美波の奇妙なアイドル生活 作:ろーるしゃっは
個性の強いスタンド達によりわちゃわちゃしてた状態から大体、約1時間後。順繰りに粗方の状況を説明していった皆の様子を私、空条美波が代表として概説すると。
「…………て、まああたしからはそんな感じかな?」
先ず、こともなげにサラリと自身のスタンドの発現経緯を締め括ってのけたのは志希ちゃんだった。
ジャージ姿でドクペを飲みつつクールに進めたお話は非常に端的で、実に合理を尊ぶ彼女らしいと言えた。しかしあっけらかんと話された内容の重さたるや、ポルナレフさんのそれに匹敵する。対する反応も勿論。
「志希…………」
「……今は大丈夫、なのですか……?その、指、とか……」
聞き届けてのち、言葉を遠慮がちに紡ぐ2人の気兼ねは察するに余りある。
師を殺されたと思ったら指を千切られ、明くる日に心臓を自ら貫き、9階から飛び降り。あまつさえスタンドに師匠の魂まで取り込んで進化までしているのだから、その急転直下ぶりたるや凄まじい。
彼女はつい一昨日まで悲嘆と絶望にくれる時間すら与えられず、命の危機に晒されていたのに、だ。常人なら先ず精神が耐えられないだろうに。
「ぜーんぜん平気。尤も、敵さんへの
一日でこの一言だ、頼もしいことこの上ない。
平気、という彼女の言も恐らくホント。実際、志希ちゃんの治療は財団のメディカルチェックを行った上で、①私が波紋流してウイルス浄化、②ジョルノさんが指2本丸ごと生成、③仗助さんが患部修復しつつ接続、という流れだった。
因みに指の原材料にした無機物は純金。黄金錬成に関わるどうたらこうたら?で相性がいい……らしい。尚これを聞いた志希ちゃんは「ああ、ミダス王の逸話?」とのコメントをくれた。
あたし怒ると容赦しないよ?とニコニコしてる彼女の様子は、既にいつもの悪戯っ子の調子を取り戻しており。
「それは重畳。何だかんだでキミがいないと、ボク等も調子が出ないからね。……ああ、ボクはさっき話した通りで全部かな」
お次はそこら辺の女子が勘違いしそうな台詞をサラッと飛ばした飛鳥ちゃん。最近偶に女の子から告白されるって悩んでたけど、原因それじゃあないかと思うんだ。
さてぬるめのポカリ飲んでる彼女の左肩に、ちょこんと乗ってた真っ赤な鳥。カラーひよこにも見えたけど、曰くフェニックスだとのこと。
詩的な表現も交えて語ってくれた、ワイアードなるガラクタとのてんやわんや及び父祖との邂逅。こっちはこっちで衝撃だっただろう。にしても。
「『怪我を盗んだ』って、どういう原理で?」
「ああ、どうにもこの腕輪のスタンド能力らしい……って志希!?ヒトのデニムを脱がそうとしないで!?ベルトに手を掛けない!」
「いやー患部の確認がてら触診ね触診。若干こそばゆいだけだし気にしないで♪」
とか言いながら完治済の彼女の左ふくらはぎを遠慮なく揉みしだいてる志希ちゃん。ケミストとしての矜持だろうか。うん、きっとそうだろう。
『ごめんね、この子こうなったら暫く止まらないから為すがままにされてて?』
「プロフェッサー、貴女も中々いい性格じゃあないかい?」
『あらあら、敬称はいらないわアスカちゃん。私のことはクリスちゃんでいいのよ〜?』
「師弟揃ってゴーイングマイウェイ過ぎる…………!」
「センセー、ちゃん付けされる歳でも……『え?』なんでもないにゃあ」
弟子が危機回避してる一方で、私の傍らに居ります文学少女は、というと。
「Mr.アルセーヌ、不躾を承知で伺いたいのですが……ルブラン氏とはどのような関係だったのでしょう?」
『ゴーストライターと執筆対象、かな?君の後ろの背後霊気取りについて記した、コナン・ドイルと同じさ』
両手に赤いヒヨコさんを乗せて、何やら語り掛けていた。溢れる探究心のぶつけ相手だろうか。
「ははあ、そう言えば私の父祖と面識も…………」
『待て待てフミカ。「ルパン対ホームズ」はモーリス・ルブランの創作だ。あれに出てくる探偵はエルロック・ショルメとかいう、私をイメージしたパチモノだよ』
横から背後霊と揶揄された探偵が割り込み。どうもそこは譲れないらしい。しかしその見た目、どう見ても。
(犬……いや黒い狼?)
