『ドラゴンクエストⅩ』……RPGゲーム、ドラクエシリーズ史上初の、オンラインゲーム。
これは、世界一奇妙なプレイスタイルに目覚めてしまった、一人の学生の物語である。
9月某日、サーバー01『グレン城下町』
岩山を切り開いた様な地形と景観が、どことなく人の探究心をくすぐる。
強い日差しと晴れ渡る青空は、それぞれの高みを目指す冒険者たちの、夢のシンボルと言える……。
夏休みが明け、通勤通学が戻ってきたというのに、
『グレン城下町』はさすがの賑わいようだ。
『強戦士の書』による強ボス巡りや、レアモンスターのコインの持ち寄りの募集などが、休む暇なく白いフキダシになって現れる。
だが、ハルカの目的はそのどれとも違う。
『ネトゲ結婚式挙げたいカップルの方!無料で幹事やります!駅前、いいねどうぞ!』
彼の目的は募集は募集でも、恐らく彼以外誰もやらないであろう一種の慈善事業だ。
『ネトゲ結婚式挙げたいカップルの方!無料で幹事やります駅前、!いいねどうぞ!』
白いフキダシをチャットで出現させながら、同じ宣伝文句を続ける事約10分。やはり誰からも、『いいねの星』は飛んで来ない。
やむなく、所属チームの集会所への『ルーラストーン』を天にかざし、瞬時に移動した。
キノコを象る家が陳列する、遊び心溢れる住宅村、オルフェア住宅村、『マッシュルーム地区』。
ここ1111番地の5番地は、中でも大きなLサイズの土地を誇る、特殊チーム『ブライダルプランナー』の集会所だ。
リーダーの『ときさだ』(エル男、コテコテの関西弁を使うが実は東京出身)は、この家に『天使たちの工房』なる名を付け、大層気に入っている。
最も、高い金出して『和風の城』を建てておいてこんなミスマッチな名前付けるかフツー。とまぁ、ハルカ含むチームメンバーのほとんどがドン引きしていた。
『いらっしゃいませ、ハルカ様。』
「おう、お邪魔します。」
リーダー、ときさだのプライベートコンシェルジュ(要はメイドさん。人間、ボブカット。)、リーシャが優しく出迎えた。
「おう何や、帰ったんかいハルカ。」
「戻りました、疲れたー!」
「その割には、今日もお客さんおらへんやないか!!」
「オレら二人だけで、こんなマイナーな慈善事業、重荷なんじゃないッスか?」
「ガタガタ吐かすな。集会所がワシとお前で随分狭いねん、これ以上人員増やす余裕はあれへんねんで?」
いつものやり取りを聞く内に、リーシャはイスにもたれて眠りこけてしまった。
ピンポーン!
玄関のチャイムが鳴り、いがみ合っていた二人は、我先に表へ向かった。
凄い形相で飛び出して来たエルフとオーガの男二人を見て、客人の女性ウェディの魔法使いは言った。
「あ、すみません……結婚相談所と間違いました!」
引きつった顔をして立ち去ろうとする女性を追って、ときさだは叫んだ。
「ああいや、結婚相談所ですねん、お姉さん……。」
両手をこすり合わせ、 上司に媚びるような態度で応対するエルフの男 。彼女の目には奇妙に映った事だろう。