神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる   作:とんこつラーメン

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今回はフロンタルが主役です。

それと、この作品のフロンタルはあくまでも『IS世界のフロンタル』なので、宇宙世紀の人物とは全くの無関係です。
ですので、男の方のフロンタルとは似ているようで、何もかもが違います。
その辺りは、どうかご理解ください。






第61話 害虫駆除

 とある施設の格納庫。

 そこには、ISスーツ姿のフロンタルとアンジェロが一段高い場所に立っていて、それを見上げるような形で同じようにISスーツを着た女性達や重装備の軍人らしき者達が大勢並び立っていた。

 

「諸君。ようやく、我々が本格始動する日がやって来た」

 

 赤い下地に金色でエングレービングが施された、とても優美なスーツを着たフロンタルが、静かに語りだす。

 

「今回、我々はアンジェロの専用機の試運転を兼ねた襲撃作戦を敢行する。今回のターゲットは日本に存在する女性権利団体の本部だ」

 

 女性権利団体。

 その言葉を聞いた途端、兵士達全員の顔が強張る。

 一人は憎悪に、一人は憤怒に、また一人は決意に満ちた表情をする。

 

「君達は、いずれもISが図らずも齎してしまった女尊男否の被害者だ。だが、本当にISが全ての元凶なのだろうか? 私はそうは思わない」

 

 少しだけ兵達がざわつき始める。

 だが、それを無視して話は続く。

 

「確かにISは高い性能を誇り、女性にしか動かせない。これは覆しようのない事実だ。だが、大抵の人間達はISの存在に目を奪われて、もっと根本的な事を忘れている」

 

 ぐるりと兵達を見渡し、笑みを浮かべた。

 

「ISはあくまでも『道具』にすぎない。それを善き事に使うも、悪しき事に使うも、我々次第なのだ。ISに罪は無い。諸君等を苦しめ、この歪んだ世を生み出した元凶が存在するのならば、それは女性こそが至高と謳い、崇め奉っている愚かな連中に他ならない」

 

 そこで、一斉に兵達が雄叫びを上げ始める。

 

「そうだ! 大佐の言う通りだ!!」

「俺達の全てを奪ったのはアイツ等だ!!」

「我等の手で正義の鉄槌を!!」

「今こそ、叛逆の時だ!!」

「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」」」

 

 血気盛んな兵達を見て嬉しそうにするフロンタルだったが、話が先に進まないので手で制する。

 

「女性権利団体。奴等こそが、今の世の明確な悪であり、駆除すべき存在だ。連中のような者達が蔓延っているからこそ、今この時も人々は苦しみ、嘆いている」

「だからこそ、我等が決起するのだ! この世界に寄生する醜くも愚かな蛆虫共を、大佐と共に滅する!!」

「権利団体は、相手が男でなくても容赦なく自分達のルールで罰する。ここにいるアンジェロの直属の部下である『親衛隊』の女性達は、いずれもが謂われも無い罪で傷付けられた男達を身を持って救おうとした結果、権利団体の逆鱗に触れ、君達と同様に全てを失った」

「だからこそ、私は彼女達に『力』を与えた。もう二度と、邪悪に屈せず、守るべき者達を守る『力』を!!」

 

 何も言わず、決意に満ちた顔で親衛隊の隊員達は二人に向かって敬礼をした。

 よく見ると、彼女達の目尻には涙が溜まっている。

 

「私達が力を合わせれば、必ずやこの作戦は成功するだろう。君達の無念を、あの愚か者共に思い知らせてやれ」

 

 ここでまた兵達が叫びだす。

 自分達を地獄に叩き落した憎き仇敵を倒せると思うと、居ても立ってもいられないのだろう。

 

「今から行くのは権利団体の根城とも言うべき場所だ。そこには間違いなくISも配備されているだろう。ISの相手はISがするに限る。親衛隊の諸君、その時はよろしく頼むぞ」

