1.そして始まる彼女たちと私の物語
「さて、周囲の安全確保も出来たところだ、君たちの名前を教えてくれないか」
魔術で周囲に罠を張りながら、彼女らに問う。
「私は藤丸立香、よろしくねボン」
「私の名前はマシュ・キリエライトです。最古の作家と呼ばれる貴方に出会えて光栄です」
「私はカルデアの所長であるオルガマリー・アースミレイト・アニムスフィアよ。この中のトップですから、貴方も私の指示に従いなさい」
「フォウ! フォウ! キューン」
「ああ、彼はフォウさんです。よろしくお願いしますね」
『それから僕がロマニ・アーキマン。カルデアから通信で君たちをオペレートする役割を担ってるんだ。親しみを込めてロマンと呼んでくれて大丈夫さ』
やはり、推定マスターは藤丸立香であった。
マシュは変わらず大盾を持っているし、オルガマリーはオルガマリーで当然の如く可哀想で、我らがロマンは相変わらず緊張感がない。
私の知るFGOに出てきた登場人物達、それが目の前にいるということに興奮する。
「ああ、皆よろしくお願いするよ。カルデアについても、これからすべき事も大まかには理解している。所長、マスター。私は何をすればいい」
私の言葉に驚き目を見開く所長だが、直に気を引き締めて命令を下す。
「よろしい、先ずは周辺の探索をします。ボン……だったかしら?貴方はキャスターですが、マシュよりは戦闘経験があるようなので周囲の警戒を任せるわ」
「って事みたいなんでよろしくね」
了承し、魔術罠を解除して私たちは移動を開始した。
大橋を渡り、港跡へ出て、教会の跡地へたどり着く。
それまではスケルトンしか出なかった為殲滅も容易でスムーズに探索は進んでいった。
開けた場所に辿り着くと所長の独り言が始まってしまい、ここで休憩せざるを得なくなった。
再度付近に魔術罠を張り、簡易的な陣地の構築をする。
「そういえば、ボンって最古の作家? なんだよね。どういうお話を書いていたの」
マシュと話していたマスターが話を振ってくる。
そうだなぁ……と『土くれで出来た管を造り、配し、直すことを生業とした男が、巨大な亀の化け物に攫われた姫を助け出す話』を上げた。
「あっ、それ知ってる。スーパーマ○オだ。日本でゲームになってるよ。任天○って会社が、ボンのサインを入れて売り出してるよ」
「ええ、それは有名なお話ですね。他に書かれた物は……」
『兵士を志して村を出た青年が英雄となる物語』や『英雄を目指した少年と神の化身の少女の物語』、『十二の試練を乗り越えた英雄の話』を上げたのだが
「十二の試練を乗り越えた英雄のお話……若しかして英雄ヘラクレスのお話でしょうか? 確か、彼のお話にはボンさんのサインは無かったと思いますが……先輩はご存知ですか」
「うーん、T○DとT○D2はプレイしたから確かそのサインを見たような気がするけど、そっちの話はゲームじゃないからちょっとわからないかな」
昔話系統の話にはサインがない……?
このように、私なんぞの模倣作家が座に登録されて召喚されている以上、私が書き綴り、英雄王が編集した作品には全てにサインが記されているはずだと考えられるのだが。
突然のコール音と共に緊急通信が入る。
『みんな、逃げるんだ! サーヴァントの反応が近づいている』
現れたのは黒だった。
人の形を模っている黒い影……シャドウサーヴァント。
やってきたのはライダーメドゥーサ。
私は知っていたからメドゥーサであることは理解していた。
が、しかし、何故かあのサーヴァントの真名が
何故私に真名が見えるのかはわからないが、既に理性を失ったただの影でしかないメドゥーサ。
倒すしかないだろう。
影はサーヴァントのついていない所長へまっすぐ向かい武器を振り下ろす……が、私が駆け入り、丸太で防御する。
「――ッ!! キャスターはそのサーヴァントの相手をしなさい。マシュは私と藤丸を守りなさい!」
恐怖に耐え、所長が命令を下す。
仮にもサーヴァントである私がいることで、ストーリーとは異なり、所長に幾許かの精神的な余裕が生まれているのかもしれない。
本来なら所長の命に従うことなど無いのがサーヴァントなのだろうが、どうせマスターも似たような指示を出すのだろうしとそのまま影と対峙する。
影になり理性を失った彼女の相手なら、恐らく何とかなるだろう。
が、メタな相性的にはキツイかもしれない。
それでも、兎に角戦うしかないのだ。
大きく丸太を振るい、風の魔術を飛ばす。
だが、素早い彼女に翻弄され、私の攻撃は当たることがなく、相手の攻撃のみが私に当たり続ける。
私が生前相手にしたのは魔獣だけだったので、対人型の経験はほぼ無いに等しい。
