俺の霊圧は消えん!   作:粉犬

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Life.9 左腕、出ちゃいました。

俺の能力はアザゼルと邂逅したことで飛躍的に上がっていた。

アザゼルからの能力の伸ばし方。

はぐれ悪魔やコカコーラ、ケツァ姐さんなどの自分より格上の者たちとの戦闘。

俺はついに、虚化を20分という時間ノーリスクで出すことに成功するようになっていた。

そして、この右腕。巨人の右腕(ブラソ・デレチャ・デ・ヒガンテ)を開放するに至った。

 

虚閃(セロ)

 

「くぅっ!」

 

出力は上々、牽制に一発虚閃(セロ)を放ったが速さも威力も中々だ。

視界も良好、頭痛吐き気その他不調一切なし。

調子を確かめたところで構えをとる。

 

左手を前に突き出し、右腕を高い位置で留める。

 

わかる人にはこういえばわかるだろうか。

血界戦線、ライブラのリーダー、クラウス・V・ラインヘルツが使用していた構え。

左右の手で攻守を完全に分ける形式。

まさに茶渡泰虎の両腕の能力にぴったりだ。

 

「はぁッ!」

 

凄まじい速さで接近してきたヴァーリの攻撃を左腕でいなし、体勢が崩れたところに右腕で撃ち落とす。

 

「おぉ!」

 

「ぐあっ!?」

 

勿論俺は一撃一撃全て渾身の力で叩きつけているが、相手もさるもの。

攻撃が当たる寸前で体勢を立て直し一瞬後ろへと飛び威力を殺した。

飛行能力はやはり羨ましいな。こういった体勢の立て直しが他に比べて格段に速い。

 

虚弾(バラ)ァ!」

 

「ぐおぉ!」

 

しかし逃がす気はない。飛び去る方向に速さに優れる虚弾(バラ)を数発撃ちこみ追撃する。

 

「くっ! アルビオン!」『Divide(ディバイド)!!』

 

「ムっ!?」

 

更に追撃をしようと響転で近づこうとする直前、ヴァーリの神器(セイクリッド・ギア)が喋ったと思ったら力が一気に落ちる様な感覚に陥った。

 

「今度はこちらから行くぞ」

 

「なっ!」

 

いつの間にか目の前にいたヴァーリの攻撃を慌てて右手を使って防ぐ。

何だ? 速度が上がった?

 

「素晴らしい反応速度だ! それに一度の半減で上限の半分ほどの力を吸い取ることができるとは……」

 

「ふむ、それがその神器(セイクリッド・ギア)の能力か」

 

「その通り。白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)は接触したものの力を10秒毎に半減させ、その力をそのまま俺の力にする能力を持つ!」

 

Divide(ディバイド)!!』

 

「ぐっ!」

 

また力が……

 

「はっ!」

 

「ちぃっ!」

 

今度は鋭い蹴りが来る、左手で受け流すにも限度があるな。

この能力強すぎだろう! 対処法が触れられない事って初見殺しにもほどがある!

 

だが泣き言を言う前に殴る。それが俺の信条だ。

 

虚閃(セロ)

 

「最初に放ったあの圧が見る影もないな!」『Divide(ディバイド)!!』

 

三回目の半減と共にそう言い放ち、片手で俺の放った虚閃(セロ)を相殺する。

が、これは言ってしまえば目晦ましだ。

放った瞬間に響転でヴァーリの背後を取る。

 

「なっ!? どこに!」

 

巨人の(エル)……」

 

「なっ!? 後ろに!」

 

一撃(ディレクト)ォォオオオオオ!!!!」

 

「ぐっ!? づぁぁあ!」

 

渾身の一撃、しかしそれを受けながらもヴァーリは反撃してきた。

強力な手刀が首に直撃する。

意識が飛ぶような感覚を必死に耐え抜き構えを取る。

 

『Divide《ディバイド》!!』

 

4回目の半減、ついに仮面が割れた。

5回目を過ぎれば恐らく巨人の右腕(ブラソ・デレチャ・デ・ヒガンテ)も維持できなくなるだろう。

ただの変異した右腕ではヴァーリには太刀打ちできないだろう。

さあ、どうだ。立ち上がるか?

