今日も今日とてアザゼル謹製の特製サンドバッグを延々と殴り続ける。
正確に芯をとらえて拳を正しい角度で突き入れないと衝撃が倍になって返ってくるというマゾ仕様である。
使い始めて数か月はリアルに骨折案件だった。
というか気軽に全力で殴るアホがここにいて腕の骨が垂直に真っ二つに裂けた。
悶えてるところをアザゼルにバカを見る目で見られつつ治療してもらったのはいい思い出である。
「ふんっ!」
最後の渾身の一振りを振り下ろした時、サンドバッグの影に人影がいるのが見えた。
ゲームとかにいる吸血鬼の伯爵がリアルに出てきたらこんな感じなんだろうなぁと思いつつ、なんでそんな危ない所にいるんだと考えながら見ていると、赤い瞳を見開き口を三日月の様に裂けんばかりに笑みを浮かべる。そして俺の打撃の衝撃で向かっていくサンドバッグを正面から払いのけた!
そして成すすべもなく倍の力で吹っ飛んでいった。
……何がしたかったんだあの人。
「ぐっ、何だそのサンドバッグは! 普通のものじゃないな!」
「ム、ああ。これはアザゼルといううさん臭いオッサンが夜鍋して作った正しく拳を撃ち込まないと倍の力を跳ね返すサンドバッグ。名を正拳くん3号(1号2号は使いつぶした)だ」
「アザゼルの野郎! 平和ボケしてるとは思っていたがこんな人間のガキにこんな無駄な
「……」
そんな怒りを携えた叫び声を聞き、俺は目を細めそいつをにらみつける。
「……貴様、なんだその目は。人間如きが堕天使幹部であるこの俺に向ける目か? それとも何か、アザゼルをバカにしたのが気に食わなかったか? ふんっ、ガキの御守で父親の真似事が得意になったのかあの腑抜けは」
「……いる」
「聞こえないな! キチンと声を出して言ってみろぉ!」
「声が、似ている」
「……は?」
「おかしい、どうして俺と同じ声の人間が二人もいる? これじゃあまるで俺が同じ中の人ネタで共演させられているポッと出のオリキャラみたいじゃないか」
「訳の分からない事言ってるんじゃないぞ! それとそれ以上はなんか危ない感じだからやめろ!」
なんで出会って数分でこんなに疲れなきゃならないんだ。などとぶつくさ肩で息をしながらつぶやいている。
なんでこの人こんなに疲れてるんだろう。
「チッ、もうどうでもいい。どうせ殺すつもりで来たんだ。無駄に話してても仕方がない」
「殺すとは穏やかじゃないな」
右手を変化させて構えを取る。
「ハッ、人間如きがこのコカビエル様に歯向かうか。アザゼルが腑抜けてるのに喝を入れるために軽く殺しに来ただけだが、いいだろう遊んでやる」
相手も手元に巨大な槍を出現させ投擲の体制に入る。
「オラァ!」
「オォオ!」
槍と拳撃が衝突し勝負は始まった。
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「アザゼル!」
「なんだよシェムハザ、怒鳴らなくても仕事ならやってんだろうが。ったくいい酒が入ったから爺さんにでも分けに行こうと思ってたらこれだ」
「そうじゃない! コカビエルが茶渡君の場所へと向かった!」
「……あ?」
To be continued…