「警備の手がまるでいねえな・・」
「そうだろうな。お前があの数をあれだけ派手に殺しまくった、恐れもなすだろう」
「・・あんた、そういう物言いは何とかならねぇのか」
「言葉を選べば状況が丸くなるのか?」
意沙と士は、士の言う「仲間」と合流する為に、地下から上の階に歩を進めていた。この階の警備兵は士の指摘通り、クウガとなった意沙によって殲滅、残存する部隊も急遽撤収した痕跡が・・・
『緊急命令、緊急命令。本施設は現在未確認勢力の襲撃と実験体の暴走によって損害を受けている。地下の部隊は現在の場所を放棄、最上階中枢に移動し戦闘態勢を整えよ』
「今更感あるアナウンスだな。ここの連中は先見の明があるのか、それともただの臆病者なのか」
「・・・原因がオレ自身じゃなかったら後者に一票だ」
グランドヒーローズ
第2話
『少年の序章、序章の男』
「おっほう中々やるじゃん! 格闘戦主体だなんて俺ちゃんからすればすっぽんぽんみたいなモンだけど、その鉄より硬いなんとやらなボディなら納得ぅ! で、相方はいいの? 先に進ませちゃって」
現在、仮面ライダーZОはゼンカイザーを合流に向かわせ、自身はこのデッドプールと名乗るやたら口数の多い男との通行料という名の戦闘を受ける事になった、のだが―――
対峙する彼は、あまりにも手ごわい相手だった。
(こいつの身体構造はどうなっているんだ? 改造人間レベルでも決定打となる一撃は受けている、食らわせている筈だ)
驚異的としか言えない程の、急速な身体再生能力。砕けた骨も、潰れた皮膚も、開いた傷も、ほぼ10秒に満たない感覚で健常へと戻る。そしてその現象に対して疲労等のような代償も感じられない。
「あ、ぶっちゃけ引いてる? ま、これこそが俺ちゃんってコト。つよつよだって判ったらちょっと嬉しい・・・・しぶといの間違いってのはツッコむなよ、ほんのちょっと気にしてるから」
それに次いで、この異常ともとれる程のやかましさ、二刀と二丁銃による、十分に超人とも渡り合える戦闘能力。
(正攻法で戦い続けていたら根負けする、こいつの動きを長時間封じるか、あるいは・・・)
*
「なあ、こいつらも外に出す、・・・って訳にはいかねえのか。オレみたいに騙されたり、無理矢理攫われてきたような奴だって」
「事情も聞かずに肩入れするな。空回り気味に善意を出すと痛い目見るぞ」
道中、何度もこちらに向かって「出してくれ」「助けてくれ」という声を都会の喧騒になるかのように何度も聞いた。ここが所謂実験施設である以上、そんな人間がゴマンといるのは頭で理解はしている。
自分だけ助かっていいのか、などという甘々な葛藤は考えない。だがこの力を手に入れた今でさえ、この現実を変えられない自分に苛立ちを感じる。
「・・フォローのつもりで言っておくが、ここの実験体のほとんどは歪んだ金儲けや犯罪目的で志願した奴等だ、お前が同情を抱く値打ちは無い。珍しいくらいだろうな、お前のような純粋な動機は」
*
殆ど構成員と思しき者とは接触せず、地上へ繋がるエレベーターに二人は辿り着いた。
「何つうか・・・あんがとな。あんたには一生返しきれない借りを」
「そういう話はするな。どん底のガキを救えなくて曲がりなりにも仮面ライダーは名乗れん」
ヒーロー・・・か。
意沙は初めて、そんな人間がいるのかもしれない、と感じた。所詮ヒーローの活躍なんて上っ面、本物の弱者なんぞ救ってくれないと考えていた。今でもその猜疑心は拭いされてはいないが。
「こんな話は後だ。今は話す時間も惜し―――」
一歩踏み出そうとしたその瞬間、エレベーターの天井が突き破られる。
「何だ、今更来やがったのか⁉」
「可能性はありそうだな。・・・変身!」
「気を抜くには早えって事か・・・変身っ!」
「これで二回目だが・・慣れたか?」
「感覚的には悪い感じはしねえ。少なくとも重いとかそういう感じは」
「なら良し、だ。さて、どんな差し金を送り付けてきたやら」
*
「オイオイ、男のタイマン勝負に水を差すのは野暮でクソの極みだぜ。てかその銃口は何? 一応俺雇われてんだけど?」
「どういうつもりだこれは。その様子だとお前が呼び寄せた訳では無さそうだが」
「嬉しいねえ信じてくれて。世が世ならズッ友認定しちゃいたいぐらい」
1階の広場には構成員が殺到し、武器を構えてZOとデッドプールを取り囲んでいる。
そして、部屋に声が響き渡った。
『相変わらず想定外の動きを見せてくれるようだな、Mr.ウェイド・ウィルソン。検査室で大人しくする約束を破って平然とここで暴れるとは』
「ガチフルネームで呼ぶなよ恥ずかしい。お給料貰ってんのにじっとしてろじゃああんまりじゃん? 格好良く踊ってこその俺ちゃんだよ」
