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最後にホワイトクリスマス(最黒)とかやってほしい
やりそう(根拠なし)
ゲールマンに言われたように墓石に触れると意識が落ちていくのを感じた。なるほど、いきなり診療所で目覚めたのは、これを無意識のうちに触れていたかららしい。
しかし、驚きはしないものの不思議ではある。疑問を上げると枚挙に暇がないから漠然としたまま放っておくが、この街は何なんだ。この街、というよりもこれの規模はもはや「世界」と言っても差し支えないほどに広がっている。私の見知っていた、あるいは全く知らない土地が、少なくとも私の記憶している常識を遥かに超越している。獣、狩人、動く人形。支離滅裂さ、論理的整合性にのみ着目するのなら、まるで、夢だ。
しかし自分の主観が何より頼りないという事実はさも当然といった顔で自分の脳内に居座っている。一から十まで分からない故の諦めなのか、はたまた単に疲れただけなのか、もはや問題を解決するなんていう意気込みは消え失せてしまったようだ。これからの私は惰性のみで動くのだろう。
などと適当な事を考えていると目の前にあの野郎、ギルバートの家が像を結んだ。曖昧だった街並みもドミノ倒しのように鮮明になっていく。
西日も相まって、なんというか、見るだけならば非常に幻想的な街なのだが。
とにかく、言わねばなるまい。この野郎。
「ああ、あなたですか。ここに来たということは、大橋は通れなかったんですか?」
通れるも何も、ふざけた怪物に潰されて潰されて潰されて、ピンク色の肉塊に変えられたんだぞ。
「そ…れは、なんとも災難というか…その… すみませんでした。私の浅学ゆえ…」
…まあ、いい。その様子だと本当に知らなかったようだし、今回は不運な事故ということで手を打とう。なんて死の価値が薄れているのは正直どうかとは思っている。
「…なら、確か、聖堂街へは別の道でも行けるはずです」
ほう。あの怪物と合わなくて済むならそれに越したことはない。
「大橋を挟んで市街の南側に、なんというか、あまりよくない地域があるのですが。そこから、聖堂街に下水橋が架かっていたはずです。そこを進めば、聖堂街へたどり着けます。 …たしか」
自信なさげに言うのは、私が大橋へ行ったときの惨状を想像したからか。
しかし良いことを聞いた。南側の下水橋。行く価値は大いにある。
「それに、今夜は獣狩りの夜です。いつもであれば、よそ者の私達なら近づくこともままならないでしょうが、このふざけた夜は私達にとって好機でもある。そうでしょう?」
偶然にも、生きた獣とは出会うことなくギルバートの言っていた聖堂街へ至る道――下水橋へとついた。ただ道程に幾つもの獣の死体があり、気がかりになるといえばなるのだが、それを考えても仕方ないだろうし、恐らくは志高いヤーナム民がやったことなのだろう。腰あたりを斧か鋸かで力任せに引き裂かれたようなそれは、ヤーナム民の屈強さを示すものなのだろうか。
この橋を通れば、聖堂街。ようやく少しだけ地理がわかってきたヤーナム市街を離れるのは心配だが、前へ進まねば。
「~~~~」
「~~!」
下水橋の中腹まで来たか、その時だった。
前方から肥大する光の塊。ぼうぼうばちばちと爆ぜながら転がるその球体は、ひと一人など簡単に押しつぶせるほどの大きさをたたえ、主人を見つけた飼い犬のように近づいてくる。
避ける。何処へ。右側、一人が通れるくらいの隙間。今私は橋の中心、少し左より。走って間に合うか、否か。
飛ぶしか無い。考えるより先に体が動いていた。
右に飛び込む。何も考えずに身を投げだした私は、その意に反して右肩、背中、腰を地面に滑らせ、損害といえば床との接地面の些細な汚れ、燃える玉に僅かに焦がされた服の裾くらいで、この身には全くといっていいほど無傷だった。私はかつて、運動が出来たのだろうか。
私の脇を通り過ぎ、橋を逆行する炎を眺めて、思い出した。これがゲールマンの言っていた「狩人の遺志」とやらか。狩人とは、なかなか瀬戸際の駆け引きをしているらしい。
自分が狩人になる。 その実感が持てたような気がした。
しかし、橋の終点付近で獲物を今か今かと待ち望んでいる、推定さっきの球体を転がしてきた犯人二人組とどう対峙すればいいのか。私に流れる狩人の血はその答えを明確に提示してはくれなかった。