すっごいもふもふしてます、ハイ。なんやかやあって人と動物二つに変形できるらしい文香ちゃんのスタンドは、現在は犬の姿をしたまま器用に後ろ足で自分の首元を掻いている。ついでとばかり欠伸をかましてリラックスしてる姿は、正直ただの黒ラブにしかみえない。
「成る程。ところでですね、私『奇巌城』の一節で知りたい箇所があるのですが、まず…………」
黒犬の抗議を受け流してマイターンに入ってしまった彼女。ビブリオマニアの心に火を付けてしまったパターンか、と思って気付いた。この娘、志希ちゃんみたいな探究心の発露で絡んでるのではない。純粋に趣味だ。普段控えめで楚々とした彼女にしては珍しく、上気したテンションで語り掛けてるし。
さて、件のアルセーヌなるヒヨコさん。名前から察せられる通り、その正体はかの大怪盗らしい。しかしずっと質問タイムなのも流石に悪い。意を決して文香ちゃんの肩を叩く。
「文香ちゃん、さっきの、ええと……毒鱗粉、だっけ?その、後遺症とかって……」
「……ああすみません、これは失礼を。後遺症、ですか?今は至って平気です、私の場合魂だけでしたから。『身体が伴ってたらアウトだった』とシャーロックに言われましたが……。結果良ければ……といったところですね」
どっとはらい。とまあ、あちこち脱線したけどなんとか聞き取り終了。
要点をまとめると能力が未知数なのが志希ちゃんで、文香ちゃんと飛鳥ちゃんは二人して実質スタンドを一人で二つずつ使えるようなものだ。けれども、問題はこれから。
「あー…………その、大体把握したわ。説明一からありがとね、みんな」
ホワイトボードに三者三様の覚醒のあらましを書き殴った後、額に手を当てて考え込んでるのはわたくし、空条美波。
「あの、美波さん、あまりお気になさらず…………?」
気遣いの鬼文香ちゃんが控えめに一言添えてきた。「いや、私が気にするなと言っても変でしょうか……??」と自問自答してもいたけど。
自分の言葉通りだった。何やってるんだ私は。そもそも赤石が揃ってた五月の時点で察し、対策を講じるべきだったのだ。偶然で片付けていいことじゃあなかった。
何てったって引かれ合っているどころか彼女たち、フタを開けてみれば皆、スタンドや波紋と関わりのある人物ばかりじゃあないか!
