俺の霊圧は消えん!   作:粉犬

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駒王学園入学式

今日は入学式、明らかに似合っていない制服に袖を通している。が、どうにも窮屈だ。また背が伸びたのだろうか。そう思いながら襟元を指でそろえたり袖を伸ばしたりするがどうにもしっくりこない。これは今年中に新調することになるかもしれないな、そんなことを考えながら後ろを振り返った。

 

「で? アザゼル、なぜ当然のようにいるんだ」

 

「何故ってお前、そりゃ爺さんにきっちり撮影して来いって頼まれたからな。ばっちり撮影して来いってよ」

 

そこにはスーツを着てニヤニヤと笑いを浮かべる、いつもより5割増しくらいでうさん臭いアザゼルが手に持つカメラをぷらぷらと振っていた。

 

「クッ、フフッ、それにしても似合ってねぇなぁ!」

 

「……自覚はある」

 

「特にリボンタイってのが、また、ハハハハごぶるふっ!?」

 

爆笑し始めたのでリバーに叩きこんでやった。安心しろ。峰打ちだ」

 

「こ、拳に峰も何もねえだろうが……」

 

「ム、考えを読むな。趣味が悪いぞ」

 

「だから、途中から口に出てんだよ…… ぐぅ、朝飯が逆流する……」

 

「大丈夫なのか?」

 

「自分で殴ったくせに聞くなよ。駄目だよ。お前の腹パンとかシャレにならん」

 

「そっちじゃない。お前がここにいていいのかと聞いている」

 

「いっそ清々しいまでに悪びれねーな…… いつも言ってんだろ。バレなきゃいいんだバレなきゃ」

 

「悪党だな」

 

「堕天使にいうセリフじゃねえわな。ま、力さえ抑えときゃ俺はグレモリーの娘とは面識はねーし大丈夫だろ。他の父兄も来てるから特別目立たなけりゃ問題ねえ。そういう訳でお前は普通に式に出てりゃいいさ。後で定番の校門前で一、二枚撮っときゃいいだろ」

 

前髪だけを金髪にしている派手な髪をして目立たないとかどの口がほざくのだろうかと思ったが、手元に光るこの間冥界を飛んだ時にしていた腕輪を発見して一応納得した。

 

「ほれ、俺のことはもういいだろ。式に遅れるぜ」

 

「ム、そうだな。確かにあまり時間に余裕はない。急ぐか」

 

「飛んで行きゃすぐなんだがなぁ。さすがにばれるか。あー、こういうところは面倒だな人間界。ゲームとか娯楽はいいんだが……」

 

「そういえばまた増えていたな。別に構わんが次にリビングに出しっ放しにしていたら大事なゲームのデータが次やる時にはオールコンプリートされていると思えと黒歌が言っていたぞ」

 

「地味に嫌だなおい……」

 

そんな話をしながら学校へと向かった。

 

 

 

特に当たり障りもなく式は終わり、その後教室に行き連絡事項や自己紹介などを行った後すぐに解散となった。

だいぶ視線を集めていた気もするがこの図体と肌の色はまあ多少目立つのだろう。

だがクラスメイトにも金髪の奴もいたし少しはまぎれるだろう。

というかあの金髪人間じゃなかったな。……まあ悪魔の土地で今さら言うことでもないか。

学校から出てきて、アザゼルを探す。周りには保護者や新入生が多くいてすぐに見つからずきょろきょろとしていると後ろから声がかかった。

 

「チャド?」

 

「ム?」

 

呼びかけられた気がして後ろを振り返る。

というかだいぶ久々にその呼び名で呼ばれたなと思いながら振り向く。

 

「おー! やっぱりチャドだろ! 俺のこと覚えてるか?」

 

相変わらずでけーな! とにこやかに話しかけてくるその男に、見た目は成長しているものの俺は確かに見覚えがあった。

 

「お前は……」

 

「そうそう、昔近所に住んでたー」

 

一護(いちご)!」

 

一誠(いっせい)だよ! 誰だそれ!」

 

「いや同じ一が入っているしここは言っておかねばなるまいと思ってな……」

 

「よく分からないけど、結局俺の事覚えてるのかよ」

 

兵藤一誠、まだ日本にいたころの友人だった。

逆立つような茶髪に活発な印象を受けさせるその立ち居振る舞いは、成長しようと変わっていなかった。

 

「覚えている。しかしよく俺がわかったな」

 

「いや、お前くらいインパクトあるやつは中々忘れないと思うぞ…… 昔からでかかったし。それにしても久しぶりだな。小学校の頃引っ越して以来だよな」

 

「ああ、メキシコの方に行っていた。アブウェロ、じいちゃんの家に預けられていたからな」

 

「あ、確か……」

 

俺の引っ越した理由に思い至ったのか、なんとなく気まずげにするイッセー。

確かに触れづらい話題であるだろう。

 

