「やっぱ、ここの飯が一番だな。この味が落ち着くぜ」
グレンはパンをシチューに浸しながら口に放り込む。
グレンは痩せの大食いで、結構な量を食べる。
そのため、常日頃から割と金欠だったりする。
「本当にグレンはよく食べるわね」
そんなグレンを見ながら皿を片付けるミラ。
「食事は数少ない、俺の娯楽の一つだからな。うまいもんたらふく食えればそれでいいんだよ、俺は」
手を合わせごちそうさまを言い、グレンは立ち上がる。
「もう仕事をするの?」
「ああ。面倒だが、金がもうねぇんだよ。報酬のいい仕事で一稼ぎしてくる」
「くどいぞロメオ」
仕事を探しに行こうとした瞬間、マスターの声が聞こえ、そちらを振り向く。
「貴様も魔道士の息子なら親父を信じておとなしく家で待っておれ」
「だって、三日で戻るって言ったのにもう一週間も帰ってこないんだよ。探しに行ってくれよ!!心配なんだ!!」
そう言うのは、《養成の尻尾》の魔導士、マカオの息子のロメオだった。
「ロメオ、貴様の親父は『妖精の尻尾』の魔道士じゃ。自分のケツもふけねェ魔道士なんてこのギルドにいない。大人しく帰ってミルクでも飲んでおれぃ!!」
「……バカー!」
ロメオはマカロフの顔を殴り、ギルドを飛び出す。
「マスター、ガキ相手に言いすぎじゃねぇのか?」
「助けに行ったところで、マカオの自尊心が傷つくだけじゃわい」
「なら、せめて様子だけでもよぉ」
「心配いらん」
マカロフがそう言うと轟音が響く。
見ると、ナツがリクエストボードに依頼書をめり込ませていた。
ナツはそのまま出て行ったロメオを追って、ギルドを出て行く。
「いいのかよ、マスター?」
「ナツの奴、マカオを助けに行く気だぜ?」
ほかの魔導士たちが、マカロフにそう尋ねると、マカロフは煙草を吹かしながら言う。
「進むべき道は誰が決める事でもねぇ、放っておけぃ」
「こうなるってのわかってたのか?」
「さぁの」
「しゃーねぇし、ナツが請けようとしてた依頼、俺が請けるわ。いいよな、マスター?」
「構わんぞ」
ナツが請けようとしていたのは、盗賊退治の依頼で、グレンはその依頼を受けると、すぐにその盗賊のアジトへと向かった。
しかし、盗賊たちはものの数分で倒された。
「やっぱぬるいな。いっそのことS級クエストでも……いや、面倒だし、やめとこ」
盗賊たちを縛り上げ、花使って素敵なアートにしつつ、グレンは溜息を吐く。
「で、いつまで隠れてるんだ?」
後ろに向かってそういうと、そこから誰かが現れる。
「俺の気配に気づけるとは、流石は《妖精の尻尾》だな」
フードを被った男が現れ、グレンの背後に立つ。
「俺を《妖精の尻尾》の魔導士と知って現れるとは、テメーも魔導士か?」
「そうだ。もっとも雇われの身だがな。金をもらってる以上、仕事はする」
グレンは警戒しつつ、《愚者の世界》を発動する。
《愚者の世界》は発動の際に、音もなく発動できるので誰にも気づかれることもなく、魔法を封じることができる。
「ふん、お得意の魔法封じか?」
「なっ!?」
「あれだけ暴れまわって知られないと思ったか?情報はいくら隠そうとしても、必ず漏れるものだ」
そういう男の背後には宙に浮く剣が五本あった。
「貴様のその魔法は、魔法の発動を封じるもの。だが、発動を封じるだけであって、すでに発動済みや起動済みの魔法には効果がない」
「宙に浮く剣とか嫌な予感しかしねぇんだが」
「だろうな」
男が手を振ると五本の剣が一斉に襲い掛かってくる。
グレンは三本の剣を交わすと、今度は銃を抜き、二本の剣を弾き飛ばす。
「甘い!」
男がもう一度腕を一振りすると、剣が再びグレンに襲い掛かる。
「俺の操る剣からは逃げられんぞ」
「操るだって?はっ!よく言うぜ!実際操ってのは二本だけで、残りの三本は自動で動いてるだけだろ」
「ほぉ、今の攻撃でそれだけのことを知るとはな。その通りだ、貴様が先ほど、銃で撃ち落とした二本が俺が操っている剣。そして、最初の三本が単純な命令でオートで動く自動式だ。だが、それが分かったところで、貴様にはどうすることもできん」
そう言い剣が回転しながら、グレンに切りかかる。
「それができるんだよ。!《白銀の氷狼よ・吹雪纏いて・疾駆け抜けよ》!」
グレンは冷気と雹弾の攻撃魔法、《アイス・ブリザード》を唱える。
「ふん!効かん!」
男は剣を振り、襲い掛かる雹弾を叩き割り、顔をフードで覆い、全ての剣を重ね合わせ、冷気から身を守る。
「かかったな!《原初の力よ・正負均衡保ちて・零に帰せ》!」
グレンが呪文を詠唱すると、剣は突然力を失ったかのように、そのまま地面に転がる。
「なっ!剣が!?」
「付与魔法を打ち消す魔法。《ディスペル・フォース》だ」
「くっ!《目覚めよ剣》!」
「遅ぇ!」
男はもう一度剣を操ろうと魔法を使おうとするが、すでにグレンの《愚者の世界》により、魔法は使えなかった。
「これで終わりだ!」
そのまま男を殴りつけ、男を倒す。
「ネタがバレていても、勝利をつかむのが《妖精の尻尾》だ!舐めんな!」