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[雄英体育祭-トーナメントガチバトル-]
「クソ親父がワタシにしてきた事はただそれだけ。オールマイトへ勝つために、ワタシという存在は生まれてきたそうだ」
控室から呼び出され、人気のなくなった廊下で轟さんが最初に話したのはそんな言葉だった。
なんなんだよそれ、と。
そう思ってしまうほどに目の前の少女から受けた話は衝撃的で、とても同年代の子が抱えている悩みだとは思えないほど世界が違っていた。
「母はいつも泣いていて、ワタシの髪の色を見ては怯えていた。そんな母に笑顔になってもらいたくて近付いたワタシが悪いんだ、『お前の左側が醜い』なんて煮え湯を浴びせた母の気持ちが今ならわかる。・・・最後の記憶の母は泣いていた。女の子の顔に痕をつけたって泣いて・・・錯乱してそのまま病院に入れられて、それっきり会っていない」
淡々とかたる彼女の顔に表情はなくて、それでも僕には彼女がこの話を聞いて共感を求めている訳ではないと感じていた。
「あのクソ親父の炎が憎くてたまらなくて・・・同時にワタシは怖くてたまらないんだ。映像だろうが写真だろうが火を見ただけで体は震えて――――気付けば炎が出せなくなっていた」
記憶をたどる。そう・・・確かに彼女が炎を使う姿は見ていなかった。
授業中も、USJの時も今回の体育祭も。
「世間体って奴でワタシの個性は炎も使えるってことになっている。だが、それもクソ親父の策だ。『失敗作の娘に早く個性婚をさせる』ためには強力な個性だってアピールが大事らしい。既に候補は絞り込んでいて、『あとはお前が結婚できる年になればいい』だとさ。・・・まるで出荷される家畜みたいだと思ったよ」
いったい、どんな気持ちで彼女はいままで過ごしてきたのか僕には想像もつかない。
かけるべき言葉も、僕なんかがかけて良いのかすら分からない。
「生きてるのか死んでるのか分からない毎日で、親父への憎しみだけがワタシの生きる力になっていた。――――――そんな中で、あの日お前の姿をテレビで見たんだ」
それでも、
「とても綺麗な炎だった。憎しみも、怒りも、優しさも温かさも混ざり合ったようなそんな炎だった。あんな炎もあるんだと、そしてその炎で誰かを助けようとする姿はワタシが成れたヒーローの形なんじゃないかって。泣きながら見たあの時の気持ちは忘れていない。・・・なあ、み・・・イズク、ワタシがヒーローを目指したのはクソ親父を見返すためじゃないんだ。ここに来たら、ワタシに火をつけてくれたヒーローに会えるんじゃないかって・・・そう、思ったんだ。だから―――――」
「―――――僕はッ・・・まだ、・・・ヒーローなんて名乗れないよ」
自分の言葉で、答えるべきだと思ったんだ。
代償として、炎の中に放り込まれた様な痛みが全身を襲うが関係ない。
「でも、・・・いつかきっと・・・僕は君のヒーローになってみせるよ」
彼女を縛るのはきっと、父親だけじゃない。
「それは、つまりワタシのこんやく――――――」「だから今はまず君の友達になりたい。・・・友達としてこれからの事を一緒に考えていきたいんだ」
彼女自身が自分を縛っていると、そう彼女の言葉から感じる――――――
「それは・・・つまり・・・これからも良い友達で・・ってことか?」
今までとは少し違った雰囲気で、なぜか恐る恐る聞いてくる轟さんを安心させるために、強く頷く。
「うん! これからもずっと、いつまでも友達でいよう‼」
そう返した瞬間。
ゴッ、と轟さんの体から強い冷気が放たれる。
唐突なそれに反射的に顔を庇いながら、いきなりどうしたのか何とか目を開けて轟さんの顔を見れば
「―――――バカっ‼」
「なんで!!?」
なぜか涙目で走り去っていくその背中に僕は何も言えなかった。
トーナメント進出者の物間 寧人が精神に異常をきたし一時中断していた体育祭も、30分後に彼が起きその心身に異常がない事が分かれば再び再開された。
彼に失神前の記憶は無いが、爆破少女を泣かせた様子とあまりに業の深い長ゼリフの影響は色濃く残っており、彼を見る会場の目は冷ややかだ・・・が。
「関係ないけどねぇ!!!! なんせB組の出場者数はA組と同じ。あれぇ?? ヴィラン襲撃の経験とやらはどうなったんだろう!!?」