『見てて気持ちが良いぞ、お前の活躍は。お前であれば神が相手だろうと中指を立てる、そんな気がするぞ』
「・・・その声聞いてるとさあ、あんた多分オッサンだろ? ちょっとそういうファンばっかりだと俺ちゃん引いちゃうんだよね」
異様な光景だ。・・・とZOは感じた。恐らくこの広場に響き渡る声の主は権限のある者なのだろうが、デッドプールは素性も知れないであろう相手と友好的な会話を繰り広げている。
「とゆーワケで! こいつらどかしてくんない? 俺ちゃん超不死身なんだけど痛みは感じちゃうんだぜ」
『残念だよ、労いの為に差し向けたんだがね。・・・蜂の巣にしろ、仮面ライダーの方は殺しても構わん』
「結局こうなるか・・・やるしかないみたいだな」
『おおッ⁉ これはまさに東映ヒーローとマーベルヒーローの共闘⁉ 高みの見物客も納得の展開? 燃えなきゃウソだな。あ、ちなみに解るヤツにはバレてるだろーけど、時々俺ちゃんのセリフが『』になってんのはいわゆる壁突破発動ッ!! って状態なワケ。何の壁? ってのは勿論、』
「何を喋ってる、いくぞ!」
背中合わせの二人に向けて、銃撃が開始される。
「さっきの連中より数が多い程度か・・・なら突破できる!」
「YES! 俺ちゃんをそんなにヤリたいなら、せめて銀を溶かした鉄砲玉を持ってくるこった!」
敵に回すと恐ろしく、味方に付けば頼もし・・・いかはまだ確信できないが、先程一戦交えたからこそ、曲がりなりにも彼が戦士としては十分に強い事は判る。
「いいねえ・・・俺ちゃんも肉体一つで戦える漢オブ漢になりたいよ」
「いちいち怪しい事を言うな! 言っておくが不意打ちは通用しないぞ」
銃撃を弾き、その先にある敵を屠る中で、ZOは一人違和感を感じた。
(拳の感覚で分かる。この場の敵に「人間」はそれ程いない。大多数は機械か生体兵器の類だ。・・・どういう事だ? そんな技術を複数使えるという事はこの施設の規模は・・・)
*
「こいつが・・・仮面ライダー⁉」
「ああ。何度か同じ戦場に並んだから憶えがある。こいつは仮面ライダーシン、またの名を改造兵士レベル3だ」
その姿は人の形を保っているが、外観は仮面の英雄とは遠い、バッタを模したかのような怪人。
「だが様子がおかしい。自我を失ってるような目つきだ」
「洗脳でもされてんのか?」
「だとしたら倒す訳にもいかないが・・・来るぞ!」
「ウオオオッ!!」
咆哮と共に高く跳躍し、襲い掛かってくる。
「痛っ・・!」
「こいつの爪は超振動を放つ、掠っただけでも安心するな!」
ある程度の攻撃はやむを得ない―――ディケイドは銃撃を行うが、受けたその皮膚はたちどころに元に戻る。
「どうすんだよ・・・! 真正面からじゃ抑えられねえぞ⁉」
「どっちかが囮、もう片方が攻撃、に専念するしかないだろうな・・・問題はその後確実に止められるかどうかだが」
「それなら俺が知っている」
聞き覚えの無い男の声、それと共に、文字通りの漆黒の影が、姿を現した。
「誰だお前は? 見たところ仮面ライダー・・・の様だが」
「今はどうでもいい事だろう。それより、あいつを助けたいんだろう、方法を知ってる」
「素直に信用すると思うか?」
仮面ライダーシンが話を遮るかの様に襲い掛かる、が。
「念力の類か・・!」
「男の名前は風祭真、同じフロアに収容された縁で知り合った。脱走の計画を二人で立てていたが・・彼は洗脳装置を額に埋め込まれたらしい」
シンは念力を押し切り、漆黒の男と肉弾戦に持ち込む。振動の影響か、男の腕には血が滲み始めた。
「その人の言う事・・・多分信じられる!!」
「ゼンカイザー・・・五色田介人か。連れのZOは」
「今は大丈夫! それよりその人は敵じゃない、ここの奴等と戦って・・・人を助けているのを見た!」
「だいたいわかった、少し信用してみるか。・・・意沙、追いついてるか」
「何とかな。・・・派手なのがいきなりわんさか出てきて、面食らってるけど」
正直自分がそのうち、蚊帳の外になるのでは? と僅かに心配する空気ではある。
「という訳でお前の出番だ。お前のクウガの力の片鱗で、その洗脳装置とやらを取り除く」
「いきなりだなっ」
「隅に置かれるより良いだろ。・・・銃器が一つあればの話だが」
「使え、道中で一応拾ってきた」
漆黒の男が、投げる形でディケイドに拳銃を渡す。
「・・・お前のようなガキは、いくらケンカはしてきても銃なんて物は使っていなさそうだが」
「当たり前だろ、どこで生きてきたと思ってんだ」
そしてクウガの手に銃が渡る。生きている間にこんなモノが自分の手に握られるとは想像もしなかった。
