「話に夢中でナツのことをすっかり忘れていた!私の過失だ!殴ってくれ!」
「今はそれより、ナツと合流が先だろ」
「そうだな。そう言う訳だ!列車を止める!」
「ど、どう言う訳?」
突拍子もないことを言うエルザに駅員も困惑する。
「仲間が一人降り遅れたんだ。わかってほしい」
「無茶言わんでくださいよ!降り損なった客一人のために列車を止めるなんて!?」
無論そんな理由で列車が止められるわけもないため、駅員は了承しない。
「ハッピー!」
「あいさー!」
するとハッピーが空を飛び、勝手に緊急停止信号のスイッチを入れる。
「ナツを追うぞ!」
「もうめちゃくちゃ……」
「だな」
「服は!?」
めちゃくちゃな状態の中で、グレンは溜息を吐き、エルザを見る。
「エルザ、念のために俺は次の駅まで行ってる。そこでナツと合流できるかもしれん」
「ああ、頼む」
「じゃ、後で合流だ。《颪の風浪よ・我をその背に・とく激しく駆けよ》!」
指向性の風をまとうことによって移動力をアップさせる《ラビット・ストーム》を使い、それを連発して発動させて高速三次元機動が可能にする
次の駅、クヌギ駅に着くと、そこでは多くの乗客と軍の人間で溢れていた。
「なんだ?一体何が起きてるってんだ?」
「グレン!」
すると魔導四輪車に乗ったエルザたちがグレンの前に現れる。
見ると、後部座席にはナツがいた。
「ナツ!?お前なんでエルザたちと!?」
「そんなことは後回しだ!急いで乗れ!すぐに奴らを追う!」
エルザの気迫が只事ではないと感じ、グレンは言うとおりに魔導四輪車に乗る。
そして、エルザから驚くべきことを聞いた。
「ララバイが呪殺の為の道具!?しかも笛の音を聞いただけで呪殺するってのはまじか!?」
「ああ、そうだ!奴らの目的はわからんが、きっと恐ろしいことに使う気だ!」
「聞いただけで人を殺す〝集団呪殺魔法”か………厄介にもほどがあるぜ」
「でも、どうして列車なんて乗っ取ったんだろう?」
「レールの上しか走れないし、奪ってもメリットないよね」
「だが、スピードはある。理由はわからねぇが、急がざるを得ないことがあるんじゃないか?」
グレンは魔導車の屋根の上で服を脱ぎつつ、そう言う。
暫く魔導四輪車を走らせて、オシバナ駅に着くとそこも人と軍の人間でごった返していた。
「まさか奴らはここに?」
「行くぞ」
エルザはそう言うと、ずかずかと野次馬たちをかき分け、前へと出る。
「中の状況は?」
「はっ?あんただふぎゃっ!?」
エルザは近くの軍人を捕まえると、状況を尋ねる。
だが、軍人が答えようとしなかった瞬間、頭突きをし軍人を黙らせていた。
それを繰り返し続けた。
「即答できる人しかいらないってことね……」
「そうだな」
やっと即答した軍人が言うには、すでに軍の小隊が中に突入したらしいが、まだ戻ってきておらず、《鉄の森》もだ誰一人として出ていないとの事だった。
それを聞いたエルザはすぐに駅の中へと入り、グレンたちもそれに続いた。
駅の中ではすでに軍の小隊は全滅しており、不気味なぐらいに静かだった。
そして、ホームに出ると、そこには《鉄の森》の魔導士たちが全員そこにいた。
「やはり来たな《妖精の尻尾》」
「エリゴール、貴様の目的は何だ?」
「遊びてぇんだよ。仕事もなくて暇だからな」
そう言い、半裸に鎌を持った男、エリゴールは飛び上がる。
「駅には何がある?」
そう言って、駅にある拡声器を叩く。
「まさか!ララバイを放送するつもりか!?」
「今、駅の周りには何百……何千ものの野次馬がいる。いや。音量を上げれば町中に響き渡るかもな」
「大量無差別殺人だと!?」
「これは粛清だ。権利を奪われた者の存在を知らずに、権利を掲げ生活してる愚か者どもへのな。この不公平な世界を知らずに生きるのは罪だ。よって死神が罰を与えに来た。死と言う名の罰をな」
「はっ、よく言うぜ。元々はテメーらが悪いんだろうが。それを棚に上げて偉そうに」
「そうよ!第一、そんなことしたって権利は戻ってこないのよ!」
グレンは耳の穴をほじりながら、エリゴールにそう言う。
ルーシィもそれに乗る形でエリゴールに言う。
「お前……どこかで……」
エリゴールはグレンを見て、一瞬何かを考え出すが、すぐに考えるのをやめる。
「まぁ、いい。俺たちが欲しいのは権利じゃない。権力だ。権力さえあれば、すべ他の過去を水に流し、未来を支配することだってできる」
「こりゃダメだ。六年前より質が悪くなってる……」
グレンは誰にも聞こえないようにボソッと呟く。
「俺は笛を吹きに行く。
そう言い残し、エリゴールは隣のブロックへと逃げ込む。
「ナツ!グレイ!グレン!エリゴールを終え!お前たちならエリゴールにだって負けるはずがない!」
エルザにそう言われ、ナツとグレイは互いを睨み合う。
「聞こえたら返事をしろ!」
「「は、はい!」」
「なら行け!」
「「あいさー!」」
エルザに一喝され、二人は肩を組んだままエリゴールを追う。
「やれやれ、じゃ、俺もエリゴール追うわ。エルザ、無茶すんなよ」
「ああ、わかってる」
「ルーシィ、エルザを頼むぜ」
そう言い残し、グレンもエリゴールの後を追う。
《グラビティ・コントロール》を使って、エリゴールが逃げた経路を通り、隣のブロックに移る。
すると意外なことに、エリゴールはすぐに見つかった。
「こんな処でのんびりと散歩か?随分と暇じゃねぇか」
「テメーを待ってたんだよ。さっき思い出した。テメー、あの時の魔導士だろ?」
「六年前、俺たちのギルドのメンツを半数以上殺し、マスターを検挙した評議会の犬!黒の悪魔さんよ!」