グランドヒーローズ   作:四季永

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 力を求めた何物でもない、一人の少年が、どこかの闇へと放り込まれる。やがて彼に手を差し伸べ、戦いへといざなう一人の男が現れた。世界の破壊者と自負する男、彼の来訪と共に物語は始まる。


再醒

 殺風景を通り越して、極めて無機質な部屋に、一人の少年の身体が放り込まれる。

「そんな雑な扱いでいいのか? 一応拒否反応は通過したんだろ」

「ありゃあ精神で無理に抑えつけてるだけだ、いずれ暴走して勝手に死ぬ。所詮今までの実験体と同じさ、スペアはまだ余裕はあるし問題無いだろう」 

 

 足音は遠ざかっていき、部屋の明かりは消える。

 

*

 

 力を欲した理由、そんなのは単純だ。オレ自身と家族を守る為だ。

 物心ついた時から、オレは多くの人から、温かい目というものを向けられた憶えが無い。

 町中を歩けば陰口を叩かれるのは日常的、石を投げられる事も珍しくなかった。

「悪人の血筋」? そんなの知った事か。

 オレは抗った。殴られれば殴り返し、罵倒されれば罵り返した。

 

 学校教育っつーモンは不思議だ。明らかにケンカが日常茶飯事な問題児を忌み嫌うクセに、勉強をして成績が良ければ一応人として認めやがる。とりあえずそれで真っ当と言われてる高校には進学出来たが、クソったれな日々は相変わらずだ。表立った嫌がらせは減っていったが・・・それでも冷ややかな視線や言葉はいつも通りだった。例外、は・・・・無くは無かったが、今考えれば人助けとやらをしたところで好転する状況は無かったし、助け損、だったんだろう。

 

 オレがその「連中」を見たのは、なんて事の無い日の夕方だった。ケンカを吹っかけてきたクソ野郎どもをぶちのめし、そこを見られ・・・まあいつもだったら避けてくんだが、そいつは違った。

 

 そいつは笑みを浮かべていたのだ。今までオレを見る赤の他人は、恐れや軽蔑といった、嫌悪の表情を向けていた。だがそいつの眼差しは、オレを肯定する、親が子に向けるぐらいの温かさに満ちていた。そして穏やかな声でオレに聞いた。

 

「誰よりも強くなりたくないか。今の無力な子供から、大切な者達を一人で守れる位に」

 

*

 

「本当に何も無ぇんだな・・・」

 暗闇の中でただ一人。だが少年にとっては、人混みの中の孤独よりは居心地が良い。

「知らない人に付いて行くな、か。・・・天罰か? こいつは」

 自分を嘲る笑みが浮かぶ。こんな場所に放り込まれたという事は、自分は「人」では無く既に「モノ」扱いなのだろう。あの言葉を真に受けてからの記憶は曖昧だが、形容しがたい苦痛があった事は、身体が覚えている。

 

 

 

「生きているか? そうでいないとこちらは非常に困る訳だが・・」

 

 

「随分乱暴な開け方だな。誰だアンタ」

 

 眩しくて痛い位に、唐突に視界に光が入り込む。

「尖った返答が出来る元気はあるみたいだな、悪くない。その様子だとまだ処置の段階か、早速だがここを出るぞ」

 

「・・・は?」

 ドアを破壊し、入ってきた男の口調はどこかふてぶてしい。

「何だ、このまま実験体とやらのその他大勢の一人として使い潰されて死ぬのがお望みか? だとしたら随分な変わり者だな」

「んな訳ねぇだろ、そうじゃなくて! まずアンタ誰だ!? 何でこんな所まで潜り込めんだ、何の為にオレを」

「門矢士。通りすがりの世界の破壊者だ。・・名乗ったぞ、死にたくなければついて来い、こっちもそうでないと困るしな」

 

「・・・帝宮意沙、だ。何だかわからねえがここよりはマシなんだろ」

 

*

 

 同じ頃、この「施設」のある場所で二人の男が構成員と対峙していた。

 

「何だかすんなり入れて拍子抜け・・・! にしてもこの、何というか」

「言いたい事は解る。敵の姿に統一感が無い」

「そう! まるで色んな所から寄せ集めてきたみたいだ」

 構成員達は各々の武器を構え、狙いを定める。

「戦わなきゃいけないのは、確かみたいだけど・・! チェンジ全開!」

「進むためにはな・・・変身!」

 二人の男はそれぞれ、白き仮面の戦士と、深緑の仮面の戦士へと姿を変える。

「秘密のパワー! ゼンカイザー!!」

「名乗ってる余裕はないぞ!」

「礼儀だよ礼儀っ! っていうか仮面ライダーはどうなのさ、ZОさん」

 二人の戦士は雑談は余所に、戦いに赴く。

 白の戦士ゼンカイザーの戦闘スタイルは、専用武器ギアトリンガーによる銃撃戦と格闘戦によるシンプルな物だが、その動きはどこかコミカルでトリッキーだ。故に型にはまった敵の攻撃は通用しない。

