こちら異世界になります。   作:魔妬

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サボってないよ?(震え声)


第5話「短期決戦」

「うおあぁあ!」

 

ミスリはとんでもない速さで攻撃を繰り出す。視界で捉えるのが難しいほどに

だが、なんだか体が勝手に動くような感覚。奇跡的に全て避けきれている

 

「っ…!」

 

ミスリは少し表情を歪め、攻撃をピタリとやめる。その隙にまとは思いっきりバックステップで距離をとる

ひとまず斬撃の渦から抜け出せた、と少し安心する

が、目の前から、まっすぐ何かが高速で飛んでくる

ナイフ。懐にでも隠していたのだろうか、だいぶ小型のナイフだった

 

「ヌッ!」

 

これまた謎の奇跡的な反射神経で体を海老反りにし、ギリギリで避ける…事は出来ず、でこにほんの少しかすめる

すぐに触ると、少量血が出てるが、大したことは無かった

ミスリは休む暇も与えずにすぐさま攻撃に移ってくる

一瞬で距離を詰められ、腹に蹴りを入れられる

 

「うっ…!」

 

腹から何かが込み上げてくるような感覚がする

ミスリは追い打ちはしてこず、ゆっくりと下がる

能力の警戒でもしているのだろうか。とりあえず、ゴリ押されないで良かった

 

相手の攻撃が激しい。こちらから攻撃に移る隙が無いように見える

こんなのを戦闘経験ド素人の人に戦わせるか?普通

 

『まとクンなら行けるって!きっと。おそらく。多分』

 

(自信無くしてんじゃねぇよ!不安になるじゃん!)

 

戦闘技術はあれと言えど、身体能力は謎の勇者補正でまとでも高い

実際、今の蹴りも痛みは思った以上に無い

あの剣で脳天でも貫かれたりしない限り死にはしないだろう

…まぁ動きが鈍くなるイコール死、みたいなところはあるから足などやられてもやばいだろうが

とりあえず当たらなければいい。攻撃はチャンスと思った瞬間だけ。後は全部逃げる。生き残ることが大事だ

ーかと言って持久戦に持ち込んだらこっちが不利なのだが

 

『そんな困ったまとクンにアドバーイス』

 

そう言って話を聞こうとした瞬間、またしてもミスリが距離を詰めてきた

 

「ちょまぁあ!!」

 

こういう話をしている最中はせめて動かないでくれよ!?と心の中で叫ぶ

 

『逆に回避を考えず攻撃に無理矢理移ってみなよ』

 

(はぁ!?つまり死ねと?そう仰るのですか?おぉん!?)

 

ミスリの鋭い剣さばき

避けることに専念しているが、ところどころかすり傷ができる

こっから避けることを捨てたら速攻で死ぬ未来しか見えない。なのにこいつはそれをやれと

うん絶対ミスリより先にこいつやった方がいいだろまじで

 

『物は試しってさっきも言ったろ?』

 

(あぁ…そうですか…)

 

半分死んだ目をしながら行動に移ろうとする

攻撃が激しすぎる。一瞬でも隙を見せた瞬間終わりそうなくらい

心を落ち着かせながら、必死に避ける

 

そして、頭を真っ白にし、避けることを考えず、女の子の顔面に向かってグーを飛ばす

がしかし、ミスリが隙を見せて攻撃を仕掛けた訳では無く、攻撃してる最中にこちらも攻撃を仕掛けた

もちろんミスりの攻撃の方が先に届くわけで

まとの拳が動き出した瞬間には、ミスリの剣はまとの首元まで来ている

 

 

 

人は"死ぬ危険"がすぐそこまで来た時、自分を守るためにどうしたらいいか、という情報を吸収するために脳をフル回転させる。その時周りがスローに感じるらしい

今のまとがそれ。首が飛ぶまでコンマ1秒も無いだろう。しかし、まとにはこの瞬間がゆっくりに感じていた

脳が情報処理を高速で行う。これほどにないくらいに、早く

しかし、結果は絶望ルートしかない。今から避けの方向に移しても間に合わないであろう

あぁ、ここで死ぬんやなって。とりあえずあの男の顔をほんとに1発は殴りたかったなって。そう思った

 

