「そう言えば八幡の引き出した才能って結局誰の才能なわけ?」
俺が偉人の杜に加わるという話が終わった途端に灰都が才能について尋ねてきた。そういえば、まだ言ってなかったな…。
「それは「那須与一」…は?」
「違うのか?」
「いや、違わないが……」
俺が答えるよりも先にノイマンが答えた。しかも、ドヤ顔で…。それよりも何で分かったんだ?俺はヒントになるような事も言ってないはずだが…。
「不思議な事でもないだろう?君の出した弓は和弓だ」
「そうだな」
「そして、その和弓の素材から年代は大体分かる……何より、あの速度の中で寸分違わずメスを弾き飛ばす命中率、那須与一は楯の後ろに隠れた者の首も一発で射抜いたという、それだけあれば、ほとんど分かったようなものだろう?」
「すげぇな…」
「この程度、造作もない」
ノイマンはどうやら俺が和弓を出した時点で大方の予想をつけていたようだ。まぁ、その与一の才能がどれ程のものかまでは分かってないだろうが。
「じゃあさ、与一の才能ってのはどんな事ができんの?」
「まぁ、実際に見せた方が早いだろう……ノイマン、どっか広い場所とかないか?」
灰都が俺の引き出した才能がどこまでの事が出来るのか気になっているようなので実際に見てもらおうと思いノイマンに丁度良い場所が無いか尋ねてみたが
「ふむ、それは私も気になるが今日はもう暗い、明日にした方がいいだろう」
「暗い?」
ノイマンの言葉を聞いて思い出した。あの霧に入った時点で既に日は沈んでいた。それから、気を失ったりしてかなりの時間がたったはずだ。なら、今の時間は?
「なぁ、今って何時?」
「夜の10時だな」
マジで?家には何の連絡もしてないし、いくら家が放任主義でもまずいような……。
「…この場所から俺が灰都とあった公園までどれくらいかかる?」
「およそ4時間だな、公共の乗り物では」
4時間?俺の意識がない間も考えると今、俺が此処にいるのはおかしくないか?俺が霧に入ったのが7時30分くらいだぞ?だとするなら、何か別の移動手段があるはず…。
「なぁ、公共の乗り物でそれだけかかるのなら、他の手段で俺は此処に連れてこられたってことだよな?」
「そうだ、アインシュタインの『空間転移』で連れて来た」
「聞く感じテレポートみたいなもんか?」
「概ねそうだ」
テレポートみたいなもんね…。ホントに何でもありだな、廻り者。けど、これなら、すぐに家につく。俺は取り合えず家の近くに送ってもらおうとアインシュタインに頼んでみることにした。
「えっと、できれば千葉の総武中学の近くに送ってくれないか?」
「はぁ⁈なんで私がそんな事しなきゃいけないのよ!」
「えー…何でって言われても……」
「お、八幡帰んの?」
アインシュタインはとことん俺のことを嫌っているようだ。ニュートンとコント染みた事をしながらも俺の事を睨んで来てるし…。それに、灰都は呑気だし…。戦闘時と変わりすぎじゃない?
「大体、私はまだ認めてないから!」
「まぁまぁ、送ってあげなよ~アイン」
嫌がるアインシュタインを灰都が説得してくれている。灰都よ、もっと頑張ってくれ、俺の代わりに。灰都がアインシュタインを説得してくれている間に俺はノイマンに今後の事を聞いておくことにした。
「ノイマン」
「なんだ?」
「此処に来るのに4時間もかかるなら、これから俺はどうすればいい?…親を説得して俺だけこの近くないし、此処に住ませてもらうってのがいいんだろうが…」
「そうだな…アインをいつも迎えにいかすのも無理があるだろうし、此処に住むのがいいだろうな」
「そうか…」
俺はこいつらの一員になることを選択した。なら、最低限すぐ合流できるようにしたほうがいいだろう。問題は親父達が了承してくれるかだが。そこは、俺がなんとかするしかないだろう…。学校も転校という形になるだろうな…。
「この近くに俺の通える学校はあるか?」
「ああ、灰都の通っている学校がある」
転校先の問題は無しっと…。
「ノイマン、頼みたい事がある」
「なんだ?」
「親を説得する際に此処に電話するから、その時に船坂さんに協力を頼みたい」
「なるほど、なら船坂には私が伝えよう、それと、電話に関してはこれを使え」
ノイマンはそう言うと俺に灰都が持っていた端末と同じような物を俺に渡してきた。これで親の説得が少しは楽になるはず…。え?なんで、船坂さんに協力を頼むのかって?そりゃぁ、親を説得するにあたって受け入れ先の人がちゃんとした大人じゃないといくら俺の親といっても納得しないかもしれないだろ?ノイマンは少女だし、ニュートンは軽そうだし、シュレーディンガーは猫だし…。ほら、ちゃんとした大人が船坂さんしかいないだろ?いや、もしかしたら此処にいないだけかもしれないが…。そうだよな、今いないだけでちゃんとした大人の人だってもっといるに決まってるよな。
「八幡、アインが送ってってくれるってさ!」
「別にアンタのためじゃないから!」
俺がノイマンと話しているうちにアインシュタインの説得は終わったようだ。今だ、アインシュタインはこちらを睨んできているが一先ず家の近くまで運んでくれるみたいだ。というかアインシュタインは俺の事を警戒しすぎじゃないだろうか?この目か?この目がいけないのか?そりゃあ、こんな腐った目をした奴が突然仲間になりますってなっても納得できないだろうが…。アインシュタインが俺を警戒してるのは、どうも、それだけじゃない気がする。なんというか俺に対してというより男に対して少し怯えているような…。と、俺がそんな事を考えていると灰都が話しかけてきた。
