魔王っ子様の教育方針   作:秋宮 のん

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失踪してました…。すんません。
でもとりあえず戻って来たので、続きを投稿します。


終章 旅立ち

エピローグ

 

 『ファーストウォーク』の街から飛び出した俺達は、すぐにリリィの転移魔法でホームまで移動。かなり目立つ魔法の様だが、今は時間との勝負だったのでこっちを優先した。急いでホームから必要な物をかき集めながら、俺達は話し合う。

「っで、あの街に居られなくなったわけだが? これから俺達はどうすればいい?」

「それなのだけどね? 鈴森くん、以前言ってたわよね? リリィの教育方針について?」

「え? ああ、言ったけど、アレは結局、具体案が無いから却下にしたんじゃ?」

「私、リリィの母親になると自分の意思で決めた時に思ったのよ? 私には『母親』とは何をしてくれる物なのか良く解ってなかった。でも、確かに『母親』に求める物はあったのよ」

 それは……、なんとなく、俺も『父親』に対して求めていた様な物があった。それと同じという事なんだろうか?

「それは、きっとリリィも一緒なんじゃないかしら?」

「リリィが一緒?」

「それはどう言う事?」

 荷物整理をする俺達に変わって、玄関口で追手を警戒してくれていた彩華も興味を持った様に尋ねてくる。

「私や鈴森くんに『親』という役割を求められたように、リリィにも『魔王』として求められた役割があったんじゃないかって事よ」

「それは、当然でしょ? だから私は魔王様を迎えに来たんだから」

 彩華が呆れた様子で腕を組んで見せる。くそっ、この人こう言う何でも無い動作にも一々色気を感じる。どんだけ色っぽい人なんだよ!

「アナタが言っているのは、歴代の魔王がしてきた事でしょう? 私が言っているのは、本来魔王が生まれた根幹の話よ?」

 俺の脱線思考事、姫川はバッサリと切り捨てる様に言ってきた。

「アナタが言ったのよ? リッチ。『魔王は精霊種が滅んだ時に、突然変異で生まれた。もしかすると精霊種の意思があったのかもしれない』って」

「! まさか、アナタは、嘗て精霊種が願った魔王の役割を見つけ出すと、そう言っているの!」

「仮にそれが事実なら、『親』の役を選んだ私達には、リリィを導くために、真実を確かめる必要性がある。そうでしょ……?」

 姫川が俺に笑い掛けてきた。姫川が俺を数に入れている事が嬉しくて、つい力強く頷いた。

「そうだな。ただリリィを育てる事はできる。でも、育てるだけなら親じゃなくてもできる。『親がいなくても子は育つ』って言うしな。なら、『親』の役割は、子供が正しい道を選べるように導いてやることだよな!」

「ええ、それは私達の主観ではいけない。片方の意思だけでは、答えは見えないもの」

 今の姫川の台詞には覚えがある。視線を向けると姫川は頷いて見せたのでそう言う事だろう。どうやら俺達は結構、あの『司書』さんの影響を受けているらしいな

「パパと、ママ、が、行くなら、行く……!」

 リリィが賛同し、俺達の間にダイブ。俺達の腕を左右の手で絡めて抱きつく。

 ゴキュキュ……ッ! 俺と姫川の肘関節に嫌な音が鳴り、『精霊の加護』を僅かに消費した。なんだか久しぶりの光景だな……。

「なら、これからは世界を見て周り、魔王発端の歴史を振り返ると言う事?」

 彩華に聞かれ、頷く姫川。リリィの角を捕まえ、こっそりお叱り。リリィが少し涙目で「ごめんなさい……」っと呟いていたが、手は離さなかった。コイツも図太くなったな。

「それなら、もしかすると私がアナタ達を案内できるかもしれないわ」

「え?」

 まさかの彩華の申し出に、俺達は眼を(しばたた)かせる。

「嘗て、私は一度だけ、人間の少女とこの世界を旅した事があるのよ。未だ嘗て、私が魔王様の御傍を離れたのは、彼女と二人で旅をしていた時だけよ」

 人間と旅? 魔族でリッチの彩華が? 驚きはしたが、半ば納得もした。だから彩華は俺達に対して当たりが柔らかかったのか。その辺の話も聞いてみたいが、今は話の腰を折らずに聞きに徹する。

「嘗て彼女は人間からも魔族からも『英雄』と呼ばれ、龍種とすら戦えた、二刀流の戦士だったわ。でも、彼女が求めたのは戦場ではなく探求だった。ありとあらゆる遺跡を周り、考古学を学び続けていたわ。たまに彼女自身がレポートを書いていたけど、それを見せてもらった事はなかったわね」

「そう言えば、この世界の考古学者は、何だかレベルが低い様な印象があったわね?」

 姫川が呟く。彩華は頷いた。

「彼女もそれを不思議がっていたわ。だから自分が調べるのだと言っていたの。彼女はありとあらゆる地域に赴き、唯一世界をまたにかけた存在となった。その最後の終着点が『聖地』と言われる場所だったのだけれど……、その時彼女は、真っ青な顔になって、私に言ったのよ。『全ての始まりが解ったよ……』っと」

「全ての始まり?」

 俺の呟きに、彩華は頷いた。

「それが何なのかは解らなかったわ。その翌日、彼女は再び一人で『聖地』に赴き、私が追いついた時には亡骸となっていたから……」

「それはまた、何とも意味深ね」

 姫川も何かを感じ取り頷く。ここまで聞かされて俺に異存があるわけもなく。俺達は同時にリリィを引っ張り上げる。リリィは足が浮いた事が楽しかったのか、喜びながらも賛同した。

「いく……っ! リリィも、『魔王』の、役割……! 知りた、い……!」

「決まりだ!」

「ええ、じゃあリッチ。まず、私達は何処を目指せばいいのかしら?」

「ここからなら、まずは北に……、一番近くに水精霊を祀ったとされる遺跡が存在します」

「ここから北かよ……。道あるの?」

「ない、わ……」

 げんなりする俺と、なんか無能を晒してしまったと言う風に顔を真っ青にして落ち込む彩華。だから落ち込み方が重いって!

「無いならちょうど良いわ。万が一、追手が来ても、私達の後を追い難くなるのだしね」

 確かに予想外だろうよ。西と南にしか街道が無いのに、森を突っ切って北に行くなんて、完全に自殺行為だもんな。魔王っ子様と絶望リッチさんがいるからできる選択肢だろうよ。

「じゃあ、準備も出来た事だし」

「ああ、行こう!」

 俺達は荷物を抱え、家を出る。このファンタジーの世界に訪れて、俺達は始めて、冒険を始める。魔王退治ではなく、魔王っ子様を育てる、そんなへんてこな冒険を、俺達偽の夫婦と、本物の親子が、リッチの先導で歩み始めるのだった。

 

 

 

 




一応、もう一話分だけ続きます。
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