 

 

 

 

 

 

しかし、ミスリの剣はピタリと止まった

そして、凄い勢いで後ろへ下がった。ミスリの顔は焦りの表情だった。息も切らしている

 

「ふぁ」

 

思わずそんな間抜けな声を出してしまう

能力を持つ勇者とはいえ子供のパンチ。あそこまで大袈裟に下がらくても…

 

『能力を持ってるやつはこの国ではそんだけ恐れられてんの。どうやら相手はまとクンの能力知らないらしいしね』

 

なるほ…ど…?

つまり相手からしたら俺はどんな攻撃を仕掛けてくるかわからないわけだ。能力があることだけは分かっているから、警戒を怠っては死ぬと思っている。相手も慎重になってしまうわけだ

…勇者ライセンスに能力書かれてんじゃねぇの?読まなかったのかな?

なんて疑問に、男は答えない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(危なかった…?)

 

ミスリは能力持ちの子供から距離をとりつつも、しっかりと目を離さずにいた

冷や汗を軽く拭う

今まで、この騎士人生を歩んできて

数々の強敵と戦ってきた。剣を交えてきた

しかし、能力を持つ者とは会ったことすらない

能力を持つ者はただただ理不尽な力を持つと、そう聞いていた。あんな子供でも、警戒を怠ることができない

相手がどんな力を持つのか、それさえ知ればなにか対策が思いつくと思うが、情報が少ない

最初から能力を使わないのは、遊んでいるのか。それともそういう能力なのか

もしスロースターターな能力だったら、こんな思考をしている時間も惜しい

ここは一秒でも早くケリをつけないと。そんな予感がする

そう思い、床を蹴り飛ばし、男の首を狙って剣を突き出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃

 

まとがいた地下牢は、三階層に分かれている

一階層は軽い犯罪を犯した者から殺人を犯した者達が放り込まれる場所

二階層は一般兵士が数人係でも抑えきれないような危険人物を閉じ込める場所

三階層は王が要注意とみなした者を厳重に監禁する場所

まとがいたのは二階層。能力を持っている、というだけで住民に危害を加えたなどの事実はないため、三階層ではない

 

そしてその三階層に、まとと同じような理由で監禁されている人間がいた

こちらも能力を持っているから、という理由で捕まったのが、まとと違い三階層にいるのは、その能力が関係されていた

 

 

「お腹すいてるんだけどぉ!?」

 

そんな甲高い声が、ほぼ真っ暗な地下牢の空間に響き渡る

三階層の危険人物と言えど、食事は与えられていた。と言っても、味で言えばとても食べれるものではないのだが

それでも、それを文句言わず食していた

がしかし、今日、目が覚めた頃から見張りの兵士どころか、人の声すらも確認することが出来ない

いつも食事を渡すのは兵士なので、兵士がいない今、起きた時から空腹が収まらない

 

「はぁ…」

 

溜息をつき、勢いよく床に座る

ふと、ここにいる経緯について考える

 

この牢屋にくる前の日、というより前の記憶は、友達の家に泊まっていた

そして、いつもよりは少し早く、みんなで寝た。そして目が覚めたら一人でここにいた

そっからは娯楽も無く不味い飯しか食わされないしほぼ視界が真っ暗な場所での監禁

 

なんでこんなところにいるんだろうなぁ…と、腹の虫を鳴らしながら途方に暮れる

とりあえず飯をくれ。などと考えながら床に手をつく

すると、右手の方になんだか薄っぺらいものの感触が伝わる

そちらの方向を見ることはなく、手探りでそれを掴み、自分の目の前へと持って来る

紙だった。なんだか文字が書かれているが、暗いせいでほとんど見えない

しかもおそらく半分以上の字が霞んでいる。ほとんどが読めない状態

しかし、1箇所だけ綺麗に残っているところがあった。そこを、目を凝らして読む

 

「さわっ…たもの…を…操る…?」

 

そんなことが書かれていた。誰かが切り捨てた小説とかの一部なのか。それでも、必要のないものなので後ろへぽいと投げ捨てる

 

