グランドヒーローズ   作:四季永

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 時空管理局による強制捜査が始まる。捕縛を拒む意沙達は交戦も覚悟し、脱出が始まる。
 救済の間が混乱に包まれ、この混乱からまた、一つの旅が始まろうとしていた。


ファースト・ストレンジャー

「どうやら攻撃が始まったようだな。この揺れだと吹っ飛ばす気満々か」

「てかこうして走ってるけどっ、脱出の当てはあるのかよ!?」

「潜入の際に合流・脱出の地点は決めてある、先ずはそこに向かう!」

「俺ちゃんみたいな証人もいるしねっ♪」

「お前は信用しないっ!!」

 

 時空管理局という組織からの降伏勧告が発せられてから30分。ほぼ総崩れに等しい救済の間からまともな返答が返る筈も無く、遂に強制制圧作戦が開始された。

「今更ながら思いついたんだけどさ、司令塔・・・的な所に乗り込んで俺たちで交渉する事も出来たんじゃないの!?」

「名案に聞こえなくも無いが無理だろうな。俺達自身がここの真意を知らない、所謂部外者の集まりで形だけの投降を唱えても・・・無事にここを去れるという保証は無い」

「外様からすりゃ多分テロリストの片棒だもんな、俺たち」

「押しつけるだけ押しつけてトンズラかよ・・・どこまでクズな奴等なんだ」

「だからまあ悪の組織なんだろう。・・来るぞ!」

 残存している戦闘兵達が襲い掛かって来る。彼等には洗脳処置が施されているのだろう、今のこの状況に疑問も無いのだろうが、それでも捨て石同然に立ちはだかって来る者達には僅かながら哀れみを感じずにはいられない。

「残され者とはいえ数が多いな・・・!」

「余程兵力に余裕があるのか、それ程まで足止めがしたいのか」

「雑魚ばかり切り伏せてるのはあまり気分が良くないんだが・・・んっ?」

 

 一筋の電光が、戦場を走る。

「何だよ今のは!? 残りモンにこんな新手がいたのか!?」

「落ち着け。今の攻撃は俺達に狙いを定めてない」

 交戦中の戦闘兵が次々と崩れ落ちる。だがディケイドの指摘が正解とはいえ、その攻撃の主を味方と見做すのも早計だ。

 

「単刀直入に聞きます。貴方達はこの施設の関係者ですか?」

「・・生真面目を纏ってるようかのガキだな。一応答えてやるか、俺達はある縁でここで実験台にされてた可哀想なガキを助け、今の所当ては思いつかんが絶賛逃避行中、といった感じだ」

 確かにまあ、言ってる事は事実なのだが、それにしても随分皮肉に満ちた返答だ。ほんの僅かだが、イラついているようにも感じる、子供が嫌いなのだろうか。

「つまりここの連中とは敵対関係だ。こう言えば見逃してやるのか?」

「現在この施設は、僕達機動六課の強制捜査を受けています。今の返答が本当なら、貴方達には危害を加えるつもりはありません。ただここでの件を知っている証人として――」

「行くぞ馬鹿馬鹿しい。こんな所で捕まればくたびれもうけだ」

 

「存外に速いな。間合いの駆け引きは未熟だが」

「僕達は出来る事なら貴方達と戦いたくは無い・・・! 今の返答通りなら協力者になる事だってっ」

 電撃を放つ槍を持つ少年。その攻撃速度は、

「士、あれを振り向いて防いだのか・・・! オレの目には、ハッキリ言って捉えられなかった」

「単純に追いつける奴はここにはいないだろうな。こちらから攻撃を仕掛けても、恐らく掠りもしない」

 ディケイドと少年の鍔競り合いが解かれるが、双方共臨戦態勢は解いてはいない。

「名前、だ。ガキと呼ぶのも疲れる、名乗ってもらおうか」

「・・・エリオ・モンディアルです」

「俺は門矢士。この姿は仮面ライダーディケイドだ」

 

 

