俺の霊圧は消えん!   作:粉犬

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Life.2

家での一件があって以来、木場はどうにも心ここに有らずって感じだった。

程なくして始まった球技大会の練習、本番もだが、全くと言っていい程やる気が感じられなかった。

そしていよいよ業を煮やした部長が木場を叱ったんだがそれも堪えている様子はなく。

ついには夜まで休むと言って出て行ってしまった。

直前に言っていた言葉が思い起こされる。

 

『僕は復讐の為に生きている。聖剣エクスカリバー――。それを破壊するのが僕の戦う意味だ』

 

戦う意味。

俺は部長の為に戦っている。それは、他の眷属の皆も同じだと思っていた。

聖剣…… 何があれば、あんなになるまで一つの事を憎むなんてことができるんだ?

 

「祐斗は、聖剣計画の生き残りなのよ」

 

「聖剣計画?」

 

部活動を終えて家に帰ってきた俺とアーシアは、部長に木場の生い立ちを聞いていた。

 

「数年前まで、キリスト教内で聖剣エクスカリバーを扱える人材を育成する計画があったの」

 

「聖剣を扱える人材?」

 

「聖剣は対悪魔武器として絶対的な力を有しているの。私たち悪魔は、聖剣に触れただけで身を焦がし、斬られればなすすべもなく消滅させられる…… 悪魔と敵対する人間たちにとっては喉から手が出るほど欲しい武器ね」

 

話を聞くだけで背筋が凍る。ゲームや漫画なんかで見てきたものだけど、そう聞くと一気に怖く感じる。

そうか、今の俺にとっては一番警戒するべきものかもしれないんだな。

 

「けれど聖剣は強力な分使い手を選ぶの。適応する人間が現れるのは数十年に一人いればいい方とも言われているわ」

 

その時ふと疑問が湧いてきた。

 

「木場の神器みたいに聖剣を作り出す神器(セイクリッド・ギア)とかはないんですか?」

 

「話には聞いたことはあるわね。でも現存する聖剣と比べると今一つと聞いているわ。もちろんそれでも私たちには脅威であるし、あなたの神器(セイクリッド・ギア)と同様、聖具の神滅具(ロンギヌス)も存在している。『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』が有名ね。イエス・キリストを殺したものが持っていた槍、神滅具(ロンギヌス)神滅具(ロンギヌス)と呼ばれる所以になった物と言われているわね」

 

――『神滅具(ロンギヌス)

俺の左手に宿る、神様すら殺せる武装……

確か、十三個あるんだっけ? チャドは何人かあったことがあるみたいに言ってたけど、若しかしてあったことがあったりするんだろうか? いやいや、でも聞くところによれば神滅具(ロンギヌス)の語源にもなったとかいう超すごいものらしいし流石にないか。

 

「ただ、そういう例外を除けば現存する聖剣、特にエクスカリバー、デュランダル。そして日本の天叢雲剣が強力すぎてそれを超える神器(セイクリッド・ギア)は存在しないとされているわ。魔剣の方も同様ね」

 

へー、としか言いようがない。

いきなり聖剣の名前を列挙されても何が何だか……

最近は特に覚えることが多くて若干ついていけてない感じもある。

 

「祐斗は、その聖剣エクスカリバーに適合するよう人為的に養成を受けた者の一人なの」

 

「それじゃあ、木場は聖剣を使えるんですか?」

 

その問いに部長は首を振る。

 

「聖剣計画は失敗したのよ。祐斗も含め、被験者は聖剣に適応することはなかった」

 

そして、部長は顔を少し悲し気に歪めながら続ける。

 

「そして、実験がとん挫した教会は彼らを『不良品』と評し、処分されたと聞くわ」

 

処分……

聞くだけで嫌な響きだ。

部長も不愉快そうに目を細めて言葉を続ける。

 

「あの子は、きっとその実験から一人生き残ったことを悔やんでいるのね」

 

「そんな、そんなことって…… 主が、主がそんなことを許すはずがありません」

 

アーシアは目元に涙を浮かべながらそういう。

アーシアにとっては未だ神様って言うのはどこかで心のよりどころなんだ。

生まれてからずっと信じてきたもの。それに属する人間がする行いを聞いて裏切られた気持ちになっているんだろう。

 

「彼ら教会は悪魔こそを邪悪と断じるけれど、人間の悪意こそがこの世で一番の邪悪だと思うわ」

 

部長が憂いを帯びた顔で言う。

やっぱり、部長は優しいな。部長は人間界での生活が長いせいで人間の考え方が移ったみたいに言っていたけど、それだけじゃないと思うんだ。

悪魔にも優しい人はいる。俺はそう思いたい。

 

「祐斗を転生させた時、瀕死の状態でありながらも強い復讐の念を抱いていたわ。私は生まれた時から聖剣に狂わされた才能を、悪魔として生きることで有意義にその才を振るって欲しかった。それほどまでに、あの子の才能はあそこで終わるには、そして聖剣への恨みで終わらせるには勿体のないものだと思っていたわ」

 

部長は、どんな形であれ木場を救いたかったんだ。

でも、木場は……

 

