やはり全てはノリと勢いで出来ています。評価、お気に入り登録ありがとうございます。やる気が出ます。(続きが書けるとは言っていない
1.獣、または同士
宛がわれた部屋で私は文明の利器、シャープペンシルを手にまっさらな白紙とにらめっこをしていた。
今、私が書こうとしているのは所長――オルガマリー・アースミレイト・アニムスフィア――を英雄に仕立て上げるための物語である。
のではあるが、そもそも私自身がオリジナリティの欠片もない模倣作家であるが故に、どのように物語を書けばいいのかわからないのである。
今までそれなりに、模倣とは言えども物語を書いてきたのだから、それを元にしていけばいいのではないかとも思うのだが、中々筆は進まないのだ。
不意に部屋のドアが開く音がする。
「フォウ!」
「やあ、同士よ。どうかしたのかい? ああ、何か食べたくなったのか、では食堂へ行こうか」
「フォウ、フォウ!」
このような感じで、私の部屋に突如としてやってくるようになったのはフォウ君である。
では、どうしてこのような状態になったかと言えば、部屋を宛がわれた時へと遡る。
◇
「じゃあ、ボン君はこの部屋を使ってくれ給え。ところで部屋の説明は必要かな」
「いや、大丈夫だダ・ヴィンチちゃん。ありがとう、私はこちらで少し休ませて貰うよ」
「ああ、それじゃあごゆっくり」
扉が閉まる音と共にダ・ヴィンチちゃんは去っていく。
久しぶりのベッドの感触を味わおうと、歩を進めようとしたところ、生物の気配に気づく。
足元を見てみれば、フォウ君が私を見上げていた。
「ふむ、フォウ君……キャスパリーグ君……――――……」
最後の言葉に、彼は勢い良く後退し距離を取った。
「すまない、それ程警戒されるとは思わなくてな。どうにも私の出自は特殊であり、君の境遇は少なからず見えていたのだよ」
勿論原作知識というやつであるのだが。
「飼い主は腐れ宮廷魔術師と名高い……のか? その宮廷魔術師。そして君は何がしか言葉をかけられつつ――捨てられた。違うかい」
私の問いに対して彼は目を見開いていた。
「ふむ、それが答えか。どうやら私が見たモノは当たらずと
首をかしげる彼は、謎の生物ながらも可愛らしいものだ。
「要するに、君の境遇に同情しているとでも思ってもらって構わない。まぁ知っていることは凡そその程度であって、君が他にどんなものを見てきたのかとか、君の好きな食べ物はとか、そういったことは知りえていないのさ」
離れた距離が最初の位置まで戻る。
「しかしあれだな。私も彼には酷い目に合わせられたから、君の気持ちは十分とは言えないが共感できるものがある」
酷い目、要するに限定ガチャに登場した際に、いくら回してもヤツは私のカルデアにはやってこなかった、そういうことである。
すると彼は私に接近し、足元まで来ると『同士よ、気を落とすなよな』とでも言いたげに、そのクリっとした双眸でこちらを見ると、前足を使って私の足の甲を軽く叩いた。
音にすれば『ポンポン』だとか『テシテシ』であろうか。
「ははは、君とは仲良くなれそうだ。同士と呼びたいところであるが、人前ではフォウ君と呼ばせてもらおう。それで良いかな? 同士よ」
「フォウ! キューン」
「ありがとう同士よ、では同士となった祝いに何かしないかい? そういえば、君は一体何が好きなのかね? 肉、魚、野菜……そうだ、食堂へ行こう。親睦を兼ねて食事でもしようじゃないか」
「フォウ! フォウ!」
彼は同意を示すかのように鳴き、その尾を振った。
「ああ、そういえばだ。この先ヤツに言われた何かが知りたいのであれば、マスターとマシュさんを見ているといい。きっと君も何かを得ることができる筈さ」
その言葉に彼は首を傾げたものの、心得たとばかりに頷いた。
「では行こうか」
◇
そして私達は食堂へと向かった。
「おお、フォウ君今日はこれを調理しろと言うのか……うーむ、私には難しいな。せめて料理の得意な英霊がいてくれればいいのだが……」
「キューン……」
またか、と言わんばかりに残念そうな声を上げる彼。
そう、またなのである。
生憎私は料理が出来ないのだ。
