「……いつみても謎だにゃあ」
黒歌がじろじろと見てくる前で、俺は仙術の発動をしている。
「うーん、なーんか妙なのよね。外にあるものを中に取り込んで、それによって効果を得る。うん、結果的には泰虎がやってるのは仙術と同じなんだけど…… なーんか違うにゃあ」
「そう言われてもな。俺は現状これしか使えないから本来の仙術の感覚というのがわからない」
「うー、あー、何だろうにゃあ。どこに違和感があるのか…… もしかして、集めてるものが違う?」
「集めているもの?」
「外気、つまりは世界に流れる気を集めて使うのが仙術。だから世界に流れる悪意とかの影響を受けて暴走するってことがある。みたいな話はしたでしょ?」
「ああ」
「じゃあ泰虎は世界の気の流れをちゃんと感じ取れてる?」
「……いや」
「そう、そもそもそこら辺からおかしいにゃあ。仙術を使えるのなら気の流れを感じ取れるはず。つまりは力の察知とかそういうものにも通じてる…… なのに泰虎はそういうの全くダメだし……」
改めてダメとか言われると結構へこむな……
さて、集めているものが違う、か。
何だろうな。自分としては引き寄せられるものを引き寄せているだけなんだが……
あー、身体の硬質化、か。
あったな。特別な刀すら通さない硬質な体。
つまりは
虚化使えるし。ありえないって程じゃない。仮に
……俺の霊圧が上がったから? そもそも霊圧、引いては霊力というものが存在するのかという疑問はあるが、霊圧、もしくはそれに準ずる何かが上昇したからこの硬質化が使えるようになった?
まさかとは思うがこの集めているものって周囲のものの魂とかじゃないだろうな。
ありえない話じゃない。俺の体が虚に近くなっているというのなら魂を食べ、力が増すということは確実にないと否定できる要素がない。
ヤミーが使っていた
「黒歌、俺がこの仙術もどきを使った時、何かを吸い取られる感覚だったり、疲労を感じたりすることはあったか?」
「へ? 特にはそんなことはないけど……」
「そうか……」
力の強いものに影響がない? いや、何も感じていないならそもそも違うのか?
なら別の可能性……
……周囲の霊子を集めて矢として射出するのが
あれは攻守同時にできはしないが、それでも防御力はすさまじいものだった。
でも転生の特典はチャドの能力だけだ。それなのにそんなものが使えるか?
……まあ考えるよりやってみよう。
気、いや霊子を集める。
それを意識して、自分の中にある力をつかむ。
それを一気に外に出す。
「っ!?」
なにかに驚き、黒歌が弾かれた様に俺から距離を取った。
自分ではわかりにくいが成功したのか?
「な、なに、今の……」
呼吸を少し荒げながら聞いてくる黒歌。
ふむ、様子を見る限りやっぱりそういうことなのか?
「少し考察に対する答え合わせをな」
今のが霊圧ってことだよな。相手を威圧したりともすれば気絶させたりする。
じゃあさっき集めていたのはやはり霊子。
なぜこんなことができる?
虚の魂を引き寄せる性質と仙術の技術が変な風にマッチしたのか?
この体を固くするのは要するに集めた霊子によって高めた霊圧が防御力として表面化しているのか。じゃあ
今は集めた霊子を体に纏うことしかできないから、それを一点集中して打ち出す修行を始めるか。それができれば仮に神器を使えない状況でも拳撃が打てるかもしれない。
そうすれば戦闘の幅が広がる。
「うむ、修行あるのみだな」
「……なんかすごい止めたいんだけど何を止めたらいいのかわからないにゃあ」
「心配するな、黒歌。この力がどういうものか分かって、それをより効率よく使っていこうとしているだけだ」
「……」
黒歌の怪訝な目は意図的に無視しつつ、俺は今日からの特訓メニューにこの霊子を集めることと霊圧の制御を入れるのだった。
チャドは気が付いていない。
そして、強い霊圧を持った人間のそばにいることによって、その周囲にどんな影響を及ぼすかも……
説明会でしたね。こういうのだらだら書いちゃうし、書いてて楽しいんだけどわかりやすく説明できているかは不明←