「気にするな。もう何年も前の話だ」

 

「お、おう。そうか? それで、こっちに戻ってきたってことはお爺さんと一緒に来たのか?」

 

「いや、じいちゃんはあっちで仕事があるからな。俺だけできた」

 

「ってことは一人暮らしか⁉ いいなぁ、憧れるぜ!」

 

「いや同居人がいるから一人暮らしじゃないな」

 

「ど、同居人? そ、そそそれはまさか、彼女だったり!?」

 

「いや特にそういう訳では」

 

ない、と言おうとしたところで視界の端に移る人だかり。

中心にいる見覚えのあるちゃらんぽらん。

見たところ写真を撮るのを引き受けているようだ。

女学生中心に。ていうか相手が引いているのを見てわからんのか。

 

「ん? なんだあの人。業者の人とかなのか? ていうかあんな女子と和気あいあいと話せるってすっごいうらやまs、っておい! チャド!」

 

イッセーが何かを言っていたが気にしていられない。

それよりもするべきことがあった。

 

「いい年こいて……」

 

「ん? おお泰虎、待ちくたびれ」

 

「ナンパを、するな!」

 

「ぐべらっ!?」

 

素晴らしい角度で放たれたアッパーはアザゼルをきりもみ回転させ天へと誘った。

声をかけられていた女子に頭を下げ立ち去ってもらい、アザゼルの頭をブレーン・クローの要領で掴み問いただす。

 

「目立たない云々はどうなったマダオ」

 

「いや、元女子高だけあって女子多いし総じてレベルが高いからついついでででででっ!? ちょ待て、砕けるっ!」

 

「あんたはもう少し落ち着けないのか。何かしら行動をしていないと息もできないのか?」

 

「解った。悪かったって、とりあえずこの状態の方が目立つから一旦離せ!」

 

溜め息を一つつき、アザゼルから手を離すと後ろからイッセーが声をかけてきた。

 

「チャド、何してんだお前……」

 

「うちの同居人その一だ。行動が目に余ったから少しばかり仕置きをだな」

 

「え、お父さん…… って訳じゃないよな」

 

「血はつながってない。だがまあ不本意ながら保護者的立ち位置のやつだ」

 

頭の痛みが治まったのかこちらに視線を向けてきた。

 

「なんだよ。さっそくダチでもできたのか?」

 

「昔日本に居た時の知り合いだ」

 

「ああ、そういやお前ここらの出身だったって言ってたな。こいつ堅物だからほどほどに仲良くしてやってくれや…… あん?」

 

最初こそにこやかに話しかけていたが急に目つきが鋭くなる。

その様子にイッセーはビビッて後ずさっていた。

アザゼルを引き寄せ小声で話す。

 

「おい、なに人の友人にメンチ切ってるんだ」

 

「あ? そりゃお前これ…… ああ、そうか。お前は力の探知とかそういう方面は壊滅的だったな」

 

「ム? 何の話だ」

 

「……いや、気にすんな。お前の近くだとわかりにくいから俺の気のせいって線もなくはないし、仮にそうだったとしても下手に触れて起こす必要もねぇだろ」

 

訳が解らん。そう思っていると顔に出ていたのだろう。アザゼルは気にすんなと一言言ってイッセーに向き直る。

 

「悪かったな、知り合いに似てたもんでよ。そう怯えんな。俺は、まあ泰虎の後見人っつーか。保護者っつーかそんな感じの立ち位置だ。特に覚えなくてもいいぜ」

 

「は、はあ……」

 

「詫びと行っちゃなんだが写真の一つでも撮ってやるよ。せっかくの入学式だ。ほれ、並べ並べ」

 

促されるままによくある入学式と書かれた看板の横に並ぶ。

 

「なあチャド」

 

「なんだ」

 

「これから三年間よろしくな」

 

そう言って浮かべた笑いは、記憶にあるそれと変わっていなかった。

俺の見た目を気にせずに友達となってくれた、兵藤一誠。

 

「フッ、よろしく頼む」

 

「おう!」

 

友人であり、どこか忘れられない尊敬に値する人物だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、入学後数日でその尊敬の念に揺らぎが出たのは想像に難くなかった。




>アザゼルただのお父さん説<

はい、そういう訳でふっつーーーーーーーーに一誠と同学年です。
3年組か2年組か最後まで悩んでたんですけど色々とイベント考えると同学年の方がいいだろうと思い最終的にこうなりました。
1年組って選択肢はあんま有りませんでした。なぜなら子猫ちゃんが先輩って呼ぶ機会が増えると僕は嬉しいからです。


これで合間の補完は終わりですかねぇ。
多分次はキンクリして原作に入っていくかなと思います。
原作入ってからの最初の拳の被害者は誰でしょうね←

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