「貴様か。世界の破壊者ディケイドとは」

 

「シグナム副隊長・・・!」

「ガキの次は女か。随分風変わりな軍隊もあったもんだ」

 武人然とした雰囲気を持つ女性が、殺気に似た気迫を大きく放ちながら姿を見せる。

「その男には歩み寄るな。・・・管理局内でも存在が疑われていたが、このような形で暗躍していたとはな」

「いきなり出てきて何なんだアンタ。口は悪いのは認めるけど悪者扱いは無いんじゃねーのか」

「ま、半分以上は事実だがな」

 この空気では戦闘は避けられない、今の状況で全員見逃してもらうなんてまずありえないだろう。

「結局は力ずくか。最善には遠いが脳筋相手にはこれしか効かんだろうな」

「抗うか、悪魔に情は抱かんが戦士として生き切るならばそれで良い」

 

グランドヒーローズ ワールド1

第4話(最終話)

『ファースト・ストレンジャー』

 

「本当にこれで良かったのかよ!? 置いてくなんて無責任じゃねーか!!」

「俺が言える言葉じゃないが! 少しは近づいてくれた奴を、行けと言ってくれた奴を信用しろ。陳腐な肩書きだがあいつらはヒーローだ、考え無しに動いて無意味にくたばる程小さくは無い」

*

「レヴァンティンの軌道を捉えているのか・・!」

「虚空の流星に比べれば十分に読める速さだ、銀河の狼をなめるなよ!」

 ジャスピオンの戦闘スタイルはいわば野生児、研ぎ澄まされた感覚をフルに扱い相手の攻撃を掻い潜る。

「確かシグナムと言ったな」

「いかにも。烈火の将、剣の騎士シグナム。・・・何故だ」

「何故、というのは?」

「こうして受け止めた貴様の剣、邪悪な意思は微塵も感じない。なぜこの様な場所にいる?」

 

「当てられないっ・・! 機動力では勝ってるのにっ」

「切り替えが上手くいっていない。助言をするつもりは無いが、君の戦いには迷いを感じる」

 ジャスピオンと共にこの場に残ったZOは、エリオとの戦いを引き受けている。肉弾戦主体のZOではエリオに追いつくことは出来ないが、エリオからの攻撃はZOに決定打を与える事は出来ていない。

「貴方の口調には、どこか温かさを感じます・・・何故なんです!? 何故こんな犯罪組織の施設に貴方達は!」

*

「さて、なんやかんやで目的地には着いた訳だが」

「問題はこっからだよね、正直」

 意沙達は救済の間の出入口の一つへと辿り着いた。場所は正門では無く、裏口に近い場所であり脱出自体に問題は無い。だが士達の表情はあまり明るくは無かった。

「? ・・・なあ、脱出できるんだろ? 何でここに来てこんな雰囲気なんだよ」

「お前の希望を尊重するから、だろうな」

「・・は?」

 意沙の疑問に指摘した光太郎は、苦い表情で続ける。

「今のお前の目は、ギラギラとしながらも居場所が無いような輝きだ。お前がここに来たのは、現実を変えたい力を求めたから・・・と察したが」

「当たりだ。悪ぃかよ、力を求めて。それがありゃあオレどころか、親父もお袋も脅かされねえ、守れるんだ」

「力、か。中途半端に、際限無く求めるとそれはいずれ自分の首を絞める。俺はそうなって身を滅ぼした奴等を幾度となく見てきた」

「だから何だってんだおっさん。オレはこの力で」

「悪いがすんなりと帰らせるつもりは無いぞ。てか帰りたくないだろお前」

 

「・・・いきなり何言いだすんだよ、士。あんたはオレを」

「化け物同然になって帰って来て、今までの環境が改善するとでも思ったか? それ位自分でも解ってると思うが」

 

 

そう。

 今になって気づいた。

 人と異形の、境界線を踏み越えたのだと。

 

