神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる   作:とんこつラーメン

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「撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだ」







第46話 暴走の機械天使

 全ての準備が完了し、私達は砂浜に並んでいた。

 

『作戦開始5分前です』

 

山田先生の声が通信越しに聞こえる。

あと五分と言う言葉を聞いて、嫌が応にも緊張感が高まる。

 

「……本音ちゃん。そこにいる?」

『かおりん…?どうしたの?』

 

今回、整備員として参加してくれた本音ちゃんは、束さんと一緒にさっきまでいた風花の間に待機している。

 

「ありがとう。本音ちゃんがいたから、準備を早く完璧に行えた」

『う…うん……。私にはこれぐらいしか出来ないから……』

「私はいつも本音ちゃんの『これぐらい』に助けられているよ」

『かおりん……』

 

出発前にせめてこれぐらいは言っておきたかった。

これで後腐れなく作戦に集中出来る。

 

『む~!ほっちゃんばかりズルい~!束さんも頑張ったんだよ~?』

「……束さんにも感謝してます。本当にありがとうございます」

『きゃ~♡かおりんに感謝された~♡』

 

この状況なのにテンションがおかしな事になってないか?この人……。

 

「全く……あの人は……!」

「たはは……」

 

箒が頭を抱えて眉間に皺を寄せてるよ。

なんつーか……ガンバレ。

 

『………時間です!作戦開始!!』

 

皆の顔を見合わせて、同時にISを展開する。

 

「行くぞ……バリスティック・リヴァイヴ」

「来て!白式!」

「やるぞ!紅椿!」

「おいでなさい!ティアーズ!」

「行くわよ!甲龍!」

「リヴァイヴ・カスタム!」

「出ろ!レーゲン!」

「やろう……打鉄弐式」

 

私達の体が光に包まれて、体にISのアーマーが装着される。

 

「よし」

 

高機動使用に装備換装された私のリヴァイヴⅡは、脚部がより大型になり、その内部にブースターが内蔵されていて、背部に装着されたウィングスラスターも変更され、スラスターが二基増設されている。

これで運動性はそのままに、機動性の大幅な向上に成功している。

頭部のヘッドギアも見た目は変わらないが、より高性能なハイパーセンサーに変更してある。

 

「皆……行くぞ」

 

私が全員に言い聞かせるように言うと、全員が一斉に頷いた。

PICを使って宙に浮き、そのまま海に向かって移動を開始する。

 

「では、セシリア」

「了解ですわ」

 

私のリヴァイヴⅡと同様に換装したセシリアのブルー・ティアーズの強襲用高機動パッケージ『ストライク・ガンナー』は、全てのビットをスカート状に腰部に接続し、大型のスラスターとして利用している形態だ。

更に、頭部には超高感度ハイパーセンサーであるバイザー状の『ブリリアント・クリアランス』を装着していた。

これで、私と同じ速度が出せると言う訳だ。

 

「皆は無理をして急がなくていい。エネルギーを温存しながら、先行する私達の後を着いて来てくれ」

「分かったわ」

 

眼前に広がる大海原を見つめ、気合を入れ直す。

 

「…………出撃!!!」

 

次の瞬間、私達二人は一気に加速し、福音に向かって飛翔した。

 

『お願い……かおりん……皆……無事に帰ってきて……』

 

飛び立つ瞬間、本音ちゃんの今にも泣きだしそうな声を聞いた気がした。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 流石と言うべきか、高機動使用になった私達は、あっという間に目標高度である500メートルに到達した。

 

「暫時衛星リンク確立開始………情報の照合完了。ターゲットの現在位置を確認…。セシリア、そちらにもデータを送る」

「はい」

 

目の前に表示されたレーダーに福音の位置が映される。

まだ結構距離があるけど、お互いに速度は凄まじいから、接敵するのは数秒後になるだろうな…。

 

「ターゲットとの接触まであと……」

「佳織さん!目標を目視確認しましたわ!」

「!!!」

 

もうか!カウントダウンぐらいさせろっつーの!

 

ハイパーセンサーによる視覚情報が目標を映し出した。

 

(成る程……見た感じでは、私が知っている福音と変わらないようだな……)

 

白銀に光り輝く装甲を纏っていて、頭部から生えている一対の巨大な翼が天使を彷彿とさせるデザインになっている。

あれが確か、大型スラスターと広域射撃兵装を複合させたアイツのメインウェポン…!

