俺の幼馴染が壊れた   作:狸舌

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爆轟→爆豪へ修正
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アイツはデク

俺、爆豪勝紀には幼なじみが居る。

そばかすのついた弱弱しい覇気のない顔が特徴の、何もできないデク。

あのクソみてぇな面の『男』は『女』である俺に手も足も出ない。

俺はスゲェ、駆けっこも計算も遊びも喧嘩も・・・そして個性も何一つ負けていなかった。

 

 

あの日までは。

 

何人かの取り巻きにデクを加え山へ登ったあの日、俺は川の上に橋の様に架けられた丸太を渡ろうとして足を滑らせた。

それ自体は問題ない。浅い川だったし、なにより俺にとっては泳ぎなんて難しい事でも何でもない。

なのにあのデク、とても腹立たしい事に俺を助けるつもりだったのかは知らねえが川へ跳び降りて来て―――――着地を失敗し、川から飛び出していた石へ勢いよく頭を打ち付けた。

それからは大騒ぎだったが俺はあまり気にしていなかった。

デクがまた鈍くさい姿を見せただけ。

後から聞けば、7日間アイツは目を覚まさなかったらしい。

だから俺があったのはアイツが目を覚ましてから8日後、目が覚めた翌日に仕方なく名前を呼びながら病室に入ると―――――

 

 

 

「クッハハハハハハハハハッ‼俺を呼んだな‼長い時を刻みすでに合わぬ定めとも思っていたがどうやら俺が間違っていたようだ‼」

 

アイツ、緑谷出久は壊れていた。

 

 

 

 

 

まず1つ。テンションが高いことにはすでに慣れたが、イカレてるのはあの服装。

黒い帽子・・・アイツが言うにはポークパイハット。それに暑苦しいスーツみてえな黒服。変なマント。

それを一年中着てやがる。

頭がおかしいと、狂ってるんじゃないかと言ったこともあったが昔なら泣いていたアイツもあの時から反論してきやがるようになった。

「我が行くは果ての見えぬ恩讐の彼方。霊基を託された身であっても見通すことは叶わない。故に俺から言えることはただ一つだけだメルセデス―――――待て、しかして希望せよ」

 

誰がメルセデスだ

 

 

 

 

 

 

2つ目。アイツに妙な個性が発現した。

無駄にけたたましい高笑いをしながら手から黒い炎を出した日には、俺と個性が被った事について全力の爆破をお見舞いしてやった。

だが、今となってはそれはいい。問題は今、目の前で行われている体育の体力測定だ。

ざわざわと周りが騒ぎ始める中、100m走のスタート地点に他の3人と共に立つのはアイツ、デクだ。

周りが全員体操着の中で黒いあの格好はかなり目立つ。

心なしか教師も緊張しながら手を上げ、次いでパンッとスタートの合図が鳴り響く。

全員が一緒に一歩を踏み出し、

「クハハハハハハハハハッ‼我が怨嗟の前に立ちはだかるものは誰だ‼」

片足を上げ、残った足のつま先で地面の僅かに上で滑らせるように『走る』?アイツ。

正直、気持ち悪い。

すぐさま、個性を使用したことで教師から説教を受けるアイツ。

「馬鹿な・・・。いや、すまないファリア神父。俺は・・・・・いや、貴様はファリア神父ではないな‼?」

 

だから誰だよ

 

 

 

 

 

 

3つ目。特にこれがムカつく。

俺としては全く興味が無いが、アイツが最近女子にモテている。

「なんだか影がある感じがかっこいいよねー。個性も凄いし、話すとなんだか紳士って感じだし」

「あ‼ねえ、爆豪さんは昔から出久君と友達なんだよね‼なんだか話してる時の距離も近いしもしかして・・・」

大きく舌打ちをして席を立つ。

これで勝紀ちゃんとでも呼んでいたら1週間は学校へ来られないようにしていた自信がある。

教室を出て数歩歩けば、聞きたくもない聞きなれた声が背後から響く。

「メルセデスではないか。お前は俺と同じ道を歩く者だろう、今行くその道を進めば戻れなくなるぞ」

まるで意味が分からない。

先ほどの怒りも込めて顔面を爆破してやろうと振り返れば、見えるのは奴の帽子と後頭部、そして何やら妙な模様が描かれた黒いマント。

しかも距離が近い。

「だが、面白い。その道を行くと言うのなら気を付けろ、止まる時の中で動く事は出来ないのだから」

 

