「...てなわけで、緋月昇は十月一日より讃州中学を休学することになりました。残り25日です。」
「随分急ね...ちなみになんでかは...」
「口外できません。悪しからず。」
友奈が戻り、東郷も歩き始め、先輩の目も治り、樹の声も聞けるようになった上に夏凜の全部が帰ってき始めたこのタイミング。なかなかに酷なタイミングだが上の決定は仕方ない。
「残り25日...じゃあ最後の一日にはひーくんの送別会をやろう!」
「いいわね友奈ちゃん。」
「待ちなさいよ。帰ってこないわけじゃないんだから送別会ってのはなんか変でしょ...」
「でも...何の見送りも無しに昇先輩をお仕事に送り出すのは...嫌です。」
「じゃあ決まりねー。夏凜はどうせ緋月とべったりなんだからいちいち心配してないんでしょうけど、勇者部にとっては一大事よ。」
なんて割り切っていたらなんでか知らんが本人抜きで話が進んでいる。待て待て待てい。
「べったりって何よ!?どっちかって言えば昇の方じゃない!私は好き好んでくっつかないわよ!」
「嘘、だろ...」
「嘘じゃないわよ!うぅ...そんな残念そうに悲しんでる顔をするなぁ...!」
先輩の夏凜いじりに加担して眼福を得た俺は携帯に園子様からの着信が8通来てる事に気づく。しかもしっかり15分刻みに。いや、勇者システムがない端末渡されたから連絡先交換しようと言われてしたはいいけど...無音設定にしてたからなぁ...申し訳ない...
「うぐっ...山のように呼び出しが来たのでこれにて失礼します...」
「えぇ!?ひーくんもう行っちゃうの!?予定全部立ててないよ!?」
「本人抜きで予定立てんな!夏凜の家で考えてたら仕事終わり次第行くからそういうことで!」
「あ、こら!昇も本人抜きで話するな!」
夏凜のツッコミを背に受けつつも俺は大赦本庁へ向かった。もうまじなんなんだろう...
───────
大赦本庁。
もう何度も行き来したこの場所。
「だからといって毎日って...呼びすぎだよ園子様...こっちだって予定なりなんなり色々あるんですって...電話8本とか...うわぁ...」
なんてげんなりしながら園子様の部屋へ。
今日こそは手短に済まそう。
「園子様ー。緋月ですー。」
「やっほーのぼるん。」
「やっほーって...今日だけで8件も電話するなんて...火急の用でもあったんですか?」
「そんなにないよ〜、でも、私はまだこの部屋から出られないからね〜、暇なんよ〜。」
見ると、確かに園子様の脚にはICチップみたいなのがついてる輪っかがつけられている。
「なるほどそういうことですか...」
しかし、ここは医療棟。病院ではないにしろやはりパジャマというか寝巻きというか、夏凜で慣れてはいるといえど目のやり場に困る...
「ほほー、のぼるん目が泳いでるよ〜」
「...そうですね...美少女に囲まれた勇者部という環境にいるんで慣れてはいますけれど...でも園子様はまた別格なので確かに目のやり場には困りますね...」
沈黙。
やばい、変なこと言ってしまったと思った時にはもう遅い。園子様の目がキラキラ輝いていた。
「ビュオオオオオッ!!!」
「突風!?窓閉まってるのに!?」
もはやお構い無し。園子様はどこからか取り出したメモ帳に何かを書きなぐってる。
「出来た〜、のぼるんを元にしたラブコメのプロットなんよ〜。」
「この短時間で...じゃなくてちょっとどういうことですか!?なんでもありすぎません!?」
「ふっふ〜。」
得意げな園子様はまたこれもこれで...と思った自分に少し戦慄した。むぅ、園子様に色々もってかれてるな...俺...
「のぼるん〜?顔が暗いよ〜?大丈夫?」
「大丈夫ではないかもですね...すいません園子様。体調が優れないのでこれで失礼します。」
「そっかー。じゃあまたね、のぼるん。次は最初から敬語無しでお願いするんよ〜。」
「また無茶を...わかりました。」
できるだけ足早に病室から出る。
もしあのままいたらきっと引き返せなくなった。
「くそっ...自分の意思くらい貫き通せ緋月昇...」
自分に嫌気がさしながら帰路につく。
霊札を足につけて屋根の上を飛んでいくことで超高速での帰宅を可能となっている。やはり霊札は偉大だった。便利すぎる。
「...はぁ...」
家に着いて、制服から部屋着に着替えてベッドに寝っ転がり天井を見る。
何も無い、ただ白い天井。
「はぁ...」
ため息2回。
そこで携帯に夏凜からの連絡が入った。
『予定立てるんでしょ、帰ってきてるなら来なさい主役。』
「はぁ...」
3回目。
『惚れた。』
そう返して俺は隣の夏凜の部屋へ突入した。
慌てふためく夏凜とにやけてる先輩の相手が大変だったけれど、『讃州中学勇者部』の緋月昇はどうやらそんなに休めそうもないようだ。
次回、第35話「タイトル未定のただのデート回」
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