「俺には必要の無い事だ、名乗りなど」

 深緑の戦士仮面ライダーZОも、その戦い方は肉弾戦だけである。だがその動きは洗練されており、烏合の衆ではその動きは捉えられない。

「士は上手くいってるかな!? 言い方悪いけど俺たちオトリな訳でしょ?」

「彼を信頼するしかないだろうな・・・ここに集まっているのはそういう者達だ」

「言えてる!」

 

*

 

「随分危なっかしい道のりだな、暗かったり狭かったり」

「抜け道ってのはそういうもんだ」

 爆音や揺れが、上の階から伝わってくる。意沙があの部屋から抜け出した事で、慌ただしい事態になっているのは確かなようだ。

「割と動けてるようだが、身体は大丈夫か? とても実験を受けた後とは思えんが」

「さっきまでは体が重かっただけだ。何でんな事聞くんだよ」

「・・・何も聞かされていないみたいだな」

 士の吐いた溜息の大きさと呆れたような表情は、今起きている状況の大きさを逆説的に物語っていた。

「だいたいわかった。どうやらお前は、成功体として良い線はいったみたいだな」

「・・さっきから何納得してんだよ、オレが何だってんだ? 成功体とかモノみたいに」

「事実ここはそういう所だしな。お前の為にもハッキリ言っておこーか、お前は超常兵器『霊石アマダム』の実験台にされた。そして運良くそれに適合したって事だ」

 

 実験台。

 

「何だよそれ、オレは強くなれるって」

「言い包められたか、不審者に付いてもロクな事は無いな。まあ強くなれるのは嘘では無い、人間の心ってヤツをかなぐり捨てれば、の話だが」

 思い返せば自覚はあったのだ。人の話を鵜吞みにして、簡単に手に入るほど「強さ」というのは単純な概念じゃない。事実を指摘されて逆切れするようではまだ子供なのだ。

「まあ頭は冷やせ。言い返せないのは現実を受け止めてるって事だ、恥じる部分じゃない」

「・・蒸し返してすまねえ。でも強くなれるのが嘘じゃないって」

 

 その会話を遮るが如く、爆発が起こり、壁が吹き飛ぶ。

 

「いけない事をするねぇ、士。若きホープの人さらいだなんて」

「相も変わらずいけ好かない口だな。今度はどこにゴマを擂ってる?」

「狭い通路じゃあ積もる話も不便だ、そこじゃあメリットも無いし表に出てきなよ」

 

 

「嫌な話は先にしたいから言っておくか。こいつは仮面ライダーディエンド、銃と召喚魔法が得意技のセコいコソ泥だ。余談だが海東大樹という奴が変身する」

 二人は両手を上げた体制で表廊下へと表す。二人共その表情は恥をかいた、という感覚は一致しているようで悔しげな様子は共通している。

「相変わらずの軽蔑具合だね。親切心で言ってあげるが、ここに居合わせたのが僕で君達は幸いしたんだよ?」

「・・なあ士、コイツのいちいち舐めきった喋りはなんだよ。ムカつくんだが」

「同感だが少し付き合ってやれ。・・・俺の見解ならお前の事だ、この施設のセキュリティとやらを『盗んで』、物は試しとばかりに好き放題やってるんだろう。動機は判らん、判りたくもないがな」

「75%ってところだね。技術一辺倒じゃあない、管理人様にも取り入り済みさ。ここはお宝を埋め込まれた実験台の宝庫、違法という美辞麗句でただ潰してしまうのは勿体ない」

 

「ぐあっ・・!」

「力の差を弁えなよ、飛び掛かる気持ちも分かるが君はまだその霊石に認められた訳じゃない。根っこはお子様である事を自覚するんだね」

 肩を撃たれ、地にひれ伏す。怒りに任せた行動も、それで一矢報いる事すら許されない。

「さて士。君は腐れ縁のよしみで見逃してやっても良いんだが」

「俺がお前なんぞの言葉に耳を貸すと思ったのか?」

「だろうね。でもお灸ぐらいは据えてあげよう、不幸な子供を助けるのは徒労だって事を」

 

『KAⅯENRIDEーОujaー』 

『KAⅯENRIDEーGillsー』

 

