「もう、見回りも必要ないかもな」
いつものように、街を巡回しながら2人に問いかける。
連日のように起こっていた事件は俺たちが見回りを始めてからピタリと止んだ。
俺達を警戒して身を潜めているのだとしたら、これ以上は大っぴらに動かないだろう。
「ええ、魔力も集まってきたし明日の朝にでも使い魔を街に放つつもりよ」
そうなれば、一々街を練り歩く必要もなくなる。
こうしてキャスター達と夜に見回りをするのは今日で最後になるだろう。
キャスターを見る。
どこか物憂げな蒼い瞳、月明かりに照らされた青い髪、夜の闇にはっきりと浮かぶ白い肌。
今朝、イリヤから言われた言葉がどうしても耳に残っていた。
『キャスターとちゃんと向き合ってあげたほうが良いわよ。お互いに人を信じることに慣れてないみたいだから』
俺はキャスターのことを何も知らない。
名前も生い立ちも、知っているのは家族に会いたいという願いだけだ。
キャスターはいったい、いつの時代に生まれ、何を見て育ってきたのだろう。
そしてこの時代を見て何を思っているのだろうか。
「それにしても寒いわね」
キャスターは身を震わすと自らの長い髪をマフラーのように首に絡める。
そんな姿が、どこか子どもっぽい無邪気さと大人っぽい色気を感じさせる。
そういえば、キャスターって何歳なのか、真名は教えてくれないが年齢くらいなら教えてくれるだろう。
「キャスターっていくつなんだ?」
俺の質問にキャスターが怪訝そうな顔をする。
口に出してから失言に気づいた、女性に年齢の話はまずいか?
「それは享年という意味ですか?この肉体の年齢という意味ですか」
しかし返ってきたのは意外な答えだった。
「ん?どういうことだ?」
「サーヴァントとして与えられた体はそのクラスにもっとも適合した姿で召喚されます。死に際の姿で召喚されたりしたら困るでしょう」
そりゃそうだ、戦闘系のクラスで呼んだのにヨボヨボの姿で出てこられたりしたら詰みだもんな。
「もっとも、私の場合は死亡時と大きく離れた姿ではないみたいだけど。そうねぇ……20代後半ってところかしら」
背丈を腕で測りながらキャスターが推察する。
20代後半……藤ねえと同じくらいか、もっとも立ち振る舞いは藤ねえのガサツさと全く異なるが。
「ふーん、じゃあ、他のクラスで召喚されれば年齢も変わるってことか?」
「えぇ、といっても私は他にライダーとアサシンくらいしか適正クラスがないし、今と大きく変わらないでしょうけど」
ライダーのキャスターやアサシンのキャスターか。
アサシンは魔術を使うとして、馬とかに乗れそうなイメージはない。
ライダーになれるということは何か逸話でもあるのだろう。
「小ちゃい頃のキャスターとか見てみたかったんだがな」
「そんなの見ても何も楽しくないでしょ……第一、子供の姿でなんて普通は召喚されないわ。存在の変換でもしないと無理よ」
「存在の変換?」
「えぇ、召喚されてからも膨大な呪いを浴びたり儀式で霊基を組み替えたりすれば姿を変えることが可能なのよ」
実際にキャスターは魔力不足の頃に幼少の姿になって魔力を節約するか考えていたらしい。
助けるのがもう少し遅ければロリッ娘キャスターを見れたかもしれないのか……
「見た目だけなら幻影魔術で何にでも化けれますけど……」
「いや、そこまでしなくてもいいよ。ホントに子供の姿になられても接しにくいだろうし」
でも、やっぱりちょっと見たい気もするな。キャスターの子供時代……どんな感じなんだろうか。
そんな風に喋っていると突然、セイバーとキャスターの顔に緊張が走った。
「今のは……」
「ええ、僅かだけど魔力を感じたわね」
急いで魔力を感知した場所に向かう。いったいどのサーヴァントだろうか?
◇
「ここか……」
魔力が感じられたという場所は人通りの少ない路地裏だった。
月明かりも届かない場所なのでよく見えないが、人の気配は感じない、壁に手をついてゆっくりと歩く。
「ん?何か踏んだか?」
ごつごつとしたものを踏んでしまった。
手に取って見れば棒のような形状の石ころだ。なんでこんなところに、よく見れば周りにも同じように石が……
「いや、これって……」
バラバラに砕かれたソレはよく見れば人の形をしていた、真っ二つに割れた人面石がゴロリと転がっている。
そして今、俺が手に持っている棒状の石は人間の指のような形をしていて……
「ッ――――」
思わず息が詰まる。ただの石像だと思うほど俺も馬鹿じゃない。
これは人間だ、正真正銘の。
「石化の魔術……いえ、行使速度を見るに何らかの能力かしら。石にされた後にバラバラに砕かれたようね」
「周囲にすでに気配はありません。殺してすぐに逃げたのでしょう」
二人が冷静に分析する。
そう、こんな時だからこそ動揺しちゃ駄目だ。
凄惨な犯行に沸いてくる怒りをなんとか抑える。
「もう、この辺りに犯人はいないんだな。また別の場所で人を襲うつもりなのか?」
「分かりません、今までの犯行パターンとも違いますし……そもそも何のためにこんなことをしているのか」
セイバーが首をかしげる。
今までもガス漏れ事件や強姦事件があったが、それは一時的に気絶させるだけのものだった。
おそらく魔力吸収のためにやっていて、命までは取らないだろうとどこか甘く考えていた。
だが今回の犯行はどうか、石にされ木っ端みじんに砕かれるという残忍な行為、しかもこれでは魔力を吸うことはできない。何の目的があるというのだ。
「儀式……にしては杜撰すぎるわね、宝具の使用条件?そもそも石化の能力を持つ英雄なんて……」
キャスターも詳細は分からないらしい。
だが、悠長なこと言っていられなくなったというのは確かだ。これから犯行がエスカレートする可能性もある。夜だけの見回りと言わず、一刻も早く見つけ出さなければならない。
この凄惨な殺戮を行ったサーヴァントを。
ライダーでショート髪時代の竜に乗ったメディアとか、アサシンで灰の花嫁を使うメディアブライトとかFGOで出してほしいです