大小2つのクモの巣が並んでいる
天井には商品を出し入れするための穴が空いている
その先の様子を伺うことはできない
きっと知らない方がいいのだろう
大きい方のWebの前に行き足元に花を降ろす。
ポケットからSpider Ciderを取り出し花に告げる。
「DATING START!」
「ハァ!?」
世界が瞬き色を失う。ソウルが剥き出しになる。デート画面だ。
「まずはCキー!」
「りょ、了解......!」
何か色々情報が出てきたのでステップ1はこれでよし。
プレーヤーの声がめちゃくちゃ震えてるけど構わずに次のステップに移行する。
「次に相手を誘う! Flowey! デートするよ!」
「しないよ!?」
誘ったのでステップ2もよし。次だ。
「服は......ぼくはこれでいいとして。Floweyはとりあえずこれ着けて」
「ちょっとなんなの!?」
花に手持ちのリボンを蝶々結びにしてステップ3もよし。
そして最後に......!
「
「待っむぐっ」
エレベーターの恨み! 本当に怖かったんだからな! ソウルがどこかに行くかと思うほど驚いたんだからな!
Webをチェックして18G支払い瓶を素早くリロード! 1本でぼくの怒りが収まると思うなよ!
*あなたの怒りはとどまる所を知らない
お金が足りなくなったところで我に返る。最近はほとんど戦闘から逃げていたとはいえそれでもかなりの額を持っていたはずだ。......さすがにやりすぎたかな。
*あなたは彼の口に押し込んでいた瓶をそっと引き抜いた
*空き瓶はあなたの手から離れると魔力へと還り霧散した
*これぞエコロジー
ようやくサイダー責めから解放された花はぐったりと萎れてむせていた。
「......謝らないからね。ぼくの気持ちを思い知ったか」
「ゲホッ......そんなにアレが気に入らなかったの? 乗ってるエレベーターの電源が急に切れて落ちただけじゃん。ボクの方がよっぽど怖かったでしょ?」
たしかにいきなり周りが真っ黒になった挙句に世界観無視したcreatureが出てきて驚いたけど。
「あの時も確かに怖かったけど戦意の方が勝ってたから。対抗手段もあったし」
絶対に負けるもんかって気持ちの方が強かった。
「でもあのエレベーターは違う」
危機感を煽るアラートの中何もできないまま落ちていくんだぞ! 明かりまで消えて全く何も見えない状態で轟音と共に落ちるんだぞ! 誘うように中途半端に開いた扉の先に見るからにヤバそうな雰囲気の廊下が見えるんだぞ!
出れるかよ!? 戻る手段があるなら戻るよ!
戻った先でHomeに飛び込んでTorielを目にした時は言葉にできないほど安心したなぁ。
「あー笑ったお腹痛い。......エレベーターが落ちた後のその子のパニック具合はすごかったよ。反応しないボタンを連打しながら無理無理戻して戻してって壊れたラジオみたいに言い続けて......」
「人の不幸を笑い飛ばすとかキミって全然いい奴じゃないよね」
「おー、君より断然ド畜生だぞ僕は」
浮遊感と衝撃を思い出して背筋を凍らせるぼくをよそに花とプレーヤーが言葉を交わしていた。
花以下とか自虐が過ぎるんじゃないかな......
「その何でも知ってるみたいな態度ムカつく。次元の向こう側から見てるだけのクセに」
花の言葉から読み取れる感情の大半は苛立ちだ。
でもそれ以外のものが含まれているように聞こえる。懐かしさ? 安堵? 喜び?
よくわからないけどとにかく悪いものばかりじゃないみたいだ。
停滞した時の中で、ぼくらの心は変化していく。
それが良い結末に繋がることを今は祈ろう。
Pルートの入口であるエレベーターはあんな落ち方しているのに1ダメージも受けていない不思議