「・・甘い判断、だったよな。わかんだよそんな事は」

「後悔してるか?」

 だがこれだけははっきり言える。

「してねえよ」

「・・安心した、これでYESだったら一発やってた所だ。殴る手間が減って助かる」

「それで、これからどうするんだよ」

「だからお前はどうしたいんだ?」

 曇った視界が、晴れていくような感覚だ。前途は見えなく、それどころか険しいばかりだというのに。

「力は手に入れた。家には戻れねえ。・・でもそうなった以上、やるべき事がある・・・気がする。士、あんたについて行く。やる事があるんだろ、あんたも。その為にオレを」

「言ってくれるじゃないか。じゃあとりあえず利用させてもらう。次の世界に行くぞ」

*

「何なのよコイツら・・・! 洗脳処置を受けてる前提として酷使し過ぎっ、命が惜しくないの!?」

「それだけじゃ無いよティア。この施設どこかおかしい! ここがそれなりの規模の実験場なのは判った・・・判ったけどっ!」

 救済の間の制圧に当たっている時空管理局員の少女の一人、スバル・ナカジマは回想する。ここに突入してから見る光景は、異質かつ正気を曇らせるには十分過ぎる程のものばかりだ。

 用済みとばかりに息の根を一斉に止められた実験台という扱いの生き物達、身体をいくら砕かれようが死ぬまで戦闘を止めない構成員、施設中に繰り返し響き渡る、破壊殺戮略奪凌辱、それら負の感覚を賛美する悪意に満ちた声明放送、そしてこれだけの状況を演出しながら、一人として姿を見せない管理者。

「あたし達、もしかしてだけど乗せられた、のかな・・? やっぱりここはもぬけの殻で、まるでこうしてあたし達がここで戸惑ってるのをどっかで」

「冷静に、スバル! そんな悪趣味な可能性・・捨てきれないけど、今はそれで曇る時じゃないっ! ・・わかる? まずは隅々まで探すの、一つでも見落とさないようにっ」

 相棒のティアナ・ランスターの口元は、叱咤の言葉とは裏腹に唇を嚙みかけている。彼女たちは言わば探しているのだ、この悪趣味な演出の意図を。

*

「何だよこのバイクは」

「見れば解るだろ。お前のだ、まさか乗った事無いのか?」

「いくらグレててもこんなのには乗らねーよ」

「だが安心しろ。こいつは先代のクウガのお古だ、乗れば霊石が記憶情報としてお前の頭に叩き込んでやれる」

 目的地に停めてあった、ディケイドのバイク型マシン・マシンディケイダー。それは走行中にオーロラという現象を活性化させ、次元跳躍を円滑に行う事が出来る。クウガも同時に停めてあるマシン・ビートチェイサー2000に乗り、ディケイドに同行する事になる、のだが。

「さて、ここまでつるんできて何だが」

「俺と真はここで別行動、だね」

 少し俯いてから、ゼンカイザーは挙手する。

「真は同盟に、俺は出来る限りの仲間達に。ここで起こった事を報告して、今後に備えて話し合わなきゃなんない」

「そんなすんなりと通じる話なのかよ?」

「ヒーローはフットワークが軽いんだよ? 特に俺達スーパー戦隊はね」

 仲間達、か。彼等には信頼できる、通じ合っている者が大勢いるのだろう。友達という縁に飢えている訳ではないが、それを支えに生きている者もいるのだ。意沙はそういう奴もいるのだとハッキリと実感した。

「・・・・で、何だかんだついて来てるけど、お前どうすんだ? 強いのは分かったけど」

「チョイチョイ! 年上にお前呼ばわりはヒドくない!? 未成年がナイスガイ相手に!」

「・・・そういうの良いから。見た感じ行く所も無いように見えて」

「情けは結構! とはいえ正直な話、そこのバーコード君には目に見える金銭では計れない報酬を感じると俺ちゃんの***が告げてる! という訳で乗るしかない、このビッグウェーブに!」

