緋月昇は記録者である   作:Feldelt

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第41話 壁外調査再び

しばらくして、防人はまた壁外調査に赴くことになった。今度の目標地点は旧中部地方、長野県と呼ばれていたところらしい。

 

で、そこに行き着くまではよかったのだが、土壌を採取するとなると動きが止まるわけで。

動きが止まるとハイエナのごとく星屑達が群がって来るのであった。辺り一面真っ白である。

 

「冗談じゃない...倒しても倒しても減らねぇ減らねぇ...メブゥ!あと何体だ!」

「数えていられる余裕は残念ながら私にも無いわよ!銃剣隊は交代しながら星屑の撃破と土壌の採取!護盾隊は...!ちっ、包囲された...全員1ヶ所に集まって!」

 

ぼやく俺と指示を切り替える芽吹。さてどうしたものか。このまま動かないのは格好の的...だが動くのもまた格好の的。

 

「八方塞がりといったところか...弥勒、突っ込んで自爆してきてよ。」

「嫌ですわよ!」

「冗談じゃ。誰も死なせるつもりのない芽吹の誓約をないがしろにできるかよ...」

 

とは言ったものの。

状況が状況すぎて打開策が思いつかない。

 

「せめて霊札がもっと広範囲で使えれば...」

「たらればなんて...でも、そうね。弥勒さんと本気で戦って圧倒してた昇君なら、たしかにこの状況を少しは打開できたか、も!」

 

見飽きた異形を切り払いながら考える。

退くにしてもどう退くか。

 

その時だった。

 

「ぎゃぁぁぁぁなんか来てるよメブゥゥ!」

 

雀が突出、盾を展開する。

何をやってるんだと思ったが、直後に雀の周囲の星屑が爆散、次いで右斜め上方向にいた星屑が爆散していった。俺はこれに見覚えがある。東郷美森、及び三好夏凜が撃破したはずの、サジタリウス・バーテックスの攻撃。

 

「次がくる!護盾隊、雀の横に展開!」

「銃剣隊は盾の中に入って護盾隊を支えて!」

 

ゴゴゴゴと鈍い音がする。

約1分。間隔的にそろそろ重いのが来るはずだ。

 

「助けてメブゥゥ!こんなの受けたら絶対死ぬってぇぇぇぇぇ!」

 

雀の叫びを皮切りに、芽吹が指示を出す。

 

「退くわよ!雀は私が連れてくわ!」

 

雀がサジタリウスの一撃を退路に溢れる星屑の方へ流し、星屑を爆散させることで退路が開いた。

 

「全員撤退!全力で壁まで突っ走って!」

 

瞬間、防人32名と記録者1名は灼熱の大地を駆ける。が、サジタリウスがそれを許すはずもなく、いつぞやの爪楊枝シャワーを浴びせてきた。

 

「霊札展開...!」

 

霊札を展開出来るギリギリの領域まで盾状に霊札を展開して、護盾隊の手間を減らす...

 

が、それが悪手だった。

 

霊札壁を貫通する重い一撃。どうにか右腕の霊札を貫かせて肉体そのものには傷を付けないようにはした、したけれども...!

 

「がうっ...」

 

慣性で吹っ飛ばされた俺の身体は壁に受身をとる間もなく直撃。頭部を強打した痛みがあって...

 

 

 

 

気づいたら、知らない天井を見ていた。

 

 

───────

 

 

人口呼吸器、点滴、頭に感じる違和感は固定のためのものか。それとも包帯か...

 

「痛...ここは...きっと大赦の医療棟...」

 

じゃあ今はいつだ...見渡す限りにカレンダーはない。時計はあるが。窓の外の様子から察するに、現在時刻は午前の方の4時。

 

「記憶の混濁がある、か...」

 

思い出せない。いつ倒れた。

頭に何かがある以上、頭部強打で失神したのだろう。脳に影響が無ければいいのだが...

 

そんなことを考えてると未明だというのに医者がやってきて、軽い検査をすることになった。

 

...結論から言うと、壁に頭部を強打して、頭蓋骨にひびが入ったということだった。そのせいで脳に強い衝撃がかかり、意識不明になったという。

 

その期間、なんと一月。

 

つまり、今はもう11月中旬ということだ。

 

「で、つまるところ退院はいつです?」

「早くて一週間後でしょう。ですが、12月に入るか入らないかが堅いでしょう。」

「そうですか...わかりました。」

 

12月...そうか、12月か...もう3ヶ月も夏凜の姿を見てないことになるのか...

 

「会いたいな...夏凜...」

 

太陽が昇る午前7時であった。

 

 




次回、第42話「贖いと償いと」

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