(触ったものを操る…)

 

もし自分が異世界にいるとしたら、そんな能力が欲しいなぁ…などと思う

地形などを操り、敵を翻弄するのがかっこいいから、と

それに、今この状況で、そんな能力を持っていたら、鉄格子なんて簡単に開くのだろうな…

立ち上がり、ここから出られる自分をイメージしながら、鉄格子を握り軽く引っ張る

 

ぐにゃりと

 

鉄格子が、力によって捻じ曲げられただとか、そんなんでは有り得ないような形になる

それを見て、呆気に取られる。今、何が起こったのか、脳が処理を急いでいる

今、鉄格子を握り、軽く引っ張った。軽く、本当に。そしたら、鉄格子がまるで粘土のように勢いよく形を変えた

何を言っているのか分からねぇと思うが、俺も何を言っているのか…じゃなくて

 

ひとまず、深呼吸

落ち着いて、今するべきことを考えよう

まず、なぜ鉄格子がこんなにも簡単に開いたのか

おそらくなのだが、さっき髪に書いてあった【触ったものを操る】ことができるのだろう

多分だが…試しにともう1回、別の鉄格子の棒を触る。すると、先端の方からぐにゃりと曲がる

 

「すげぇ…」

 

自分の手のひらを見ながら感動する

そして、何かを確認するように耳を済ませる

人の気配。本当に兵士がいないのか。それを確認するために。音は全く聞こえない。驚くくらいに静寂

 

なぜそんなことを確認するのかだって?

そんなの決まってるじゃない

 

曲げられた鉄格子の隙間を軽々と通る。すぐ近くに、この暗い場所に微かに光が刺している階段がある

なにも考えず、そこへと走り出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おうおうおぅおうおぅぉああ!」

 

相変わらず奇跡的な反射神経で高速の剣の突きを避ける

しかし、目が流石に慣れてきたか。しっかりと捉えることもできてきた

これなら反撃も可能…なんて訳にはいかない

目が追い付こうが、体は避けるので必死

 

さっきみたいに無理矢理に行動に移るってのは…やめておいた方がいいだろうか。もしかしたらはったりと気づいているのかもしれない

いや、ここは早急に決めなきゃいけないだろう。今のまとも身体能力は高いが、騎士団長の方こそ底が知れない体力を持っているだろう

さっきと同じように。回避は考えずに拳を突き出せばいい。避けられても一瞬は無防備になるだろう。そこは追い討ちしていこう

 

 

思考している間も剣は止まらない。まとの目は剣の軌道をしっかりと捉える。そして、相手の剣がこちらの首を狙って突き出される

まとは、むしろ攻撃に当たりにいくような勢いで、先程のように頭を真っ白にし、拳を握る

心の中で、大丈夫、と思っているのだろう。さっきみたいにスローには感じない

 

ミスリは一瞬、全く同じ反応を示した。剣が一瞬止まる

ほんの少しだけ退ける。それが、まとには大きな隙に見えた

 

 

しかし、相手は何度同じ手を使っても全て同じ手で返してやられるゲームの敵モブのようなAIを持った機械などではない

剣をまた強く握りしめ、まとに向かって突き出す。剣はまとの肩を掠める。1度少しだけ下がってしまったため、咄嗟に突き出した剣の軌道は最初とは若干ずれてた。しかし、戦況を変えるには十分なダメージ

 

「いっ…!」

 

激しい痛みで態勢を崩し、前方へと転げる。まとの攻撃は不発、こっちがダメージを負っただけで終わった

手で抑えながら、肩を見ると、赤い液体がドクドクと溢れ出ていた

切り落とされなかっただけマシなのだが、戦闘続行は不可能だろう。血の出る量が多い

 

しかし、敵に情けを掛けるほど騎士団長は優しくない。ゆっくりとこちらへ近づいてくる

表情をなに一つ変えない。剣を収める様子もない。完全に殺す気でいる

 

(おい!これどうすんだよ!?)