「良いんじゃないのか。弱い訳ではないから足は引っ張らんだろう。賑やかしがいないと退屈だからな」

 意沙の感覚ではデッドプールとの会話は正直、疲れる。それをすんなりと受け入れるディケイドは器が大きいのか、はたまた適当なのか。

「ボウケンジャー、あんたらは? やっぱり戦隊である以上仲間達と」

「ここを攻撃している人達と交渉に当たってみるよ。先程攻撃を仕掛けてきた少年達の反応を見るに、話の通じない相手では無さそうだからね」

「・・・帝宮意沙。姿の見えない何者かの思惑絡みとはいえ、今ここにお前がいる事、それを選んだのはお前の意思も関わっている。冒険と言うには生易しくない道だが、進む強さは勝ち取れ。その先に希望は必ずある」

 意沙は無言で頷いていた。厳しくも「前」というものを示そうとした大人というのを、初めて見た気がした。

「分担は決まったな。さっさとずらかるぞ、音も近づいてるから余裕は無い」

*

「何とまぁ破壊絵図の一言だね。この魔法少女達・・・とやらがやって来るのも想定内だったのかい?」

「プレゼン、だ。交わる筈の無い世界を繋げる為の。ここに足を運んだ者達は気づいてしまったんだよ。可能性という名の脅威を。最早目を背ける事は出来ない」

「雇われてるとはいえ、お偉い様の高尚な思想は理解しかねるね。もっとも僕は、それによって見つかるお宝に惹かれる訳だけど」

*

「ヒャッホウ! 行け疾風の如く仮面の戦士ってね、このスピード最高!」

「あまりはしゃぐなよ、お前だけマシンが無いから乗せてやってるんだ」

 救済の間を脱したクウガ、ディケイド、デッドプール、そして、

「そういえばお前のその名を聞いていなかったな、南・・光太郎」

「どうでも良いだろ。・・・強いて言うなら、ブラックサンとは呼ばれていた」

「成程、仮面ライダーBLACKSUNか」

 BLACKSUNの四人は、戦場を離れ、「次の世界」へ渡る為に走っていた。

「で、どうやってその、オーロラってのを出せんだよ」

「ただ移動するだけなら訳無いんだがな」

「できれば痕跡を残したくない、という事か」

「? 何言って」

「追って来る奴がいる」

 

 

 上空から放たれるそれは、まるで破壊光線の如く。

「なっ・・・!?」

「威嚇のつもりか? 派手な割りに避けて撃ったな」

 横に見えていた森林が、更地と化している。

 その威力に驚く暇は無かった。

「げっ、何だよこれ」

「落ち着け、ホーミング弾だ。威力はそこそこだが少し面倒か」

 追尾するような動きで襲ってくる光弾の群れ、頭に方法が伝わっているとはいえ意沙のバイクテクニックはほぼ素人、ディケイドやBLACKSUNのように上手く避け続けるのは難しい。

「ここで迎え撃っちゃう!? 俺ちゃんの視力が正しければ追手は中々の美少女かもっ!」

「そんな役に立たん情報はいい! ・・・女だと?」

 

「止まってくださいっ!」

 

 

「時空管理局機動六課所属、高町なのはです。こちらに殲滅の意図はありません」

 成程確かに少女、美少女と呼んでも別に違和感は無い。雰囲気的にはとても落ち着き払っており、面と向かう限りでは彼女が大規模な破壊光線を撃った、と言ってもあまりイメージは湧かない。

「時空管理、か。初耳だが大層な名前の組織だな。・・機動六課という事はあのエリオというガキと同類か」

「! エリオとは会ったんですか?」

「安心しろ、別に殺すどころかケガなんぞつけてはいない。・・・で、この事態はどういう事だ」

「・・・わたし達機動六課は、この次元を発信源とする声明を受信し、それを犯罪組織の宣戦布告と認知し、救済の間・・・と称する施設の制圧を決行しました」

「お前達も乗せられたって事か。もうあそこには何も無かっただろう」

 なのはは沈痛な面持ちで頷く。様子を見るに、彼女はこの部隊の中では重要な立場にいるのだろう。上の立場にいるならば、あの施設の異様な状態の情報が、嫌でも入ってきた筈だ。

