学級委員長委員会委員長って言いにくいね   作:こっここーまん

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組別対抗 木像奪取&死守擬似合戦
1話 始まりの法螺貝の段


 法螺貝の音が、森に木霊する。

 

「おっ始まったねぇ」

 

 いつものようにゆるく笑う深緑の忍術学園六年生の忍者服を着た男は、立ち上がった。

 

「じゃあ、留三郎。しばらく任せるよ。戻らない時は、伊作が司令塔で」

「おう。気をつけろよ」

「わかった」

 

 そういって、男は“は”と書かれた旗が掲げられる本陣から外に出た。

 

「さて、僕らも行こうか」

「「「はい!」」」

 

 藤色の忍者服、つまり四年生のタカ丸の言葉に、しんべヱ、庄左ヱ門が元気よく返事をした。

 

***

 

 同時刻、“い”と書かれた旗が掲げられる場所では、文次郎が腕を組んで立っていた。

 

「僕ら、優秀ない組がは組に負けるはすがない」

「バカタレ。三病を忘れるな」

 

 一年の伝七と佐吉が、いつものようには組を馬鹿にしていれば、文次郎にゲンコツを落とされた。

 忍者にとって、敵を侮ることは任務失敗にも繋がりかねない危険な行為だ。

 

「なにより、青葉が何を仕掛けてくるか……」

 

 学級委員長委員会委員長である衣笠青葉。作戦は、おそらく青葉が中心に考えているはずだ。成績の悪い生徒が集まるは組とはいえ、六年にもなれば実力の差はそうない。誰もがなにかしらの特技を持ち合わせている。そして、その特技に合わせて鍛錬している者が多く、たとえ特技がひとつだけだとしても侮っていては、足元をすくわれる。

 

「特に今回は実戦だ。一年は組は、テストはひどいが実戦には強い。注意しておいて損はない」

「は、はい。すみません……」

 

 コツンと、警戒線が切られたことを知らせる音が響いてきた。

 

***

 

 “ろ”と書かれた旗が掲げられる場所では、七松小平太がいつもどおりの元気良く叫んでいた。

 

「いけいけどんどーん!!」

「ある意味、このチーム真正面から対決になったら強いよな……」

「だね……」

 

 五年の八左ヱ門と雷蔵が、今にも飛び出していきそうな小平太を見ながら、苦笑いをこぼす。

 忍術学園で何か行う時に、指揮を取るような上級生は、このチームにはいないが、単純な攻撃となれば話は別だ。むしろ、いつも矢面に立って戦っている体育委員会委員長がいる。それに、潜入のエキスパートもいる。

 

「まずは、敵陣地の場所を確認したいところだが……」

 

 三郎が嫌な予感を感じつつ、三年へと目を向ければ、案の定、一人しか見当たらない。

 

「す、すみません!!!」

「とりあえず、作兵衛は二人を捜索してくれ……あの二人、結構迷いながら敵を見つけること多いし」

「は、はい!」

 

 作兵衛が慌てて切れた縄を取り替えて、迷子を探しに森の方へ走っていった。

 

 

***

 

 

 事の起こりは、数刻前。やはり、学園長の突然の思いつきだった。

 より実戦に近い戦いを行おうと、

 

「これより、組別対抗木像奪取アーンド死守擬似合戦を行う!」

 

 と、言い出したのだ。

 ルールは、

 

 一、チームは縦割りとする。

 ニ、それぞれのチームに木像をひとつずつ配布する。

 三、日の入りまでに最も多くの木像が、本陣にあるチームを優勝とする。(同数がいた場合、優勝者無し)

 四、命の危険になる道具は使用しないこと。火縄銃や石火矢も使用を可とするが、実弾は使わないこと。

 五、本陣は、それぞれの旗から直径十尺の距離とする。

 六、開始、終了の合図は、法螺貝とする。

 七、罠の類は、開始半刻前から作ることを許可する。

 八、優勝したチームには、長期休みを二日延長する。

 九、みんなで楽しくやりましょう。

 

 と、発表された。

 もちろん、最初はどこも一体ずつで、優勝するならば、別の組から木像を奪い取る必要があり、それを日の入りまで奪い返されないようにしなければならない。

 ひとつのチームから奪えば、奪われたチームから狙われるのはもちろんのこと、奪われていないチームからも同時に二つを奪うチャンスと集中的に狙われる。タイミングと情報は重要な要素だった。

 

「さて、どうしたものか……」

 

 作戦会議時間と設けられた時間。は組は、悩む青葉の周りを囲うように座っていた。

 すでにこの時から情報集めは始まっており、この部屋には、下級生しかいなかった。他は、周囲の警戒と情報収集中だ。

 

「は組だけだと、五年生がキャラ設定されていませんからね」

「庄ちゃんってば冷静ね。というか、メタいね」

 

 同じ学級委員長委員会の庄左ヱ門が、そんなことを言ってしまうが、実際、それは青葉も悩みどころだった。

 五年生に、は組はいない。四年には斎藤タカ丸の一人だけ。六年には二人、自分を含め三人いるが、他の組に比べて、やはり下級生の比率が高い。

 

「先輩。これが、木像ですか?」

「そうだよ」

 

 一年生がそれを見ていると、襖が開き、全員の目がその人へ向く。入ってきたのはタカ丸だった。

 

「ごめん……見つかっちゃった」

 

 タカ丸には、い組の偵察に行ってもらっていた。もちろん、あまり成功するとは思っていない。相手が相手だ。それはどこも同じだろう。忍者ならば、情報を与えず、自らは情報を得る。もしくは、間違った情報を敵へ流す。

