緋月昇は記録者である   作:Feldelt

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第46話 それは鉛より重く

東郷の救出は勇者部にとって喜ばしい出来事だった。では大赦にとってはどうか。今大赦は書史部だけでなく呪術部やら技術部やら全部署がてんやわんやだ。揉め事が起こる寸前かもしれない。

 

あぁ、今のうちに言うが別に東郷を助けたことそのもので騒動が起きているわけじゃない。

東郷を助けたこと、人命を救助したことは素晴らしいことだ。だがしかし、そのせいであるひとつの弊害が起きた。それが今、大赦を大騒ぎさせてる要因だ。

 

特に呪術部が大忙しらしい。霊札の補給がままならない。そもそも霊札は神樹様の霊力を札に込めるものなのだが。霊札を込めることが出来る呪術部の人間が忙しいというのがひとつ。大元の神樹様の霊力が少なくなってるというのがひとつだ。

 

状況は切迫している...らしいのだが。

今一つの実感がない。というのも東郷救出以降、書史部以外の部署の様子がわからないのだ。

つまり情報を共有することが出来ない。

裏を返せば情報共有をしてはいけないということでもある。どのみち俺は仕事。結城友奈の記録者であるのが今日からの緋月昇だ。

 

「おかしいところは無いんだけどなぁ...」

 

とはいえ一朝一夕でわかるかといえばノーだろう。友奈の性格を考えれば今日明日にでも相談しそうなものだ。それを待てばいい。

 

「...帰るか。」

 

 

───────

 

 

翌日の放課後、友奈は想定通りの行動に出た。いや、厳密には出ようとした。

 

「あのね、......問題です!キリギリスがアリの借金を肩代わりしたらどうなるでしょうか!」

 

支離滅裂な問いだ。

おかしい。まずもって問題になってない。

ついでにいえば問題を言う前の間。

躊躇うような表情。

 

だがそこには心配させまいとする偽装が施されていて、勇者部の異変に最も敏感であろう東郷を欺くことができている。

 

それは大親友でだからこそなせる技なのかもしれない。故に、目で見て耳で聞き記録する記録者たる俺は欺けない。

 

ここで俺の選択肢は2つ。何があったと問い詰めるか、何も聞かず目を瞑るか。前者は勇者部全員を困惑させ、後者は俺だけがそれを知る。仕事との両立を考えれば後者一択だ。

 

まぁいい。これは家でまとめよう。

 

 

───────

 

 

夏凜と共に帰宅。冬は寒い。

だから帰宅時間の30分前にエアコンのタイマーを合わせて部屋を温めておくのだが。

 

「ただいまー...って寒いじゃない!昇!タイマーかけ忘れたんじゃないでしょうね!」

「今日は夏凜がセットしてただろ、ボタン押すだけなんだし...うわほんとだ寒っ...」

 

どういうわけだかエアコンが動いてない。確認すると壊れてた。これはショックが大きい。

 

「業者呼ぶにも時間が時間だからな...少なくとも今日明日はエアコン効かないだろ。」

「はぁ、参ったわね...」

「布団もキンキンに冷えてやがる...やれやれ、湯たんぽは流石にないぞ...てことはとる手段は1つだな。」

「嫌な予感がするわ...話さなくていいからまず夜ご飯にしましょ。」

「作るの俺だけど...そうだな。」

 

え、冷えてた布団で夜も寒いのにどうしたかって?決まってるだろ、夏凜と2人でひとつの布団に潜った。以上。

 

「離れろ!」

「寒いだろ!風邪ひくだろ!」

 

まぁ、こんな言い争いはしたけれども。

 

 




次回、第47話「焔」

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