「なら話は終わりだ。俺達も急いでるんでな」

「それはできません」

「どういう事だ?」

「あなた達は証人としてわたし達と同行してもらいます。・・・話を聞かせてもらいたいんです」

「早い話が関係者の容疑で拘束か。下らん、俺達を捕らえてもどうにもならんぞ」

「ここにいたって事は、何かしらの情報を持ってここに来ているはずです。お互いに話し合って協力すれば、裏で動いている何かだって」

「悪いが。今はそういう組織に組み込まれるのは迷惑なんだ」

 無言の空気が、その場を包んだ。

 

 

「オイ、何構えてんだよ士。何も戦う必要は」

「黙ってろ。どうやら頑固を黙らせるにはこれしか無いらしい」

「・・・その偉そうな態度、少し直してもらいます!」

 先手を打ったのは、なのはの射撃。向かうディケイドは光弾を落としながら接近戦を仕掛ける、が。

「飛べるのか、少し厄介だな」

 当たり前だが、戦士同士の戦いにおいて飛行能力があるのは大きなアドバンテージになる。ディケイドの「素」の状態では空中の相手に対する武器・・ライドブッカーを用いての射撃はあるものの、なのはが展開している目に見えぬ障壁を撃ち破るには明らかに威力不足だ。

(バリアジャケットで防げてるけど、攻撃自体は的確に当ててきてる。回避にしても同じ、このままじゃ戦況は傾かないっ)

「しょうがない、力の片鱗ってヤツを見せるか」

 

『KAⅯENRIDEーFaizー』

「姿が変わった!?」

「そういえば俺の力・・・を見せるのはこれで初めてか。まあそういう事だ」

 姿を変えたディケイドは、再び銃を構える。

(姿を変えての銃撃・・同じ攻撃手段じゃないはず、ここはもう一歩攻めるっ)

「ディバインっ・・・」

「地に落ちてもらう、死なない程度にな」

 なのはの読みよりも早く、その光弾は放たれた。その射撃は決定打では無く、次の手を打つ為のきっかけに過ぎない。

 光弾は空中にいるなのはの移動を固定し、ディケイドは次の一撃を叩きこむ。

 

「・・・本気なんですね」

「そうしないと敵わん相手だと判った。・・安心しろ、殺しはしない」

 大したダメージではないようだが、飛行を制限する事は出来た。つまり対等の移動範囲に持ち込んだのだ。

 お互いまだ、戦意は全く衰えていない。武器を構え、接近戦に入るべく前方に警戒する。

 

 

「悪いな。ここでやり合うつもりは毛頭ないんだが」

「・・・!?」

 

 状況が変わったのは一瞬だった。まず、ディケイド達の背後に、オーロラのような空間の歪みが訪れた。

 ディケイドとなのはの間に、割って入るかのように大きな稲妻が撃ち込まれる。

「飛び込め!!」

 意沙達はディケイドの声を合図に、オーロラへと飛び込み――――

 

 

 彼等は、「そこ」から姿を消した。

 

 

 

「なのはっ!!」

「フェイトちゃん・・・みんなは?」

「強制捜査は一段落。何人か証人を名乗る人達から話を聞いてる。・・・それよりも」

「・・少し無理しちゃった、かな。ああいうよく解んない人と戦ったのは、多分初めて」

「・・・戻ろう。これから、しばらく大変になる」

*

「どうにかオーロラを呼べたようだな。もともと歪んでいた空間だからか、半分人為的なモンじゃないが」

「運も入ってたって事か。・・・情けねえ」

「自嘲が目立っている、そういうのはよせ。子供が悲観するのは目に毒だ」

 光太郎のその指摘には、どこか彼自身の願望にも似た感情を感じる。

「で、このタイミングで誰か言うべきだと思うんだけど俺ちゃんが言っちゃう。ここはどこ? そんでもってこれからのプランは?」

 意沙達が飛び込んで辿り着いた空間、そこは

「俺が勝手に使わして貰ってる拠点だ。昔は写真館だったんだが、それを抜きにしても住める所だろう?」

 確かにそれなりに整っている・・・建物だ。広さもあるし、人間が5、6人位はどうにか住める場所だろう。

「問題はこれからについてだが・・この有様ならしばらくはノープランだ。当分は不安定なこの館で世界巡りをする事になる」

 