…………ああでも、何時迄も此処でうだうだやってる訳にはいかない。彼女達だって自分達のチカラのことで知りたいことは山ほどあるだろう。色々とまとめて聴きたい筈だ。グズグズ長考するなんて、ジョースター家の名が廃る。とそこへ。
「待たせてわりーな、連絡は今ついたってことで取り敢えず、だ」
先程からスマホを取り出し何やら外で電話していた仗助さんが、部屋へ戻ってくるなり私達へそう口火を切った。
「今日のレッスン、俺の責任で全部中止ってことにしとく。んでもって全員これから目黒に行くぞ」
言うが早いが照明を落とし、彼のエスコートで皆してそのまま外へ。
平生は意図して軽さを交えた話し方をする彼にしては珍しく、この時は有無を言わさぬ口調だったのを、後から振り返ってみても覚えている。
☆
それから約40分後。促されるままに辿り着いたのは、勝手知ったるSPW財団目黒支部。地下20m下のフロアに赴いた私達は、なんだか女子会のついでに来たみたいだった。
「此処も昨日ぶりだけど、改めて見ると広いにゃ〜」
『よーく見ると一々凝ってるわね備品とか。昨日はゴタゴタしててあんまり気づかなかったけど』
煌々と電気が灯る通路を通る中、関心したような皆の声が上がる。志希ちゃんとツェペリさんがこれだから、初見の二人は言わずもがなで。
「……まさか現代東京の地下に、こんな巨大建造物があるとは……」
「地下鉄とかもうまく避けてるのかな?いずれにせよ一朝一夕で出来るものじゃあない気がしてならないけどね」
その時横合いから飛んできた声に、一旦会話は遮られ。
「大正解です。ココが設立されたのは戦後程なく。昭和27年の事になります」
磨き込まれた革靴を履いてやってきた、スーツ姿の男性は。
「……時間キッチリ。流石早人か」
「お元気そうで何よりです、仗助さん。美波ちゃんも」
いきなり割り込んですまないね、と文香ちゃんたちに詫びながら私達に挨拶を返してきた男性は、仗助さんと同じ杜王町出身の、川尻早人さんだった。
この人はかつて、かの吉良吉影のスタンド犯罪に巻き込まれた被害者遺族の一人である。杜王のぶどうヶ丘高校を出た後は、SPW財団の資金援助を受け大学に進学。卒業後にここ目黒支部に就職した人だ。私や仗助さんとは十年来の知己でもある。
「今日はサンキューな。急で悪いが色々頼む」
「僕の名前で会議室確保しときましたんでごゆっくり。それと……」
「ん?」
そこで彼は声を潜めてPさんに何事か囁いた。秘めた小声……ではあるが、三人は兎も角、私の強化された聴覚なら聞き取れる。つまりこれは
「IU警備の件で、
「……了解」
大公女。財団内部で発せられるその符丁に当てはまる人物は一人しかない。……成る程ね。
「
「迷ってる。が、これも引かれあった結果と考えれば、潮時かもな」
彼らが言葉に出していたのはそこまで。そうして何やら決意を固めたらしい仗助さんが拳を握り締めたのが、ちらと横目で見渡せた。
☆
とりあえず……SPW財団について、皆どんな認識だ?
会議室を借りた私達を代表して仗助さんが三人にかました前振りの質問は、確認の意も込めてのもの。今後関わらざるを得ないだろう皆の認識を、ある程度知っておきたい意図からだった。
「……元々、表向きはただの石油メジャー。しかしその実、現在では裏社会と強い繋がりがあるとかってなら」
マーだかモーだかいう雑誌を一時期購読してたこともあった、という飛鳥ちゃん。曰くその手の陰謀論は中二病罹患者なら勝手に詳しくなるらしい。
……実際に財団は裏社会の組織(パッショーネ)と協力関係にあるから、陰謀じゃなくて事実なんだけどね。
「あたしから見ると、医薬品・化学薬品の治験と開発に熱心な医療メーカー、って感じ?」
何を開発してるのか、守秘義務があるため具体的な言葉を彼女は濁す。それもそのはず、じつは志希ちゃんは未発表の新薬開発に関わろうとしている段階にあった。実はそのためのテキサス本部への招聘だったんだけど、ディアナ一派の襲撃により頓挫してしまったのが現況だったり。