憑依前は出来合いの物を購入していたし、憑依後の生前はそもそも調理するという文化すらなかったのだから。
せいぜいやったことと言えば、肉を焼くくらいのことしかしなかったのである。
今生き延びたスタッフは仕事に追われている時期である。
だから調理専門のスタッフもいないので、用意するなら自分で用意するしかないのだ。
「すまない……すまない……今日もこの文明の利器で肉を焼くことくらいしか出来ずに、本当にすまない……」
キャラ被りはNGであるが、すまない彼はまだこのカルデアに来ていないのでセーフだと思いたい。
結局、このようなやり取りを繰り返しては一緒に食事を楽しむのであった。
2.救うのが先か、導くのが先か
今日も今日とて、まっさらな白紙を睨むだけで時間が過ぎていく。
マシュは目覚めたようだが、マスターは未だ目を覚まさない。
初めての経験と初めての魔術回路酷使による影響だと思われる。
未だ所長を英雄に仕立て上げるための物語が書けないでいるまま、時間ばかりが過ぎていく。
そこへ唐突な閃きが頭を巡る。
「導くのが所長……救うのが
書き殴る。
卑屈で小心者、どこか他力本願で敵になる人物に依存してしまった可哀想な一人の少女。
そんな少女が虚勢を張ってでもやり遂げて見せると進んだ道、そんな少女が進む道は茨の道だった。
誰からも愛されず、褒められることも、認められることもなく魔術師として生きてきた少女。
そんな中で、頭首である父が急死し父の運営していた組織を引き継ぐこととなる。
組織のプロジェクトで結果を出すために四苦八苦するも、結果は出ずに上層部やスポンサーから苦言を呈される始末であった。
そんな組織の中へやってきた何も知らない未熟者が入ってくる。
その姿に憤慨するも、現場に出て見ればその未熟者しか居らず、それを使うしかなかった。
やってきた未熟者は、何れ全てを救う者であった。
そんな人物を彼女はを導いたのである。
そして、その中で未熟者だった者を認め、謝罪した。
彼女は人として一つ大きくなったのだ。
しかし、彼女の進んだ道は茨の道、依存した……してしまったが故に、依存していた敵に死を与えられ、世界から消える。
彼女の生は短いものであった。
だが、彼女の残したものは大きかったのだ。
何故なら彼女は全てを救う者に道を示したのだから。
未熟者だった、全てを救う者の進む道は茨の道になるだろう――険しい道になるだろう。
だがしかし、彼女が道を示さねば、未熟者は未熟者のままであったかもしれない。
彼女が導かなければ、全てを救うための道へ辿りつけなかったかもしれない。
だから私は称えよう。
彼女の行いを。
そう彼女は言うなれば『導きの英雄』、世界を救うであろう『絆の英雄』に道を示した偉大な人物なのである。
端的に書き記せばこのような感じだろうか。
そこから更に肉をつけ、読めるものへと改善していく。
タイトルは非常に安直『導きの英雄』だ。
これは、オルガマリー・アースミレイト・アニムスフィアの物語である。
「ふむ、初めてのオリジナル作品か。しかし、この物語で大丈夫であろうか」
初めて自分自身が生み出した作品に自信が持てずにいる。
だが、折角書き上げた物語なのだから、この物語を触媒にして召喚を行おう。
成功して欲しいとは思うが、可能性は限りなく低いと考える。
何せ、私が模倣もせずに書いた物語であるのだから。
やってみるまでは結果などわかりはしない。
3.疑問の1つ
同士フォウ君と共に食堂で食事をしていると、稀に生き延びたスタッフが食事休憩にやってくることがある。
そんなときに大体せがまれるのは、私が書いた物語を聞かせて欲しいということだ。
『土くれで出来た管を造り、配し、直すことを生業とした男が、巨大な亀の化け物に攫われた姫を助け出す話』
『いくつもの世界線の中で、名に宿命を背負わされた男と名に呪われた美しい姫を救う話』
は特に有名らしく、日本と言う国でゲーム化されワールドワイドな人気の物語であるという。
ああ、知っている、知っているとも。
何せ平行世界なれど、憑依前の私が暮らした国こそ日本なのだから。
