もしも兼一が龍斗との約束を覚えていたら 作:ポケモン大好きクラブ
読みにくかったらすいません。
あれから10年の時が流れこの春、僕は荒涼高校に入学した。荒涼高校は龍斗君と約束した公園のある、隣町だ。
「龍斗君、帰ってきたよ…。」
僕が荒涼高校を選んだのはもちろん龍斗君との約束を守るためだった。(バッチはもちろん襟につけてるよ)
この10年、出来る限り体を鍛えてきたつもりだけどちゃんとした指導者がいなかったから、どれくらい強くなったのかわからない。体力だけはつけてきたつもりだ。
ただ、僕はあの少女を見てから決意したことがある。約束のためだけではない。僕は誰もが見て見ぬふりをするような悪をやっつける力を手にいれたい。
これは、憧れに近かった。風を切るような羽のように舞う少女の姿に…。
入学してだいたい1ヶ月がたった頃、時間ぎりぎりに家を出たので僕は小走りでいると目の前に見慣れない金髪の美少女がいた。兼一はその女の子に見覚えがあるような気がしたが、思い出せず首をかしげた。
他のことに気をとられていた兼一は女性の斜め後ろから前に進んでおり、誰かの腕が目の前に飛び出した。当然考え事をしている兼一はそのまま腕に突っ込んでいき、派手に後ろに転倒し後頭部を強打した。
「あ、ああ~~っ!ごめんなさい、つい反射的に!」
「うっ、痛っ~。あっ荷物が」
「て、手伝いますわ!」
「あっ、うん。って…いきなり何するんだよ!」
後頭部強打なんて打ちどころが悪ければ即死である。可愛い顔して彼女は何を考えているのか。この時荷物を拾っていた僕は彼女が僕の襟、正しくは襟についているバッチを凝視していたなんて知るはずもなく…
「す、すいませんですわ…。でも、いきなり背後をとられたら普通、投げ飛ばしません?」
どこの普通?と突っこみそうになった僕は悪くないはずだ。笑顔でとんでもないこといってくるなこの子。
っと時間がそろそろ危ない。天然殺し屋娘はほっといて僕は学校へ向かうとしよう。
「そろそろ時間がぎりぎりだから先に行くね。また学校で会えたらよろしく」
そう言ってお別れを言う。なぜ学校で会えたらかというと、彼女が荒涼高校の制服を着ていたからだ。
ぎりぎりで教室に入り椅子に座っていると、ハ…ゲフンゲフン頭の眩しい先生が(何?隠せてないって?)転校生を呼んだ。呼ばれて入ってきたのはなんと朝にあった、あの女の子だった。
「高校生活が始まってまだ1ヶ月という時期だがみんな仲良くやるんだぞ」
「松竹林高校から来ました、風林寺美羽です。よろしくお願いいたしますですわ」
松竹林高校と言えば名門校だった。何でそんな名門校の生徒がうちの高校へ?と兼一は疑問に思ったがそこは、人には言えない事情もあるかと思いあまり深くは考えないようにした。
僕の放課後は帰宅部である。
僕は龍斗君と約束をした後、強くなるために引っ越し先で、さまざまな習い事を行った。だけど僕は筋が悪いらしく、いつも負けてばっかりだった。そんな僕に誰も技などの指導をしてくれるはずもなくいつもすみで見よう見まねで真似するばかりだった。そのため技術は未熟なままだ。
高校に入学して空手部に入部するために見学に行くと僕の理想とは真逆、まるでボディビルダーの集まりのような部活だった。しかも1年生は掃除からだそうだ。こんな部活に行くくらいなら筋トレをしていた方がいいに決まってる。
「これからどうしよう…」
とぼとぼ歩いていた兼一に不気味な影が歩み寄る。
「ケ~ケケケケケッ。よ~う、兼一何だか元気がねぇじゃねえか」
「あぁ、新島か。何のようだ」
こいつは新島春男。僕と同じ中学の出身で僕が強くなろうとしているところを見られた所から、こいつは何かとつるんで来た。何も知らない僕に武術の情報を教えてくれたのもこいつだ。
「フッフッフッ。そんなの転校生のことに決まってるさ。んで、どんな奴だ?」
「ん?あー、女の子で、眼鏡をかけてて、背後に来た人を投げる人」
「…ん?」
「投げる理由と力は本人に聞けよ」
「待てよ!兼一ィィー!」と言う声は無視して歩いていく。…ん?待てよ、彼女は無意識に背後の人を投げていた。つまり無意識に投げる位武術の鍛練を行っているのでは?