防戦一方になってしまうのは当然の結果であった。
苦戦を強いられる中、マシュが駆けつけてくれた。
「加勢します! マスター指示を」
辛うじて影を釘付けに出来ていたお陰か、周囲に他の反応がないとわかったらしくマシュを加勢に寄越してくれたらしい。
マシュのスキルで防御力を高めての持久戦となった。
流石に2対1となった戦いはこちらに傾き、辛くも勝利することが出来た。
肩で息をするマシュと私をマスターは労ってくれるが
「ちょっと、キャスター。あれくらい何とかしてよ、貴方英霊なんでしょ」
所長はこのような調子である。
この様な状況であるし、辛辣な言葉になってしまうのは仕方のないことだろう。
召喚されたばかりで霊基が安定していないことを告げると悪かったわ……と謝ってはくれたので、やはり所長はそんなに悪い人ではないのだろう。
そしてまた、ロマンから通信が入る。
『落ち着いている場合じゃないよ、そこから逃げるんだ! 今の反応と同じものがそちらに向かっている』
慌しく私たちは走り出す。私にもっと力があればこのような状況にはならなかっただろう。
が、憑依して死後に英霊として座に登録された挙句、人類最後のマスターに最初も最初の最序盤から召喚されるだなんてまずは考えないだろう。
今は兎に角逃げて体勢を整えるしかない。
港跡を越え、大橋に戻り、広場にたどり着いた。
「何でこんなにサーヴァントがいるのよ」
愚痴を吐き出す所長に、答えを導き出したロマンが答える。
この地は聖杯戦争が行われた土地であったがそれが狂ってしまった。
狂ってしまったからこそ人はおらず、サーヴァントだけが存在し、敵であるサーヴァントを延々と狙い続けるのだと。
その答えと共に影は現れた。
やはり、知っているからだけではなく現在進行形で影の真名が
「さっきと同じ! ボンは影の相手して、マシュはこっちで私と所長を守って」
所長よりも早く指示を飛ばすマスターに最後まで戦い抜いたマスターの片鱗を見る。
私はハサンに向かって駆け出しながら叫ぶ。
「マシュさん、今度は私がどんな状態になろうともこちらに来てはいけない」
ハサンに丸太を振るうも避けられる。
追撃で火球の魔術を放つもやはり避けられる。
そして相手の攻撃を私が受ける。
先ほど戦ったメドゥーサよりも攻撃が軽く感じられる。
どうやら、メタなタイプ相性は少なからず存在しているらしい。
だが、それでも痛いものは痛い。
横薙ぎや振り下ろし、突きを使いながら合間に魔術を飛ばし、足も使う。
だんだんと対人の感覚が掴めて来た中で
「マシュ、行って」
マスターから指示が下された。
不甲斐無い私をどうか許して欲しい。
だが、既に私は未来を知っている……だから、マシュを止めなければならない。
ならば、こう言ってしまうしかない。
「待ち給え、マスター!
その言葉に駆け出そうとしたマシュは足を止め、突然の発言に動揺したのかハサンに隙が出来る。
その隙を逃さず、ハサンに強烈な一撃を叩き込む。
「キ、貴様――何故 ソレ ヲ 知ッテイル。 念 ヲ 置キ、後詰トシタ ランサーノ 事ヲ」
『ほ、本当だ立香くん、マシュ、そちらにサーヴァントの反応が向かっている……解析完了――これは! ランサーのサーヴァント反応だ』
そして笑い声を上げながらやってきたのはランサーの影、やはり知っているだけではなく
弁慶はマシュに向かって駆け、その手に持った槍を上段から振り下ろしてマシュを叩き切らんとするも、消耗していないマシュは攻撃を大盾をもって攻撃を弾いた。
2対1から2対2へ。相も変わらず劣勢であることには違いない。
「兎に角、戦うしかないよね……マシュ、ボン、勝って!」
「ちょっと藤丸、本気なの!? キャスターは押されているし、マシュもまだ経験不足なのよ!」
「承った、マスター!」
「わかりました、先輩ッ!」
「クッ……聖杯 ハ 目ノ前ダト 言ウノニ――ランサー、思ッタヨリモ 面倒デ アルガ、決メルゾ。 ドノヨウナ英霊カハ知ラヌガ、ソノ御首貰イ受ケル」
ハサンの言葉に高笑いする弁慶が駆け出した直後、光弾が影の2人へと直撃する。
「敵の敵は味方……ってわけでもないが、嬢ちゃんも兄ちゃんもそれなりに兵じゃねーか。ここは俺の目的の為にも助太刀させてもらうかね」
そして新たなサーヴァント、キャスターのクー・フーリンが戦場に割って入ってきたのであった。
誤字脱字等は気をつけていますが、もしあればご報告いただけたらと。
稀に矛盾に気づかないまま矛盾したことを書いていたりもしますので、発見した際はご報告いただければ幸いです。