俺の霊圧は消えん!   作:粉犬

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戦闘校舎のフェニックス
Life.0


「修行するべきだろ、やっぱ」

 

ある日の夜中、突然やってきたアザゼル(マダオ)は唐突にそういいだした。

 

「修行ならしているが……」

 

「絶賛進行中だにゃん」

 

バーベルを肩に上げ、スクワットをしている真っ最中の俺に言う言葉ではないだろうと思う。

というか黒歌はなぜバーベルの上に乗っているんだ? バランスが崩れるから降りて欲しいんだが……

 

「フィジカル面ばっかだろうが。この間見せてもらった謎の仙術モドキもフィジカル面にしか機能してない。そろそろ知覚方面を開発していくべきだ」

 

その言葉を聞いてバーベルの上から飛び降り、それこそ猫の様に着地した黒歌はそれに同意し始めた。

 

「あー、それは確かに前々から思ってたにゃあ。泰虎不意打ちとか弱いもんねぇ。不意打ちされてから反応して結構間に合ってるのがすごいけど、いざ強い奴が不意打ちっていう手段を使ってきたらそれは危ないにゃあ」

 

「禍の団の調査が進んできたが、まあ魔窟だ。下手を打ったら三大勢力も食い潰されかねん。苦手苦手で先延ばしにしてるような状況じゃなくなったって話だ」

 

「本音は?」

 

「こないだ読んだ漫画にヒントを得て面白い修行法思いついたから頑丈な被検体に試してみようかなと思ってな」

 

隠す気ゼロだ。むしろ胸を張って言い切っている。

 

「……まあ、それで強くなれる可能性があるというのならやぶさかでもないが」

 

「ちょっと、危険はないんでしょうね」

 

「大丈夫大丈夫、黒歌と俺がいるんだ。相当なことがない限り死なねーよ」

 

満面の笑顔でサムズアップしてくる。

その鼻っ柱を殴り飛ばしたくなる衝動を抑えつつ、三人で明らかに広すぎる地下の修行場に降りた。アザゼルの話では空間をいじくって広さを確保しているらしい。悪魔の土地でやりたい放題である。

 

「で? 具体的にはどうすればいい?」

 

「やることは簡単だ。黒歌がチャドに気を流し込んで無理やり気を知覚できるようにする。そんで仙術モドキじゃない仙術をマスターさせて、それに付随して力の察知もできるようになるって寸法よ」

 

「そんなことしたら暴走するでしょ!? 何考えてんの!」

 

「そう声を荒げるなって。ちゃんとそれ用の機械を作ってきたんだよ」

 

懐からヘルメットの様なものを取り出し、俺の頭にかぶせる。

そしてそこから伸びた手錠の様なものを黒歌に装着させた。

 

「それは手に付けたやつの気を変換し、他者に抵抗なく浸透させるための装置だ。あ、言っとくけどめっちゃ高いからなそれ。一個でゼロが8個吹き飛ぶと思えよ? 前々から開発してたんだがようやく使用段階に漕ぎつけた逸品で、まあこれが大変でなあ……」

 

「開発秘話に興味はないにゃん。ていうか気を流しただけで知覚できるようになる訳?」

 

ドヤ顔で語りだそうとしたところをバッサリと切られたので少し落ち込んだ様子で説明に移った。

 

「理論上ではな。泰虎は現時点で気とは違うようだが、何らかのエネルギーを集めることまではできてる。だから気を意図的に知覚させてなじませて、そのエネルギーと気を置き換えるよう促してやるって話だ。まあ人体実験してないから確実とは言えないが…… 黒歌、とりあえずそれに気を流せ」

 

釈然としない顔をしている黒歌が目を閉じて集中し始める。

すると何かが流れ込んでくる感覚が頭のあたりからしてきた。

 

「流れ込んできている力がわかるか? そいつを意識して、お前がいつも使っている仙術モドキの要領でその気を捕まえてみろ」

 

軽く言ってくれるがひどく難しい。

恐らくあの霊子収束は、虚としての性質が歪んで表に現れたものなのだ。

いうなれば虚が混じった俺に備わった、準生理現象とでも言おうか。そういったものが自然と霊子を集めている。

それを他の物に当てはめろと言われても……

生理現象か…… 魂を食らう虚の。

気を食らう?

 

頭の中で何かがつながった気がした。

大きく息を吐く、そして頭から流れ込んでくるエネルギーを意識して、それを飲み込むように大きく息を吸い込んだ。

 

「あっ……」

 

「ぐっ!」

 

「ッ!」

 

すると黒歌が崩れ落ち、俺はひどい頭痛がしてうめき声をあげる、それに気が付いたアザゼルは手に出現させた槍でパイプを切り飛ばした。

 

「あー!? 思わず壊しちまったーッ!!!!」

 

「う、い、一気に吸い取られて…… 力が……」

 

「あ、頭が…… 色んな光が流れ込んできて……」

 

機械を前に膝をついて打ちひしがれるアザゼル。

目を回して倒れ込む黒歌。

頭を抱えてうずくまる俺。

死屍累々だ。

 

「チッ、壊しちまったもんはしゃーねえか。おい、大丈夫かお前ら」

 

「こっちは何とか大丈夫……」

 

「あ、アザゼル…… 槍をしまってくれ。頭に響く……」

 

その言葉を聞いて光の槍を消してこちらに近づいてきた。

 

「あー、目論見はうまく行った…… いや、うまく行き過ぎたって訳か」

 

答える余裕もない、色んな感覚が入り込んできて頭の中がチカチカと明滅する。

 

「要は散瞳と同じ理屈か。一気に気を流されたもんで知覚が無理やり開かれて、暴走してなんでもかんでも拾っちまってるんだな? だがおかしいな。そうなる様に作ったつもりではあるがそんなに劇的な変化が起こる程のもんじゃない筈なんだが、やっぱりお前の仙術モドキのせいか? そこら辺も詳しく調査しなきゃダメだな…… っと、本格的にダメそうだな。とりあえず運ぶか」

 

そんなアザゼルの考察を半分も聞き終わらないうちに俺の意識は沈んでいった。

 




ここら辺はなんとなくさらっと流してくれると嬉しい(((
ていうかまだ最新刊まで読んでないんですけど霊力とかそういう類のものもう出てきちゃったりしてますかね(
そうなるとそこそこ書き直さなきゃいけないんですけども……
そう言ったご指摘あったらメッセージ等で伝えていただけると嬉しいです。
一応感想欄には規約に引っかかりそうなんで書かないでください。

とりあえず伝えたかったのはチャドが使ってた仙術モドキは仙術ではなかったってことと、霊力っていう魔力とか光とか魔法力とか気とか、そういった力とは別の何かが存在していますよっていうことです。はい。

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