「文香ちゃんは?」
「会社四季報に載っているくらいのことでしたら」
「なーるほど」
企業誌まで当然の如く読んでるのは文香ちゃん。流石文科三類主席入学の実績は伊達じゃない(ちなみに私は文科一類)。
とりあえず3年の進振りまではずっと一緒だろうし、改めてこれからもよろしく我が学友よ。
閑話休題。話題はスタンド関連に立ち戻る。で、財団の目的だっけ?私にとっては耳タコだけど、ラウンズの皆には初耳なんだから特に大事だ。「要点だけ先に話すぜ」と断ったPさんによれば。
「SPW財団の究極の目的は、『超常現象の解析・保存・研究』。そして特異な現象を起こすスタンド使いにより齎される『世界壊乱の阻止』。これが現在の財団の『社是』だ」
仗助さん曰く、そういう事。当然、ジョースター家に連なる者の多くもこの社是に共鳴し協力している。会社であるだけでなく対スタンド実力組織の性格も持つのが、現在の財団の特徴だ。
ちなみに財団協力者は法人・個人問わず全世界に存在している。それこそマフィアのボスから大学教授(ウチのパパ)に、その辺のコンビニ店員さんまで色々だ。そうそう、日本の大手コンビニチェーンのひとつ、『OWSON』もSPW財団傘下の企業なので念の為。
趣旨説明が終わったとこで次の課題。情報を開示した上で、皆の今後の身の振り方をどう決めるかである。こればかりは一人ひとりが決めてもらわなければならない。
後ろにいる保護者?三人の動向も聞いてみよう、となるのは当然の帰結であるので伺ってみた。すると。
『心に従え。私からはそれだけよ』
『人生に於いて至上のお宝とは何か、考えてから決めると良い』
『初歩的なことだ、我が係累』
はい、超簡潔でした。
「いいのか……いや、
私の意まで包含し、代表して仗助さんが尋ねる。返事は揃って目礼だった。ならば後は、本人達に最終確認を残すのみ。
「皆、どうしたい……?」
返答次第で、彼女達の運命、いや人生は大きく変わる。ここからは、引き返せない分岐点。場合によっては人を傷つけ、殺めることになるかも知れない。アイドルどころか人間としての道を踏み外すこともあるかもしれない。半分、震えていたかも知れない私の声は。
「当然、闘うさ。どのみちココで食い止められなきゃ、セカイ自体が丸ごと滅亡するんだろう?アイドルもへったくれもないよ、そんな状況じゃあね」
先陣を切ったのは、この場で最も年若い少女。シニカルな口調の裏に隠した烈火の如き強い意思に、思わず息を呑んだ。
「美波ちゃん、あたしはアイドルの前に
その人生を、常に栄光と名声で彩ってきた鬼才が鋭く言い放つ。自身の昏い情熱すら闘志に換える麒麟児は、臆面もなくウインクついでに決め台詞。そして。
「……肩を預けるに不足なのも分かります。己が至らなさを食んでもいます。……しかし、露払い程度十全に、為し得てご覧に入れましょう」
「何れ、全て読み解くつもりでいますが」と冷徹に述べた同級生は、いつもと変わらずクールな表情。でも、その台詞は果てしなく貪欲。敵ですら、己の書庫を彩る
発露の仕方は三者三様、しかし結論皆同じ。すべからく。
「全員、ね」
ただ、考えてみれば当然かもしれなかった。彼女達は過去、皆不当に大切な師の、父祖の命と平穏を奪われてきたのだ。
そのせいで本来なら一生関わらぬ筈の世界に巻き込まれ、訳の分からぬ力を手にすることになった。傷付き戸惑っただろう、恐怖や焦燥も覚えただろう。しかしそこから立ち上がり困難な道を踏破せんとする、その覚悟に最上の敬意を覚える。
「……有難う、皆……!」
思わず声に出ていた。仲間に隠し事をせずに済む感覚とは、なんて嬉しく得難いものなんだろう。彼女達のためとは言え、今までどこかで引いていた一線が取り払われたのを感じた。
沸き立つ心の高揚ゆえか、右手に持ってたコーヒーのスチール缶を思わず縦に握り潰す。隣席の文香ちゃんが唖然としてたけど、これくらいはご愛嬌だ。
☆
それから30分後。話題が尽きるなんてことは勿論なく、自分達の共通点を探ることにフェーズは移っていた。