物間が叫ぶように、序盤に緑谷チームが二組から鉢巻を奪い、逆に爆豪は物間撃破時に殺意が高すぎて鉢巻までは取り切れなかったり。
波乱に満ちた騎馬戦の結果トーナメント表はA組B組、さらには普通科サポート科が入り乱れている。
すでにリング上に上がった緑谷出久の初戦の相手は、現在もこちらを煽り続けているそんな物間 寧人であった。
さきほどの出来事で会場内の物間への評価は低いが、緑谷の評価は真逆。
(さっきの騎馬戦でもかっちゃんを一度はあしらったみたいだし、何より最後の奇襲のタイミングはこちらの虚を完全に突いていたと思う。『ふむ、少しばかり考え方が歪んでるけど計算の上手な子だと思うがネ。頭脳の良さと社会の評価とは反比例するものさ。ただのちょい悪の私への評価がその良い例だと言えるだろう!』)
たまに語り掛けてくるこのおじさんはどちらの味方なのだろうかと考えながら、プレゼント・マイクの声に耳をすませる。
姿はどのような状況にも対応できるよう、火力は低いが精密性の高い『20%』スタイル。
そして、始まりの合図が聞こえるその刹那
「スタァァァァート‼」「それで・・・・僕はいったい誰の個性をコピーしたでしょうかぁ?」
スタートの声が鳴り響く中、小さなその声を聞き取ろうとしてしまい
一瞬で距離を詰めた物間の拳が下方から突き上げてくる。
だが、鋼鉄の決意により強化された身体能力の前では常人の拳は問題なく防ぎきれる。
拳に対し、左腕で押さえた右腕を盾の様に構え衝撃に備え――――――
メキメキッ‼と音を立てて腕が押し上げられていく。
有りえない衝撃と、圧、激痛に思わず腕を避けようとするが、拳はまるで腕を逃がさないかのように力を向ける方向を下方へ捻るように落とし
「まずはぁ・・・一本‼」
何かが折れるような音と共に、緑谷の体が弾き飛ばされる。
(っ、切島君の・・・・いや、違う。手の色が・・・)
満足げに、見せびらかすように振るその手は銀色に輝いている。
その手が視界に入ったと同時に、ようやく地面に接触した体がゴロゴロと転がり・・・緑谷は素早く起き上がり体勢を立て直す。
(右手は・・・もう痛みは遮断してもらえてるけどたぶん折れてる。肘から先が殆どうごかない。僕はバカだッ、・・・彼が速攻を仕掛けてくることなんて簡単に予測できたはずだ)
「A組の秘密兵器なんて呼ばれてるみたいだけど、個性頼りで頭は使えないみたいだねえ。速さを売りにする君との距離を詰められるのは最初だけなんだ、その内に厄介な手か足を潰すのは読めたはずだろう」
すぐさま距離を詰める物間だが、今度こそ初動に合わせ対応できた緑谷がその側面へ回り込む。
利き手ではない左手で振るわれた拳は鈍い音をたてて物間の頭部へ突き刺さるが、銀色に変色した頭部には傷一つつかない。
「気付いた?そうスティール。鉄哲の個性にしちゃ悪くないけど、硬くなるだけなんてやっぱり地味だよね」
カウンター気味に放たれた蹴りが、攻撃後の緑谷の脇腹へ衝突する。
(ま・・・ずっ‼?)
わき腹から異音が鳴る。
自ら跳ぶ余裕はあったものの、鋼鉄が衝突したダメージは馬鹿にできない。
今度は倒れずに立ち直るが、表情の変わらないその頬に冷や汗が流れる。
(彼の個性には制限時間があったはず。それを待てば有利になるはず・・・・だけど‼)
それは、ヒーローだろうか。誰かが助けを求めているかもしれない、そんな時に敵の弱体化を待っていましたなどと言いわけするのだろうか。
緑谷 出久が目指すのは『笑いながら』全てを――――――
「ク・・・ハハ。クハハハハハハハハハハハッ‼慈悲などいらぬ‼オレの理想はお前の先に・・・‼」
黒炎が両手に纏わりつき、古ぼけた手袋を編み上げる。同様に、深紅であったネクタイは黒く染まり、その中で小さな光が流れるように明滅する。
「・・・はっ、コスプレする余裕なんてまだ―――――ッ‼?」
笑う物間の視界が一瞬で黒く染まる。
それが、どこか古ぼけた匂いの黒い手袋に包まれた左手だと気付くと同時に
その手から放たれた炎が顔面を焼く。火力は抑えられ、スティールの個性で耐えられてはいるが
「が、ああああ‼」
口から入り込む、暗く冷たい、だが焦がすような熱は防ぐことはできない。
思わず距離を取った物間の顔面を、追撃してきた緑谷の拳が捉え
岩同士をぶつけたような音を立て、物間の顔面がのけ反る。