 

(私の記憶が正しければ、文字通りのレーザーの雨が降り注ぐことになる。一瞬でも気を抜いたら負ける!)

 

このまま行けば接触するのは約10秒後ぐらいか。

 

「セシリア!私が前衛を務める!背中は任せたぞ!」

「了解ですわ!」

 

アイツの主武装は射撃武器。

いかに相手がバ火力だとしても、懐に飛び込めれば勝機はある!

 

拡張領域からWビーム・トマホークを取り出し展開、両手で握りしめた。

 

福音との距離が着実に迫っていく。

もう少しと言う所で、私は瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使って一気に間合いを詰める!

 

「おおおおおおお!!!!!」

 

裂帛の気合と共にWビーム・トマホークを振り下ろす!

確実に入った!……と思われたが……

 

「なっ!?」

 

福音は速度を落とさないまま、体を捻るように攻撃を回避、そのまま体術を用いて蹴りをかましてきた!

 

「ちぃっ!」

 

咄嗟にこちらも回避。

お返しだこの野郎!と言う気持ちを込めて、得意のキックを放つ!

 

その蹴りでお互いに間合いが離れてしまった。

くそ…!折角、懐に潜り込めたのに!

 

福音は少しだけ後退して身構えた。

 

(どうする…!お世辞にもイニシアチブを取れたとは言い難い…!このまま攻めるか?いや、ここは……)

 

数瞬だけ思案に耽ると、福音から無機質な合成音声が聞こえてきた。

 

『最優先攻撃目標【ラファール・リヴァイヴ・バリスティック】確認。これより迎撃モードに移行開始。【銀の鐘(シルバー・ベル)】稼働開始』

「来るか!」

 

本当に暴走しているのか疑わしい程に、濃密な敵意……いや、『殺気』を感じて、額に汗が噴き出る。

 

「セシリア!!」

 

私の叫びに何も言わず、流れるような動作でレーザーライフルを撃つことで応えたセシリア。

しかし、その一撃も紙一重で躱されてしまう。

 

(あれが本当に暴走している機体の動きか!?誰かに遠隔操作されていると言われた方がまだ説得力がある!)

 

声は機械的なのに、その動きはどこまでも人間的だ。

もしかして……操縦者の動きをトレースしているのか!?

だとしたら……

 

(プロの軍人と同じ技量を持ち、相手を撃つ事に一切の躊躇いが無い相手…!)

 

実際に対峙すると、ここまで厄介な相手だったのか!福音とは!

 

「あの翼が急加速をしているのでしょうか…!」

「かもしれんな……!」

 

全く……『最重要軍事機密』とはよく言ったもんだ!

厄介なISを作ってくれたもんだよ!本当に!

 

「セシリアはこのまま後方援護!私は中距離を保ちつつ、隙があれば接近を試みる!」

「了解!」

「それと言っておく。決して深追いはするな!今の私達は一夏達が来るまでの時間稼ぎをすればいい!本格的に攻勢に出るのは、その後だ!」

「はい!」

 

なんて言ってはみたものの……どこまでやれるのやら…!

 

頼むから早く来てよね!皆!!

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 佳織とセシリアが先行した後、他の専用機持ち達はスピードを上げながら二人を追従していた。

 

「流石は高機動パッケージ……スピードが桁違いね……」

「そうだな…」

 

鈴とラウラが少しだけ呟いた後、また沈黙が支配する。

 

「急がないと…!いくら佳織さんがいるからって、軍用ISをたった二人で相手するのは……」

「そうだね。軍用って事は、僕等が普段から使用しているISとは違って競技用のリミッターが解除されているって事だもんね」

「そ…それはヤバくないか…?」

「ヤバイなんてレベルじゃないわよ。凄くヤバすぎる」

 

全員の顔に焦燥が浮かぶ。

すると、水平線の向こう側から戦闘音が聞こえてきた。

 

「……!お前達……聞こえたか!?」

「うん…!」

「確かに聞こえた…!これは……」

 

少しずつ音が近づいてくる。

彼女達の目に映ったのは……

 

「か…佳織!」

「セシリア!」

 

