青葉と五年生、そして仙蔵と小平太は、任務終わりも終わり、少しだけ気の抜けた表情で忍術学園へと向かっていた。
「いやーまさか、仙ちゃんたちの任務と被るなんて! 個人的には伊作君と被りたかったなー!」
「ただ言わせたいだけだろ……」
早口言葉を言わせたいだけの青葉に、仙蔵も苦笑いをこぼすものの、被りたくなかったかといえば、嘘になる。
「そういえば、どうして間借さんは私たちに自分の立場のこと言わなかったんだ? 危うく波奈さんを傷つけることになったぞ」
まさか向こうも、イケドンするとは思っていないだろうが、確かに土地の権利書を奪うだけなら、手荒な真似をするかもしれない。
なんせ、開け方がわからないからくり箱だ。中身を奪うためなら、箱の破壊もしくは開け方を知っているものへ無理にでも聞くほかない。
「そりゃ、向こうに自分が解放されてるって悟らせないためだよ。バレて、波奈さんより先にあっちが戻って適当に『これは圧家の罠だ!』なんて言われて結納破棄になったら、波奈さんが悲しむ」
「あぁ……」
自分は捕らえられているというのに、波奈思いの人だ。
とはいえ、今回の任務。学園長先生は生徒たちに任務を割り振った張本人だ。仙蔵と小平太が関わっている任務に、五年を関わらせ、その上で別の任務から返ってきた青葉に五年を率いらせる。しかも、互いに状況を知っているわけではないため、九割方、戦闘になることを見越していただろう。
つまり、この任務、忍者ではよくある”知らなかったから味方と戦闘となり、殺してしまう可能性がある”ということを身をもって知らせることが、学園長先生の目的だったのだろう。
「けど、まぁ」
学園長先生の目的は置いといて、この任務を成立させるためのもうひとりの人間が必要だ。
そう、依頼者だ。
間借が偽物の可能性に気がついていた上で、仙蔵と小平太に探すように依頼し、別に波奈の護衛を依頼した人物は同一人物であり、それが学園長先生の協力者。
つまり、圧家の当主であり、波奈の父親だ。
違和感は無くはなかった。自分の娘を、何十年と仕えてきた家臣ではなく、会って間もない子供に護衛させるなど、当主としても、父親としても、そう簡単に頷くとは思えない。
あっさりと頷いたのは、知っていたから。
そして、間借と同じく、娘の幸せを壊したくはなかったのだろう。
「どうした? 何か気にかかることでもあったか?」
仙蔵が怪訝そうな目で青葉を見つめる。
「そうじゃなくて、あの変装してた人も運が悪いなぁって」
どんな厳格な父でも、娘には弱いということか。
「確かに。猫でクシャミと鼻水が止まらなくなるのに、変装相手が猫好きで、しかも猫を筆頭に動物引き寄せる青葉先輩が任務で来るとは思ってなかったでしょうね」
体質はどうにもならないとはいえ、三郎ほどの見破る目を持っていなくとも、容易にわかってしまう条件が、こうも揃ってしまうのは、もはや同情するレベルだ。
屋敷で三郎から、間借が忍者の変装の可能性があることは聞いていたが、まさかそんな欠点があるとまでは思っていなかった。
「伊作先輩とどっちが運悪いですかね?」
「勘右衛門……」
「あっちの方が悪いんじゃないかな? 伊作くんは不運大魔王とはいえ、善行積んでるからか、本当に悪いことはなかなか起きないし」
善行積んで、あの不運かと、青葉以外が伊作へ同情を送ってしまった。
「あ、団子屋。先輩。寄っていきませんか?」
勘右衛門の言葉に、青葉は仙蔵たちに確認すれば、すぐに頷かれる。
「よーっしっ! 早い者勝ちだ!」
「なぜそうなる!?」
「団子は逃げないんだから……」
「ま、待てって! 勘右衛門!」
五年生が駆け足で団子屋に着くと、奥から現れた見知った顔。
「「「「「「あ」」」」」」
ばっちりと目があった。
少し遅れてきた六年生の三人も、同じように団子屋の店員を見ると、ニヒルに笑った。