「………い、……―い」
誰かの声のようなものが聞こえる。何を言っているのか聞き取ろうとするが頭の中に靄がかかるように意識がはっきりとしない。体の方も妙な倦怠感がある。何があった?俺は自分が何故横になっているのか思い出そうとする。確か霧の中に入って、それから…
「…ッ」
意識を失う前の事を思い出し目を見開く。そして、目にしたのは視界一杯に広がる赤色だった。赤色?
その視界一杯に広がる赤色を疑問に思っていると急に間近から声が掛かった。
「あ、起きたかい?」
「…は?」
声が聞こえたと思えば赤色が急に遠ざかりだし、その正体を把握できるようになった。…なったが…何故にリンゴ?声の正体は頭の部分がリンゴの男だった。いや、ホントになんでリンゴ?リンゴ頭の男はこちらが戸惑っていることなどお構いなしに話し出す。
「体のほうは何ともないかい?」
「いや、少し怠いくらいですけど…」
「あー、それは仕方ないとして、他には?」
「いえ、特には」
リンゴ頭の男は俺の体の調子を聞いてきた。悪い人じゃないのか?いや、でも、リンゴ頭だしなー
「じゃ、ついてきてね~!」
「はい?」
「ノイマンが話があるんだってさ!君の事について」
そう言ってリンゴ頭の男は部屋の扉の方に歩き出した。それを追うように俺も自分の寝かされていたベッドから起き上がり、歩き出す。ノイマン?確か端末からの声の主を灰都がそう呼んでた気が…それにこのリンゴ頭の男、頭が印象的すぎて最初は気づかなかったが花弁が舞っている。つまりこの男も
「なぁ、あんたも廻り者なのか?」
「そうだよー、というか此処にいるのはみんな廻り者さ!」
俺の質問に対しリンゴ頭の男は陽気にそう答えた。ノイマンは人類に害のある者は排すると言っていた。つまり、これから此処で会うのは全員偉人の才能を引き出した廻り者。今、俺の前を歩くこのリンゴ頭もその一人…。リンゴで真っ先に思いつくのは有名なニュートンの万有引力。いやいや、そんな単純なわけが…
「あんたの引き出した才能ってニュートンのものなのか?…」
「お、よくわかったねー!」
「そりゃぁ、まぁ……」
当たっちゃったよ!見たまんまかよ!大丈夫なのか?此処…。
「さぁ、ついたよ!」
俺が此処の奴らに対して少しの不安を抱いている間にどうやら目的地にたどり着いたようで
「ようこそ!偉人の杜へ」
リンゴ頭の男の言葉と共に開く扉。その先には数え切れないほどのモニターに埋め尽くされた部屋があり、その部屋には数人の男女がいた。車椅子に乗る角の生えた少女、こちらを睨んでくる少女、短髪で軍服を着ている男、その中には灰都もいる。が、一名だけ、リンゴ頭の男並みに理解不能なのがいた。猫の頭?リンゴの次は猫?意味が分からないよ……。
「顔を合わせるのは初めてだな、私がノイマンだ」
そう、車椅子に乗っている右側頭部から角が生えている少女が端末から聞こえていた声と同じ声で言ってきた。ノイマン、ちっさいな。
「ふん!」
「痛ッ」
何故かノイマンに車椅子で足を轢かれた。解せぬ…。
「ノイマンにちっちゃいとか可愛いは禁句だぞ」
俺が何か気に障るような事をしたのかと、そう思っていると、灰都が足を轢かれた理由を教えてくれた。あれ?でも俺口に出してないよね?エスパーなの?
「まぁ、まずは今いる皆を紹介しとくわ」
そういい灰都は一人一人を紹介していく。
「まずはニュートン」
「新メンバー歓迎!!」
俺を連れてきてくれたリンゴ頭が手を広げながらそう言う。ずっとテンション高いなこの人。
「次にアインシュタイン」
「私は男を増やすなんて反対よ!しかも、グールみたいな目してるし!」
「もう、アインはツンデレだな~「うっさいリンゴ頭ッ!」スリムレッドッ!!(リンゴの品種)」
俺がこの部屋に入ってきてからずっと睨んで来ていた少女が俺に対し否定的な態度をとる。その態度にニュートンが茶々を入れ即座にその少女に殴り飛ばされた。奇声を発しながら…。
「で、船坂弘」
「よろしくであります!」
短髪の男が敬礼しながらそう言う。この人はなんかいい人そう。
「最後にシュレーディンガー」
「よろしく」
そして俺が気になっていた猫頭の男が礼をする。というか、シュレーディンガーだったのか……。でも頭が猫の必要無くね?ニュートンもだけど……。
「これで今いるメンバーの紹介が終わったな……本題はここからだ」
「本題?」
「ああ、君にはこれから私の話を聞いて選択してもらう」
「選択…」
「枝を使わずに日常に戻るか……我々の仲間になるか」
そうノイマンは俺に言った。選択…輪廻の枝を使わずに普通に暮らすかこいつ等の仲間になるか……。
「まずは、我々、偉人の杜の活動理念から話そう、我々の活動理念は輪廻を遡って得た才能は天恵と思いおごらず…人類貢献のために活用せよ、だ」
「人類貢献……」
「ああ…大きな才能を持つということはそれだけ大きな災害も起こせるということだ…だから我々は悪しき廻り者を一掃する……それが何より優先すべき人類貢献」
「……悪しき廻り者の一掃」
「それで、比企谷八幡……君はどうする?日常に戻るか、我々と来るか」
「俺は……」
ノイマンからの話を聞いて俺は戸惑った。俺が思っているよりも大きな目標を持ってこいつらは動いている。今まで戦いなんかとは無縁の人生を送ってきた俺には到底想像もつかない事をこいつらは成し遂げようとしている。それに対し俺はどうだろうか?輪廻の枝を使った時にしたって他に方法がなかったから使ったにすぎない。そんな俺がこいつらの仲間に加わる資格があるのか?
「八幡はさ、どうしたいんだ」
灰都の声が聞こえ思考の渦から戻ってくる。そして、彼女の方を見れば灰都は
笑っていた。
「そんな、難しい顔して考えこまなくてもさ……自分の思うように生きてみたら」
ああ……そうか、資格とかそんなのは後からどうにかしていけばいい。今は…
「決まったか?」
「ああ、
俺を偉人の杜に加えてくれ」
灰都達《こいつら》といるのも悪くないんじゃないか。そう思う自分に従ってみようと思う。
何故、最初に紹介するのがこのメンバーかと言うと私が好きだからです!