「そういえばイッセー、今日部員がこの家で集まるわ」
朝食を食べている途中で部長がそう切り出してきた。
「うちに集まるってことですか? 皆が?」
「えぇ、オカルト研究部会議をしたいと思っているの。前に言わなかったかしら? そろそろ旧校舎の清掃時期なのよ。業者さんに頼んで一日かけて掃除してもらうらしいから部室が使えないの」
言われてみればそんなこと言ってたな。
業者とは言っているが実際は使い魔にやらせるらしい。今は色々と事情を知らない両親がいるからそう言っているみたいだ。
それで部長も住んでいる家で部活動をするって訳か。
そう思い返していると、部長は両親に頭を下げる。
「申し訳ありません。お父様、お母様。騒がしくなってしまうかもしれませんが……」
「いいのよ、リアスさん。うちなんかで良ければね。聞いた話だと随分お世話になってるみたいだし、イッセーにまさか女の子のお友達が増えるなんて…… 嬉しい限りだわ」
母さんの言葉に同調するように頷く父さん。
「父さんは松田くんや元浜くんも好きだがな。やはり部屋の中でエッチな事ばかり語り合っているだけでは心配になるからな。健全な付き合いができる友達なんて茶渡くんくらいしかいなかったんだ。これを機にもう少しまともな付き合いを持て」
「全くもってその通りよ。あの二人も悪い子じゃないんだけど、目つきが嫌らしいのよねえ。基本的にエッチな学生だし。アーシアちゃんとリアスちゃんと同居する以上、あの二人は家に上がらせたくはないわねえ…… あ、茶渡くんはいいと思うわよ。というか今度呼びなさい、この間お菓子持ってきてくれた御礼できてないのよ」
言いたい放題だ…… まあ松田、元浜に関してはフォローのしようがない程果てしなく自業自得だからいいけど。あいつらはあいつらでいい友達なんだぜ? 気兼ねのない友人ってのもたまには必要だと思うんだ。
……ていうかチャド来てたのか? いつのことだ?
それにしても、チャドか……
チャドはライザーとの決闘以降姿を見せない。連絡もつかない。
色々と言いたいことがあったっていうのに……
「そういうわけで、今日の会議、よろしくね? イッセー」
「はい」
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「で、これが小学生の時のイッセーね」
「あらあら、全裸で海に……」
「ちょちょちょ! 朱乃さん見ないでください! 母さん、なんでそんなもん持ってくるんだよ!」
会議なんて無かったかのように、皆は母さんが持ってきたアルバムに夢中になっていた。
「……茶渡先輩がちっちゃい」
「小猫ちゃんはブレないね……」
約一名俺をそっちのけで幼馴染であるチャドが写る写真に夢中だけど…… というかちっちゃいっていうけどその時チャドはすでに小猫ちゃんとほぼ身長同じか大きいくらいだと思う。
それにしたってやめて欲しい。俺の恥ずかしい過去を収めた悪夢の書物が皆に詳らかにされていると思うと気恥ずかしさから体が痒くなる思いだ!
うううう、控えめに言って死にたい! 消えてなくなりたい!
くそぅ、いつだか母さんが、
『いつか女の子のお友達がお家に来たら、イッセーのアルバムを見せてみたいわぁ……』
なんて言ってたけど、想像以上に嫌だぞこれ!?
俺がモテなかったから叶わぬ願いだったのが、俺の人生が激変して叶って嬉しいんだろうが、俺はモテてようがモテまいがこんな辱めはごめんだ!
「小さいイッセー……」
気恥ずかしさに身を捩っていると、そんなつぶやきが耳に入ってくる。
見れば部長が顔を赤くしてアルバムに見入っている。
あ、あのー、そんなに見つめられると恥ずかしいんですが……
「……幼いころのイッセー幼いころのイッセー幼いころのイッセー幼いころのイッセー幼いころのイッセー幼いころのイッセー幼いころのイッセー幼いころのイッセー」
なにかぶつぶつと呟いている。
何だろう、満足気だけどそんなに幼少期の俺が気に入りましたか。
まさかとは思うけど、部長ってショタコンの気があったり……
そんな話は全く聞いてないけど……
「私も部長さんのお気持ちがわかる気がします!」
アルバムに集中している部長の横からアーシアが目をキラキラさせながら手を取った。
「そう、わかってくれるのね? 嬉しいわ」
なんだか二人の世界に入ってしまっていて俺の入る余地がない。
木場の野郎もニコニコ顔でアルバムを見ていた。
クソ! 野郎に見せるもんはねえぜ!
「木場! お前は見るな!」
取り返そうとするもひらりひらりと躱されてしまう。
「ハハハ、いいじゃないか。イッセーくんや茶渡くんの中々見れない姿なんだ。少しくらい楽しませてよ」
くそ! なぜ男を楽しませにゃならんのだ!
そう心の中で叫びながらアルバムを奪取しようと何度も飛び掛かるが全て躱されてしまう。
修行合宿の時も思ってたけど力量の差をこういう所で感じてしまう。
現状身近で一番近い目標は木場だったりする。
でもそのうち超えてやるぜ!
そんな決意を決めていると木場がアルバムの中の一枚の写真をじっと見つめていた。
それは教会を背景に、幼稚園時代の俺と、チャド、そしてもう一人、同い年くらいの子が写る写真だった。
後ろにはその子のお父さんらしき人と、在りし日のチャドのお父さんが立っている。
同い年くらいの子は覚えている。幼稚園の頃三人でヒーローごっこなどをしてよく遊んでいた。
確か小学校に上がる前に外国に転校していったんだよな。
そのちょっと前にチャドの両親も亡くなって、その一年位後にチャドも外国に行った。
なんかどんどん仲のいい奴がいなくなって凹んでた覚えがある。
でも、その写真になんで興味を示してるんだ?
首を傾げる俺に木場はその写真のある部分を指してこう聞いてき。
「これとこれ、見覚えは?」
そこにはそこに写る男の子の父親と、チャドの父親が持っているものが写っている。
……これは、剣と、盾?
模造品だろうけど、古ぼけた西洋剣とそこそこの大きさの白い盾を持ちながら撮影している。
ああ、おぼろげだけど覚えてるかもしれない。
「確か…… その子とチャドのお父さんが神父か何かで、それで絵になるからっつって持ってきてたような気がするけど……」
「こんなことがあるなんて…… 探し物は探していない時に見つかったりするってことかな」
そうつぶやく木場の顔は、いつも通りの笑顔なのに、寒気を感じるほどに憎悪に染まっていた。
「どちらも神聖な気配を感じる。特に、剣の方は間違いない…… これは、聖剣だ」