「気になるのがやっぱり発現時期だね。美波さんはともかくとして三人ともほぼ同じタイミングっていうのは、偶然にしては出来すぎてる」
「それに赤石。今のトコ分かってるのは古代以前のものってことだけだから、そろそろ何か新情報欲しいにゃあ〜」
「またぞろ、考える必要がありますね。確たるソースが有りそうなところと言うと……」
「……やっぱり
掃除も兼ねて家探しでもしようかな、と内心思い至った時だった。
「……あ、そういえばさ」
志希ちゃんが一言。このスーパーギフテッド、また鋭く何かを閃いたようで。
「さっき聞いた『ロマノフの遺産』って、要するに当時の帝政ロシアから財宝とかこっそり持ち出して来ちゃった、ってことなの?」
興味本位でふと投げられた質問に、文香ちゃんと飛鳥ちゃんも追随する。
「…………確かにそれなら『遺産』、ですね。ドサクサ紛れに、というなら加えて人も……ですか?亡命ロシア人の方々も『遺産』に包含しているならば、ですが……」
「可能性としてあり得るんじゃあないかな。財宝みたいな人材……そうだね、神戸の某洋菓子店創業者とか、巨人の元プロ野球選手とか?」
「え、ええーっと…………」
具体名が二名ほど浮かんだ質問を飛鳥ちゃんが飛ばしたところで、私は思わず言葉に詰まる。何故って彼女達の指摘、フツーに全部正解だからだ。
「遺産」の正体について事実確認をしていくと、先ず皇女殿下救助自体は英国に資料が残されているので確定事項。しかし他は極めて曖昧だったりする。
ロマノフ王朝が長年にわたり溜め込んだ金塊や宝石の幾らかは、革命の救出劇に紛れて当時の日英政府が回収(奪取)し、それぞれ帝銀やイングランド王立銀行にこっそりぶち込んだらしい。
らしい、というのは証拠書類は全て燃やして隠蔽したので現存せず、移送に関わった人々は口を固く閉ざしていた上、現在は全員鬼籍に入っているため聞きようがないからだ。
どう聞いても火事場泥棒だけど、そんなわけで真相は闇の中。
ただ、人に関しては芸術家や音楽家、料理人に至るまで様々な形でサルベージしたとのこと。職人を企業で召し抱えたり、貴族のご息女は華族に嫁入り・婿入りさせたり、軍人を政府機関で雇ったりとあの手この手が尽くされた。
全部で200万人近いとされた亡命者のうち、実に10分の1近くが日本に来日。慣れぬ異国の地で同胞意識を強めた彼等は、ある互助会を結成した。やがて日本有数のインテリジェンスにまで成長するこの組織こそ、通称を「ロマノフの網」という。
「……話すとちょっと、長くなるんだけど……」
そして在日ロシアン・ネットワークの精神的支柱であり、絶大なる権威を持つ或るファミリーとジョースター家は、長年に渡り蜜月関係にある。
その家族の子息について語ろうか、と思い至った時分。これ以上ないジャストのタイミングで、プシュ、と機密扉が開け放たれる音がした。目をやると、視界に飛び込んできた人は。
「すみません、迂闊でした。私としたことがサティポロジア・ビートルのつかみ取り大会に現を抜かしてしまい、つい……」
件のファミリーについて話さんとした、正にその瞬間。やにわにドアを開けて入ってきたのは、煌めく白肌と銀髪に切れ長の碧眼を持つスタンド使い。星見を愛しサンボを操る、麗しき乙女座の姫君だった。
「!」
刹那の間で私の顔を認識し、怜悧な鉄仮面に花のような笑みを浮かべた彼女の正体を、一言で表すと。
「ミナミ、ジョースケ!お二人ともここにいましたか!」
───即ち、生けるロマノフの遺産である。
☆
音もなくドアを開け、足音を立てずにやって来た銀髪美少女。
急な来訪だがなんのその、とりあえず自己紹介でも、となったのだけれど。
「ハラショー。わたくしミナミの正妻アナスタシアと申します。以後よしなに」
「のっけから違う!」
「??何が違うんですか?」
きょとん、とした顔つきで小首を可愛く傾げる小悪魔幼馴染。純真な眼でこっちを見るんじゃあない竹馬の友よ。それ全部「演技」ってのも分かってるからね私?