「「「「「はっ! お任せください! フロンタル大佐!!」」」」」

「だが、万が一、ISに搭乗出来ない者達がISの襲撃を受ける可能性もある。その時は遠慮無く、アンジェロが開発した『銃弾型剥離剤(リムーバー)』を使え」

「本来はかなり大型で、しかも自分の手で直に装着させなければ使えない代物だったが、私の手で小型化に成功し、更には銃弾型にする事で遠距離からもISに付けることが可能となった。これならば、安全かつ高い確率でISを無力化出来るだろう」

「念には念を入れて、全員に30発ずつ配ってある。まだまだ作ろうと思えば作れるから、出し惜しみはしなくてもいいぞ」

 

 ここでフロンタルは徐に仮面を外し、その素顔を晒した。

 佳織と瓜二つの顔が、怪しい笑みを浮かべる。

 

「それと、これも言っておかなくてはな」

「そうですね」

 

 急に雰囲気が変わり、若干ではあるがまたザワつく。

 

「連中に対する君達の怒りは、奴等を殺した程度では決して収まらないだろう。だから……」

奴等の生殺与奪の権利(・・・・・・・・・・)を全てお前達に託そうと思う(・・・・・・・・・・・・・)

 

 一瞬、二人が何を言っているのか分からなくなった。

 いきなりの発言に全員がポカ~ンとなってしまう。

 

「要は、生かすも殺すもお前達次第。生かした場合、その後の処遇(・・・・・・)も君達の好きにしていいという事だ」

「拷問して苦しめた後に殺すもよし。集団で心が砕け散るまでレイプするもよし。好きにしろ」

「そんな事をすれば連中と同じじゃないかと考える者もいるかもしれないが、その心配は無用だ」

「例え、ただの一度でも悪の道に落ちた者は、もう人間ではない。人間の形をした別のナニかだ。悪である以上、何をされても絶対に文句は言えない。何故なら、悪とは存在すること自体が罪なのだから」

「だから、君たちなりのやり方で『悪』を罰せよ」

 

 これまでで一番の大声が響き渡る。

 兵達の士気がかなり向上したようだ。

 

「これで少しは世界もマシになる筈だ。さぁ……害虫駆除を始めようか」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 女性権利団体の本部。

 明らかに周囲の建造物とは一線を越える大きさのビルで、中には当然のように女尊男非の考えを持つ女達で埋め尽くされている。

 そこに、二人の女が入っていく。

 またもや束の振りをしたアンジェロと、それに付き添う仮面を外したフロンタルだ。

 だが、その正体を知らない権利団体の者達は、アンジェロをISの生みの親である束と思い込んで、嬉々として彼女をビルの中に誘い入れた。

 

 その直後に、ビルの付近に引っ越し業者を装った大型のトラックが三台駐車した。

 普通ならば大きなトラックが三台も停まっていれば不審に思うが、目の前にあるのは悪名高き女性権利団体のビル。

 道行く誰もが『またか……』と思い、何も疑問に感じない。

 元からビルの付近は人通りが少ない事もあり、すぐに周囲は静かになる。

 

 自分達が最も崇め奉っている二人の人間の一人が本部に来た事で気を良くしたのか、中にいる誰もが今から自分達が襲撃されるなんて微塵も疑わなかった。

 それは、ISを操れる自分達こそが最強であり至高の存在であると疑わない愚かさ故か。

 

 こうして、人知れず『害虫駆除』が始まった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 銃声が響き、ボロボロのレディーススーツを着た中年女性が床に血を流しながら座り込む。

 彼女こそが、現在の女性権利団体の代表だった。

 目の前には、ローゼン・ズールを装着したアンジェロと、自分専用にカスタマイズした真紅のラファール・リヴァイヴ・カスタムを装備しているフロンタルが立っている。

 フロンタルのラファールは、機体の形状こそシャルロットの専用機と同じだが、機体色が赤に変更されている他に、手首の部分や膝の部分に黄金のエングレービングの装飾が施されていて、非常に優雅な美しさを漂わせている。

 本来なら施されている競技用のリミッターが意図的に解除されている為、ラファールとは思えない程の性能を獲得する事に成功した傑作機だ。

 

