俺の霊圧は消えん!   作:粉犬

5 / 49
Life.3 虚化、しちゃいました。

堕天使の幹部とか言っていたが。

 

「強いな……」

 

巨大な岩の影に隠れ、血だらけになった腕を押さえながらつぶやく。

初撃を完全に見誤った。相殺するつもりで放った拳撃は相手の槍に意にも介さず取って食われた。

何とか二発目の拳撃で相殺しきったものの、その後もポンポン同じような槍を出しやがって。

 

「ハッハッハ! どうした! 威勢が良かったのは最初だけか? じゃあもうそろそろ遊びも終わりにするか」

 

五対十枚の羽を出し空に陣取った堕天使が先ほどよりも一回り以上大きな槍を出現させ高笑いを上げている。

あれは流石に『変化した右腕』だけでは防げない。

 

「隠れてたって無駄だ! この大きさなら障害物ごと吹き飛ばせるからな!」

 

明らかに格上、勝負を長引かせることはこちらの首を絞めるのみ。

じゃあまだ嘗められている内に今できる最大火力で吹き飛ばすしかない。

岩陰から飛び出て奴の真正面に立つ。

 

「ほう? 死ぬ覚悟ができたか。なら真正面から食らって吹き飛べェ!!!!」

 

「死ぬ気でやり合う覚悟ができただけだ」

 

少し前に使ったときは一瞬しか出せなかったし、その後血反吐はいて気絶して2日くらい目を覚まさなくてその後1週間高熱が続いたが仕方ない。

ぶっちゃけて言えば使いたくないが、仕方がない。

……え、本当に使わなくちゃダメかなこれ。嫌なんだけど。

 

「オォラァアアアア!」

 

槍は放たれた。もうぐちぐち言ってる暇はない。

手のひらを顔に当て力を籠める。

 

(ホロウ)化」

 

体から一気に力が湧き上がる感覚、五感が急激に研ぎ澄まされる実感。

それと同時に軋みを上げる体。まだまだこの状態に適応できないか。あれから随分鍛えたんだけどな……

 

虚閃(セロ)

 

赤い閃光が拳から放たれる。

光の槍と衝突し衝撃波があたりに広がる。

そして相殺しきれなかった槍が、細くなりながらも自分を貫いた。

あー、やべぇなこれ。死んだかも。

最後に浮かんだのはそんな軽い調子の言葉だった。

 

 

 

 

 

シェムハザの報告を聞いて急いで転移まで使って駆けつけた場所で見たものは、泰虎がいつも修行をしている場所で立ち上る赤い閃光だった。

 

「……間に合わなかったか」

 

軽く絶望しかける、しかしそこで気づいた。

 

「赤い、光だと?」

 

俺の記憶の中にコカビエルがそんな技を持っている覚えはない。

ということはあの光は誰のもんだ?

 

「考えてる暇はねぇか」

 

 

羽を出し急いで飛んでいく。

しばらくして現場が見えてきた。

まるで爆弾でもその場で爆発したかのように辺りは抉れ、木々もなくなり平地になっている。

あ、ていうかアレ正拳くん3号じゃねぇか。ああ、また見るも無残な姿に…… ってそうじゃねぇ!

 

「泰虎! どこだ! 無事か!」

 

叫ぶように呼び掛けると視界の端で動くものがあった。

 

「泰虎か」

 

そちらに視線を向けると想像した奴ではなかった。

いやある意味想像通りか。

 

「ぐぅ、ゴハッ…… 何だ今の攻撃は……」

 

「コカビエル……」

 

「俺が、人間如きに…… この俺が競り負ける、なんてバカな話が」

 

立とうとしているがあれは無理だな。意識も言うほど残っちゃいねぇだろ。

ただただ怒りで譫言呟いてるだけだなありゃ。

そう思いつつも拘束してシェムハザのところに送り返す。

 

「泰虎の奴どこに居やがる。泰虎ぁ! どこだぁ!」

 

もう一度呼びかけると背後からパキリと枝を踏み抜いたような音がした。

今度こそ泰虎だろう。そう思って俺が振り向いた。

そして眼前には赤い閃光が迫っていた。

 

「う、おおおおお!?」

 

慌てて防御魔法を展開して弾く。

全力で張ったそれは軋みを上げつつも何とかその攻撃を防ぎ切った。

 

「オイオイ、なんだその姿は。聞いてねーぞ」

 

そこにいたのは泰虎の面影を残した化物だった。

胸には穴が開き、両腕は変異し、顔には仮面の様な装甲が付いている。

どういうことだ。あいつの神器は右腕のみのものじゃなかったってことか……

右腕に関しても俺が見てきたものと違い幅の大きい盾の様な形になっている。

左腕は白く、洗練された強い力を感じる。

そして何よりも。

 

「その仮面。明らかに厄ネタだろ。そいつがお前の神器(セイクリッド・ギア)の正体って訳か」

 

「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!」

 

巨大な反りかえった角、腕と同じような線を基調とした模様、巨大な牙。

赤龍帝や白龍皇などの様に何らかの生物を封印した神器だったってことか?

だが長いこと生きてきたがあんな化け物見たことねーぞ!

考察している間にもあの赤い光線を撃ちまくってくる。

 

「怪獣かよ。ぐッ! そこそこ威力あるじゃねえか」

 

あれはあいつの神器の禁手(バランス・ブレイカー)ってことか?

若しくは、ニ天龍の覇龍(ジャガーノート・ドライブ)覇獣(ブレイクダウン・ザ・ビースト)に類似した力?

なんにせよあれは危険だ。それに明らかにこれまで世に出てきていなかった神器、今後の事を考えるなら。

考えるなら……

 

「……くそったれ! 俺がこんな採算度外視で働いてやるなんて千年に一度でもないと思っておけよ泰虎ぁ! しかも可愛げもなんもない男の為にタダ働きたぁ焼きが回ったもんだぜ!」

 

そういいながら懐から乱暴にあるものを取り出す。

 

「本気で行かねーと俺もきつそうだからな」

 

 

 

禁手化(バランス・ブレイク)

 

 

 

 

「殺す気で行く。死ぬなよ!」

 

 

 

to be continued…




ワンチャンこの作品の主人公はアザゼル説ある←

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。