……しかしこの巧みな偽装、初見の我が同僚達は見抜けなかったらしく。
「……えーっと、百合萌えってやつかな?」
「それともキマシタワー?あるいは性の
「…………大学に入ってからこれまで4人に告白されたのに、全員袖にしていたのはそういう事だったんです、か…………?」
ちょっと蒼褪めてる人、打ち上げられた魚みたいな目になってる人、顎に手を当て真面目に推理してる人計一人ずつ。あの、貴女たち、悪ノリなのか本心で喋ってるのかどっちですか。一先ずは誤解を解かねば、なんてったっていずれも大事な仲間だもんげ……なんだけどさあ!
「飛鳥ちゃんと志希ちゃんガチトーンでヒかないで!?それから文香ちゃん、その内半分は同性だったからね!?断るの当然だからね!!?」
大慌てで釈明。……ああそうそう、補足すると私、奇しくも大学入ってから告られた回数は文香ちゃんと同じく4人。無論全員断ったけど。いやだってねえ、一目惚れとかよく知らない人に言われても正直困るし……。
しかし文香ちゃんが全員異性から突撃されてたのに対し、私はその半数が同性から。何故だ。男子から見て女子力が足りぬというのか。これでも家事は得意なんだけど。
でもこの暴露、余計に燃料投下しただけだったみたいで。
「文香ちゃん、その話詳しくplease?」
「……一例を挙げますと、居酒屋で酩酊した男性に絡まれていた同期の一女を颯爽と救出。あとは流れです」
「フラグメイカーだねえリーダー」
「狙ってそうしたんじゃあないわよ!」
「ミナミはスケコマシですから」
「アーニャちゃんちょっと静かに」
ていうかサラッとウチのメンバーに馴染んでません貴女?「ジョースター家の女誑しぶりには困ったものです。姉弟揃ってこれなんですよ」などと余計なことを言い出した。
「姉弟?あ、そういえば美波ちゃん、前に弟さんいるって言ってたねぇ」
「写真ありますよ?」
「待って、なんでアーニャちゃんがウチの家族写真持ってるの?」
「?」
いやいや我が幼馴染よ、そこで「え、コイツ何言ってるんだ」みたいな顔されても。一方で写真はいつのまにか彼女のスマホにでかでかと表示されており。
「空条博士は分かるとして、この人がお母さん……?」
「若っ……ていうかお姉さんじゃあないんだね……」
「弟さん、どことなくPさんにも似ていますね」
写真一枚でやいのやいの。今まで口頭だけでまともに見せたことなかったからそれもあるかもだけど、下手すると際限なく続くやつだこれ。いつのまにかシリアスの混じった会議から、巷で「話にオチがない」と酷評される女子会特有のノリに移行していたところで。
「はーいはい、悪りィけどオマエらちょっとそこまでな。勿論ライブもだけどよ、敵さんと抗する上で話しときたいことがあんだ」
埒があかねェ、とばかり横からPさん。助かりますと思ったけど。
「話しときたいこと……?ああ成る程、修行ですね?」
関心したようにそう呟いてパン、と両手を叩いたアーニャちゃん。どうも何やら思い付いたらしいけど、これは良からぬ類の笑顔だ。証拠に以前、弟を騙してオカマバーに連れていった時と同じ笑顔をしている。
「修行?」
「スタンド使い、とならば修行が要るんですよ、皆さん」
「というと」
「なにするの〜?」
「色々です。ジャンプ漫画のお約束として修行パートは不可避です。ダレるとアンケート不人気からの打ち切りコースですが、これ無くして強さへの説得力は生まれません」
「……何となく分かりました。……友情・努力・勝利、ですね?」
週刊漫画も書の一部とばかり毎週チェック済のまめな私の同窓生、素早く三原則をそらんじる。私達、あくまでアイドルであって少年誌の主人公じゃあないんだけどね。そのポジションは経歴的に(吸血鬼やら殺人鬼と闘ってた)パパとか仗助さんの方が合ってる気がする。
「ダー。というわけでこれからIU本選まで、しばし私にお付き合い下さい。先ずは『波紋』を覚えましょう」
にっこりと微笑んだ彼女は、タメを一瞬作ってからとんでもないことを言い出した。とりあえず、と前置きした上で。
「
次回、特訓回?