右手には仕込み杖、左手には短銃。
私の辛うじて残っている一般常識は「杖よりも銃のほうが強い」と言う。私もそう思う。となれば答えは一つだ。
二人組のうち、太ってない方に銃口を向ける。引き金を引く。
ぱあん。
乾いた銃声はヤーナム市街に広がり、馴染み、吸い込まれた。
そしてまた銃弾も、威力が途中で減衰し、なぜか液体となって、痩せたヤーナム民の顔へ降り注いだ。
幾ばくかの沈黙。
もの言いたげな表情のヤーナム民。きっと同じような顔を私もしているのだろう。
二人の視線が交差する、奇妙な時間はつかの間で終わりを告げた。
「獣だ! 汚れた獣だ!」
擦り切れた声が響く。当然、二人はこちらへと襲い掛かってくる。
私の常識というのは、余りあてにならないのかもしれない。
杖を握りしめ、短銃も多少の怒りを含めて握りしめる。
さきに距離を詰めてきたのは、やはり痩せている方だった。
右手に持った松明をこちらへ突き出してくる。あまりに突然の動作で少し対応が遅れたが、後ろに飛び退いて避ける。
やはり、体の動きが違う。あの診療所で苦し紛れに避けた動きではなく、洗練された回避だ。
お返しとして、大きく重心を前に傾けた男の顔めがけて杖を突き出す。男の頭蓋骨はあっさり杖を受け入れた。返り血が右手に、右腕に降り掛かった。
深く刺さった杖を頭蓋から引き抜く。刺した時とは段違いの血液が身にべっとりと塗りたくられる。
衛生的ではない。生理的には排斥すべき事のはずだ。しかしなぜか、興奮する自分がいる。周囲の景色がより鮮明に、色彩豊かに見える。
ついで太った男。アルフレートと退治していたような巨漢。しかしあの時の個体とは違って石ではなく、等身大の石像を持っている。あれで殴られてはひとたまりもないだろう。
まだ互いの攻撃範囲ではない。一歩、二歩と巨漢が近づいてくる。まだ大丈夫。
と思った瞬間巨漢が跳んだ。その身に似つかわしくない俊敏さでこちらへ、石像を持った右手を掲げて跳んでくる。
ぱあん。
無意識だった。無意識の指先により放たれた無機物の銃弾は、巨漢の顔に直撃した。距離も十分に近い。威力は期待できる。
巨漢が体制を崩す。慣性などないかのようにその場で撃墜され、でっぷりと太った腹を無防備に見せつけてくる。
喜んで触りたいものではない。だが、なんというか、もっと温みが欲しかった。生きている実感を、快楽を求めたかった。それに、アルフレートの行動が重なった。
右腕、の肘までもが巨漢の腹部に突き刺される。
ぐちゅり、と体内の臓器を適当につかむ。巨漢と目が合う。巨漢の顔には痛みよりも恐怖が湛えられていた。それは怪物に向けられる目であり、私が大橋の異形に向けていた目だった。
溢れんばかりの臓物を掴んだ右腕を、力任せに体内からえぐり出す。右腕そのものが快楽になったようだった。
ものを持てるようになったばかりの子供に切開手術を頼むと出来上がるような裂傷から腸やら胃やらが夕日に晒される。手に握られた内臓から温かい鼓動を感じる。まだこの臓器は生きている。
常人離れした量の血液が、全身に降り掛かる。これではもはや、血塗れでないところを探すほうが難しそうだ。
夕日と目に入った紅が街並みを赤く染め上げていた。時折吹く風が血を乾かす。火照った体には心地よかった。生の充足。
狩人は血に酔う。つまりそういうことなのか。
これまでの不条理。それが全て払拭されるほどの悦楽が全身を駆け抜けていった。
当初の目的を忘れたわけではない。しかしどうしても、もし「青ざめた血」を手に入れることができたら、どんなに素晴らしいことだろうか。そんな妄想が止められなかった。理性とはかくも脆いものか。
半ば正気でない状態で歩みをすすめる。この先に聖堂街がある。そして多分、獣狩りの群衆も。
不安ではある。しかしそれ以上に期待があった。
下水橋の先で、本能に行動原理の過半を執られた私を迎えたのは、地下墓地だった。なんと趣味の悪い。
「…どこもかしこも獣ばかりだ」
…誰かがいる。目を凝らすと、墓石の影で手斧を振り下ろしている長身の男がいた。声からすると若くはない。壮年、といったところか。
耳もすませば、断続的に水っぽい音が響く。それは男の手斧の動きと連動しているようだ。