 言葉に出した直後、士は誰かに罵られるか、最悪一発殴られるかと危惧したが・・・

 

「元々の世界にもう未練は無い。士、お前がその気なら俺を連れていけ」

『数多の世界を巡り、その瞳は何を見る・・・はぁ、カッチョイイねえ~っ。俺ちゃんは慣れっこだよ? むしろ俺ちゃんがユニバース越えちゃう度、新規ファンが増えちゃう燃え萌えクロスオーバーが展開される感じ? 結論ッ! 喜んでご一緒させていただくぜ』

 こういう奴等か、少し拍子抜けだが。

「さてと、残りはお前だ。事実を言わせてもらうと」

「ああ、家には当分帰れねえしあんたらの世話になるしこの力がある以上戦わなきゃなんねえ、逃げや弱音は認めん、だろ」

「解ってるじゃないか、告げる手間が省けたってもんだ。だがな、今だけは受け止めてやる」

「・・・何をだよ」

「お前の言葉ってやつだ。本音と言ってもいい。お前は何かを守る為に力を求め、まんまと引っ掛かって実験台になりバケモノ同然になった。そして助け出されたは良いがその力の為、その年で殺し合いをする連中の渦中に飛び込む羽目になる。・・どうだ、キツいんなら吐き出せ。今だったら文句ぐらい聞いてやる」

 

 

 

「ああ」

 

「ああそうだよ!! 元々は母さんと父さんを守る為に力が欲しかった、イジメや差別が嫌いだから捩じ伏せるだけの力が欲しかった! 手に入れたのは良いけど今度は赤の他人の殺し合いの道具にされる、アイツらの泣きっ面を見ないままで!!」

 こんな時にまで、浮かべた涙を流すまいと堪えている。中々カッコ悪いかっこつけだ。

「・・・・だけど、これで良いと思ってる。オレが今のままで帰ったら、ガキのままで帰ったら、この力で何もかも滅茶苦茶にするかもしれねぇ。だから、オレはこれからの道を、本当の意味でオレ自身を強くする旅だと、思う事にする」

 

「55点だな。ただまあ、正義正義と自分に酔ってる奴よりは生な考えだ」

 こんな事に点数の意味ってあるんだろうか。とはいえ、一瞬意沙には士の口元が一瞬微笑むのを確かに見た。

「・・次の転移も完了したか」

「分かるのか?」

「あれが光るのが合図だ。広げればどんな世界かが大体わかる」

 頭上に吊るされている巻物、つまりは背景ロール。

「あのさ、士」

「どうした。愚痴はもう聞いたぞ」

「そうじゃなくて。・・いつもこうやって昔から旅してたのか? それも一人で」

「つるんでいる奴等はいたにはいたがな。今頃何処でどうしているやら」

 

「どうした」

「いや、別に寂しいとかねぇんだなって」

「旅をする事が俺の存在だからな。そんな感覚は忘れた、のかもな」

「自由なんだな」

「お前もそうなりたいか?」

 

「まあいい。開けるぞ」

 

 その少年は力を求めた。それは家族を、自分を守る為という理由は確かにあったのだろう。だが今広がりつつある目の前の事態に、新しい理由が生まれつつある。

 広い世界を見たいから、だ。そこに飛び出す事が出来る自由、それを手に入れる事が出来る力。

 つまりは異邦へ憧れ。

 今、力を手にした少年の、異邦人としての物語が始まる。

 

 

 ワールド1 完

 ワールド2『星の鎧』に続く

 

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