彼女に武術について聞いてみよう。うまくいけば、いい指導者が見つかるかもしれない!
それが兼一にとって、吉と出るか凶と出るか…。
(キーンコーンカーンコーン)
とある日の昼休みに僕は中庭の木の下で昼食のパンをモソモソと食べていた。
「うーん、どうやって話しかけようか…」
あれから数日、彼女の異様な雰囲気に飲まれて話しかけられずにいた。なかなかきっかけがつかめず、どうしようか悩んでいたところに天からの囁きが聞こえた。
「あの~、何かお困りですか?」
「へっ!?」
やましい気持ちを見抜かれたような、いたたまれなさが込み上げてきた。どこから声がするのかわからず見回すが姿が見えないので
「あっ、上ですわ。」
「えっ?」
上を見た瞬間顔に激痛が走った。あぁ、僕は踏まれたのか…。と理解したのは彼女が下にいたからに他ならない。
「踏む必要…なくない…?」
「ごめんなさい、ごめんなさい!この高校スカート短くて!」
それなら木の上に上がらなければいいのに…。それはまあいいとして彼女とせっかく話が出来ているんだ。今聞かなくてどうする!
「実はあなたに聞きたいことがあったんだ!」
「私にですか?」
「僕は今自分の信念のためと、ある約束のために強くなりたいんです。けれど強くなるための良い指導者がいないので探しているんですけど、あなたは何か武術を嗜んでいるのでは、と思い相談しました。」
風林寺さんは武術、と言う言葉を出すと目を見開いて固まっていた。普通の一般人は現役女子高生が武術を嗜んでるとか考えないからなぁ。
「わ、私、普通にしてたんですけど…」
「普通の人は背後に回った人を投げませんし、そんな近づきがたい雰囲気を出していません」
風林寺さんは目を丸くして涙目で明らかにガーンといったような表現が合うような表情をしていた。ちょっと可愛くて僕はドキッとしてしまった。
「それで、指導者の方は…」
「ああ、はい。では明日の放課後にでも来てみますか?明日なら案内できますので」
「えっ?そんなに急でもいいんですか?案内まで」
「はいですわ」
こんなにすぐに返事がもらえると思っていなかった僕はとても喜んだ。しかも案内までしてくれると言うことだ。
「あっ、自己紹介がまだでしたね。僕は白浜兼一です。兼一でいいですよ」
「私は風林寺美羽と言います。私も美羽と呼んで下さい」
「あの、指導料ってどのくらいでしょうか?」
「ふぇ?」
風林寺さんは口に指を当てて考えこんだあと、
「さぁ?ですわ」
とにっこりとそれはそれはきれいな笑顔を見せた。それを見た僕は(大丈夫か?そこ…)と一気に不安が押し寄せたのは言うまでもない。
おまけ
「母さん、父さん。この近くに道場があるみたいでね、武術を嗜んでる友達に紹介してもらってちょっと行ってくる」
「なっ!お前はまた道場通いなんぞ…」スパーン
母さんのお盆からは煙が出ており、父さんの頭に大きなコブが出来ていた。
「フフっ、兼一。気にしないで行っておいで。通うことになったらお金がいるわよね。とりあえずはい、1万円」
「えっ?でも僕お小遣いためてるけど…」
「子供は気にしなくていいのよ。お小遣いは他のものを買いなさい」
「ありがとう、母さん!」
「お兄ちゃん、またいっちゃうの!やだよ!またボロボロになって帰ってくるんだ!」
「…ほのか、修行したらボロボロになるのが普通だ。兄ちゃんは強くなるために行くんだ。止めるな」
「う~」
というやり取りが白浜家で行われていた。