福音の圧倒的な火力の前に防戦一方になっている二人の姿だった。

 

「嘘……でしょ…?」

「あの佳織が苦戦してる……?」

「くっ…!急ぐぞ!!」

 

これまで常勝を重ねてきた少女が苦戦しているのを見て、戦闘空域へと急ぐ面々。

焦りと不安が支配する中、福音との壮絶な戦いが本当の意味で始まろうとしていた。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

『佳織!!セシリア!!こちらの射線軸から退避してくれ!!』

 

この声は……ラウラ!?と言う事は……

 

「セシリア!」

「分かってますわ!」

 

レーザーの雨をなんとか掻い潜りながら、私達はその場から退避した。

すると、私達がいた場所を凄いスピードで砲弾が通り過ぎていった。

 

流石の福音も、自身の射程距離外からの不意打ちは回避出来ないようで、その胴体に直撃を受けていた。

 

「今のは……」

「レーゲンの大口径リボルバーカノンか!」

 

これまで致命的なダメージを碌に与えられなかったけど、ようやく福音に一撃を与えられた!

 

「佳織!!セシリア!!大丈夫!?」

 

鈴の叫びを聞きながら、私は皆とやっと合流を果たした。

 

「待たせて済まない!」

「ここからは私達もやるよ!」

「頼む」

 

よ~し!ここからが本番だ!

 

『敵増援を確認。これより【銀の鐘】の全力稼働を開始します】

 

ぜ…全力稼働!?こっからまだ攻撃力が上がるのか!?

 

白銀の翼。

その装甲がまるで広がっていくように展開していく。

 

「皆さん!気を付けてください!あれは……」

 

いつでも回避出来るように身構えておく。

果たして……どこまで避けれるのやら…!

 

砲口(・・)ですわ」

 

今まで開いていなかった砲口すらも全部開いて、まるで羽ばたくように翼を前に出す福音。

すると、さっきまでの攻撃が嘘のように、超絶的な数の光弾が発射された!

 

「おのれ!!」

 

全員で必死に回避に専念する。

ムカつく事に、この一撃一撃の光弾は羽の形をしている。

態々こんな形を模しているなんて……完全に舐められてるでしょ!

 

「くあっ!?」

「鈴!」

 

甲龍の装甲に光弾が突き刺さり、爆発する。

不幸中の幸いなのは、光弾の攻撃力が余り高くない事。

福音は質より量の、圧倒的な手数を持つISなのだ。

 

「なんなの!?これって!」

「数が多すぎる!」

「そ…それなら!」

 

簪が複数のコンソールを取り出して、何かを操作し始めた。

 

「くっ…!」

「僕に任せて!」

 

シャルロットが簪の盾となって前に立つ。

 

「もう少しだけ……!」

 

簪の目と指が高速で動く。

 

「……よし!」

 

打鉄弐式のミサイルポッドが全て開く。

 

「山嵐!!行っけぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」

 

合計48発のミサイルが光弾に向かって飛んでいく。

ミサイルと光弾がぶつかり、凄まじい爆発が発生する。

 

「やった!」

「ナイスだ簪!」

 

光弾が止み、攻勢に出るチャンス到来!

 

「今だ!一夏!箒!」

「「応!!」」

 

まるでジェットストリーム・アタックのように、縦に並んで突撃する!

 

「でぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!」

 

雪片を展開させてレーザーブレード状態になった一撃を、福音はまるで最初から見切っているかのような動きで回避する。

 

「う…嘘っ!?」

「ならば!」

 

次は箒が一夏の後ろから二刀の刃で斬りかかる!

しかし、それすらも流水のような動きで躱してみせる福音。

 

「なんだとっ!?」

 

これもか…!だったら!

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

これまでで一番の力を込めた一撃を振り下ろす!

流石の福音も三連続の攻撃を完全に回避出来ないようで、僅かではあるが攻撃を掠らせることに成功した!

 

「逃がさん!」

 

緊急離脱しようとした福音に接近しWビーム・トマホークを収納、その右腕を掴む。

 

「捕えたぞ」

 

空いた手にハンドガンを展開し、そのまま連続ゼロ距離射撃!!

 

「シャルロット!!」

「任せて!!」

 

身動きのできない福音の背後にシャルロットが回り込み、必殺のパイルバンカーを叩き込む!

