緋月昇は記録者である   作:Feldelt

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第44話 失われた■■を求めて

四六時中感じる頭痛をこらえ、夏凜の家に家具類を戻し、何の因果か勇者部に戻って早々に幼稚園で劇をやることになってるから緋月は大道具頼むわよ。なんてことを先輩に言われた。

 

いや、それはいいんだよ。

 

「で、どうして劇当日の早朝にここに連れてきたんですか、園子様。」

 

破壊され、反り返っている大橋が青空に映える。ここはかつての勇者達の墓場だ。

 

「ミノさんに会いに来たんよ。のぼるんは私がミノさんとのおしゃべりに夢中になって、劇の事を忘れないようにする係〜。」

「タイムキーパーですか...」

「あ、あとはいこれ。」

 

園子様はおもむろに鞄の中から焼きそばのパックを割りばしと共に取出して渡してきた。

 

「焼きそば、ですか。」

「うんうん、食べてみて。」

 

鞄を見ると自分用と供える用だろうか。まだ焼きそばのパックがあることが見て取れた。

 

「ではいただきます。」

 

はむ。

 

「美味しいですね。すぐ平らげられそうです。これ、園子様が作ったんですか?」

「のぼるん、敬語禁止。」

「っ...園子が作ったのか、これ。」

「そうなんよ〜。のぼるんに毒味と味見をしてもらったし〜、はい、ミノさん。ミノさんの焼きそばを思い出して作ってみたんだ〜」

 

毒味って...ここで倒れたフリすればどんな反応するだろうかなんてこと考えてしまうでしょう...素なのか狙ってるのかわからないから下手なことはできないし...

 

「あれ?」

「ん、どうした園子。」

 

供える用と自分用の焼きそばが鞄から取り出されているのに、まだ鞄には1パック焼きそばが残っている。予想より多く作ってしまったのだろうか。

 

「私、どうして4つ作ったんだろう...」

 

だがそうではなかったようだ。

 

じゃあ何故なんだと考える俺と園子の沈黙を風の音、鳥の声が埋める。

 

「あ...」

 

力ない声と共に立ち上がる園子。

その横顔に、涙が走る。

 

「園子...?」

「なん、で...私...」

 

ふらふらと、膝から崩れ落ちる園子をなんとか支えることができたのは我ながら驚いたが、何故園子はいきなり涙を...?

 

「私、わっしーのこと、忘れてたなんて...!」

「え......!?」

 

脳裏から映像が流れてくる。

堪えきれないほど頭が痛い数瞬の間に見える黒髪の少女と過ごした勇者部の日々...

 

「これは...!?東郷、美森...!?」

 

痛い。痛い。

これが頭をぶつけた後遺症なのかどうかはわからん。が、立っていられないくらいには頭が痛い。欠けていた、埋もれていた記憶が脳の奥底から這い上がって来るような感覚。

 

「ぐぅ...園子様...ひとまず大赦に行って何事か問いたださないと...」

「のぼるん...」

「涙を拭けとは、言いませんけど...本庁行くなら、目腫らしていくのはいかがなものですかね...痛...」

 

ふらふらと立ち上がる。

が、立ち上がるだけでやっと。物理的頭痛と精神的ショックのせいで電話かけようと思ったがそれどころではない。

 

「まぁいい...よくはないけど...いやでもだとしても......くそ、思考回路がお陀仏だ...」

 

だが待て。俺達は今までの東郷美森に関する記憶は全部消えている。それは勇者部の皆も同じ。つまり、東郷とずっと一緒の友奈がそれに気づいたとしたら...それは想像に難くない。

 

「もしもし春信さん!?」

 

今度は電話出来た。血相抱えた声音が出たのは失態だがこの場合はそれを逆手に取るしかない。

 

「どうしましたか、緋月君。」

「すいませんが英霊碑の辺りまで車をまわしてくれませんか!?緊急で...」

「ですが、何があったんですか。」

「っ...」

 

どう説明すればいい。勇者部全員が仲間の記憶をなくしていてそれを大至急教えないといけないなんて話を果たして春信さんは信じてくれるのか。否だろう。

 

「のぼるん貸して!」

「えっ...」

 

その時にはもう園子様が俺の手から携帯を取り、ものの数秒で話をつけて携帯を返してくれた。

 

「できるだけ急ごう、のぼるん。」

「ですね...劇の時間、間に合うといいんですけど...というかもう間に合わないんじゃ...」

 

だがそんな心配はいらないことはわかってる。勇者部は7人だが、そのうち4人でも十分回る。

 

だが心はどうか。その心配が緋月昇の心と頭をキリキリと鋭く痛ませていた。

 

 

───────

 

 

園子様が呼びつけた車を降りた後の園子様の行動は早かった。普段は見せない本気の園子様は全速力で幼稚園の方へ駆けていく。

 

俺はというとまず忘れ物がないか確認し、運転手さんにお礼を言ってから追いかけたものだから園子様が幼稚園に到着するよりは遅れて到着するわけでありまして。しかも頭痛の都合上、激しい運動は宜しくないことも重なり、幼稚園に着いた頃には視界が朦朧とするほど痛む頭痛と息切れが同時に襲ってきた、と。流石に膝をつかずにはいられなかった。

 

次に視界に捉えたのは心配そうにこちらに駆け寄る樹、夏凜と友奈を抱き締める園子様だ。

 

「悪い、流石に無茶が祟った...」

 

ふらり、意識が飛ぶような感覚があった。

 

 

───────

 

 

次に目が覚めたのは病院だった。

医者曰く、しばらくは激しい運動は禁止だそうだ。だろうなと思いつつ一日は検査入院らしい。鎮痛剤でなんとかなるものでもないだろうしな...なっても一時だけだろうし、そもそも論として頭蓋骨のヒビがまだ完全には治ってないのが原因だもんなぁ...やれやれ。

 

「事の顛末は後で夏凜に聞こう...」

 

天井を眺めるか寝る以外に俺に選択肢はない為、俺はぐっすりと眠ることを選択した。

 

 

 




次回、第45話「ファインディングミモ」
東郷さんに怒られますね。というかこれどこかで見たなぁ、考えることは同じでしょうけど...

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