 さすがに忍者の学校で警戒されている中、重要な情報を与えるような失敗をするような人はいない。

 

「お疲れさま。続けてで悪いけど、留さんと見張り交代してきてくれる?」

「うん。わかった」

 

 すぐに戻ってきた留三郎に、下級生たちが見ていた木像を取り上げると、それを渡す。

 

「できる限り精巧に、同じものを作るのできる?」

「まぁ、ある程度はできるが、時間もねぇし……あんま期待はしないでくれよ?」

「うん。一時的に騙せれば十分」

 

 さすがの一年でも、偽物を作る意味は分かったようで、目を輝かせていた。

 

「偽物を作って騙すんですね!」

「本陣に置いておくのは偽物で、盗まれないようにするってことですか?」

「半分正解。半分はずれ」

 

 そう言うと、嬉しそうに喜ぶ一年生に首をかしげると、三年の数馬が呆れたようにため息をついた。

 

「一年は組のテストって、いつも視力検査みたいな点数ですから……半分ってことは、五十点ってことで……」

「あーそれは喜ぶね。狂乱してもいいレベル。みんな、拍手しておく?」

「結構です。それより、残り半分というのは?」

 

 相変わらず冷静な庄左ヱ門のおかげで、逸れていた話が戻ってきた。青葉と留三郎は、拍手しようと構えていた手を困ったように見つめたあと降ろし、話を続けた。

 

「本陣に置いておくのは本物。偽物は、交渉に使う」

「えっと……?」

「どういうこと?」

「しんべヱ。目が離れてる」

 

 乱太郎たちが、しんべヱの目を近づけようと押す中、青葉は気にせず話を進める。

 

「協力を持ちかけようと思う」

「協力?」

「さすがに、ふたつの組に一斉に狙われるのは大いに困る。というか、防ぎようがない」

「確かに……」

 

 ひとつは成績優秀な、い組。もうひとつは、体育委員会委員長が率いる、ろ組。このふたつに一斉に襲われると考えたら、恐ろしいことこのうえない。

 

「だから、ひとつと同盟を結んで、絶対的不利な状況を作らないようにする」

「そのための、偽物(コレ)ってことか?」

「そう。同盟とはいっても、チームは三つ。そのうちのひとつを潰しても、どうやって配当するかって揉めるし、その後のことも揉めることになる。向こうだってそれは分かりきってるわけだし、メリットが無ければ乗らないでしょ?」

「まぁな」

「……えっと、どういうこと?」

 

 一年生の視線が、自然と庄左ヱ門に集まっていた。しかし、答えは三年の浦風藤内から返ってきた。

 

「それって、偽物を相手に渡して、代わりに協力してくれ。それで奪い取ったら、木像を僕たちがもらうって言って、同盟を結ぶってことですか?」

「そういうことです。さすが、三年生」

 

 一年生に理解ができたかと確認すれば、しんべヱの目が相変わらず離れたまま。

 

「藤内。復習ついでに、一年生に説明してあげて」

「は、はい!」

 

 留三郎が心配する中、藤内と数馬による作戦の概要の説明が始まった。さすがに、二年の四郎兵衛は概要自体は理解しており、少し青葉と留三郎に目を向けていれば、なにやら二人は目を合わせて微かに口を動かしていた。

 

「つまり交渉が成立したら……私たちは、本物を隠し持ってるわけで」

「日の入りまで隠しきれば、は組には木像が二つで」

「他はゼロかひとつ……つまり」

「は組の勝利!」

 

 嬉しそうに声を上げた一年生と、疲れたようにうなだれる三年生に青葉と留三郎も視線を戻すと、普段の土井先生の苦労を考えて苦笑になってしまった。

 

「でも、そんなにうまくいくんすか?」

 

 きり丸の言うとおり、理論的には簡単そうだが、現実には難しい。相手だってすぐに思いつくような作戦だ。警戒するのは当たり前。

 

「そこは、まぁ、俺の腕の見せ所。として……もうひとつ、これに乗る条件がある」

「条件?」

「鉄壁の防御力があること」

 

 木像をふたつ所持するというのは、は組も知っていて、それを木像が奪われた組に話せば、奪い返しにくるはずだ。

 加えて、優勝するためには、どうやってもふたつは手に入れなければいけないのだから、この作戦に乗るのは、そこまで踏まえた上で、日の入りまで木像を守りきれる防御力を持っている組。

 

「さて、そんな戦闘力がある組は?」

 

 数秒考え、全員が出した答えは、同じだった。

 

「つまり、最初に狙われるのは、我々い組の可能性が高いということですか!?」

 

 い組の作戦会議では、上級生が話す言葉に、伝七が声を上げた。

 

「あぁ。ろ組には、攻撃なら小平太、守りなら三木ヱ門がいる。潜入なら、鉢屋の奴が大得意だしな」

「それに、さっき偵察にきたのが斎藤だったのも大きい。おそらくは、留三郎か伊作がろ組に偵察に行っている。密書を運ばれている可能性も考えるべきだろう」

 

 仙蔵の言葉に、その場にいた全員が眉をひそめた。天才トラパーと呼ばれる綾部喜八郎がいるとはいえ、二つの組から同時に狙われるのはやはり厳しいものがある。どうにか打開したいところだ。

 仙蔵が頭を悩ませる中、ろ組へ偵察に行かせていた久々知兵助が部屋へ飛び込んできた。

 

「ろ、ろ組の作戦会議室に、小松田さんが運んでた槍が降り注ぎました……!!!」

 

 全員が、偵察に行ったのが伊作だと、確信した瞬間だった。

 

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