俺の幼馴染が壊れた   作:狸舌

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禁則事項

[後日]

オールマイトは苦悩していた。

あの少年は果たして何者なのか、あの脳無と呼ばれた怪物にいったい何をしたのか。

置き去りにされていたその巨体と微動だにしないその不気味さから、脳無の異常性は感じていた。

しかし生徒から詳しく聞いてみれば、砲弾のような速さで動きこぶしは地を割る。

さらに再生能力まで持っているというのだから生徒一人で立ち向かえるものではない。

担任である相澤君が休養中のいま、自分が聞かなければいけない。

そんなことを考え、今朝から彼の姿を追い回していたのであった。

 

ホームルーム。どうやら教室の前で飯田少年と話しているようであった。

入試の時は少しばかり闇が深そうな彼と飯田少年はあまり相性は良くないようであったが、いまは談笑する程度には仲が良いようだ。

「——————つまり、黄昏時に得る幸福とは・・・なるほど、夕食のことを表しているのか!」

「そうだ。黄昏時に得られる幸福は俺の肉体を現世へとつなぐ。カレーライスなどその最たるものだ‼」

「待ってくれ、カレーライスはそのままなのか‼?となると料理の名称はそのまま――――」

「なあ緑谷。おっぱいはなんて言ってんだお前」

「峰田君、じゃまをしないでもらえるか!ようやく緑谷君のことが分かってきた所なんだ」

「そうだな。言葉にした記憶は無いが、呼ぶとするならばやはり『おっ―――――――――か、は・・・!?」

「緑谷のやつ舌を噛んだぞ‼?」

ダクダクと血を流すその姿に、柱の陰に隠れていたオールマイトは口元に手をあてあわあわと狼狽える。

一瞬。彼が言葉を口走ろうとした際、その背後に黒い影が見えた気がしたのだ。まるでこちらを威圧するように揺らめく、闇に赤く弧を描く口を張り付けたそれは、すぐに姿を消してしまい。

「――――――すまない。修正が入ったようだ」

「「誰から‼?」」

「今後、この言葉を口にする機会は彼が許さない限り永劫に来ないだろう。彼は意外にも自らのイメージを気にする傾向がある。この帽子も人前で外そうとすれば頭皮が全て剝がれそうになるのだ」

「おい、まてよ緑谷。となるとお前、これから女の胸見て―――――とか――――――――とかもしゃべれねえじゃねえか!」

「いや、彼の寛容さは俺が一番理解している。その程度であれば問題ないだろう。例えば『きょ――――――!!!!」

「ああああああぁぁぁ!?」

「目と口から血を吹き出して倒れたぞ!なんて恐ろしいデメリットのある個性なんだ!?」

「んな事言より早く治療しなきゃやべえって!俺、ダッシュでリカバリーガール呼んで来るから待ってろ!」

同じく教室にいた切島がそう走り出す様子をオールマイトは見つめることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み、弁当を共に食べることで円滑に会話を進めようと彼を探していたオールマイトは中庭から響く小さな爆発音に気付き足を進める。