 ビルの中はトラックの中で待機していた兵達によって、あっという間に制圧され、どこもかしこも見る影もないほどに破壊しつくされていた。

 普通なら、これ程の破壊が行われれば嫌でも気が付くが、権利団体は世間からもとても疎ましく思われている。

 だから、誰も彼女達が危機に陥っても通報なんてしようとは考えないし、警察も駆け付けようとしない。

 

「大佐! 一階から四階までのフロア、全て制圧完了しました!」

「よくやった。事前に言った通り、後は好きにしろ」

「了解です! ヘヘヘ……」

 

 報告に来た兵士は、ニヤつきながら持ち場へと戻って行った。

 

「大佐! 上階全ての制圧も完了です! 大佐が予想なさったとおり、数機のISが襲いかかってきましたが、いずれも親衛隊の者達が排除しました!」

「そうか。ISの方はどうしている?」

「はっ! パイロットはすぐに降ろして、今は親衛隊が機体を見張っています!」

「ならば、コアだけを回収し、後は放置しておけ」

「了解しました!」

「お前達も好きにして構わんぞ」

「分かりました!」

 

 上から来た兵士も嬉しそうにしながら戻って行く。

 長年の恨み辛みを晴らせるとあって、捻じ曲がった喜びが込み上げてくるのだろう。

 

「な……なんで! なんでこんな事をするのですか! 篠ノ之博士!!」

「私を……その忌々しい名前で呼ぶなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあっ!!!!!」

 

 激高したアンジェロが、ローゼン・ズールのクローで代表の右腕を切り落とした。

 鮮血が床に降り注ぎ、悲鳴が木霊する。

 

「醜いものだな。これが今まで世の中を掻き乱し、多くの罪無き人々を苦しめ続けた諸悪の根源とは」

「全くです」

「腕ぇぇぇぇぇぇっ!! 私の腕がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 切断された腕を抑えながら床を転がり回っている内に、ふと血飛沫の一滴がフロンタルの顔に飛び散った。

 

「き……貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

「ぐぎぃぃぃぃっ!! ぎっ! んぎぎぃぃぃぃぃぃっ!!!」

「大佐の! 美しい御尊顔を!! その薄汚い血で汚すとは!! その罪!! 万死に値する!!!」

「やべ……やべでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

 全身装甲だから、その表情は全く見えないが、アンジェロは完全にブチ切れていた。

 自身が全てを捧げると誓った存在を汚されて、周りが見えなくなっている。

 

「なんで……なんで私がこんな目に……」

「因果応報だろう」

「フー……フー……!」

 

 殺さない程度にちゃんと手加減をしていたとは言え、代表はもう既に瀕死の重傷で、いつ死んでもおかしくない。

 そんな彼女を見下ろしながら、フロンタルは静かに語りだす。

 

「1月12日。ドイツにて、とある男性が道端で通り過ぎる時に軽く肩が触れたと言う理由だけでセクハラ扱いされ、有罪判決を受けた」

 

 そこから、彼女は次々と色んな事件の事を話しだす。

 

「2月24日。台湾のコンビニで男性従業員のちょっとしたミスを見て、客である女性がそれを大袈裟にネットに書き込み、彼は徐々に周囲から追い詰められ、やがて自殺をした。他にもあるぞ」

 

 あろうことか、フロンタルは今年あった女尊男非が原因で起こった事件の全てを記憶していた。

 それを言い放っていく間も、代表は着実に死に向かっている。

 

「お前達はよく『女こそが至高の存在。女だけがいればいい』と言っているが、それを聞く度に私は思うのだよ。お前達はつくづく馬鹿だと」

「人間だけに限らず、殆どの生命体は『雄』と『雌』が交配して初めて誕生する。貴様等の低脳では理解出来んかもしれんが、男と女は、その両方がいて初めて互いが成り立っているんだ。片方だけがいた所で、全く意味が無い」

