《鉄の森》の目的に気付いたグレンは、この事を伝えるべくエルザを探した。
駅の中を走っていると、グレイとエルザを見つけ、グレンは呼び止める。
「エルザ、グレイ!」
「グレン!無事だったか!」
「そんなことより、奴らの目的が分かった!」
「ああ、こちらもそれを知ったところだ!」
「なら、外の魔風壁のことも知ってるのか?」
「ああ。それは何とかなりそうだぜ。奴らの仲間のカゲって奴なら魔風壁を解除できるかもしれねぇんだ」
「
三人で走り回っているとナツの声と破壊音が聞こえる。
ナツがソイツと戦っているのだと確信し、そちらに向かうと、案の定、ナツがカゲを倒していた。
「ナツ!よくやったぞ!」
エルザはそう言い、カゲの胸ぐらをつかみ、壁に叩き付け、剣先を向ける。
「外の魔風壁を解除しろ。一回NOと言う度に切創が一つ増えるぞ。いいな?」
「わ、わかった……」
エルザの脅しビビり、カゲは頷く。
その瞬間、カゲの動きが止まり、口から血を吐いて倒れる。
見ると背中に短剣が突き刺さっており、その背後にはカゲの仲間の一人が魔法で壁の中にいた。
「まさか……魔風壁を解除させないために、仲間を殺したのかよ!」
「仲間じゃ・・・・・ねぇのかよ……同じギルドの仲間じゃねぇのかよ!」
ナツは敵と言えども仲間を刺したことに怒り、男が隠れている壁を殴って破壊し、男を引きずり出す。
「カゲ、しっかりしろ!」
「無理だ、エルザ!意識がねぇ!」
「それでもやってもらわねばならないんだ!」
「そう言ったってこんな状態じゃ魔法は使えねぇぞ!」
「どいてろ!」
グレンはエルザを押しのけ、カゲに触れる。
「《慈愛の天使よ・彼の者に安らぎを・救いの御手を》!」
グレンは《ライフアップ》と言う、対象の自己治癒力をアップさせる魔法を使うも、これは回復魔法でも治癒魔法でもない。
あくまで自己治癒力を高めるだけで、応急処置ぐらいにしかならない。
「危険な状態は脱したが、完璧じゃねぇ。それに、意識もいつ戻るか………」
カゲを連れたまま、グレン達は魔風壁の前まで来る。
だが、魔風壁をどうにかする術を持たないグラン達にはどうすることもできない。
ただカゲの意識が戻るのを待つしかなかった。
ナツはというと、魔風壁に突っ込もうとして何度もはじかれていた。
「グレン、お前の魔法で何とかできねぇのか?」
グレイがグレンの方を見て訪ねてくる。
「詠唱魔法には確かに解除魔法もある。だが、これだけの物となると流石に俺の魔力が足りねぇ。精々、効果を弱める程度だ」
「くそ……手詰まりか。急がねぇと爺さんたちの命がねぇってのに……!」
グレイが親指の爪を噛みながら悩んでいると、突如ナツが声を上げる。
「そうだ、精霊だ!」
ナツはルーシィの肩を掴んで言う。
「エルバーの屋敷で精霊界を通って移動できただろ!」
「いや、そもそも人間が精霊界に入ったら死んじゃうんだけど……それに門は精霊魔導士のいる場所でしか開けないの。つまり精霊界を通ってここを出たいなら、最低でも一人は駅の外に精霊魔導士がいないといけないの」
「ややこしいな!いいから早くやれよ!」
「だからできないの!そもそも、人間が精霊界に入ること自体が重大な契約違反。あの時は、エルバーの鍵だからよかったけど」
「エルバーの……鍵………ああ!」
ルーシィの話を聞き、ハッピーが声を上げる。
「ルーシィに言いたいことがあったんだ。はい、これ」
そう言ってハッピーは一本の金の鍵を出す。
「そ、それって、バルゴの鍵!?」
「バルゴがルーシィにって。エルバーが逮捕されて契約が解除になったから、今度はルーシィと契約したいんだって」
「あ、あれが来たのね………うれしい申し出だけど、今はそれ所じゃないでしょ」
「でも、バルゴは地面に潜れるし、魔風壁の下を通って出られるんじゃないかな?」
ハッピーのその言葉に、全員が固まる。
「そっか!やるじゃないハッピー!」
ルーシィが声を上げて喜ぶ。
ハッピーから鍵を受け取り、バルゴを呼び出す。
「我、精霊界との道を繋ぐ者。汝、その呼びかけに応え門をくぐれ。開け、処女宮の扉!バルゴ!」
そして、現れたのはメイド服に身を包んだ、女性だった。
「お呼びでしょうか、ご主人様」
「え!?」
その姿に、ルーシィは声を上げる。
「痩せたな」
「あの時は、ご迷惑をおかけしました」
「痩せたって言うか別人!?」
ルーシィが驚いているのは、エルバーの屋敷で見たバルゴは身長が二メートル近くある、ゴリラのような巨漢メイドだったからだ。
だが、今のバルゴはすらっとしたモデルのような体系だ。
「私はご主人様の忠実なる精霊。ご主人様の望む姿にて仕事をさせて頂きます」
「そんなことより、時間がないの!契約は後でもいい!?」
「かしこまりました、ご主人様」
「ご主人様はやめてよ!」
「では、女王様と」
バルゴはルーシィの腰になる鞭を見て言う。
「却下!」
「では、姫で」
「妥当ね」
「いいから、急げよ!」
グレイに突っ込まれ、ルーシィはバルゴに穴を掘るように命じる。
「では、行きます!」
バルゴは勢いよく地面を掘り進み、進んでいく。
「よくやったルーシィ!」
「おし!あの穴を通っていくぞ!」
穴を通ろうとすると、ナツは負傷してるカゲを担ぐ。
「何してんだ、ナツ?」
「コイツも連れてく。俺と戦った後に死なれちゃ、後味が悪ぃんだよ」
そう言いナツは影も一緒に外に連れ出す。
外に出ると、風が吹き荒れ、目もまともに開けられない状態だった。
「早くエリゴールを追うぞ!」
「む、無駄だ……い、今からじゃ追いつけやしない……俺たちの勝ちだ………!」
目が覚めていたカゲはこんな状態になりながらも、自分たちの勝利を確信しほくそ笑む。
「ん?ナツはどうした!?」
ナツがいないことに、エルザが声を上げる。
「あれ?ハッピーもいねぇぞ?」
そして、ハッピーもいなかった。
「あいつのことだ。先に、エリゴールを負ったんだろ。ハッピーの全力なら、今からでも間に合うだろうからな。俺たちも急ぐぞ!」