FAIRY TAIL~愚者の魔導士~   作:ほにゃー

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第8話 ゼレフの書の悪魔

ナツ追って、線路を魔導四輪車で走っていると、ルーシィがあることに気付く。

 

「これって私たちがレンタルした奴じゃないわよね?」

 

「《鉄の森》の周到さには頭が下がる。ご丁寧に破壊されてやがった」

 

「弁償か……」

 

「それでほかの車盗んでちゃ世話ないよね」

 

カゲはそう言うと少し考えてから口を開く。

 

「なんで僕をつれてく?」

 

「なんでってケガしてるじゃない。町は誰もいなくなっちゃったし、クローバーのお医者さんに連れてってあげるんだから感謝しなさいよ」

 

「そうじゃない!なんで助ける!?敵だぞ!」

 

カゲはそう叫ぶと、あることに気付きまた口を開く。

 

「そうか。僕を人質にエリゴールさんと交渉するんだな。無駄だよ。あの人は冷血そのものさ。ぼくなんかの」

 

「なら、殺してやろうか?」

 

「ちょ、グレイ!?」

 

グレイがカゲに対してそう言う。

 

「生き死にだけが決着のすべてじゃねぇだろ?もう少し、前向いて生きろよ。お前ら全員さ……」

 

「………だったら、どうすりゃ良かったんだよ」

 

グレイの言葉にカゲが口を開く。

 

「権利を奪われ、仕事もできず……闇ギルドになった俺たちに……一体何ができるってんだよ………どうすりゃいいんだよ………」

 

「知るかよ」

 

悔しそうに言うカゲに、グレンはそう言った。

 

「同情してやらねぇでもねぇが、結局はお前は自分で道を選ばなかっただけだろ。ギルドに縛られず、自分で道を選んでりゃ、もっと違った道もあったんじゃねぇのか?」

 

グレンはそう言い、そっぽを向く。

 

(そうだよな………あの時、違う道を選んでりゃ俺も…………いや、過ぎたことを言ってもしょうがねぇか…………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナツの後を追い、もうすぐでクローバーの街に着く辺りで、グレン達はナツに追いついた。

 

見ると、ナツはエリゴールを倒していた。

 

「ナツ、エリゴールを倒したのか!」

 

「そんな!エリゴールさんが負けたのか!?」

 

全員、魔導四輪車を降りて、ナツに駆け寄る。

 

「こんな奴に苦戦しやがって。《妖精の尻尾》の格が下がるぜ」

 

「何処が苦戦だ?圧勝じゃねぇか。な、ハッピー?」

 

「微妙なトコです」

 

「何はともあれナツ、お前のお陰でマスターたちは守られた 。ついでだ……定例会場に行き、事件の報告と笛の処分についてマスターに指示を仰ごう」

 

「クローバーはすぐそこだもんね」

 

その時、カゲが魔道四輪を動かし、ララバイを自分の影の魔法で拾ってクローバーの町を向かっていく。

 

「油断したな妖精(ハエ)ども、ララバイはここにある―!ざまぁみやがれ!!」

 

「あんのやろぉぉぉぉぉ!!」

 

「何なのよ!助けてあげたのに……」

 

「追うぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グレン達がクローバーにある定例会の会場に着くと、そこではカゲがララバイを手に、マカロフの前に立っていた。

 

「いた!」

 

「じっちゃん!」

 

「マスター!」

 

助けに向かおうとすると、グレン達を誰かが止めた。

 

「今いいところなんだから、見てなさい」

 

「《青い天馬(ブルーペガサス)》のマスター!?」

 

「あら、エルザちゃん、大きくなったわね」

 

止めたのはギルド《青い天馬》のマスターのボブだった。

 

「どうした?早く吹かんか?」

 

マカロフはカゲにララバイを吹くように促す。

 

カゲは体を震わせて、今にも笛を吹きそうだった。

 

「いけない!」

 

「黙ってなって。面白ぇトコなんだからよ」

 

今度はギルド《四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)》のマスターのゴールドマインが止める。

 

「………何も変わらんよ」

 

マカロフが口を開く。

 

カゲはその言葉に、恐怖を感じた。

 

「弱い人間はいつまでたっても弱いまま。しかし、弱さの全てが悪ではない。人間は元々弱い生き物じゃ。一人じゃ不安だから、ギルドがある。仲間がいる。強く生きるために寄り添いあって歩いていく。不器用な者は人より多くの壁にぶつかる。しあkし、明日を信じて踏み出せば、自ずと力は湧いてくる。強く生きようと笑っていける。そんな笛に頼らずともな」

 

その瞬間、カゲは手にしたララバイを地面に落とし、膝をついた。

 

「参りました」

 

カゲは負けを認めた。

 

マスターたちの命は助かったのだ。

 

「流石です!マスター!」

 

「力じゃなくて言葉で相手に負けを認めさせるとか、流石だよ」

 

「じっちゃん、スゲーな!」

 

「一件落着だな」

 

勝会ムードになっていく中で、カゲに捨てられたララバイから黒い煙が吐き出され、その吐き出した煙が巨大な樹木の怪物のような姿になって表れた。

 

『どいつもこいつも、根性の無ぇ、魔導士共だ。もう、我慢できん。ワシ自ら貴様らの魂を喰ってやろう』

 

「コイツはゼレフの書の悪魔だ!?」

 

「ゼレフって大昔の!?」

 

