学級委員長委員会委員長って言いにくいね   作:こっここーまん

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5話 任務完了の段

 誰もいない。

 枝に引っかかっている人もいなければ、倒れている人も。

 

「この辺か……」

 

 木に登って確かめてみても、最近折れた枝を見つけたが、人はいない。

 それ以外に人のいた痕跡はない。

 

「……」

 

 膝に肘をついていれば、頭に落ちてきた重さ。

 先程呼んだ猫だ。名前は十二郎。

 

「あぁ。お前が来てくれたのか。ありがとなぁ」

 

 頭の腕を撫でれば、ゴロゴロと喉を鳴らした。

 そして、掴みあげ折れた枝の元に下ろす。

 

「十二郎、この臭いを覚えてくれ」

 

 猫も犬ほどに鼻がいい。

 しんべヱの食べ物に比べたら劣るかもしれないが。

 

「さて……と」

 

 枝から降りて辺りを見渡す。誰もいない。

 ふと聞こえた草むらをかき分ける音に、目を向ければ、探していた顔。

 

「間借さん」

 

 名前を呼べば、相変わらずの仏頂面。

 

「無事でしたか」

 

 ちょうど臭いを覚えて降りてきた猫は、相変わらず頭の上に降りてきて、ダレている。

 

「……」

「猫、ですか」

「えぇ。賢い猫ですよ。そうは見えないでしょうが」

 

 えぇ。思いっきり頭の上でくつろいで、死体のように、腕を伸ばしきっているのだから。

 頭の上なのに。

 だが、俺には見えた。一瞬、間借の目が輝いたのが。

 

「でも、合流できてよかった」

 

 近づけば、間借は相変わらず猫を見ていたが、すぐに俺に視線を戻した。

 

「生麦生米生卵」

 

 すると、間借は一瞬顔をしかめさせたものの、

 

「あぁ、そうですか」

「ご理解感謝します。確認のためです」

 

 ため息混じりに、冗談のような早口言葉を返した。

 

***

 

「波奈! 無事か。よかった……」

「古凛さん……!」

 

 幸せそうに手を取り合うふたりを、三人も安心したように眺める。

 ここはもう武家の屋敷の中。護衛も終わりだ。

 

「お付きの方々も、お疲れさまでした。そちらの荷物をお預かりします」

「あ、はい。圧家からの結納品です」

「かしこまりました。では、確かに」

 

 からくり箱を受け取った鳥野家の使用人の中年の男は、丁寧に箱を抱きかかえると、部屋の中へと消えていった。

 

「で? これで、俺たちの仕事はこれで終わり?」

「先輩を待たないとダメだろ」

「はーい」

 

 兵助にたしなめられ、勘右衛門も男が消えた先を一度見ると、すぐに視線を戻す。

 

「じゃあ、俺、外で先輩たちがくるか見てるよ」

「僕たちは、もう少し護衛かな」

 

 勘右衛門は外に出ていくと、兵助と雷蔵は目を合わせると、頷き、波奈の元へと向かった。

 

 

 木箱にはめ込まれた複雑すぎるからくりを解除する煩わしさと、これから開くことへの期待につい息が上がってしまう。

 

「――クシュンっあ゛ーいかんいかん。落ち着け。落ち着け」

 

 クシャミで集中しすぎていたことに気がつき、一度、呼吸を整えて、辺りを確認する。

 人の気配はない。きっと、花嫁の到着で盛り上がっているのだろう。

 鼻水をかんだちり紙を捨てると、改めてようやく最後の仕掛けになった箱に向かう。

 

「よし」

 

 最後の仕掛けを外すと、漏れる笑みを堪えきれないまま、その蓋をスライドさせた。

 

「……ない?」

 

 しかし、そこには何もなかった。空の木箱だけ。

 

「どこだ!? 確かにいれたはずなのに!?」

 

 箱をひっくり返すものの、思い描いていたものはない。

 

「何をしている?」

 

 冷たく響いた声に、顔を上げれば、立っていたのは古凛と波奈。

 

「わ、若様。これは」

 

 言い訳をしようにも、開けたままの結納品の箱の前では、何を言い繕っても開けたことへの咎は受けてしまう。

 

「! 実は、妙に箱が軽く、よもや圧家が結納品を入れなかったのかと疑いまして……も、もちろん、お二人の仲は存じておりますゆえ、糾弾しようというわけではなく、ただ、事が順調に行くようにと」

 

 あくまで、開けたのは事情があったのだと、伝えれば、古凛は険しい顔のまま。

 

「お前が欲したのは、圧家の土地の権利であろう」

「!!」

「すでにお前の企てはバレている。その上で、お前の長年の勤めに感謝し、この場での鳥野家からの破門だけとする」

「ご、誤解です!」

「いや、真実だ。すでに、お前が変装していた本物の間借さんが見つかった」

「!!!」

 

 誤解だという言い訳を探したところで、変装するために襲った相手に、犯人だと告げられ嘘だと言い逃れられるはずもない。

 男は何も言えず、何度も口を開いては閉じることしかできなかった。

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