サンドバックの叩く音が聞こえる。
これも大分聞きなれた音になってきた。
その音がやむと、サンドバックをずっと叩き続けてきた奴へと三人が集まっていく。
「お疲れさまにゃん」
そう言ってタオルを渡す黒歌。
「ああ、ありがとう黒歌」
「さてさて、次は俺っちとの模擬戦と洒落こもうぜぃ」
そのタオルを受け取り汗を拭く泰虎に意気揚々と挑む美猴。しかしそれに待ったをかけるヴァーリの姿。
「待て、今日は俺の筈だろう。この間の買い出しを代わったこと、忘れたとは言わせんぞ」
「げっ、そんなことしたっけか。今日はお預けかよぉ」
「二人とも待つにゃん。泰虎は今日は私といっしょに仙術の修行をするって決めてたにゃ! 二人っきりの機会を邪魔しないでよね!」
わーわーと騒ぐ奴らを遠目に見ていると、大分老けてきたなぁと思ってしまう俺がいた。
「ったく、元気そうでいいねえ子供ってのは。泰虎のやつは人気者だこった」
あの模擬戦以来、ヴァーリも美猴も泰虎の修行に付き合うことに随分乗り気になり切磋琢磨してぐんぐんと実力を伸ばしていっていた。
虚化とやらの制御も
目の前で普通の若者の様に燥いでいる奴らは、恐らくこれからいくらでも波乱が押し寄せるだろう。
白龍皇、孫悟空、SSランクはぐれ悪魔、謎の強力な神器の保持者。
ただそんな奴らが今この場で、わずかばかりでも立場を忘れて支え合っているということが、どうしようもなくまぶしく見えた。
「ちっ、あーヤダヤダ。年を取るとなんでこう感傷に浸っちまうかねぇ」
ヴァーリと美猴はどこか危なっかしい印象があった。
力を求めるために何でもやる様な、そんな一面があったことは否めない。
黒歌も、これまでの経歴からか、いつでも孤独を抱えて、他人から一歩引いた距離で話していた。
それを変えたのは間違いなく泰虎だ。
鍛えることが生きがいの鍛錬マニア。
人間のくせに世界の戦闘力トップクラスに片足を割り込む勢いで成長する奴。
全員一癖どころか癖しかないやつらが、あいつを中心にまとまっていく。
「ああいう馬鹿が、世界を変えちまうのかね」
そんなことを考えながら改めてその四人を見ると……
「言ってもわからないようだな。いいだろう。力づくでも俺が泰虎との模擬戦を勝ち取ってやる!
「おいおい、そういうの嫌いじゃないぜぃ!
「
「やるというなら受けてたとう。
そこには地獄一歩手前の光景が広がっていた。
「待て待て待て待て待て待て!!!! やめろ! お前らが暴れたらただじゃすまn」
その声は巨大な爆発音によってかき消されたのであった。
こんな日常が、この後数か月当たり前の様に過ぎていき。
そして、とある日の春の事。
ついに彼は旅立ちを迎える。
茶渡 泰虎
15歳
そう、彼は来年高校生になるのだ!!!!!
to be continued…
プロローグの終焉。
次回から駒王学園編突入!
そして連続投稿はこれで終わり!
この速度はこれ以降一生出ないからそのおつもりでよろしくお願いします。
プロローグだけ先に完結させておきたかったんです。はい。