すぐ直しましたしぶっちゃけどっちから読んでも良いっちゃいいんですがご注意ください。
「本当に大丈夫かにゃ?」
「問題ない、休み過ぎたぐらいだ。それにいつもと同じ距離を走る訳でもないそこら辺を軽く歩いてくるだけだ」
曹操との戦闘から1週間と2日。
あの後寝てから4日起きなかったらしい俺は5日目、目覚めるといつの間にかやってきていたアザゼルに本格的な治療を施され、事情聴取をされ、それだけでその日はつぶれた。
6日目、俺は学校へ行こうとしたが黒歌に止められ、アザゼルに謎の薬を打たれその日は眠りに落ちた。
それから三日、つまり今日まで目を覚ますことなく、起きると顔がぼこぼこにされたアザゼルがいた。なんでも薬の量を間違えたせいで眠ったままだったらしく、黒歌に制裁されたらしい。
アザゼルはそのまま帰っていき、俺は今鈍りきった体をほぐす為に少し歩いてくると言って今に至る訳だ。
「気をつけてよね。回復力が桁外れてるとはいえ重傷だったのは変わらないんだから」
「ああ、じゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃい」
体の動きを確認しながら歩き始める。
やはり一週間以上も寝ていると体の反応が悪いな。
戻すのにどれだけかかるかと算段をつけていると、唐突に声が投げかけられた。
「あれ、チャド」
「ム、イッセー…… お前、イッセーか?」
「え、俺は俺だろ。何だ急に怖い顔して」
そこには友人であるイッセーが自転車に乗りながらこちらに話しかけていた。間違えようがない。
間違えようがないからこそ、困惑した。
友人が、人間でなくなっていることに。
「……」
「最近ずっと休んでただろ? 大丈夫なのか出歩いて」
「ム、ああ。大したことはない。事故みたいなものだ」
「事故? 車に撥ねられたとかか? それにしては怪我とかなさそうだけど」
「もう治った」
「お、おう。そうか…… なんでだろう。なんかそれだけ聞くと軽傷だったのかなって思うはずなのになんか違う気がする」
「重傷だろうが軽傷だろうが治った怪我は治った怪我だろう。違いはない」
「えー…… いやその言い分はどうかと思うぞ流石に」
変わらないやり取りをする友人。
何も変わらない。そして、イッセーが本当の意味で変わらない限り、俺がイッセーと友人であることも変わることはない。
ただ、一つだけ聞いておかなければならないことがあった。
「イッセー」
「ん? なんだよ」
「後悔はないか」
「は?」
「酷く抽象的な質問で申し訳なく思う。だが、なんとなくでもいい。お前が思ったように、答えて欲しい」
何を言っているかわからないという顔をしつつ、それでもこちらの話に耳を傾けてくれるのは、やはり変わらない。俺の友人の兵藤一誠そのものだった。
だからこそ、やはり聞かねばならない。
「お前が今置かれている状況に、後悔はないか。お前に起こったことが、自分の意思だったのか、それとも他の要因で仕方なくそうなってしまったのかはわからない。だからこそ聞きたい。後悔はないか。降りかかった禍に、今置かれている場所に、何かしらの不満が、不安が、後悔が、そういったものは、ないか?」
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真剣な目で語りかけてくるチャドに、俺は酷く動揺した。
だって、そうだろ。
チャドは確実に、俺に何かがあったことを前提で話してて、それに納得しているのか聞いてきてる。
そうだ、俺は今まさに悪魔活動の真っ最中。部長に言われて、下積みのために走り回っている途中だ。
俺は、チャドがいなかった期間の内にいろいろなことがあった。
あり過ぎた。
なんていうか、そうしなきゃ先に進めないって感じで、あわただしく色んな事が起こり過ぎた。
彼女ができて、その彼女に殺されて、その彼女はいなかったことになってて、かと思ったら変なおっさんにまた殺されかけて、部長の生乳拝んだり、それで、悪魔に転生したって言われて……
思い返せば、考えることなんてしてなかった。
もうなっちまったんだ。終わったことなんだって思ってた。
だから、前に進むしかないと思ってた。
でも、チャドは言ってる。
悪魔なんて荒唐無稽な存在の事なんて知らない…… 知らないんだよな?
まあさすがに知らないだろう。流石のリアル格ゲーキャラでも。
それなのに俺に対して何か後悔が無いかと聞いてきてる。
なんでだ? 焦りでも顔に出てたのかな。
でも、いい機会だ。ちょっとだけ考えてみよう。
俺は、今後悔してるのか?
夕麻ちゃんのこと、悪魔になったこと、部長のこと……
……
………
…………
「……チャド!」
「ああ」
「俺は、おっぱいが好きだ!」
「……」
少し呆れた顔をしつつも、何も言わずに続きを促すチャド。
こういう所が受けてんだろうなぁ。実際いい奴だし……
そう改めて実感しながら、言葉を続ける。
「確かに今まで短い間だけどなんも考えないで突っ走ってた気がする。今お前に聞かれてちょっと目が覚めた。だけど、今やってることがおっぱいにつながってる可能性があるなら後悔なんてしてる暇ねーや!」
「……フッ、そうか」
「おう、なんか心配かけたなら悪りーな」
「いいや、いい。俺も納得した。お前はお前だ。好きに進めばいい」
「そっか、じゃあ俺は行くな! まだやることがあるんだ」
「ああ、明日は学校に行く。学校で会おう」
「じゃあな!」
なんとなくすっきりとした心持ちで、俺は自電車のペダルに足をかけた。
「イッセー、もう一つだけいいか」
「ん? なんだよ。まだ聞きたいことでもあるのか?」
「いや、先達として一つだけ」
「センダツ? 先達か? なんのだよ……」
俺の疑問に答えるでもなく、チャドは俺に言い聞かせるような声色で言った。
「考えることを止めるな。結論が出ずとも、受け入れがたい現実が目の前にあっても、自分の意思を捨てることだけはするな」
「……お前らしくない感じのアドバイスだな」
「心外だ。俺はいつでも考えている。その時間が極端に短いだけで、俺は俺なりの考えのもとで動いている」
「よくわからないけど。わかった、覚えておく。また明日な」
「ああ、また明日」
そう言って今度こそペダルに力を入れて漕ぎ出した。
そのペダルは、心なしかさっきより随分と軽く感じた。
「うぉっしゃあ! いっちょ頑張るかぁ!」
俺は気合いを入れ直し、力強くペダルを踏みこむのであった。
イッセーは底抜けの明るさと熱い心を持った主人公っていうのは解るんですけど、なんとなくどっかで考える暇が無かったというか。自分の意見と向き合うだけの時間ってとられてないよなぁって思ったんですよね。
個人的にほんのちょっとだけでもイッセーの後ろ暗いというか、足場が固まってない所をフォローしたかったという極個人的な趣向から書いた話。
まあ二次創作なんて個人の趣向を煮詰めたものですしね。かきたいものを書きますよ!←