だが、すぐに姿勢を戻せばその顔には僅かにダメージのあとは見えるが未だ倒れる様子は無い。
「っ、ちょっとは力が上がったみたいだけどそれで何がどうなるのさ! 傷がつけられなきゃ同じだよねえ‼」
身を乗り出すように、一歩踏み出した物間が拳を振りかぶり・・・・ゆっくりとその体が倒れていく。
(なっ、・・・目が、視界が揺れる‼?力が、入らない・・・‼)
「ランサーと同様に・・・硬質化した体は無事であろうと脳までは守れるはずもない。強い衝撃を与える事には苦労したが、オレの勝利だ」
揺れる視界の中、背中を向ける緑谷。
さきほど起きたアレを思い出し、僅かに顔を歪めた物間は――――――ガシリ、とその足を掴む。
何を、と振り向きかけた緑谷だが、次いで起きた異常事態に目を見開く。
自身の体が、いつの間にか宙に浮いていたのだ。
ズキズキと痛む足首と、遥か下に見えるステージが『足首を持ち上げるように投げ飛ばされた』のだと伝えてくる。
それを起こした男が
「―――――――感じます。負傷者、そして殺菌されていない傷」
ぐりっ、と首を上げこちらを見上げる。
元の彼とは違う、どこまでも透き通るような赤い瞳がこちらを見据え
「あなたの命を救います。あなたの命を奪ってでも」
その静かな言葉に、何故か自らの体に宿る彼がため息をついたのを感じた。
実況をしていたプレゼント・マイクの動きが完全に止まっているのを横目で見ながら、イレイザーヘッドは今回ばかりは仕方ないと考えてしまっていた。
そもそも実況出来ないのだ。
緑谷が高速で動くのに対し、物間はその体を瞬時に掴み上空に放り投げる、あるいは地面に叩きつけているのだ。
先ほどまで物間にはなかった怪力も原因だが、異常なのはその胆力と勘とでも言うべきだろうか。
目で緑谷を追っている訳ではない。迫る拳が顔面に迫ろうとも瞬きすることなくその拳を最後まで捉え、直線的な動きに入り目で追えるようになった瞬間を掴み取っている。
あれの恐ろしさは、対峙している緑谷が一番実感しているだろう。
蹴りを放つ。
足首を掴まれ投げ飛ばされる。
拳を放つ。
腕を掴まれ放り投げられる。
全身で体当たりするようにその体へと突っ込めば
「―――――処置します」
頭部を掴まれ、地面へ叩きつけられる。
破砕音と共に地面に亀裂が入り、爆発したように砂煙が立つ。
(ッは・・・威力が、おかしい)
セメントスにより作られた会場だ、生身の拳で簡単に砕ける筈が無いのだ。
ふらりと立ち上がった体へと、瞳孔の開ききった赤い瞳が迫る――――と思考した瞬間には懐へその体が入り込んでいる。
クロスするように振るわれた両手刀が胸元に叩き付けられ、胸部に痛みが襲い掛かると同時に後方へ体が吹き飛ぶ。
「・・・受傷部の増加を確認。これ以上、受傷部を増やさないためにも患者の鎮静化が最優先でしょう。・・・覚悟はよろしいでしょうか?」
地面を転がる間に一瞬意識を失っていた緑谷が次に目を開ければ、カチャリという音が耳にまず入る。
仰向けの自分の額に付きつけられているのが世に言うリボルバーと言うもので、その引き金に指がかけられている事に気付けば
「・・・なぜ治療を拒否するのですか」
間一髪で首を傾け、銃弾を避ける。
こちらと同じように首を傾げ、心底不思議そうにこちらを見るその姿に背筋を凍らせながらけん制として炎を放つ。
距離を離した物間に対し、緑谷は頭を回転させる。
(かっちゃんみたいな反応速度に怪力。でも、炎を避けたという事は防御面は並みの可能性が高いんじゃないか。それに――――――)
ゆっくりと、顔を上げる。
かく乱するように、緩急をつけ彼の周囲を駆け巡る。
速度に慣れさせない。視界の陰に入る。
まるで陰から攻めるように見せかけて
物間(?)は視界に入る彼を冷静に見つめていた。
(?)に名だたる英雄のような戦闘経験は無いが、人体の動きを把握する観察眼と判断力、そして胆力が備わっていた。
故に、視界の端から伸びてきた腕を再度捉えようとして
その手の平から、拡散した炎が視界を奪ってしまえば観察眼による予測は出来ない。
遮られた視界のどこから攻撃がとんでくるか分からない。常人であれば焦る状況
だが、その反対から炎を突き破るようにして現れた拳を―――――迷いなく掴み取る。
飛び出したところを掴むだけ。冷静な(?)には造作もない事で