 カードを銃へ装填し、そして放たれる弾丸の代わりの様に、仮面の戦士が二人、姿を現す。

「状況としては逆に好都合かもな。・・帝宮意沙、チュートリアルだ。自分でこの場に来た事を後悔したくないのなら、俺を見て憶えろ」

 士もカードを取り出し、腰のベルトへとそれを装填する。

「変身!」

 

『KAⅯENRIDEーDecadeー』

 

「あんたも・・・仮面ライダーとやら、なのか」

 仮面ライダー。意沙も何度か、その存在がいる事を耳にした事はある。素性は仮面に隠れ不明、単身で人々に牙を剥く異形と戦う・・・英雄。

「そういう事だ。俺は通りすがりの仮面ライダー、ディケイド。そして可能性があれば、お前も」

「え・・?」

 

 戦闘が始まる。先行して仮面ライダーディケイドに襲い掛かる二人は、どこか動きがぎこちない。

「いい加減抜け殻に頼るのは止めたらどうだ? 経験者にはまるで無力だろ!」

「正攻法だけじゃあ理解出来ないだろう? 囮と時間稼ぎは」

「それをセコいって言うんだ!」

 ディケイドとしては速めにディエンドの間合いに入り、一撃では済まない反撃を食らわしたいところだが、如何せんディエンドの操る「抜け殻」が邪魔だ。戦闘センスとしては到底足下に及ばないが、ポテンシャルとしては雑魚と断ずる程の弱さではない。

(ここを乗っ取ってるのが確かなら、他の階の連中を呼び寄せる事も出来る。俺だけなら切り抜けられるが、問題は・・)

 

 見てるだけか。

 

 正しいかどうかなんて関係無い。

 

 オレをここから連れ出した、あいつが何を考えてるか解らない。

 

 だがオレは出たかった所から出れた、十分な恩がある。

 

「確か声がしたのはこっちのはずだ、急げ!」

「チッ、あいつは失敗作じゃなかったのか。早く確保するぞ!」

 怒号が背後から、複数の足音と共に、聞こえる。

「帝宮意沙! 強くなりたいんだろ、その為にここに来たんだろう!? だったら今はこれは危機ではない、機会だ! 本当に力が欲しいなら、恐れるな!!」

「説得する隙がある位余裕なのかい?」

「くっ・・!」

 

 そうだ、オレは何を躊躇ってた。ここに来た、その手に掴むチャンスを―――

 

 

 逃してたまるか。

 

 

「あの輝きは・・・!?」

「ふん、押さなきゃ決意できないようじゃまだまだだがな」

 

「見つけたぞ、例の実験体だ!」

「ベルトを装着している・・・成功したのか!?」

「だがあのガキだ、暴れられたら困る、殺せ! 肉体の情報だけあれば十分だ!」

 

 赤く輝く、炎に似た領域が、意沙の周囲に広がる。それはこの場になだれ込んできた構成員達の銃撃、その弾丸を全て焼き尽くした。

 

 彼は見得を切るかの様に構える。それは儀式にも似た行為だ。その動きは、まるで直接頭に命じられているような感覚で、躊躇いを感じない。

 そして、唱える。

 

 

 

「変身っ・・・!!」

 

 少年は、赤き仮面の戦士へと姿を変えた。

「どうやら一歩は進めたようだな」

「仮面ライダークウガ・・・禁忌だよその力は。捨てれば楽な人生が送れたものを」

 

 仮面ライダークウガ。それが今の、帝宮意沙の戦士としての名前。

「あんなガキが⁉ ここまで行ったのか⁉」

「むしろ好都合だ! こいつを殺して身体を回収すれば、霊石の解明が捗る!」

 

 複数の銃口が、向けられる。オレを殺す気なんだろう。いつもそうだ、オレに向けられる外の世界は。

 だけど、昔と変わらない。そっちがそう来るなら、やり返すまでだ。

 

 戦い、言い換えれば、殺し合いが始まる。普通の人間であれば易々と貫通したであろう銃弾は、鎧が弾き返す。

 振るった拳は覆っている防護服ごと、敵の身体を叩き潰す。当たり前だがその砕けた身体からは血が噴き出す。

「ケンカ慣れはしてるようだけど、あれは戦い慣れはしてないね」

「お前に同意するのは嫌な気分だが、それはそうだな。加えてあいつは・・・衝動で倫理観を押し潰そうとしている」

 

 クウガの耳に、僅かながら声が聞こえる。悲鳴、命乞い、断末魔。だがそれは、主観的な怒りに身を任せた少年の耳に、頭に、心に、届くものでは無かった。

 

