緋月昇は記録者である   作:Feldelt

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第14話ㅤ決戦(前編)

戦いが始まる合図は牡羊型の突出からだった。その後ろに牡牛型、天秤型と続き、一番後ろに本陣と思われる獅子型が構えている。サイズから見ても間違いないだろう。

 

「けど……まずはあの突出してくるやつを叩く!」

 

東郷が牡羊型の頭部を狙撃する。引き金を引く数瞬前に刀傷が目標にできていたから、恐るべき連携である。あ、もう封印の儀に入ってる。

 

「記録しねぇと...!」

「東郷さぁぁぁん!!」

 

友奈の叫びと俺の仕事意識の表れは同時だった。東郷が引き金を引き、まず一体、バーテックスを撃破する。

 

「見事にカモだったな...これなら数だけじゃねぇの?」

「私もそう思うわ...けど、この叩いてくれと言わんばかりの突出...まさか...罠!?」

「牡牛型...!まずい、あいつらの動きが...!」

「原因は...あのベルか!」

 

東郷が再び引き金を引......けなかった。地面の振動と足元から出てきた異形。そう、バーテックスだ。スマホを確認すると魚型とある。ここは樹海だ。海じゃない。足元も固まった地面だ。

 

ーーこの世の理が通じてない...

 

 

俺は、すぐ近くにバーテックスがいて、なおかつ仲間も自分もピンチだというのに驚くことも慌てることもなく、何故か自然に落ち着いていた。そう、冷静であったのだ。

 

「狙撃が...!」

「...東郷、魚型に集中砲火。」

「緋月君...?」

「いいから撃っとけ。あいつらならその間に打開くらいできる。」

「そうね...了解!」

 

俺も札を展開、不意の攻撃に備える。俺の注意は魚型に向けられてはいるが、視界の端で樹がワイヤーを伸ばしてベルを止めたことを確認した。それをきっかけに接近してきた水瓶型と天秤型を先輩が両断する。バーテックスは再生するから時間稼ぎにしかならないが、今はその

時間が欲しい。樹が拘束している牡牛型を封印するための。だが、牡牛型は撤退した。まるで封印されるのを恐れるように。

 

「撤退...」

 

スマホを顕現して友奈に連絡をとる。

 

「友奈、周囲警戒...なぁ、何かおかしくないか?」

「え?ひーくんもそう思うの?夏凜ちゃんもそう言ってたよ。」

「だろうな...」

 

何にせよ、気をつけてくれ...と言う前に獅子型が火球となった。その炎の輝きに目が奪われる。

 

「自爆...いや、そんなわけない...」

 

それを裏付けるように、再生しつつある水瓶型と天秤型、それに加えて撤退している牡牛型が火球に飲み込まれていく。

 

「緋月君伏せて!」

「のわぁ!?」

 

思索を巡らせていたが東郷の声で中断させられた。魚型がもう1度上を通ったのだ。危ない危ない...東郷の腕は信じているが、頭を撃ち抜かれるとこだった...

 

「これでようやく皆を援護出来る......!?」

 

東郷が再び狙撃態勢に入るが、明らかに動揺した。

 

「どうした東郷!?」

「ひーくん!」

 

顕現したままのスマホからの友奈の声と、俺の確認の声は同時だった。

 

『バーテックスが、合体した...!?』

 

見事にハモるが俺はそのあとが続かない。友奈のスマホからは夏凜のこんなの聞いてないとか先輩のまとめて倒す宣言が聞こえて来るが、頭に入ってこない。なぜなら、まず最初に思ったことはこうだ。

 

「こんなのどうやって報告書にまとめろと...!?」

『そこ!?』

 

勇者部総ツッコミが来るが仕事のことを心配しているあたりまだ俺には余裕がある。しかし...問題は敵の攻撃。

 

『昇!連絡切りなさい!攻撃が来るわよ!』

 

夏凜の叫びが聞こえた。前衛の勇者部四人への追尾弾。その火力は桁違いで、勇者四人は吹っ飛ばされる。

 

「おのれ...!」

 

東郷が狙撃する。が、合体したバーテックスにはかすり傷すら付かない。

 

『効かない...!?』

 

今度は東郷とハモったが、その直後合体したバーテックスがこちらに向けて光弾を発射した。

 

「やばっ...」

 

札の展開は遅れていない。が、その火力を防ぎきれるかは疑問だった。光弾が直撃し、俺と東郷を巻き込んだ。

 

 

 




次回、「決戦(後編)」

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