「あの子は忘れることはできなかった。聖剣に関わる全てを、教会の事も……」

 

思い返せば今ほどじゃなくても木場は聖剣に関して執着していた気がする。

そりゃそうだよな。恨みってのはそう簡単に消えるものじゃない。

俺だって堕天使の姉ちゃんに殺された時恨みを持って、消滅した今でもその思いはありありと思い出せる。

木場はそれ以上の感情を抱え込んでいるのかもしれない。

 

「とにかく今は様子を見ることしかできないわ。今はぶり返した聖剣への復讐心で頭が一杯なんでしょう。普段のあの子に戻ってくれるといいのだけれど……」

 

「あ、そのことなんですけど。木場がおかしくなった切っ掛けがこの写真っぽいんです」

 

俺は例の写真を部長に手渡す。すると部長は途端に顔を険しくする。

 

「親に聞いてみたんですけど、その写真に写っている子の家は家族全員クリスチャンだったみたいなんです」

 

「……この町に聖剣があった? そんな話は…… この写真を見るに、十年ほど前ね。当時の管轄者は死亡したと聞いていたけど関係が? でも確か……」

 

部長は難しい顔をしながら小さい声で呟きながら思案している。

 

「あの、部長。その剣って……」

 

「ええ、本物の聖剣よ。さっきまで話していた伝説の品ほどではないけれど、確実に聖なる力を宿してる。こちらの盾もそうね。これは茶渡の父親かしら?」

 

「ああ、はい」

 

「父親が教会の戦士なのに堕天使勢力に身を置いているの? それに、この盾……」

 

「あ、部長。えっとですね。チャドの家は親父さんだけがクリスチャンで他の家族には無理に押し付けることはしないって言ってたらしいんです。だから多分チャド自体はクリスチャンじゃないんです。それと……」

 

そう、今のチャドみたいにデカイ人で、優しい人だったのを覚えてる。

そんな風に少し当時の事を思い出しながら、言い出しにくいが口にする。

 

「チャドの親父さん、というか両親とも結構前に亡くなってて…… その写真の子が海外に行く少し前の事なんでそれも十年ちょっと前位ですね」

 

その言葉を聞くと部長はいっそう怪訝な顔をする。

 

「……教会の戦士が、この町で? 十年前…… やっぱり前任者の時期に何か?」

 

「部長?」

 

部長はまた少し考える素振りを見せ、少し目をつぶると軽く頭を振って言った。

 

「やめましょう。考えていても仕方ないわ。祐斗の機嫌が考えて治るわけでもないしね。もう寝ましょう」

 

そういうや否や部長は服を脱ぎ始めた…… って!?

 

「ぶ、部長!? なぜにお洋服をお脱ぎになられておられるのでしょうか!」

 

もう既に下着にも手を掛けようとしている部長がきょとんとしながら俺を見る。

 

「イッセー、口調がへんよ? それに、知っているでしょう? 私は裸じゃないと眠れない質なの」

 

「いやいやいやいやいや、知ってますけどなんで俺の部屋で脱いでるんですか!?」

 

慌てふためきながらも部長のお体をしっかりと脳内フォルダに焼き付ける俺。

うぬぬ! 何度見てもいい体です!

思わず敬礼したくなる気持ちを必死で抑える。

 

「あなたと一緒に寝るからに決まっているでしょう?」

 

当然の様にそう答える部長!

その言葉を聞いただけで俺の鼻から血が噴き出した。

女の子に一緒に寝るだなんて言葉を言われる日が来るとはッ!!!

 

「な、なら私だってイッセーさんと寝ます!」

 

そう言いながら今度はアーシアが上を脱ぎだした!

おいおいおい、ダメだろ! アーシアは真似しちゃダメだって!

 

「部長! アーシアに悪影響ですから服を着てください!」

 

その言葉に部長は少し不機嫌そうに顔を歪めた。

 

「悪影響って、随分な言い方ね、イッセー。私と何度も一緒に寝ているくせに」

 

「な、何度も!?」

 

眼に涙を浮かべながら、ショックを受けたように声をあげるアーシア。

 

「アーシア今日は私に譲りなさい」

 

「う、うぅぅ…… ゆ、譲りません! 私にだってイッセーさんに甘える権利はあると思います! 私もイッセーさんと寝ます!」

 

アーシアが普段では考えられないくらいの固い決意でそう口にする。

そ、そんなに俺と寝たかったのか! ちょっと複雑だけど超嬉しい!

……けど

 

「……」

 

「うぅぅ……」

 

なんかバチバチと火花が散ってませんか?

両者の間にいる俺はその居づらい空気の中動けない俺に、二人の視線が向く。

 

「じゃあイッセーに選んでもらいましょうか。どちらと一緒に寝たいか」

 

「イッセーさん、私と一緒に寝てくれますよね……?」

 

部長の強気な視線とアーシアの涙目の視線が俺を挟む!

どっちを選んでもどちらかに憎まれるの確定の選択に頭を抱えた。

 

そうやってその日の夜は更けていったのだった。

 

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