「八幡はさ、これからあたしらの仲間になるんだろ?」
「そうだな」
「じゃあさ、これからよろしく!」
灰都はそう言いながら無邪気な笑顔でこちらに手を差し出した。その手を俺は━━
「ああ…、こちらこそよろしく」
━掴んだ
そして、俺と灰都がそんなやり取りをしているとアインシュタインが近づいてきて
「さっさと、行くわよ!」
「は?」
と言われ俺が困惑している内に視界に映っている世界が一変した。その間際に灰都に掛けられたある言葉に対して嬉しいと思った自分に正直自分でも驚いている。
『またな、八幡』
またな、か…。
「なにその顔…。きもいわよ?」
アインシュタインが引き気味に俺にそう言ってきた。言われて顔に手を当ててみれば僅かに口角が上がっていた。どうやら知らず知らずの内に笑っていたようだ。そして、案の定アインシュタインに気味悪がられた…。
「じゃあ、私は帰るから、……私はアンタが入る事認めてないから」
そんな言葉を残しアインシュタインは一瞬にして姿を消した。一人になった俺は取り合えず辺りを見回してみた。もう時間が時間のためか明かりが無く確認しづらいが其処は俺が最初に頼んだ通りの場所で総武校の正面入り口の前だった。本当に一瞬で移動した事に少しテンションが上がったがそれもすぐに落ち着き今度は少しの寂しさが胸に込み上げてきた。親の説得が成功すれば俺が此処に来る事はもうなくなる…。此処ではいろんなことがあった。二年になってから奉仕部に入れられ、そこでいくつかの依頼を受けていく中で俺は初めて他人との間にできた繋がりに期待していた。けれども、修学旅行で俺の取った行動でそれも失われた。壊れた物はもう戻らない。確かにまた一から関係を始める事も可能かもしれない。それでも、それは以前のものとまったく同じという事にはならないだろう。きっと修学旅行での事がいつまでも頭に残り、お互いが遠慮しあい深く踏み込む事も出来なくなる。俺はそんな関係は求めて無い。それに、今の俺にあいつらに正面から向き合うだけの勇気は無い。
だから、俺は灰都達と共に歩む事を決めた。根拠は無いがあいつらといれば奉仕部の二人と向き合う勇気が手に入る気がした。そして、向き合うだけの勇気を持てたらけじめをつけよう。それが、どんな結果になろうとも。
俺はそこまで考え、総武中学を後にした。
家についた俺は両親と話をした。話をする前にこんな時間までどこにいたなどを聞かれたが、どうやらかなり心配されていたようだ、後少しで警察に電話しようというところまできていた。そして、そのあとすぐに本題に入ったが転校の事に関しては俺の今の学校での評判ややってきた事を話したら意外とすんなり了承してくれた。住むところに関しても船坂さんの協力があり許可してもらえた。残る問題は━
「小町…話があるんだが、聞いてくれないか?」
━そう、妹の小町だ。
俺は小町の部屋の前で声を掛けたが返事は返ってこない。もしかしたら、もう寝ているのかもしれない。なので、明日にしようかと踵を返した時、ドアの開く音が聞こえた。
「……話して」
「…ありがとう」
小町が部屋から顔を出したが涙の跡が顔にあった。もしかしたら、今日、俺に言った事で本当に俺が帰ってこないんじゃないかと思ってしまったのかもしれない。俺は小町の部屋に招き入れられお互いに手近なところに座った後。俺は修学旅行であった事を全部話した。修学旅行の事を話していく内に次第に小町の顔が悲しみに歪んでいく。ああ、妹にこんな顔させてちゃ俺は千葉の兄貴失格だな…。俺の話をすべて聞いた小町が悲しみの表情のまま俺に話し出す。
「…お兄ちゃん、小町は妹だからこんな人だからなぁって理解できるけど、他の人はそうはいかないんだよ……」
「ああ…」
「…奉仕部の二人の事はどうするの?」
「それについて話がある…」
そうして、俺はこの家を出る事や転校の事、詳細は省いたが灰都との出会いなどを話した。
「俺はあいつらといれば、奉仕部の二人と向き合う勇気を手に入れれると思うんだ…、だから、俺の覚悟が決まるまで待っててくれないか?」
「…そっか、もう決めちゃったんだね…」
「ああ、きっと小町には寂しい思いをさせる事になる。それでも、お前には此処で待っててほしい…」
「お兄ちゃんこそ大丈夫なの、小町がいないと寂しさで泣いちゃうんじゃないの?」
小町は悪戯っぽく笑ってそう言ってきた。なので、俺も笑いながら
「そうだな、小町がいないと寂しさで死ぬかもな」
「なにそれ~、お兄ちゃんは相変わらずシスコンだな~、でも…ポイント超高いよ!」
「だろ?」
「「ップ、ハハハッ」」
その日、俺たち比企谷兄妹は久しぶりに笑いあった。
今回はなんか無理やり感が強くなった気がします。なので、もっといい案が浮かべば書き直すかもしれません。
あと、リィンカーネーションの花弁の舞台が分からなかったので千葉から掛かる時間は適当です。
これからも、よければ読んでいただければ嬉しいです。