「もし仮に、この世が女だけの世界になったとしたら、その世界はすぐに滅びるだろうさ。何故なら、自然な形で一人も人間が誕生しないのだからな」

「つまり、貴様等こそが世界の……いや、人類を滅ぼそうとする悪なのだ」

「貴女もそうは思わないか?」

 

 フロンタルが振り返ると、そこには息を切らせている束が立っていた。

 彼女の鋭い眼光がフロンタルを射抜くが、全く意に介していない。

 

「やっと見つけたと思ったら……何をしてるのさ……!」

「ただの害虫駆除だが? 貴女もよくやっていることだ」

「それは……」

 

 束もよく、無人機などを使って邪魔者を排除しているから、あまり強くは言えなかった。

 

「よく見ていろ、篠ノ之束」

 

 アンジェロが死に体の代表を軽々と持ち上げ、そのクローで頭を柘榴のように握り潰した。

 眩く輝いていたクローが血で染まるが、そこから更に首から上の無くなった遺体を持ち上げ、両手のクローで掴む。

 

「これが……未来のお前の姿だ!!」

 

 そのまま、上半身と下半身を引きちぎり、分かれた部位すらもグシャリと潰す。

 

「あはははははははははははははは!!! ひゃはははははははははははは!!!!」

 

 狂気の笑い。

 アンジェロは今、間違いなく『最高にハイ』になっている。

 紫の装甲のローゼン・ズールが血で赤く染まった。

 

「ほぅ……。てっきり、何か一言ぐらいは文句を言うと思っていたのだが」

「そんな奴、別にどんな風に死のうと、構いやしないよ。私も、こいつ等の事は疎ましく思ってたしね」

「その割には、表情が歪んでいるぞ? 目の前でこれ程の血を見るのは初めてか?」

「そんな事……!」

「軟弱な。矢張り、貴様等よりもこのアンジェロの方が優れているようだな」

「うるさいよ。それよりも、白騎士を返して!!」

「残念だが、それは二重の意味で不可能だ」

「二重……?」

「まず、あのコアは私達にとって必要不可欠でな。絶対に渡す訳にはいかないのだよ」

「もう一つは?」

「コアは手元には無い。お前とは違い、私達は非常に厳重な場所に大事に保管している。だから、不可能だ」

「くっ……!」

 

 天才と自称する自分が、ことごとく後手に回っている。

 その事実が悔しくて、思わず下唇を噛む。

 

「用はそれだけか? なら、早くここから消える事を推奨する」

「どういう事?」

「『掃除』が終わったら、ちゃんと『後始末』しなくちゃいけないだろう?」

「まさか……お前!!」

「アンジェロ」

「はっ!」

 

 プライベート・チャンネルで各員に通達するアンジェロを余所に、フロンタルは床に散乱している、さっきまで代表と呼ばれていた物体を踏み潰す。

 

「今度こそ……今度こそ必ず!!」

 

 自分が敗走を喫する。

 だが、今は次の為に逃げる事を選択した。

 束が割れた窓から、自慢のニンジン型ロケットで飛び去ってから、フロンタルはISを解除する。

 

「通達完了しました」

「分かった」

「しかし大佐。あの女を逃がしてよかったのですか?」

「構わんさ。白騎士がある限り、アドバンテージはこっちにある。否が応でもまた会う機会はある。それに……」

「それに?」

「決着の場はここではない。佳織と篠ノ之束、そして織斑千冬。あの三者が揃った時こそが、全ての決着をつける時だ」

「そうですね……」

 

 それから数分と経たない内に、二人を含めた全員がビルから退避。

 いつの間にか一台増えているトラックに捕虜となった女達を含めた全員を乗せて、遠くに去った直後、爆発と共に全ての証拠を隠蔽。

 ビルの崩壊自体は、アンジェロの情報操作によって『ビルの爆破解体』と報道された。

 

 この日を皮切りに、次々と彼女達によって世界中の女性権利団体の支部が襲撃を受け、崩壊していくことになる。

 皮肉な事に、それによって女尊男卑の影響による男性の死亡事件が大幅に激減した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この作品のフロンタルは、ヤルときはヤル女です。

容赦? なにそれ美味しいの?

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