背中を向けて喋るな、殺すぞ

 

 

 

 

 

 

 

 

あのクソデクの話にはもう耳を傾けない事にしていた。

勝手に近づいてくるのであれば爆破。近づかなければ無視。

今日の進路希望の話もそうだ、アイツが雄英を目指そうが知った事か。

俺は俺のやりたいようにやってアイツを―――――。

 

そう、余計なことを考えていたからだ。足元から伸びた不定形の触手が足首、胴体へ絡んだ時にはすでに爆破は間に合わず全身が水のような何かに包み込まれるまで大した時間はかからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

何度目か分からない爆音が鳴り響く。

トップヒーローであるオールマイトはその音源を見ながら強く拳を握りしめる。

以前負った負傷により既に全盛期の力は自分には無く、あのヴィランもその力不足が原因で取り逃がし、今一人の少女を人質にしている。

(情けないッ・・・情けない‼)

ズグッ、と内臓を抉る様な痛みが絶えず襲う。この状態で何秒間あの姿を保てる。

自分の弱体化した姿が世間へ知れ渡れば抑止力は消え、世界中でヴィランが活動を活性化させるだろう。

そのような理由を考え、こうして柱に隠れていることしかできない自分が『情けない』。

せめて、出来ることは無いか。左胸を押さえ、一歩踏み出し――――――

 

 

「―――――貴様は地獄を見たことがあるか」

 

 

良く通る声が辺りに響いた。今まで騒めいていた野次馬は静まり返り、ヒーローたちは動きを止める。ヴィランまでもがその体を固め、声の方向を見ている。

オールマイトの横を、風が流れるように自然な動きで黒い影が通り過ぎ

ゾワリ、と全身に鳥肌が立つような、そして氷のような炎に全身を炙られた様な感覚を感じた。

(あれは・・・あの少年はなんだ。全身から吹き上がる様な黒い何かが原因か、とてもじゃないが姿を直視できない)

自分と言う人間と正反対。だがヴィランとは違う何かを感じる。

「っ、待つんだ少年‼あのヴィランに立ち向かうのはヒーローで――――――」

それでも、まだ子供だ。危険へ進む姿を止めるために声をかけるオールマイト。

その手が肩まで伸びた瞬間、その姿が消える。

信じられないと目を見開いたと同時に、視界の先でおぞましく光る黒炎が立ち昇った。

 

 

 

 

 

 

マズイ、意識が薄れて来やがった。

強制的に個性が連発されたせいか、それとも塞がれた口からは酸素がほとんど入っていないせいなのかは分からねえ。

ただ、それでも意識を保ち、隙があればヴィランの体の一部を吹き飛ばしてこの状況から勝ってやるという思いは消えていない。

こんなところでは止まれない。

あの背中。ムカつくだけの、こちらを見ようともしないあの背中を振り向かせて顔面に爆破を叩き込むまでは絶対に他の奴には負けねえ。

それにしても、急に手足の拘束が緩んだ気がする。まさかどこかのヒーローが余計な助けをしに来たのか。

コイツには俺が勝つんだ、どこの誰だか知らないが手を出したら―――――――

 

「「「「「「クッ、ハハハハハッ‼我が行くは恩讐の彼方、『虎よ、煌々と燃え盛れ』‼」」」」」」

 

おい、なぜ数が増えた

 

 

 

 

 

あのあと、ヴィランは増えたアイツに見えない速さで体を削り取られ、最後には黒い炎で体積のほとんどを消し飛ばされたあと御用となった。

当然、俺にも事情聴取はあったがそれより先にアイツ・・・コイツが俺を連れ出した。

体力は限界に達していたし、腕は爆破の反動で上がらない。

そんな俺はいまデクに背負われている。もちろん死ぬほど抵抗はした。最終的に帽子を噛んでまで抵抗したがまるで頭に張り付いているかのようにはなれないソレについに体力が尽きてしまった。