「貴様も、いずれそうなるのだろう?」
男は振り返り、その顔を露わにする。
つばのある帽子をかぶっているせいでよく見えないが、目元には包帯が巻かれており、口元からは少し顕著な犬歯が覗く。服装からすると神父なのだろうか。右手に持つ手斧からは血が滴っている。先程まで生きていた何かを裂いていたのだろう。
目元は隠されているはずなのに、こちらを視線で射抜かれている感覚。先程までの熱量が一気に冷えるのを感じた。
これは診療所の。大橋のあの感覚。圧倒的な強者と対峙したときの絶望。
背中に冷たいものが通り、耳鳴りがする。さっき戦ったときのように、どう動くべきか、何をすべきかが全く分からない。思考回路が凍りついている。
「人間のフリが得意なんだな。すぐに化けの皮を剥がしてやるさ」
男が歩み寄ってくる。右手の斧が不気味に輝く。その刃は鈍い。だがあの大男の膂力で振り回されれば命の一つや二つ簡単に消え失せる。
と、男が一気に近づいてきた。この動きは紛れもなく狩人の身のこなし。
「っ!」
「ほう、動けるのか。ぼうっと突っ立って、ただの木偶の坊かと思ったが」
踏み込まれると同時に地面をこすりつつ振り上げられた斧をなんとか躱す。石畳の床と斧の間に火花が迸る。
しかし斧こそ躱せど、男が左手に持っていた銃までもは避けられない。
間髪入れずに発射された散弾は私の腹を――
彼女の衣服を幾ばくか吹き飛ばし、腹部に幾つもの風穴を開けた。
「ぐぇっ…ぅぷ」
彼女の口から血が溢れる。腹から血が滲み出る。彼女の白い肌に、鮮血はよく映える。
男はその血塗れの腹部に強烈な蹴りを叩き込んだ。
「おぼぉっ!?」
大きく吹き飛ばされ、壁に衝突する。壁面に血の花を咲かせた後、彼女はずるずると地面にへたり込む。もう目は虚ろで、何を見ているのかもわからない。
「なんだ、その程度か」
「かっ…はひゅ…」
息も絶え絶えといった様子の彼女の左脚に、長身の男は手斧を叩き付ける。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
「喚くな」
男は喉めがけて斧頭をぶち込む。
「~~!」
声にならない悲鳴とはこのことなのだろう。咳き込むことも出来ず、強烈な痛みが喉に留まって増幅する。目は充血し、涙さえ出ている。
いや、涙だけではない。鼻から、口から、体液という体液が漏れ出ている。無様。その言葉が似合う状況に彼女は置かれていた。
「呪われた獣共が… お前らのせいで、ヴィオラは…」
怨嗟のごとく呟いた男は散弾銃も斧も地面へ置いて首根っこを左手で掴み、彼女を持ち上げた。
男の右手による、渾身の殴打が彼女の腹へ。
「がはっ!」
無理やり押し上げられた横隔膜によりひねり出される声、というよりも引っかかった空気と呼んだほうが的確なそれが、唾液や血と一緒に彼女の口から吐き出される。
「簡単に殺しはしない」
どす、どす、どす、と男が殴るたび、彼女の腹部からはぐちゅ、ごぷ、じゅぐ、と湿っぽい音が響く。散弾により開いた傷口から血液が飛び散る。
「お゛っ、げぽっ、ぅぐっ」
「痛いか」
「い゛っ、や、やめ」
「人間の言葉を喋るな、獣風情が」
「ぅぶっ!?」
ひときわ強いパンチが叩き込まれる。
「一発一発が贖罪と思え」
「ぶっ、ごぇっ、ぐえっ」
またも再開される殴打。彼女の柔らかい腹に男の硬い拳が何度となくめり込む。段々と彼女の反応が薄くなるのを見ると男は、
「潮時か」
その血に塗れた逞しい右腕を彼女の体内へ突き入れた。
「ぐぶぇ!」
さっき彼女がヤーナム民にそうしたように、男は内蔵を握りしめる。ぐちゅ、と音がなる。
いま彼女の内臓に内容物はない。しかし胃液などの各分泌液はあるわけで、彼女は口から粘っこくも透明な液を吐き出した。
「まったく、穢らわしい」
内蔵を手ですりつぶしながらそう呟く男の声には、内容と裏腹に興奮の色が混じっている。それは血に酔う狩人の性であり、逃れられぬ業である。
「ゃ…やぇて…」
彼女の掠れた声。精一杯の懇願だった。
だが、それが受け入れられることはなく、
「ぉご…ぷ…」
「最後まで人のふりか」
グロ注意です
途中から視点を変更したんですが まあ どうなんでしょうね
大丈夫かなこれ
こわい
残酷な描写の加護はどこまでなんだ
誰か教えてください