芽吹ら防人の拠点、ゴールドタワーに着いた俺に待っていたのは送っておいた家具類などが全てセットされていてなおかつ隅々まで掃除が行き届いていた一室だった。『緋月昇』の表札付きで。
「あ、記録者の緋月先輩ですね。防人の皆さんとのお務めお疲れ様でした。」
そこに居たのは調査前に祝詞を唱えていた巫女の少女。エプロン姿で手にはほうき。待ってこれどゆこと。というかこの子の名前を俺は知らない。
「あぁ、ありがと...えっと...」
「あ、申し遅れました 、巫女の国土亜耶です。よろしくお願いします。」
深々と頭を下げる亜耶と名乗った巫女。
「巫女様にそんな深々と頭を下げられても...えぇ...でもなぁ、あんまり書史部関係ないよな今のこの状況は...」
大赦書史部は検閲の際巫女様を通すことになっている。つまりは書史部の上層にいる存在、上司の上司なのだ。なのだが。
困惑だけがしばらく俺の中を駆け巡った。
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そんな防人+巫女に合流した翌日、新たに防人が追加投入されたという。伝聞なのは俺がほぼ徹夜で報告書を仕上げたからであり、提出した後に朝食を食べる際に芽吹から聞いたからだ。
「大赦は私達を使い捨ての駒として見ているみたいね。不愉快極まりないわ。」
憤りを隠さない芽吹。
「やっぱり私も防人辞めるって言うべきだったよメブー...」
そんな芽吹の横でまだ怯えてる雀。
「おやおや、これはまた不思議な集まりですこと。」
その言葉とは裏腹にこちらにやってくる弥勒。
「しずく!場所ないならここおいで!」
座る席を探していたしずく。
「あ、芽吹先輩に皆さん!」
この集団を見つけるや否や真っ先に向かって来る亜耶。なるほど勇者部の防人版はこんな面子ということになるのか。
「それにしても昇君、貴方酷く眠そうね。今日も任務があるかもしれないのだから体調管理はしっかりしなさい。死ぬわよ。」
「そうだな...同じことを考えてたからつい徹夜で仕上げちまった...仮眠とるよ...」
朝食を食べながら他愛もない会話をするが、雀としずく、亜耶は俺と芽吹が知り合いということに少し驚いていた。
「楠、友達いる。」
「友達...なのかね。」
「どうかしら。信用はしてるけれど。」
「その感じ、思い出すねぇ、訓練時代のあの頃。夏凜と芽吹とその他集められた候補生達と。がむしゃらにひたむきに自らを高めてお互い負けじと踏ん張って。巻き込まれてフルボッコにされてな...」
「わたくしも思い出しますわね...」
『い(まし)たっけ?弥勒(さん)。』
「んなっ...」
「ぶふーっ」
驚愕の弥勒、吹き出す雀。
あれ、いなかったよなこんなポンコツくさい割とどうしようもなさそうなエセお嬢様。本物のお嬢乃木園子を知ってるからかな。
「緋月さん!?記録者たるものが弥勒の名を覚えていないということは何事ですの!?」
「...知るかよ...というか弥勒家は知ってる。赤嶺家と共に動乱を鎮めた家柄だろう。」
「あらご存知ならよろしいですわ。」
手のひら返し。
どうもこの弥勒夕海子という防人は相性が悪いらしい。こう、悪目立ちしたがりな幼子に見えるというか。幼子といえば亜耶は...
「流石記録者の緋月先輩です。私も弥勒家のことは聞いています。弥勒家がいなかったら人類は滅んでいたかもしれません。今こうして私達が生活してるのは弥勒先輩の御先祖様のおかげなのかもしれません。」
「まぁ、国土さんはわかってくれますのね!」
この受け答えである。聖人の極み。
こんな大人な対応俺にはできない...
そう思ってたところで服の裾が少し引っ張られた。その方向に振り向くとしずくがいる。
「食べないの、緋月。」
「そうだな...食べるけど少し持ってってもいいぞ?どうせ俺はこのあと寝るし...ふぁ...」
「そう。じゃあ、少しもらう。」
騒がしい上にけたたましい弥勒とは真逆に物静かなしずくは謎の安心感を覚える。
なんでかは知らん。
「ご馳走さまでした。」
それから数分後に食事を終えて皿を下げた。少し視界がぼやけてきたからやはり寝るべきだろう。だがしかし寝てる間に任務説も無きにしも非ず。
「芽吹、もし俺が寝てる間に任務が入っても起こさないでくれ、死ぬほど疲れてる...」
「私の部隊で死人は出さないわ。安心して寝てなさい。報告書は書いて貰うけれど。」
「おーけー、じゃあそういうことで。」
「えー、私も寝て任務回避したいよメブー、死にたくないよー!」
なんて雀の叫びがこだました午前7時であった。
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次に時計を見たら午後2時だった。
仮眠大事徹夜ダメ、絶対。
「芽吹達は...あぁ、今帰還したのか。」
窓から壁の方を見る。防人32名全員が帰還していた。流石芽吹だな...
が、この時の俺はこのあと起こるゴタゴタに回復させたはずの体力を根こそぎ持っていかれるなんて知るよしもなかった。不幸というか、トラブルばっかじゃんかもう...
次回、第40話「シズクかしずく」
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