 

脳内に必死に叫ぶ。流石にこの状況はどうすることもできない、あいつに助けを求めるしかない

しかし、返事は来ない

 

「っざけんなよ…!」

 

急になにか問題が起きてテレパシーが切れたのか、あいつの遊び心で喋っていないだけなのか

どちらにせよ、絶望的な状況は変わらない

 

「慈悲をかけるつもりはありません。一撃で仕留めてあげます」

 

目の前まで来て足を止めては、剣をゆっくり掲げる

相手は勝ちを確信したような表情をしているが、別に足を切り落とされた訳では無い。次の攻撃も避けようと思えば避けられる

問題は避けた後。まぁ全速力で階段に走り込むしかないだろう

ミスリに追いつかれずに、恐らく兵士がうじゃうじゃいるであろう地上を走り抜けねばならない

 

「…」

 

ミスリは剣を両手で掲げたまま、動かない

だが、目を離してはいけない。油断してはいけない

一瞬でも気をそらせばそこでお陀仏。タイミングよく避けるだけでいいんだ

しっかりとミスリの手を見つめる。あれが動き出した瞬間、横に飛び込む。そしてそのまま全力疾走

いけないことはないだろう。奇跡的な反射神経だって身についている。大丈夫だ

 

「…」

 

 

しばらく静寂が続く

どちらも全く動かず、睨み合っているだけ。無駄に時間が過ぎていく

 

(…これもう攻撃を避けてから〜とかじゃなくて普通に逃げ出した方がよくね?)

 

そう思った早とちりなばかまと

 

相手は全く動く様子が無い。これなら行けるかもしれない

お互いじっと見つめたまま、まとは心の中でカウントダウンを開始する

感づかれないように、足の向きを変えながら

 

(3…2……)

 

床を思い切り蹴飛ばし、走り出そうとした

瞬間、ミスリの剣が振り下ろされる

ジャストすぎるタイミングできたが、ギリギリ避けることはできる。このまま走り抜ければいい

そう思っていた

 

「なっ…!?」

 

突然に、まとの両側にある"地面が蛇のように"動き出す

物凄いスピードで出てきた突起物は止まることなく、ミスリの手をぐるぐるとロープのよう拘束する

ミスリはすぐに解こうとしたが、固さは元の石なのか、地面に繋がったまま束縛している地面は微動だにしない

 

「くっ…何をした!?」

 

どうやら俺が何かをしたと思っているらしい。俺何もしてないんだけど

呆気を取られたまま固まっていると、後ろ側から襟を掴まれ、引っ張られる

 

「ほら!さっさと逃げるぞ!」

 

甲高い声が耳元で大きく響く

そこにいたのは女性だった

小柄で、金髪の長い髪

一瞬顔が見えたが、両方の目の色が違うように見えた

オッドアイなんて…あいつしか見たことないのだが

異世界なんだからそんなやつはうじゃうじゃいるのかな?

後ろを付いていき走りながらそんな事を考える

 

この人のことばっか見ていて気づかなかったが、今俺が走っている方向を見ると

そこには壁。なんともう立派な、何も無い壁

階段はあちらですよ?と言おうとしたら、女性は壁をスッと触る

すると、そこを中心に渦ができ、小さなトンネルになる

 

「は…」

 

驚きの声をあげそうになったが、それよりも早く腕を掴まれ、トンネルの中を走り抜ける

トンネルは若干上り坂となっている。地下だから地上に上がるためだろう

真っ暗だが、目的地であろう光を見る限り真っ直ぐなため、壁にぶつかったりすることは無い

 

そして長いトンネルをくぐり抜けると、そこは城の外…どころか、国の外に繋がっていた

真昼間、薄暗いところにいたからか日光が眩しい。目が慣れるのに時間がかかるだろう

ふと後ろのトンネルを見ると、まるで時間が戻っていくかのように元の姿に戻っていく

これで一応は逃げきれた。久しぶりの外、空気がおいしい…なんて言っている場合ではない

脱獄犯をそう易易と逃がさないだろう。留まっていると必ず追っ手が来る

見知らぬ女性と一緒に国から逃げるように走り出す




久しぶりに書いたんでちょっと変な感じに仕上がった…
いや前から変か
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