夕日を背に、恐らく俺の家まで送ろうとする横顔は久しぶりに見るともう弱弱しくは感じない。

見ようと思わなかった間にもコイツの中で時は確かに流れていたのだろう。

 

 

 

思い出すのは、ヴィランから自分を助け出し両手に抱え上げたコイツの顔を見上げた時の記憶。

高笑いしながらヴィランから助けられて思い出したのだ。あの日より前、コイツが言っていた言葉。

『かっちゃん、超カッコイイんだよオールマイト。どんなに困ってる人も笑って助けちゃうんだ―――』

こちらを見下ろす顔は今よりもっと近く、自分を抱きかかえる腕は想像よりも逞しくなっていて。

それでも、笑い方はやはり変で気持ち悪いがコイツは昔とこんなに変わったが、それほど変わってもいないのかもしれない。

 

 

 

ボンっ、ボンっと手から小さな爆発と共に煙が漏れる。何故か熱くなる顔は、自分でもどんな顔をしているのか分からない。

それでも、なんとなく・・・・本当になんとなく、たまには久しぶりに口をきいてやろうと思った。

あと、家までは10m足らず。何故か口から出るのはすこし早口で

「っ、おいデク、お前・・・どうして俺を助けに来て―――――」

「今日は厄日だったようだなメルセデス。だが足掻き、耐えた先にお前の希望は確かにあったようだ。―――――ではな、俺もエデの待つ家へと帰らせてもらう」

ゆっくりと玄関先に下ろされ、そんなことを口にしてアイツは帰っていった。

帰るのはいい。もともと俺もそんなに話したかったわけじゃねえ。だが、おい待て

 

 

 

エデって誰だよ




似非エドモン語
「クッハハハハハハハハハッ‼俺を呼んだな‼長い時を刻みすでに合わぬ定めとも思っていたがどうやら俺が間違っていたようだ‼」
(かっちゃん‼いま僕の事呼んでた?なんだかずっと変な夢をみててもう会えないかと思ったけど、そうじゃなくてよかった‼)


「我が行くは果ての見えぬ恩讐の彼方。霊基を託された身であっても見通すことは叶わない。故に俺から言えることはただ一つだけだメルセデス―――――待て、しかして希望せよ」
(僕にも全然わからないんだ。霊基っていうのが渡されたらしいんだけどよく分からないし。でも、そんなに悪い事みたいじゃないし、プラスに考えていこう‼)


「クハハハハハハハハハッ‼我が怨嗟の前に立ちはだかるものは誰だ‼」
(っ、負けない‼前はゆずるもんか‼)


「馬鹿な・・・。いや、すまないファリア神父。俺は・・・・・いや、貴様はファリア神父ではないな‼?」
(嘘っ、また制御しきれなかった。・・・ごめんなさい西崎先生(ファリア神父)。いや、ごめんなさい・・・あなたは西崎先生です‼)


「メルセデスではないか。お前は俺と同じ道を歩く者だろう、今行くその道を進めば戻れなくなるぞ」
(あれ、かっちゃん。もうすぐ授業始まるよ、はやく教室戻らないと間に合わなくなっちゃう)


「だが、面白い。その道を行くと言うのなら気を付けろ、止まる時の中で動く事は出来ないのだから」
(でも、何か用事があるんだね。本当にもうすぐだから、間に合わなくなる前に戻ったほうがいいよ)


「―――――貴様は地獄を見たことがあるか」
(よくも・・・かっちゃんを。許せないッ‼)


「今日は厄日だったようだなメルセデス。だが足掻き、耐えた先にお前の希望は確かにあったようだ。―――――ではな、俺もエデの待つ家へと帰らせてもらう」
(今日は大変だったねかっちゃん。でも、かっちゃんが頑張ってアイツの体を削っててくれたから僕も助かった。――――じゃあ、お母さんが晩御飯作って待ってるから)
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