「ヤツの額に埋め込まれた洗脳装置を射抜いて、破壊してもらう。クウガの力をもってすれば簡単なはずだ」
「銃を握った事も無いガキに、随分な無茶振りだな」
「言っただろ、力をもってすれば簡単なはずだと。目の前の相手に埋め込まれてる『それ』を、撃ち抜く事を考えろ。お前が出来ると確信するなら、霊石は答える、だろうな」
不思議と恐れは感じない。助言通りに、銃を構え、射抜くべきモノを見据える。
見えない、という決めつけは捨てろ。捜せ。どこかにある『それ』を。
遠くのモノが、近く見えるようになってくる。目が、異様なほどに冴えてくる。
「色が変わった・・・⁉」
「武器も・・銃から弓、になってる!? これが仮面ライダー得意の」
「フォームチェンジ、ってヤツだ。飲み込みの早い奴で助かるな」
緑の鎧へと姿を変えたクウガは、拳銃が変化した弓状の武器のトリガーを、静かに引く。
シンは飛び掛かって来るが、それは大した問題では無い。
クウガによる一撃が、静かに放たれ、それはシンの額にある、第3の眼制御装置を、確実に射抜き、破壊した。
*
「大分減らせてはいるが・・・それでもまだ増えてくる、どこまで足止めに躍起なんだ?」
「ここに居させておくワケがあるんでしょーよ。ハリボテマンをぎょーさん入れてる時点で」
「お前意外と判りが良いんだな。ただの行き当たりばったりの馬鹿だと思ってたが」
「おぉ辛辣ぅ」
動員されてくる雑兵の数は底は見えない、まるで虫が巣から湧いてくるかの様に。一体一体はほぼ一撃で止まる程に弱いが、それも既に何十体倒したか記憶に無い。隣の共闘者が疲れ知らずの反動もあるのだろうが、こちらは疲労こそしないものの気が滅入り始めている。
「そろそろ同じメンツばかりで飽きて来ただろう? スパイスを効かせてやるよ」
「仮面ライダーディエンドの召喚能力か」
「面構えの違うヤツが来た、って感じ? まだまだ楽しめそうじゃん」
デッドプールの声色が棒読み気味になっている。言葉はやはりふざけているが、乗り気じゃない戦況なのは確かだろう。
「もっともここで軍門に下ってくれれば話をつけてやらん事も―――」
「答えは判っているだろう」
ℤOは拳を握り締め、構える姿勢を崩さない。デッドプールに至っては言葉で応じず、中指を立てる事でディエンドに応えた。
「・・こんな辺境施設の、世界不適合者の巣窟に何故こだわるのやら。馬鹿ばっかりだよ、ヒーローってのは」
「そうだな。お前みたいなコウモリ気質のコソ泥には解らんさ」
「洗脳装置を破壊したのか・・? お早い合流だね、それに新しい連れも」
「ここでくたばらせちゃくれないような気がしてな。まだ生きさせて貰う」
「仲間が増えてにぎやか全開! 物騒な人多いけど」
「こんなに人形を用意して粋がってるようだが・・・実質このメンツなら6対1だな」
「下で色々聞かせてもらったぜ・・・! 今度こそオレも一発くれてやる、コソ泥!!」
「やれやれ、こうも血の気が多いと生きた心地がしないねぇ。まぁ僕もここでくたばる気は無いけどね。ちょうど増援も来たみたいだし・・・小芝居なら付き合ってあげるよ」
上の階から明確な殺意を持った構成員が次々と集まって来る。
だが、それを前にしても、立ち向かう6人の戦士の意思は、全く揺るがない。
*
「コズミックハーレーッ!!」
施設外、一人の銀の狼を模した姿の戦士が、大勢の敵を攪乱している。
「作戦開始から2時間ぐらいか・・・! 脱出とは行かないまでも、通信の一つでも欲しい所っ!」
彼の名はジャスピオン。士の呼びかけでアマダム回収の任務に向かった同志の一人である。彼の役割は外側の警備の攪乱。数の多い敵を相手にしても、かつて怪獣大の生物・巨獣を相手に戦ってきた彼からすれば、恐れるに足らない。
「こっちはまだまだやれるしあの人選で不安は無いけど、この場所はいったい何のつもりだ? 報告通りなら『この世界』にある物はもう何も・・」
「だからこそだ、ジャスピオン」
「轟轟戦隊ボウケンジャー・・・だったな。存在は士から聞いてる」
突如上空から現れた、赤色、黒色、青色。
それぞれの色の強化服を纏った3人の戦士。
「加勢に来たのか?」
「何お気楽な事言ってんだバーカ。警告に来たんだよ」
「僕らがまだ感づいていなかった別次元の組織・・・からのね」
「今より後2時間後の話だ。ここに『時空管理局』を名乗る武装勢力が到着、この施設に武力介入を行い、ここを処理する、という事だ。俺達は管理局の通信を受け、お前達を説得する為に来た。・・・手を引け。ここの者達は、お前達だけで対処できる程、矮小な存在じゃない」
つづく