主人公のセリフは雄たけびのみです(超重大ネタバレ)
茶渡泰虎の神器の能力は単純だ。
身体能力の向上、これに尽きる。
単純明快、そして強力。
そもそも恵まれた体躯を持ち、人並外れた頑丈さは人間であることを疑うレベルでさえある。
本人も強さに貪欲だ。何がそうさせるのかわからない程にストイックに体を鍛えている。それこそ俺が作り出した自分でも訳が分からないと思う訓練器具を使い、暇があれば修行をしている。
その甲斐もありメインの戦闘手段となる体術の技量も高水準。
そして精神においても老成というには少し違うが、どこか達観した視点を持ち合わせている。
だからこそ茶渡泰虎をアザゼルはこう評価する。
心技体全てにおいて恵まれ過ぎた天才児。
全てが噛み合っているのだ。
精神性と戦闘スタイル、身体、才能、神器の能力。
人間にしておくのが正直勿体ないと思うと同時に、仮に他の種族として生まれていたら手が付けられなかったという恐れ。
そして人間がどこまで行けるのかという期待。
そう、スポンジどころか砂漠に水を撒くかの如く底知れない吸収力を見せるこの少年に、男は育てることの楽しさというものを確かに感じていた。
そしてそんな怪童を改めて敵として認識して思う。
「お前、その姿になってスペックは上がってるがむしろ弱くなってんぞ!」
「GAAAAAAAAAAA!!!」
「そら脇がガラ空きだ」
手に持つ槍を振りぬき切り裂く。
だが茶渡は痛みに呻くでもなく口から
「それも散々見まくったぜ! ていうか口からも出せるのか。だが速さも威力も拳で打った時より落ちてるな」
それを意に介すことなく避けて槍で突く。
本気で行かないと危ないと認識していたのは、あくまで茶渡泰虎が茶渡泰虎として戦うことを前提としていたからだ。
しかし始まってみれば拳は大振り、光線も溜めが大きい。
茶渡がよく使う拳撃や、すさまじい速度の移動術も使ってこない。
「普段の戦いぶりを見てる身から言わせてもらえば無様にもほどがある! お前が何なのかしらねぇが、確実にお前が前に出てくるより泰虎がその体を操った方が万倍マシだ!」
「GOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」
「うるせぇ、よっと!」
槍が投擲される。
それは吸い込まれるように茶渡の腹部に突き刺さり貫通し、地面に縫い付けた。
そしてそれを最後に茶渡は動かなくなった。
アザゼルはそれを確認すると槍を引き抜き魔法で止血する。
「さて、さっさと治療すっか。ていうかこれ胸の穴どうなってるんだ?」
覗きこんだ途端に、茶渡の仮面が粉々に砕け散った。
同時に変異した腕も元の状態に戻り、そして急速に体の怪我や胸の穴、先ほど貫いた腹の傷、全てが癒えていく。
「おいおい…… 本当になんなんだ。お前の
そんなつぶやきが、誰に聞かれるでもなく空に消えていった。
to be continued…