ヤタガラス様の素晴らしさを語ろうとしたけど語彙力とか文章力が足りなくて打ちひしがれるハシブトガラスの話だったかも知れない 作:xelt
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タカはフレンズの中でもかなり優秀である。あくまで主観的な範囲でという注釈こそ付くが。
常に冷静な思考からは問題に対して的確な回答を導き出し、芯のある屈強な精神は手段を実行に移す際に迷いを生じさせない。肉体及び技術もまた然りである。更に付け加えるなら、彼女には信頼出来る友が何人もいる。だからこそ、私のような未熟物に対して頼みごとというのが分からなかった。
と、そう伝えたところ。
「そ、そうかしら……」
彼女は僅かに顔を赤らめ、何処かよそよそしい態度になってしまった。質問の答えにもなっていないし、熱でも有るのだろうかと心配になった。
数分後。
些か一悶着あったが(「この暑さです。日射病かも知れませんし、少し横になって休んだ方が…」「大丈夫、大丈夫だから」)カキ氷モドキのおかげもあってか落ち着いてきたようなので、姿勢を正して彼女の方を向く。
「それで、頼みごとというのはどのような内容でしょうか」
迷える者に光ある明日を。それがヤタガラス様の、ひいては私の理念である以上、相談を受けるのはやぶさかではない。だが、出来るはずのない事を安請け合いする様な真似は決してしてはならないし、それが彼女にとって為にならない事であれば諌める必要がある。
「簡潔に言うとね、推薦文を考えるのを手伝って欲しいの」
もっとも、彼女は無茶な事を言わないだろうと思っていたが。内心で安堵した私は疑問をぶつける事にした。
「何故、私なのですか?投票に出たいだけなら自分で推薦すれば良いのでは無いでしょうか。まさか何が何でも他者からの推薦でないと気が済まないというわけでも無いでしょうし。いや、考える、という事は今まさに行き詰まっていると?」
「大体当たりね」
大体。となると行き詰まっている訳ではない?というよりは……。
「自薦ではなく、誰かを推薦したい。しかし推薦文を書くのが上手くいかない」
「ご明察」
彼女は感心したように呟くと、溜息を漏らした。こぼれた吐息は未だに溶けない氷塊をなぞり、冷気として吹き込んでくる。あのかき氷機欠陥品じゃ無いのと微かに彼女は呟いた。私は聞かなかった事にした。
「私が推薦したい……と言うか推薦文を書きたいのはハクトウワシね」
「レッツジャスティス?」
「レッツジャスティス」
彼女は極めて力強くうなずいた。私も力強く頷いた。
「ですが、よく共にいる貴方なら文章を書き上げるのはそこまで難しく無いと思います。特に、彼女のような個性的な方なら」
尚大半のアニマルガールは個性的である。没個性気味なのは私くらいだろうか。
「私も最初は簡単だと思ったのよ。最初のうちはね」
くるくると円を描くように机をなぞりながら、彼女は語る。
「彼女の生き方は鮮烈で、素敵な程に格好良くて。だから筆はすらすらと進んだわ。こんなにも素晴らしいフレンズがいて、それを私が広めるんだって」
「良い心構えではないですか」
「始めのうちはね」
私の返答に彼女は肩をすくめる。
「でもね、すぐに不安になった」
彼女の顔に陰りが差した。
「何故?」
私は疑問をそのまま口にした。
「私が見ている光景が彼女の全てかどうか。私は何か見逃しているんじゃないか。私よりもっと上手く表現できる子が居るんじゃないか。そんなところかしら」
彼女は目を閉じ押し黙る。
「結局その後ペンは進まずじまい。今に至るわ」
静寂が落ちる。
私は沈んだ空気の中、私はシャクシャクとカキ氷を貪る。静かに思考を冴え渡らせる中、蝉の音が微かに響く。
「……それで?」
凍り付くような空気の中で私の紡ぎ出した言葉は彼女を困惑させるのには十分だったようだ。
「それで……って。これで全部よ」
不安に思っている事はそれだけだと。
「そうですか」
彼女の返答は私を安堵させるに充分なものであった。
「そうですかってちょっと」
「何も問題ありません」
彼女が何か不満を言い出そうとするのを遮る形で私は切り出す。
「貴方が悩んでいる事は全くもって心配のいらない事です。明日空から雨のごとくセルリアンが降ってくるとか、そういった有り得ない類の話です」
相談や質問を受ける側はできる限り自信を持って堂々と答える事。気をつけるべきポイントその1。
「でも、私には……」
「貴女はハクトウワシ様と長くいるのでしょう。そして貴女の能力は先程述べた通り。良さを見逃すなど有り得ません」
発言の根拠を示す事。気をつけるべきポイントその2。
「……そうね」
彼女は暗く強ばらせていた顔を柔らかくした。
「大丈夫ですか?」
「ええ。大分気が楽になったわ」
「それは良かった」
どうやらポイントその3は必要無さそうである。
「んー」
大きく伸びをする彼女。見た様子と違って大分応えていたのだろうか。カキ氷をすくって食べる。
ふと、もう片方の器、先程まで氷塊だったそれに目をやる。器の中のそれは完全に溶けていた。唐突な異常に思わず視線が釘付けになってしまう。そんな私の様子を察してか、目の前の彼女もまたこの異常事態に気が付く。
「ねえ、ハシブト」
「なんですか」
「貴女これガスバーナーで炙ったりした?」
「いえ、全く。ヤタガラス様に誓って」
困惑する二人。どういうことか。ふと思い当たる節が一つ。
「一つ質問が」
「何かしら」
「確かこれ水を入れると勝手にカキ氷モドキを作ってくれるとかいう機械で作られたんでしたよね?」
冷却、氷結、粉砕まで1通りやってくれるという触れ込みらしい。クレームが殺到しそうだ。
「ええ」
「それでこの機械、誰が作ったんですか」
「……」
「……」
彼女は少し離れた所に置いてあった機械を持ってきて、机の上にどすりと置いた。
機械の隅の方に書かれた名前には『博士のひんやりカキ氷制作機』と書かれていた。
彼女と目が合う。多分この時私たちの心は一つになっていた。
なんかしっくり来ない出来になった。
『 日射病』適度な水分と塩分の摂取が大事。室内や日陰にいても変わらないので注意。
『 迷えるものに光ある明日を』ヤタガラス様の発言。ちょっと違うので注意。本来は「余のやるべきは、全ての者を、良き未来へと導くことである」これに加えて色々と混ぜたのが上記の発言。
『 ハクトウワシ』レッツジャスティス。
『 ポイントその1』ヤタガラス様の教え+聞き上手なフレンズのアドバイス。フェアリーとかかな。
『 博士』多分マッドサイエンティスト。畜生の方。