柱の陰から中庭を覗き込むと想像通りの二人がいた。

ベンチの上に立ち見下ろす爆豪君と、その下の芝生に正座する彼というなんとも間に入りにくい状態ではあったが。

「それで、俺がなんでキレてるか分かるかクソデク」

「・・・いや。近頃お前の心に寄り添えていた記憶は残念ながら俺には無い」

「それだ‼テメェの言い回しは昔から回りくどくてクソウザかったが、最近は馴れ馴れしさが増してんだよ!」

「なるほど。・・・少しばかりお前の心に俺が触れたいと思いすぎてしまったようだ。許せ、メルセデス」

BOOOM!BOOOM!と断続的に爆発音が鳴り響き、同時に爆豪の顔に赤みがさしていく。

「て、めぇ。俺様にそんな口きいてただで済むと思ってんのか!?今すぐぶち殺して―――――――――」

「そして・・・先ほどから伝えようとは思っていた。俺はこの瞳にはほとんど映してはいないと誓い、あえて伝えさせてもらおう」

「あぁ!?」

「こうして視点を下げ、その顔を仰ぎ見れば自然とこの目が映してしまうのだ。お前の『パ――――――」

彼の口から血が噴き出すのと同時に、その顔面に叩き付けられた手の平から爆発が起きる。

再びあわあわと震えるオールマイトだが、早々に復帰して今度こそ彼を保健室へ運ぼうと今まで姿を隠していた柱の陰から飛び出しかけて

「・・・おい」

倒れた彼へ近づく、普段とは違う爆豪の姿に慌てて動きを止める。

「テメェのことだからこれぐらいじゃなんともねぇんだろ。おい、・・・本当に気絶してるのか?」

その横へヤンキー座りをしながらしばらく彼の耳元で爆破をしたり、頬を突いたり、眉を指先でなぞってみたりしていたが起きないその姿に彼女も動きを止めて。

急にキョロキョロと辺りを見回したと思えば、どんっと男らしくあぐらをかいて座りこみ

「あー・・・ここらへん爆破すりゃ殺せそうだな・・・ここは、ちょっと厚いか」

片膝の上に彼の頭を乗せれば、夕日のように顔を赤くしながらその頭部をさわさわとなでるように探っていく。

(血を流している姿は気になるが、爆豪君も彼のことが嫌いなわけでは無さそうだな。うん、先生あんしんし―――――――――)

「にしてもこの帽子じゃま臭ぇんだよなぁ」

「あががががあああぁぁぁぁ!!!」

ベリッ、という音がオールマイトには聞こえた気がした。

帽子を押さえ、悲鳴を上げてのたうち回る彼という珍しい物に固まる観客二人に対し

「かふっ・・・・慟哭すら許されぬとは」

のたうち回る復讐鬼は許されないと、NGサインが出され再度彼は口から血を吹き出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

けっきょく放課後になってしまった。

あの後もなんだかんだと近付いてはみたものの、意外と言っては何だが彼はクラスメイトと居ることが多く話しかけるタイミングを失っていった。

そのため、こうして正面玄関が見える位置に姿を隠し彼の帰りを待つことにしたのだ。

教師という立場である以上、生徒のことを知ることは重要である。

ならば、多少強引にでも聞かなければいけないと今さらながらに気付いたのだ。

思いが通じたのかゆっくりと校舎から出てくる彼・・・緑谷少年の姿を見つけ、急いでいると悟られぬよう、なるべく自然に近寄って

「やあ緑谷しょうね・・・んんん!?」

その姿が掻き消えた。

まるであの時のようなその光景に戸惑いながら、ふと背後から聞こえた音に慌てて振り返り

「っ、えーと・・・少年?」

マントを揺らしながら背中を向けて立つ彼が居た。

その顔は見えず、相変わらず考えは読めないが

「―――――――この時をどれだけ待ち焦がれていたか。お前の方から距離を詰めてくれるとは思わなかったぞ『ファ・・ォオールマイト神父』よ」

(・・・・ん?)

聞き間違いかと首を捻りながらも、オールマイトはようやく得たコンタクトだとなるべく笑顔を浮かべて・・・しっかりと頭を下げる。

「あらためて君にお礼を言いたくてね。・・・あのUSJでの一件、生徒たち皆が頑張ってくれたおかげで奴らを追い返す事ができた。その中でも、君が脳無を相手取ってくれなければさらに被害は拡大していただろう」

ありがとう。そう口にして、ゆっくりと頭を上げれば

「ッ、クッ・・・今だけは俺の意思でッ!・・・『オーリアマイト神父』の前だけは・・・クソッ!ここまで浸食が進んでいるとは・・・・おさえ、きれない」

背中を向けたままの彼の方からギリギリと歯を食いしばる凄い音が聞こえる。

大丈夫かと、手を伸ばすオールマイトを壊れた機械のように時間をかけて振り返る彼。

(予想外に無表情!なんだか怖いよ緑谷少年!)

