俺の霊圧は消えん!   作:粉犬

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Life.13

「おっとと……」

 

視界の光が晴れたと思ったら見慣れない場所、そこはなんというか。絵にかいたような中世のお城みたいな感じだった。

広くずっと続いている廊下、明かりは蝋燭の様なもので、壁には肖像画…… これって、もしかして部長の親戚の人とかなのか?

 

きょろきょろと見まわしていると、いつの間にか人影が居るのに気が付いた。

 

「……」

 

「うぉわっ!? だ、誰だ!?」

 

ま、全く気配がしなかった!

そこには見上げるほど背の高い、体は人間だけど、頭は動物、なのか? 得体のしれない大きな角の生えた骨の様なものに覆われた人が立っていた。

悪魔では、普通なのか? こういうのも……

燕尾服着てるけど、もしかして執事さん? って、見つかっちゃまずいんじゃないか!?

警戒しているとくるりと俺に背を向け歩き出した。

戸惑っていると少し振り返り俺を見て、そこで止まっている。

……もしかして付いて来いって言ってるのか?

なんで喋らないんだと疑問を抱きながら付いていく。

付いていくと段々と話し声が聞こえてくる。

そして、一際大きな扉が目に付いた。

そこは開かれていて、中では多くの人が集まっているのがわかった。

隠れて中の様子を覗こうとしているのに、仮面の執事さんはずんずんと進んでしまう。

ていうか周りの人めっちゃ奇異の目で見てるよ。見回してみてもあの執事さんみたいに仮面をかぶってる人はいない。やっぱり悪魔の中でも変わってるんじゃないか!

戸惑いつつ付いていくと、その人は居た。

綺麗な長い紅の髪を結い上げ、紅いドレスを身にまとって、悲しげな表情をしたっ!!

 

「部長ォォォォッッ!!!」

 

それが限界だった。その顔を見たら、もう、我慢なんてできなかった。

俺が叫んだことによって視線が一気に俺に、集まろうとしてるんだけど微妙に横に立ってる執事さんに吸われてる。

そりゃあこんな場で叫ぶ男と、隣には冥界でも見ない様な仮面の男だもんな。戸惑うよな。

部長も目を見開いてこっちを見たと思ったら視線が揺れたもん。

だけど部長は俺を見て、涙を流した。

小さく、「イッセー」と口が動いたのも確かに見た!

部長の隣に居たライザーも俺に気が付く、気が付いて戸惑う。くそ! 締まらねぇ! その仮面どうにかなんねえのか執事さん! ここまで連れて来てくれたのは感謝してるけど!

そして俺はヤケクソ気味に息を大きく吸い込み、叫んだ。

 

「ここにいる上級悪魔の皆様! そして部長のお兄さんの魔王様! 俺は駒王学園オカルト研究部部長、リアス・グレモリー様の下僕、兵藤一誠! 部長を取り返しに来ました!」

 

その言葉に会場がよりざわめく。

 

「おい、貴様! ここがどこだか解って――!」

 

衛兵らしき人が俺に向かって走ってくる、しかしそれを邪魔する者たちがいた。

木場や小猫ちゃん、朱乃さんまでもが駆けつけて衛兵を止めようとする。

 

「イッセー君ここは僕たちに任せ――」

 

木場がそう俺に言おうとした。

しかしそこまでだった。

隣から風を一瞬感じたと思ったら、武器を構えようとしていた衛兵さんたちと木場が全員倒れ伏した。

いや、倒れ伏したというか。転ばされた?

 

「……」

 

恐る恐る隣を見ると執事さんが物言わず佇んでいる。

……もしかして、この人が今の一瞬で全員転ばせたのか?

周囲も騒然としている、そんな中で拍手をしながらこちらに向かって歩いてくる人が居た。

それに気が付くと執事さんはそちらに歩いていきその人の後ろに立つ。

 

「お騒がせしてすみません。私が用意した余興なのですが、連絡が行き届いていなかったようでして。もしもの時の対応に彼を回していたんですが、正解だったようですね」

 

そう言って爽やかな笑みを浮かべる紅髪の男性。廊下の肖像画の人で、部長の面影を感じる。

 

「お兄様……」

 

部長が男性をそう呼ぶ。……ってお兄様ぁ!? じゃ、じゃああの人が、魔王サーゼクス・ルシファー様!?

 

「ドラゴンの力、大変興味深く、ついグレイフィアと彼に赤龍帝を案内させてしまいました」

 

「さ、サーゼクス様! その様な勝手は…… ヒィッ!」

 

魔王様がその声の主に目を向けると、それに連動するように仮面の人もそちらを見る。

赤く光る眼は不気味っつーか怖い。なんか見られるだけで呪い殺されそうな雰囲気もある。

 

「いいではないですか。この間のゲーム。実によい試合だった。ただ、妹の初ゲームの相手がフェニックス家の才児であるライザー君では、少々分が悪かったのではないか、とね」

 

「……サーゼクス様はこの間の戦いが解せないと?」

 

「いえいえ、魔王である私があれこれと口を出してしまうと旧家の顔が立ちますまい。上級悪魔同士の交流は大切なものですから」

 

そう喰えない笑みを浮かべながら言う魔王様。

いや、でも口を出さないだけで執事さんでめっちゃ牽制してますよね? ある意味武力制圧ですよね?

私の言う事を聞かないと後ろの執事をけしかけるぞって言外に言ってますよねぇ!?

 

「ではサーゼクスよ。お前はどうしたいのだ」

 

若干あきれ顔の、これまた部長やサーゼクス様の髪と同じように見事な紅髪。

もしや部長のお父様!?

 

「父上、私は可愛い妹の婚約パーティをより派手に彩りたいのです。フェニックスvs.ドラゴン、伝説上の生き物の決戦。これほど盛り上がる最高の演出もそうないでしょう」

 

魔王様の一言(あと多分執事さんの眼光)で会場は静まり返ってしまった。

それを確認して俺に魔王様は視線を俺に向ける。

 

「ドラゴンの力を宿す少年よ、どうやらお許しは出た様だ。ライザー、今一度その力をリアスと私の前で振るってはくれまいか?」

 

「……いいでしょう。サーゼクス様直々のご用命とあらば、このライザー、身を固める前の最後の炎をお見せしましょう!」

 

ライザーは舞台に上がった。

これで、後は俺が勝つだけだ!

気合いを入れる俺に、魔王様が聞いてくる。

 

「ドラゴン使い君。この戦いで君が勝ったら何を望む?」

 

「サーゼクスさm、ヒィッ!」

 

「なんという、あ、えっと……」

 

魔王様の言葉に非難をあげようとする人たちを執事さんが一睨みで黙らせる。

 

「何かの為に対価を与える。悪魔の基本法則です。さあ、何を望む? 爵位かい? 絶世の美女? さあ、望むものを言いたまえ」

 

魅力的な話だ。

俺の夢がそこにはある。

上級悪魔への道、ハーレム……

でも、俺の願いは、もう決まっている。

 

「リアス・グレモリー様を返してください」

 

迷いのないその言葉に魔王様は満足したようにうなずく。

 

「よろしい、君が勝ったならリアスを連れて行きたまえ」

 

「ありがとうございます!」

 

俺は会場の奥に消えていく魔王様に深く頭を下げた。

やってやる、貰ってきたもん全部出しきって、ライザーをぶっ飛ばす!

 




仮面の執事…… 一体何虎なんだ……

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