 

 

「・・・・・—————っ」

「随分と派手にやったな。流石に殺しは初めてだったか」

 共感の余地も無い連中なのに、何で吐いちまうんだ。今まで殴って追い返したクソ野郎共とのそれは、ただのケンカでしかなかったんだ。

 

 血だまりの中に蹲る意沙は、一線を越えた存在になった事を、確信した。

「ガキだから感傷にも浸りたい気分だろうが・・今の現実はそうはいかない。コソ泥はいつの間にか消えたようだし脱出を急ぐぞ。立てるか。ていうか立て」

「・・・分かってる」

 

 

 少年は願っていた力を手にした。だがそれは啓示によってもたらされたモノではなく、祝福によって迎えられた瞬間ではない。

 それは炎と、血と、骸に囲まれた、呪いにも似た光景での再誕だった。

 だが少年は、拒むつもりは無い。どんな血塗られた瞬間でも、おぞましい力でも、これがヒトを超えた力であるからだ。

 

 変えてやる。

 オレが歩んできた世界を。

 熱にも似た輝きを目に取り戻しながら、少年は歩き始めた。

 

グランドヒーローズ

第1話

『再醒』

 

「数的にちょっとキツイと思ったけど・・・何とかなったね」

 ゼンカイザーとZОは襲い来る構成員を蹴散らしつつ、広い部屋へと歩を進めていた。

「これで全て倒したとは到底思えないが・・」

「とりあえず士と合流する? 地下が重要拠点だって言ってたけど・・・」

 

 

 

「Hey! おたくらが噂の囮ヒーローってヤツ? なるほどどーせ悪役なんだからテキトーな事言ってると思ったらガチだったかぁ! あぁシカトしないで! 俺ちゃんうるさいのは自慢だけどつよつよなんだ・か・らぁ!」

 

 

「誰・・・? あんた」

「地獄からの使者、デッドプール!」

 突如として、天井を突き破り落ちる様に降りて来た、立派な体躯を血にも似た真紅のタイツと覆面で覆った口うるさい男。

「決まった?」

「決まって・・・無いな」

「てかその見栄は何。どっかの受け売り?」

『ざっ、残念ッ。流石に世代じゃなかったかあ。ここに仮面ライダーがいるor来るなんて話は聞いてたから通じると思ったけどおたくら東映ヒーローじゃ無かった?』

「仮面ライダー⁉」

「って事はやっぱりここに? ・・・あの、デッドプール・・さん? 俺たちは確かにスーパー戦隊と仮面ライダー・・・なんだけど」

「Wow!! だったら話は早い早い。確かにここには古今東西のアブない実験体が押し込まれてる、俺ちゃんもその縁だか雇われてお巡りをやってるんだけどどうも胡散臭くて趣味が悪い。お子様を騙して地下で石を埋め込むなんてややイキ過ぎたプレイだと思うんだけどねぇ~・・・ってちょっと何⁉ 何先に進んじゃってるの⁉」

「情報ありがと! 急いでるから!」

 この男と話していると、時間とメンタルを棒に振りそうだと、何も言わずとも二人の心情は一致した。その判断は考えるまでもない、本能レベルだ。

 

 だが。

 

『あのさあ、別に怒ってるワケじゃあないんだけど・・・聞くだけ聞いといてトンズラ、ってのは筋通らんと思わない? ただのコメディリリーフ扱いされるのは俺ちゃんちょっと嫌なんだよね、活躍期待してる奇特な読者サマも少しはいるんだからさ』

 響き渡った一つの銃声は、まるで獲物を逃がさない、という宣言のようにも聞こえた。

「そういう事か。確かに上手すぎる話だな、この場で見逃されるのは」

「急いでるけどやるしかないか・・・」

「一応雇われてる分は働かなきゃ、傭兵だし。通行料の力比べってヤツ?」

 

 ここはどこかの世界に点在する、巨大な実験棟。そこは関係者からは『混溜所』と呼ばれている。

 

 ここの目的は二つ。一つは、世界に混沌を生み出すと判断された事物を隔離し、管理する為の場所。

 

 もう一つは、その混沌を利用し、世界に新たな可能性を生み出すべく調整・改造実験を行う場所。

 ここの設立を提唱した者、それは現在は定かとなってはいないが、その者はこう語ったという。

 

「すべてが混じり合おうとしている。かつてない新しい世界が来ようとしている。我々人類は力を持つべきだ、この混沌を手懐ける為に。我々は何者かになり、真の英雄としてこの世界達を治めるのだ」

 

 

 つづく

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