緩慢な動作で、懐へ手を入れた彼が取り出したのはオールマイトの写真とサインペン。

「・・・刻印を、この・・・宝具に刻印をッ」

頭を下げ、それらを差し出す右手を反対の左手が引き止めるように引っ張っている。

その動きの意味は分からないが、何を求めているのかは流石に手に持ったものでわかる。

恐る恐る写真とペンを受け取れば、緑谷君へとサインを書き込む。

「ハハハッ!なつかしい写真だね。確かこれは6年前に――――――――」

少し照れくさいが彼もヒーローに憧れるただの一人の生徒だったのだ。

今まで勝手に色眼鏡で見ていたことを申し訳なく思いながら、つとめて明るく笑い写真とペンを返そうと差し出し、ぽんっとその肩を叩いて

 

 

 

「―――――気を、失っている」

静かに、白目をむいた彼の体は後方へ倒れていった。




「そうだ。黄昏時に得られる幸福は俺の肉体を現世へとつなぐ。カレーライスなどその最たるものだ‼」
(うん。夕ご飯って明日も頑張ろうって気になるよね。カレーライスとかだとさらに嬉しいかも)

「そうだな。言葉にした記憶は無いが、呼ぶとするならばやはり『おっ―――――――――か、は・・・!?」
(あははは。言ったことは無いけど、言うとしたらおっ・・・・痛った・・・くない!?)

「――――――すまない。修正が入ったようだ」
(ごめん、おじさんが言ったらダメだって)

「今後、この言葉を口にする機会は彼が許さない限り永劫に来ないだろう。彼は意外にも自らのイメージを気にする傾向がある。この帽子も人前で外そうとすれば頭皮が全て剝がれそうになるのだ」
(こうなっちゃうともう難しいかも。けっこうおじさん気にしやすいから、・・・帽子も人前で脱ごうとすると禿げるんじゃないかってぐらい痛いし)

「いや、彼の寛容さは俺が一番理解している。その程度であれば問題ないだろう。例えば『きょ――――――!!!!」
(でも、けっこう優しいところもあるんだ。こうやって言葉遊びくらいなら大丈夫だよ。・・・たとえばきょ・・・・っ!?さっきよりちょっと痛いし目も見えない!?)




「・・・いや。近頃お前の心に寄り添えていた記憶は残念ながら俺には無い」
(最近あんまり多く話せてなくて、思い当たることは無いかも)

「なるほど。・・・なに、少しばかりお前の心に俺が触れたいと思いすぎてしまっただけだ。許せ、メルセデス」
(えーと・・・話す機会をちょっと増やしたいなと思っただけなんだ)

「そして・・・先ほどから伝えようとは思っていた。俺はこの瞳にはほとんど映してはいないと誓い、あえて伝えさせてもらおう」
(あと・・・あんまり見ないようにしてたんだけど。こう見上げると見えちゃって・・・かっちゃんのパ――――――!痛い、熱い、なに!?)

「あががががあああぁぁぁぁ!!!」
(あががががあああぁぁぁぁ!!!)

「かふっ・・・・慟哭すら許されぬとは」
(転がりまわって叫ぶのも・・・ビジュアル的にダメ、なのか・・・)




「―――――――この時をどれだけ待ち焦がれていたか。お前の方から距離を詰めてくれるとは思わなかったぞ『ファ・・ォオールマイト神父』よ」
(やっと、会えた!それも『ファリア神父/オールマイト』から近づいてきてくれるなんて)

「ッ、クッ・・・今だけは俺の意思でッ!・・・『オーリアマイト神父』の前だけは・・・クソッ!ここまで浸食が進んでいるとは・・・・おさえ、きれない」
(っ、せめて『ファリア神父/オールマイト』の前だけは!・・・くっ、まさか自動翻訳がここまでっ)

「・・・刻印を、この・・・宝具に刻印をッ」
(サインをっ、僕の宝に・・・サインだけでも)






鋼鉄の決意《EX》
痛覚遮断、肉体強化、高速移動を可能とする。
わりとエドモンのさじ加減。

エドモン語《EX》
回りくどく、重い言葉に変換される。
強制的に修正が入ることが多いがこちらは自動であり『中の人』の意志は関与していない。
肉体、あるいは見た目に関することであれば『中の人』の修正が入ることもある。
使うとあまり長い付き合いではないのに、すぐに彼氏っぽい雰囲気になると評判

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