ズドン!と音が響き、福音越しに衝撃が伝わってくる。

 

「全弾叩き込む!!」

 

シリンダーが回り、薬莢が次々と出てくる。

それが全部出た後、シャルロットはその場を離れる。

だが、私はまだ離れない。

 

「このチャンス…離しはしない」

 

次はマシンガンを展開する。

勿論、再びゼロ距離射撃。

 

「こちらも全弾持っていくがいい!!」

 

つっても、果たしてダメージが通っているかどうか…。

コレの威力ってお世辞にも高いとは言えないし…。

 

「さっきはよくもやってくれたわね……!」

 

鈴が怒り心頭と言った感じで背後にやって来た。

 

「佳織!そこから……」

「構わん!私ごと撃て!!」

「でも!」

「やれ!!鈴!!!」

「くっ…!もし当たっても文句とか無しよ!!」

 

鈴の衝撃砲が福音の背中に直撃する。

その余波が私にも来るが、それに構っている余裕は無い。

今はとにかく攻撃あるのみ!

 

カチカチ。

 

「ちっ!」

 

トリガーを引きっぱなしだったから、もう弾が無くなったか!

こっちの攻撃が止んだと見るや、掴んだ腕ごと私を投げ飛ばしやがった!

 

「くあっ!」

「佳織!……きゃあっ!?」

 

向かいにいた鈴とぶつかってしまい、動きが止まってしまう。

その隙を見逃す程、福音は甘くは無かった。

 

「佳織!鈴!避けて!!!」

 

こいつの十八番である光弾の嵐が降り注ぐ!

このままじゃ二人纏めてやられる!

ならせめて!

 

「鈴!」

「か…佳織!何を!?」

 

咄嗟に鈴を庇うように抱きしめて、自分の体を盾にした。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「今すぐ私を放して!佳織!!」

「馬鹿を……言うな…!」

 

この状況で手放せとか……冗談じゃないでしょ…!

 

「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「絶対に許さん!!!」

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「よくも!!!」

 

一夏と箒とラウラと簪が突っ込んできた。

だが、福音は四人の方を向こうとはしない。

 

(そう言えば……さっき私の事を最優先目標って言ってたっけ……)

 

なんでそんな事になってるかは知らないけど、これって私が囮になれるって事だよね…。

 

こっちに夢中になってるお蔭で四人の攻撃は福音の背中に命中するが、それでも奴はビクともしない。

 

「こちらを向きなさいな!」

「こんのぉぉぉぉぉぉ!!」

 

セシリアのレーザーライフルとシャルロットのアサルトライフルも炸裂するが、福音は全く見向きもしない。

 

少しして福音の攻撃が止むが、その時にはもうバリスティック・リヴァイヴのSEは枯渇寸前にまで追い込まれていた。

 

「か…佳織……あたし……」

「ふっ……気にするな。お前が無事で何よりだ」

 

はい。強がってますけど、本当はめっちゃ背中が痛いです。

許されるなら今すぐにでも泣き出したいです。

でも泣きません。

 

「佳織さん!!」

 

簪がこっちに来て私の体を支えてくれた。

同時に鈴が私から離れた。

 

「派手にやられてしまった……」

 

目の前には破損個所を報告する表示が映っている。

 

(背面ブースター大破…。脚部スラスターも損傷あり…か)

 

これはヤバいな……!

もう殆ど回避能力が無いに等しいじゃん…。

 

福音はこちらから離れて高度を取り、全員を見渡せる位置に移動した。

 

「い…一網打尽にする気か……!」

「結構攻撃を当ててるのに……どうして倒れないの…!」

「これが軍用機の性能なのか…!」

 

全体的に悲壮感が漂い始めた中、ふとハイパーセンサーが何かを捕えた。

 

「なん……だと……!」

 

この状況で例の密漁船が登場かよ……!冗談にしても笑えないぞ!!

 

「ど…どうしたんですか……?」

「あれを……」

「あれ…?」

 

私が指刺す方向を見ると、簪も絶句した。

 

「嘘……なんでっ!?」

「あれって……船!?」

「もしや……密漁船か!?」

 

最悪のタイミングだ!!くそっ!!

