俺の霊圧は消えん!   作:粉犬

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あけましておめでとうございます←
新年一発目の投稿ですね←←
気持ちも新たに今年も頑張りたいと思います←←←

はい、1か月位遅いですねこの台詞。
すみません年始は忙しかったもので……
大晦日の短編とかバレンタインの短編とかちょろっと書いてたんですけど、いやぁ、普通に間に合いませんでしたね←

とりあえず例の如く連投です。二巻終わりまでやります。お付き合いいただければ幸いです。


Life.7

修行の為に山にこもり始めて数日。

各々の修行はそれなりに順調だった。

昼から夜までみっちりと詰め込んで修行をしている。

イッセーも零からのスタートということもあり、順調に成長している。

周りの練度が高いということもあり、本人はあまり実感がなく、満足していないようだが……

恐らく件のフェニックス眷属の兵士とならブースト無しでも、戦うのはまだ早いが、無傷で逃げおおせるくらいはできるだろう。残りの日数で真正面からでも打倒できるように仕上げたいところだが……

 

「……茶渡先輩」

 

「ム?」

 

背負っていた岩を下ろし、後ろを振り返る。そこには俺とは正反対の全体的に白く、小柄な塔城が立っていた。

 

「こんな夜更けまで修行ですか?」

 

「ああ、まあ日課だ。うるさかったか?」

 

「……むしろ無音でそんな大きな岩を背負いながらスクワットしてるのに驚きです」

 

「そうか?」

 

確かに塔城からすればでかいのかもしれない。

隣に置いてある岩を見上げながら納得したようにうなずく。

 

「……なんか意思疎通に若干の齟齬が生じている気がします」

 

「ム?」

 

「……いえ、いいです。こんなことを話したくて来てる訳じゃないです」

 

「俺に何か用があったのか。修行の事について質問か?」

 

「……いえ、その」

 

そう言ってもじもじとするだけで言葉が続かない。どうしたのだろうか。

少しの間塔城の言葉を待っていると、塔城が問いかけてきた。

 

「……先輩は、仙術が使えるんですか?」

 

「ああ、修行中の身で拙いものだが一応な」

 

しかし、それが解ると言う事は塔城にも仙術の素養があると言う事なのだろうか。

正面にいる塔城をじっと見つめる。悪魔、ではあるが、違うものが混じっている?

転生悪魔、だが…… もしかして、元が人間じゃないのか?

そういえばこの気配、どこかで似たような感覚を……

 

「先輩、あの……」

 

「ム、じろじろと見てすまない。仙術の話だったな。才能はあるようだが、修得したいのか? すまないが、俺は教えられるほど仙術に精通してはいない」

 

塔城は小さく首を振ると、口を開いた。

 

「……仙術は、危険なものです」

 

その言葉を、その何かを押し殺したような声を聴いただけで、なんとなくだが、塔城が言いたいことは解った。

仙術には危険が付きまとう。それは黒歌が何度も言っていたことだ。

世界の悪意が流れ込む感覚、分からない訳ではない。なんとなく使っていると、いやなものも感じ取ってしまうことはある。完全なものではない仙術でこれなのだから、完成した仙術は危険なものなのだろう。まあその程度は()()()()()()()()()どうと言う事はないのだが……

仙術について嫌な思い出があるのだろうか?

 

「……その力が、怖いです。私は、ソレ(仙術)のせいで酷い思いをして、大切なものをなくしました」

 

「……」

 

「……先輩は、その危険も解って、使っているんですよね? どうしてですか? 怖くないんですか?」

 

掠れる様な声で、絞り出すように話すその姿は、名前の通り小さい猫の様に弱弱しく、震えていた。

 

「怖くない、と言えば嘘になるのかもしれないな」

 

「……じゃあ、どうしてですか?」

 

「それ以上に、怖ろしいことを知っているからだ」

 

「……それ以上に?」

 

「自分の無力さによる後悔だ」

 

俺は、過去に想いを馳せながら言う。

 

「俺は、俺の未熟さで大切なものを失った。その後悔を、その挫折を、その恐怖を、忘れることができない」

 

腹の底から、湧き上がってくる激情を抑える様に拳を固く握りしめながら言葉を続ける。

 

「怖れはある。だが、それを超えないといけない時はいつか必ず来る。それは明日かもしれないし、ずっと先の事なのかもしれない。その時に後悔をしない様に、またあの時と同じ思いをしない様に、俺は……」

 

そこで塔城の様子に気が付く。先ほどの、辛い何かを思い出す震えとは別種の怯えが入っているように見えた。どうやら怒気と共に霊圧が漏れ出ていたらしい。

一つ息を吐き、気持ちを落ち着ける。

 

「すまない。熱くなり過ぎた」

 

「……いえ、大丈夫です」

 

そして少し考えるように俯き、口を開いた。

 

「……先輩は、強いんですね。私は、まだ自分から弱さ(恐怖)に向かっていく勇気は、持てません」

 

でも、と言葉を続けるその目には、先ほどの弱弱しさは消えていた。

 

「……いつか、いつかきっと私も怖さを乗り越えます。その時は、見ていて、くれますか?」

 

「塔城が、それを望むのなら約束しよう」

 

「……はい!」

 

ふわりと、優しく塔城は微笑んだ。

その笑みが、どこか黒歌と重なった気がして……

 

その時、俺は漸く気が付いた。

 

「……じゃあ、あの、失礼します」

 

そう言って俺の返事も聞かずに早足に建物に入っていく塔城を見送り、自分の頭を押さえる。

なんてことだ、ほとほと自分の鈍さに呆れる。

これだから知覚を磨けとせっつかれるのだ。どうして今まで気が付かなかった。

 

「そうか、黒歌の妹……」

 

似た気配を感じたことがあるはずだ。

それが毎日顔を合わせていた相手から感じるものだというのに気づかないなど、お粗末にもほどがある。

 

「本格的に急がなくてはな」

 

この合宿が終わったら忙しくなりそうだ。

 

 

 

 

 

部屋に入ると、私はそのまま扉に寄りかかりずるずると崩れ落ちた。

 

「……」

 

顔が熱くなるのを感じる。

鼓動が大きくなりすぎて体全体を内側から叩かれている様だ。

私は、一体何を言った? なんであんな……

 

「ッ~~~~~!!!」

 

違うのだ。姉様について聞くつもりだった。

でも、いきなり聞くのは少しハードルが高かったから、他の話題を先に出そうって思って……

 

「……なんで、あんな告白みたいな」

 

茶渡先輩の鬼気迫る表情を見て、それでも前に進もうとしている先輩を見て、私もそうなりたいと思った。そしたら、なぜかあんなことを言ってしまった。

それで、それで……

 

『塔城が、それを望むのなら約束しよう』

 

その言葉を聞いた瞬間、嬉しくなって、最初の目的も忘れて、照れと、あと浮かれた気持ちが込み上がってきて、そのまま帰ってきてしまった。

 

「……こ、今度こそは、必ず姉様の事を聞きだします」

 

意気込んでそう言ってみたはいいものの、その日は結局眠れないまま夜は更けていった。

 

 




せっかくのチャンスだったのになー(棒)
そして衝撃の事実、チャドは小猫と黒歌の関係を知らなかった!!!!
ΩΩΩ<な、なんだってー!!!

補足しておくと、そもそも黒歌が小猫がグレモリー眷属でチャドと同じ学校にいることを把握していません。
二年間動けなかった弊害です。チャドの口からそのことを知ります。
知ってもしばらくはどうしようもないんですがね。チャドが隠れてなんかやってくれてるみたいなんで任せましょう。

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