「―――――神秘への知識の薄さ。それがお前の敗因だ『メルセデス』」
背後から現れたもう一人の黒衣の男の拳がその側頭部を打ちすえた。
明滅する視界に、ようやく殴られたのだと認識した(?)が振り向けば、捕まえている彼とは違うどこか愁いを帯びた表情の男が立っていた。
「最初からそうやって増えて対処すりゃ良かったんだよ、クソデク」
「あら、爆豪ちゃんもう行くの?」
なんだかんだ、最後まで試合を見届けた爆豪が隣で立ち上がったのをカエル少女が見上げて首を傾げる。
試合開始までまだ時間はあるし、なによりまだ呼ばれていないのだ。
そんな言葉に、軽く舌打ちしながら首を向けるのはちょうど自分の真正面の席に座りこちらを見ている相手。
「あんな敵意むき出しにされて黙ってられるわけねぇだろうが・・・」
ゾッとするような冷えた瞳がずっと見つめている。
緑谷の試合が終わってから、片時も視線はこちらの顔から離れていない。
「俺になんの恨みがあるかは知らねえが、ガンつけといてただで済むと思ってんじゃねえぞッ‼」
牙を剥き、中指を立てる爆豪に対し
ただ静かに、体を1ミリも動かさず爆豪 勝紀の顔を轟 焦子が見つめていた。
ざ・とくべつるーむ-緑谷ヴィジョンテレビ付き-
????「よしっ、よしっ、そこで腰をひねって‼重く打つのよ!違う、そんなんじゃ勝てな・・・・んんっ、いいえ。このような野蛮な行事を学び舎で行うとは嘆かわしいことです」
????「そう?あたしは子供たちが勝利のためにがんばる姿っていいと思うけどなぁ。あーあ、私もチャリオットで応援に行きたい」
????「ダメね。あのオーディエンスに応えられるのはアイドルである私だけよ!あなたたち3人も、ついでにそこで酔い潰れてるアサシンもちょっとばっかし華が足りないわ!」
????「・・・負傷者の気配確認。アルコール中毒よりも優先度が高いと判断されるため、向かうとしましょう」
????「やれっ、急所を・・・・あら?そこにいた彼女はどこに行ったの?」
????「??・・・・っ、アレ!噂の異世界への入り口!まって、私のオーディエンスたちがっ‼・・・・・・・・・・あっ」
????「はははははははは!入り口が閉じて尻から下だけ残ってるー!あいどるっておもしろいねぇー!」
????「起きて早々に笑ってないで助けないと!ほらっ、あなたたちも手伝って!」
????「ぇ、いまちょっと良いところになってきたのよ。拳が、こう上手く入って・・・・コホン、当然手伝いますわ」
????「なんでもいいから早く助けなさいよー‼」
「―――――僕はッ・・・まだ、・・・ヒーローなんて名乗れないよ」
(―――――僕はッ・・・まだ、・・・ヒーローなんて名乗れないよ)
「でも、・・・いつかきっと・・・僕は君のヒーローになってみせるよ」
(でも、・・・いつかきっと・・・僕は君のヒーローになってみせるよ)
「だから今はまず君の友達になりたい。・・・友達としてこれからの事を一緒に考えていきたいんだ」
(だから今はまず君の友達になりたい。・・・友達としてこれからの事を一緒に考えていきたいんだ)
「うん!これからもずっと、いつまでも友達でいよう‼」
(うん!これからもずっと、いつまでも友達でいよう‼)
「なんで‼?」
(なんで‼?)
「ク・・・ハハ。クハハハハハハハハハハハッ‼慈悲などいらぬ‼オレの理想はお前の先に・・・‼」
(まだだっ・・・・諦めつもりもない。僕の理想はお前の先に・・・‼)
「ランサーと同様に・・・高質化した体は無事であろうと脳までは守れるはずもない。強い衝撃を与える事には苦労したが、オレの勝利だ」
(切島君と同じように・・・高質化した体は無事でも脳への衝撃は通るはず。強い衝撃を与える事に苦労したけど、僕の勝利だ)
「―――――神秘への知識の薄さ。それがお前の敗因だ『メルセデス』」
(―――――神秘への知識の薄さ。それがお前の敗因だ『メルセデス』)
無言の視線
(アイツは緑谷の幼馴染。ワタシはみど・・・イズクの何なんだ。あったばかりだけど、ワタシだけのヒーローになってくれるんだからそれはつまりワタシだけのものになるということ。つまり婚約者、結婚、夫、子供は二人、男女、老後、一緒のお墓・・・・・アイツはそれを妨げる可能性がある。つまり――――――排除しよう)