 

「ごほっ、強い。茶渡泰虎。恐らくこれまで相対した中でトップクラスの強さだ! 神器(セイクリッド・ギア)の力が無ければ確実に勝てない! タダの人間である君に!」

 

「ぺっ、元気そうだな」

 

「元気だ、元気だとも! ここでへばっている暇はない! もっと、もっとだ! もっと戦い(やり)あおう!」

 

 

 

別室で観戦している俺は純粋に驚いていた。

ヴァーリとここまで戦えるとは……

 

「おいおい、ヴァーリの奴完全にイケナイスイッチが入っちまってるぜぃ? 止めなくていいのか?」

 

「そうにゃ! これ以上は泰虎が危ないにゃ!」

 

「いや、まだだ」

 

確かに危ない。どちらも危険だ。

だが、あの右腕。見覚えがある。コカビエルの奴との戦闘の後になったあの形態。

その時と同じものだ。

 

じゃあ左腕は?

 

あの戦闘スタイル。左右の腕で完全に攻守を分ける構え。

言っちゃなんだが非効率的だ。しかしあいつはあのスタイルに拘る。何故だ?

そして何故態々生身の方を防御に使う?

確かに攻撃力を考えるのならばそちらの方がいいかもしれないが、戦闘で最も重要なのは基本的に防御力だ。

仮面が付いている状態ならば泰虎は素手でも十分な攻撃力を発揮できる。

それを態々しない理由。それは?

 

俺の推測が正しいなら、右腕こそが防御の力。

 

 

そして、左腕は―――!!!

 

 

 

 

Divide(ディバイド)!!!!!』

 

5回目の半減、それを合図にヴァーリが突撃してくる。

本当にチートだな。半減する力。普通に考えれば2回で終わるその行為。

なぜ5回も耐えられるか?

そんなもん簡単だ。……気合いだ!

アザゼルはいつだか言っていた。

神器(セイクリッド・ギア)は所有者の心に応えると。

ならば応えて見せろ。

ならば着いて来い!!!!!

この最高の敵を倒す力を寄越せ!!!!!!!

 

巨人の右腕(ブラソ・デレチャ・デ・ヒガンテ)ェエエエエエエエエエ!!!!」

 

「5回の半減を経てまだそれを出現させるか! やはりすさまじい!」

 

これだけじゃ足りない。次の半減は絶対に耐えられない。ならばここで決めるしかない。

だが、必要な手数は二手!

右腕だけでは足りないならば!

 

「これで終わりだぁぁああああ!」

 

俺から吸い取った力で強化された全力の拳。

しかしこれは元より防御の力、ならばすべて弾いて見せる。

 

 

バジィイイインッ!

 

凄まじい音が鳴り響き、ヴァーリは大きく後方によろめく。

 

そして、これが……!

 

悪魔の左腕(ブラソ・イスキエルダ・デル・ディアブロ)

 

攻撃の力!

 

左右の腕のスイッチ。

最初から右しか使っていなかったからこそ警戒していない左からの攻撃。

ヴァーリの顔に驚愕が浮かび、攻撃を避けようと飛ぼうとしている。

だが、逃がさない。

 

魔人の一撃(ラ・ムエルテ)

 

打ち下ろした左腕はヴァーリの腹のど真ん中を捉え地面に叩きつける。

そして魔力が爆発的に広がり、地面が骸骨の形に抉れていく。

 

凄まじい衝撃派が収まると、そこには完全にノックアウトし神器(セイクリッド・ギア)も解除されたヴァーリが倒れ伏していた。

 

「……俺が力を掴めたのは、お前が全力で戦ってくれたおかげだ。ヴァーリ」

 

実際俺はこれまで左腕の力の解放をすることができなかった。

土壇場での覚醒。

やはりサンドバックを叩いているだけでは超えられないものがある。

 

そう思いながら、俺は力を出し尽くした影響でその場で倒れた。

 

 

 

 

to be continued…

 




やっと完全体ですね。
長かったね。
うん。
いやー、久々のドシリアスでしたね。
え? 戦闘はシリアスって言わない?
そもそもこれまでシリアスが無かった?
……また次回!

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