しかし、そうなると疑問になるのが、私の存在によりこの世界線の日本で『マ○オやゼ○ダの伝説が生まれたのかどうか』という謎である。
憑依前の日本にあった企業が、この世界線でも存在している。
だが、私が物語を書いてしまったが故に、彼の大企業は私の記したマークをつけて販売しなくてはならない状態に陥った。
では、私がもし、物語を書かなかった場合、彼の大企業は大ヒットかつワールドワイドな作品となるそれらのゲームをこの世界線では生み出していたのであろうか。
全く持って疑問である。
私という存在が、この世界線にあり、物語を書いてしまったという事実がある以上、解消されない疑問の一つである。
4.文明的な服
同士フォウ君との食事会を終え部屋に戻ってから気付いたことがある。
私の着ている服、前時代的というか太古過ぎるのでは? ということだ。
何せ皮を巻いただけで下着などないから、
つまり何が言いたいかといえば、服が欲しいのである。
折角文明的な時代にたどり着いたのだから、私は服が着たい。
下着を穿きたい。
風呂にも入りたいぞ。
と言うことである。
取り合えず、部屋に設置されている個人用のシャワーを浴び、部屋へ戻ってタオルでワシャワシャと体を拭いていると、突然部屋のドアが開いた。
「やあ、ボン君調子はどう……」
ロマンである。彼は部屋主の許可なく、部屋に踏み入った挙句、私の何かを見てしまった。
「……せめて部屋主の返答を待ってから、入ってきてくれ給え。太古の時代ではなく、今は既に文明的な時代なのであろう? まぁ丁度いい、私に下着と文明的な衣服を用意してはくれまいか」
「ああ! ごめん、すぐに用意してくるよ」
そしてロマンは脱兎の如く部屋から飛び出していった。
廊下に誰もいなかったからいいものを、私はまだ全裸であったのだ、焦らず注意して部屋を出て欲しかった。
体を拭ったものの、また皮を巻く気にもなれずに、下半身にタオルを巻いたまま部屋で待つこと数十分、今度はちゃんと確認を取ってからロマンは部屋に入ってきた。
ダ・ヴィンチちゃんを伴ってだが。
「お邪魔するよ、ボン君……おっと、いい肉体をしているじゃないか。それでクラスはキャスターかい? クラス詐欺もいいところさ」
「あはは……それはそうと、服を何種類か持ってきたよ。この中から選んでくれないかな」
持ってきた服は、カルデアの制服に戦闘服、魔術師教会等の制服や水着にどこかの学校の学生服などの魔術礼装であった。
水着と学生服は論外、戦闘服もぴっちりとして嫌な感じがしそうである。
その他の制服も、丸太を振るうなどすれば邪魔になりそうな作りであまりよろしくはない。
「刻まれた知識には、ジャージという服があるということなのだが、そういったモノは無いのか?」
「え? 戦闘時はその皮を巻いていくんじゃないのかい」
「そんなわけなかろう。服という文明的なものがあると言うのに、それを着用しないのは過去に生きた人間としては勿体無く思うしな。それにこの皮もありきたりな獣の皮だ。何より着心地は今の時代の服に比べれば相当に悪いだろう」
「ほほう、ではその皮は必要ないということかな」
「ああ、この外套も含めて不要になるな」
「勿体無い、勿体無いぞボン君。それならこれを使ってこの私、万能の天才であるレオナルド・ダ・ヴィンチが新たに究極の服を仕立てて見せよう。何分
「ああ、いいぞ。君に任せよう、ダ・ヴィンチちゃん。期待している」
「ではでは、私は今からコイツを服に仕立てる仕事が出来たのでこれで」
そしてダ・ヴィンチちゃんは皮を嬉しそうに取り上げると、スキップでもせんばかりの鼻歌を歌いながら部屋を出た。
「そういうことに、なったんだね」
「ああ、なったな。と言うことでだ、彼? 彼女? ……ダ・ヴィンチちゃんが仕立てるまでの間に着るジャージを所望する」
「アハハ、了解だよボン君」
そういうことになったのである。
次回も幕間予定です。どの英霊を召喚させようかと思い悩む今日この頃です。
誤字脱字、変換ミスや矛盾等見かけた際は是非お教えください。サイレント修正します。自分でも読み直しているのですが、何度か読み直してようやく文章がおかしいことに気付くことが多すぎます。助けてください