「黒魔導士ゼレフ。魔法界の歴史上もっとも凶悪だった魔導士。何百年も前の負の遺産が、こんな時代に姿を現すなんてね………」

 

『さぁて、どいつの魂から喰ってやろうか………決めたぞ。全員だ』

 

ララバイは呪歌を使おうと、口を開く。

 

異常事態に、他のギルドマスターが駆け付けるも反撃が間に合わない。

 

その瞬間、ナツとエルザ、グレイの三人が走り出す。

 

「換装!天輪の鎧!」

 

「魔法の鎧の換装だと!?なんて速さだ!」

 

エルザは剣を振り、ララバイの足を切り付ける。

 

そして、ナツはララバイの体をよじ登り、炎を纏った蹴りを顔に当てる。

 

『くっ!小癪な!』

 

ララバイは口から魔法を放つが、ナツはそれを簡単に躱す。

 

だが、その代わり地面にいるギルドマスターたちに攻撃が向かう。

 

「いかん!こっちに攻撃が!?」

 

「逃げろ!」

 

ギルドマスターたちは反撃が間に合わないと理科しい、逃げようとするが、グレイは手を合わせ魔法を使う。

 

「アイスメイク〝(シールド)”!」

 

八方に広がる花のような形状の氷の盾を造り出し、ギルドマスターを攻撃から守る。

 

「奴を倒すには生半可な技じゃダメだ」

 

その様子を見て、グレンはポッケからあるものを出す。

 

「マスター。アレを使う。いいな?」

 

「仕方ないじゃろ。構わん、やれ」

 

「サンキュー。………ナツ、エルザ、グレイ!そいつを消し飛ばす!動きを封じてくれ!」

 

「わかった!換装!黒羽の鎧!」

 

「任せな!右手と左手の炎を合わせて………火竜の煌炎!」

 

「いいぜ!アイスメイク〝槍騎兵(ランス)”!」

 

エルザは一撃の破壊力を増加させる鎧に換装し、ナツは右手と左手の炎を合わせ巨大な炎にし、叩きつけ、グレイは数の氷の槍を造り出し、ララバイに攻撃する。

 

それにより、ララバイはそのまま後ろ向きに倒れ、動きがとりにくくなる。

 

「倒せたの!?」

 

「いや、ゼレフの書の悪魔はこの程度じゃ死なない。もうひと押しがいるんだよ」

 

そう言い、グレンは赤い宝石を取り出し、構える。

 

「《我は神を斬獲せし者・我は始原の祖と我は知る者―――――》」

 

グレンは詠唱を始めると、魔法陣が幾重にも現れ、それが砲身のように重なる。

 

「《―――――其は摂理と円環へと帰還せよ・五素より成りし物は五素に・象と理を紡ぐ縁は解離すべし ・いざ森羅の万象は須く此処に散滅せよ―――――》

 

「な、なんなのアレ?すごい魔力……!」

 

ルーシィは何が起こるのか分からないため、そう言うしかなかった。

 

「あれはグレンが作り出し、詠唱魔法の中でも、膨大な魔力を消費し放つ魔法。その威力は《妖精の尻尾》に伝わる三大魔法に匹敵する。その威力から、グレンは普段は決して使わない」

 

マカロフはルーシィにグレンが使おうとする魔法について説明をする。

 

「何かあるとは思っていたが、こんな隠し玉があったのか」

 

「やっぱグレンの奴スゲーわ」

 

エルザとグレイは、グレンの隠していた実力に思わず感服していた。

 

「グレンの奴とも戦ってみてー!」

 

ナツはグレンを戦いたいのか興奮していた。

 

「巨大な光の衝撃波を発生させ、対象を根源素(オリジン)にまで分解消滅させると言う最高峰の威力を持つ魔法。その名は――――――」

 

「《遥かな虚無の果てに》!」

 

マカロフが最後の言葉を言い終わる直前に、グレンも詠唱が完了し、グレンはニヤリと笑う。

 

「ぶっ飛べ!《イクステンション・レイ》!」

 

一瞬、その場に居た者、全員の視界が真っ白になった。

 

視界が回復すると、そこにゼレフの書の悪魔の姿はなく、まるで空間ごとくり抜いたかのように、跡形もなく綺麗に吹き飛ばされていた。

 

「やっべ………今ので魔力が空になった………もう一発も魔法打てねーわ」

 

グレンはそう言い、その場に座り込む。

 

(凄い……〝愚者の世界”なんて馬鹿げた魔法の時も思ったけど、この魔法も規格外すぎる………エルザに、ナツに、グレイ……そして、グレン。これが、《妖精の尻尾》最強チーム!)

 

ルーシィはそう思い、四人を見つめる。

 

「いやー、いきさつはよく分からんが、《妖精の尻尾》には借りができちまたな」

 

「なんのなんのー!ふひゃひゃひゃひゃ!!」

 

マカロフは笑うが、次の瞬間、あることに気付き、顔を青ざめる。

 

他のギルドマスターたちも何事かと思い、後ろを振り向く。

 

そこにあったのは、ナツとエルザ、グレイが戦った後の壊れた地形と破壊された定例会の会場、そして、グレンが跡形もなく吹き飛ばした森があった。

 

「悪い、マスター。やり過ぎた」

 

「申し訳ありません……」

 

「いーのいーの。どうせもう呼ばれないでしょ?」

 

そう言い残し、グレン達は急いでその場を後にした。

 


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