の日は家の中で過ごしていますが、地震が起きたり、火事が発生したりと……」
《アキトはね、私を宿した中でも、一番のトラブル体質なの。私のせいでアキトの大切な人を失ちゃって…。》
ヒカリ……。
「ヒカリのせいじゃないよ。僕が弱かったからいけないんだ。僕がいると関係のない人が不幸になってしまう。大切な人ができるたびに、怖くなってしまう。……いつか僕のせいで死んじゃうんじゃないかって。不気味がられるんじゃないかって」
いつの間にか僕は泣いていた。
ギュッ
「アキトくん。そんなに自分を責めないで。今のアキトくんには私たちがついているから。悪魔は丈夫だからそう簡単には死なないわ」
朱乃さんが優しく抱きしめてくれる。
自分の本音を人に言ったことがなかったからーーいつも一人で泣いてたから、とても暖かい。
「朱乃さん、ありがとうございます」
嬉しい。今の僕には居場所があったんだ。仲間がいたんだ。
「アキトくん。私の話も聞いてくれますか?」
朱乃さんの声が震えてる。朱乃さんにも悩み事があるんだろうか。
「僕でよければ聞きますよ」
「……イッセー君とアーシアちゃんが悪魔になったのは最近なんです。アキト君が転生するちょっと前。イッセー君とアーシアちゃんは……堕天使に殺されて悪魔になったんです。そして、私は……堕天使の血を引いてるんです……」
・・・・。
・・・・。
「堕天使に対していい感情をもつはずがないですわよね。悪魔と敵対していて、イッセー君やアーシアちゃんを殺し、アキト君のご家族を……」
たしかに僕の家族が死んだ原因は堕天使にあるかもしれない。
けど・・・
「僕はそんなの気にしませんよ?」
「えっ?」
朱乃さんが驚いている。別に当たり前のことを言ったつもりなんだけど……。
「だって、朱乃さんは朱乃さんでしょ?人間にもいい人と悪い人がいるように堕天使にも同じことが言えると思うんですよ。僕はあんまり種族とか気にしてませんし。たしかにイッセー君やアーシアちゃんを殺した堕天使は恨みますけど、堕天使全体を恨むつもりはありませんよ?」
《アキト、イケメン!最後にビシっと決めてやれ!》
「ようするに僕は朱乃さんのこと好きでしゅ………好きですよ!」
噛んだーーー。もう、僕は!なんで肝心なところで噛むんだ!
あれ?朱乃さんの顔が赤い?
《アキトが告白したからでしょ?》
え?告白?何のこと?
《さっきの言葉、異性として好きってことじゃないの?》
ちがうよ!そんなこと、恐れ多くて言えないよ!
「朱乃さん!さっきのは異性として好きってことじゃなくて、仲間としてというか…そのっ……」
ギューー
朱乃さんが再び抱きついてきた!さっきは小さな子供をあやすような優しい感じだったけど、今度は寂しがりやな女の子みたいな感じ。
僕、どうしたらいいんだ!
《抱きしめかえしてあげたら?》
「アキト君。ありがとう」
抱きしめ返してあげたら、少し落ち着いたのか、お礼を言われた。
「私のことを認めてくれて、受け入れてくれて」
「何言ってるんですか。僕の方が朱乃さんに感謝してますよ。家族が死んでから、自分の本音を言う場所がなかったんです。泣ける場所がなかったんです。でも、朱乃さんはその場所を作ってくれました」
「アキト……。これから二人きりのときは『朱乃』って呼んでくれる?」
ええー!呼び捨て!?
「……ダメ?」
くっ!可愛い!先輩相手にこんなこと思っていいのかわからないけど今のはヤバかったよぉ。
「あ、ああああけの」
「そんなに緊張しなくてもいいのに。いつかアキトに異性として好きって言われるように頑張るわ」
ん?最後の方がよく聞こえなかった。
「そろそろ、部屋にもどりましょうか。明日も修行ですし」
「はい!」