 

「ど…どうするの…?」

「いくら犯罪者とは言え、見殺しには出来ない。ここは誰かが船の護衛をしながら後退するしかないだろう……」

「じゃ…じゃあ、一番損傷が酷い佳織が……」

「それはダメだ」

「な…なんでですの!?」

「なんでかは知らないが、福音は私の事を最優先攻撃目標に設定している。私が船に近づけば却って危険に晒す事になる。セシリアも聞いただろう…?」

「そ…それは……」

 

損傷は激しいけど、ここで私が後退すれば、それは福音を旅館まで引き寄せてしまう事と同義だ。それだけは絶対に避けないと!

 

「箒……それから鈴。二人で船を護衛しながら浜辺まで誘導してくれ」

「ま…待て!私はまだ……!」

「頼む……」

 

ここから見ても分かるよ。

箒……動揺してるでしょ?

初めての実戦の空気と、私がダメージを受けた事に心が正常じゃなくなっている。

だって、さっきから手が震えまくってるもん。

そして、精神的動揺は鈴も同じだ。

 

「……分かったわ」

「鈴!お前!」

「あたしだって悔しいけど!……多分、今のあたし達は足手纏いになる……」

「くそっ…!」

 

納得してくれたか…。

 

そういや、なんか福音が大人しいが……一体何をして……。

 

『……………』

 

何処を見ている……?

アイツが向いている先は……

 

「まさかっ!?」

 

奴の狙いは密漁船か!

私がターゲットじゃなかったのかよ!?

 

「作戦変更!!全員で今すぐ船を守れ!!!」

「えっ!?」

 

こっちが動き出すよりも早く、福音は自慢の光弾をまたまた放った!!

今度は私達じゃなくて、船に降り注ぐように角度を変えて!

 

「冗談!!」

「こいつは!!」

 

急いで射線上に入って福音の攻撃から船を守る。

それぞれに攻撃をして、少しでも光弾を船から逸らす!

私はWビーム・トマホークを回転させて盾のようにして防いだ。

 

「ちょ……なんで止まらないのよ!!」

「このままでは……!」

 

皆のダメージも蓄積し始めたか…!

これじゃあ本当に全滅してしまう!!

 

「総員!船を守りながら後退!」

「「「「「「「えっ!?」」」」」」」

「殿は……私がする」

 

フフ……全員してそんな顔をしないでよ。

思わず笑っちゃうじゃない。

 

「そんな事出来るわけないじゃん!!」

「そうだ!この中で最も損傷が激しいのは佳織なんだぞ!!」

「分かっている!だが、さっきも言っただろう!奴は私を狙っていると!私が後退すれば、それは即ち防衛目標である旅館が危険に晒されることになる!それだけは絶対に避けねばならない!!!」

「そうだけど……」

「この攻撃を凌ぎながら船を護衛するのは一人二人では不可能だろう。だから、念には念を入れて私以外の全員で行ってほしいんだ」

 

自分で言ってて『馬鹿じゃね!?』って思うけど、この猛攻を防ぎながら船を無事に浜辺に送るには、これしか思いつかないんだよ!

もっと考えれば別のアイデアが思いつくかもしれないけど、今の私にはこれが精一杯なんだ!

 

「皆……行くぞ」

「ラウラ!あんた!」

「佳織の決意を無駄にする気か!!」

「!!!」

「私だって本当は嫌だ…だが!」

 

優しいな~……ラウラは。

本当に……その気持ちだけで胸がいっぱいです。

 

「船を送り届けたら、絶対に戻ってくるからね!」

「だから、それまでは……」

「勿論だ」

 

つーか、マジで早く行って。

やせ我慢もそろそろ限界だから…!

 

皆は高度を下げて船の所まで行き、事情を説明しながら後退を開始した。

同時に、船を福音の攻撃から防いでいる。

 

船と皆が徐々に離れていく…。

この調子なら…!

 

私と福音以外の姿が見えなくなった途端、攻撃が止んで、急にこっちを見だした。

 

「さて……皆が浜辺まで無事にたどり着くまで私に付き合って貰うぞ…!」

 

なんて言わなくても、向こうから勝手に来るとは思うけど。

 

……これが私の人生の正念場かもしれません…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




仲間がピンチになったら主人公がパワーアップして駆けつける?

そんなご都合主義……あるわけねーだろ。


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