10:00。
俺と夏凜はふらふらと街を散策していたがやることも行く宛もやっぱり無く、ただいつもの砂浜で呆然と立ち尽くしていた。
「ほんとにノープランで突っ込んでるわね...で、昇。これからどうするのよ。」
「どうするもこうするも......手合わせ?」
「疑問形なのね...私は別に構わないけど。」
なんか違うだろ緋月昇...
そう思いながらも何もしないで動かないでいるのは嫌だから霊札で木刀っぽいものを3つ作る。
「じゃあやるか...」
作った3本のうち2本を夏凜に渡し、残りの1本を右手に持って構える。
「オーケー昇。覚悟はいいかしら。」
「さてね。けど、死線くぐり抜けてきた昇くんを舐めないで貰いたいかな!」
言い終わると同時に突っ込む。上段切り。
「ふん、甘い!」
が、相手は完成型勇者(自称)。この程度は造作もなく二本の剣を交差させて防ぎ、即座にはらってこちらの左から一閃を浴びせてくる。
「だよな...!」
バックステップで一閃をかわし、時間差でやってきた右からの袈裟斬りをこちらの剣で受ける。
「流石にこの程度はできるわね...」
「誰と訓練してたか忘れてたとか言うなよ...それに、俺の本職は目で見て耳で聞いて判断すること。経験則、とまでは言わなくとも夏凜の動きなら少しは読める!」
「言うわね...だったら読み切ってみせなさい!」
その言葉と同時に両者距離を取り、夏凜の剣速が上がった一撃がすぐに眼前に迫ってくる。
「っく、冗談抜きで速いなこれ!」
剣で右にいなしながら左に避ける。が、夏凜は振り下ろしていた腕を大振りに振ってくる。
「...ッ!!」
間一髪剣を逆手にもつことでそれを防ぐが、これで止まる夏凜ではない。左手に持っている剣をここぞとばかりに突き出してくる。
「せぇぇぇい!」
「なんとぉぉ!!」
突き出してきた刀身に合わせるように逆手持ちの剣を振り上げ、夏凜のバランスを崩す。
「...やるっ...!」
「そこっ...!」
この機は逃せない。ここで決めんと順手に持ち替えて剣を振り下ろす。
「ぐっ...」
だが夏凜はそれにも対応する。即座に体勢を立て直し鍔迫り合いに引き込む。
「防ぐか...!」
「前よりも強いわね昇...けどっ!」
鍔迫り合いの力加減を絶妙に変えた夏凜がこちらの重心を少し後ろにずらしたのを見極め、そのタイミングでなんと蹴りを放ってきたのだ。砂浜だよ、ここ。しかもスカートで。まぁ、ちゃんと丈は膝下まであるやつだったからそういうのにはなってないし蹴られたのは腹...
「あぐっ...」
そう腹なのだ。しかもクリーンヒットなのだ。
みぞおちは外れてくれたけど痛いものは痛い。
そしてそこに付け込まない夏凜でもなく、右手に持ってた剣をあらぬ方向へ払われたのだった。
「私を本気にさせたことは誇るべきね、昇。」
「痛ってぇなぁ...砂浜だぞここ...珍しく私服着たってのに...はは、降参だ...」
やっぱり夏凜には勝てなかったよ。
───────
14:00。
「眠い。」
「状況説明をすっぽかさない。なんでまた私の家にいるのよ。街歩くんじゃなかったの?」
「ネタ切れだよネタ切れ...なんかやることが思いつかないんだ...だからこうしてのんびりしているわけ。というか、あんだけ運動してまだ歩けるのか、凄いな完成型...」
まぁ、あれだ。疲れた俺はコンビニで二人分の昼飯を買って、食べて、絶賛睡魔と格闘中。
「昇...あんた私といるといっつも寝てないかしら。」
「そうか...?でもまぁ...きっと心底安心出来るからなんだと思うけどな。夏凜がそばにいてくれたら、俺は大丈夫だと思える。」
「まるで東郷じゃない...」
「やめろ、そこまで重篤じゃない...あと夏凜も同じこと考えてたんだな...」
ふふ、と思いながらももう瞼が重い。4時起きは流石にきっついなぁ...
「すぅ...すぅ...」
「結局寝たのね...全く、いつもいつも無防備に寝てくれちゃって...」
「おやすみなさい、昇。」
───────
20:00。
「すぅ、すぅ...」
「今度は夏凜が寝ちゃったか...時間も時間だし...とりあえず携帯でも見るか...」
と思ったところで寝ていたせいで右腕があったところにそれがなく、霊札がソファや足元に散らばっていた。しかも右肩には夏凜の頭が乗っかっている。
「まぁ、今日は仕事も全部オフになってるし、今この場を有意義に過ごすとするか。」
さて、夕食は何作ってあげようかな。
少し、遅めになるだろうけど。
次回、第37話「二人きりの二日間(後編)」
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くめゆ編がそろそろですね...(勇者の章に向けステンバーイ)