学級委員長委員会委員長って言いにくいね   作:こっここーまん

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短編
油断厳禁の段


 しんべヱと喜三太はアルバイトのために、町に来ていた。

 

「はい。じゃあ、この炭をあの屋敷まで運んでいってね」

「「はーい」」

 

 元気な声で返事をすると、背負った炭を武家屋敷へ運ぶために歩き出す。

 鼻歌交じりにふたりが歩いていると、道に座り込んでいるお婆さん。

 

「どうしたんですか?」

「どこか痛いんですか?」

 

 苦しそうに表情を歪めているとなれば、1年は組の良い子は放っておけず、慌ててお婆さんに駆け寄った。

 

「あいたたた……ちょっと腰がね……やっぱり無理して歩いてきたのが悪かったかねぇ」

「大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃよ。ちょっと休めば良くなる」

「どこか休める場所……あ、すみませーん!」

 

 喜三太が近くのお茶屋に駆け込めば、現れた若い店員。

 

「はーい」

「あの、お婆さんが腰が痛いって……ここで休ませてもらえませんか?」

「それは大変だ。どうぞ、ここに座ってください」

 

 若い店員の手も借りながら、軒先に置かれた椅子にお婆さんを座らせる。

 

「ありがとうね。あぁ、でも……やっぱりこれを届けるのは無理かねぇ……」

「手紙?」

 

 お婆さんが取り出したのは、手紙だった。

 

「あのお屋敷で働いている息子にね。ずっと帰ってこないから、せめて手紙くらいって思ったんじゃけど……」

 

 寂しそうな顔をするお婆さんに、喜三太としんべヱは顔を合わせると、頷いた。

 

「僕たちが届けますよ!」

「ちょうどあのお屋敷に炭を届けに行くんです!」

「あら……いいのかい?」

「「はい!」」

 

 じゃあ、お願いするよ。といって、渡された手紙と息子の名前をしっかりと覚え、お屋敷に向かって歩きだした。

 ふと、視線を感じ喜三太が振り返るものの誰もいない。

 

「はにゃん?」

「どうしたの? 喜三太」

「ううん。お婆さん、いなくなってて」

「中に入ってお団子食べてるんじゃない? あぁ~ん! 僕も食べたぁ~い!」

「これ届けてからだよ」

 

 喜三太に背中を押されながら、たどり着いた屋敷に入り、炭を渡すと、もうひとつの目的の手紙を出した。

 

「弥右衛門さんって方にお手紙です!」

「お婆さんからです!」

「弥右衛門? そんな奴はこの屋敷にはいないぞ」

「「えぇ!?」」

「どういうこと?」

「わ、わかんない!」

 

 場所も名前も間違っていないはずだ。ふたりが困っていると、男は喜三太の持っていた手紙を取ると、封を開いた。

 

「!! これは……おい! ガキども! そのお婆さんってのはどんなやつだ!?」

「えぇぇえ!?」

 

 突然、怒り始めた男に、喜三太もしんべヱも震えながら、首を横に振り、お茶屋にいることも告げたが、

 

「そういえば、さっきいなくなってたよ!?」

「なんだとォ!? 貴様ら、まさかこの屋敷を潰そうとしている奴らの手下じゃないだろうな?」

「えぇぇえ!? 僕たち、そんなこと思ってません!」

「ここに来たのだって初めてで!」

「ええい! 怪しいガキどもだ! 牢屋に入れて――」

「何を怒っているんです?」

 

 喜三太としんべヱの前に男から庇うように立つ、腰に刀を指した男。

 その顔は、ふたりにとってとても見覚えのある顔だった。

 

「その怪しいガキどもを引っ捕えるんだ!」

「怪しいとは……? その手紙に何か書かれていたのですか?」

「ッあ、あぁ! そうだ。この手紙には、攻め込んでくる日時と場所が書かれていた。つまり、内通者がこの屋敷にいることに他ならない」

「なるほど。内通者が紛れ込んでいることはわかりましたが、彼らには関係ないのでは? 子供ですし、駄賃目当てかもしれない」

 

 彼の言うことは筋が通っていた。ただ炭と手紙を届けに来ただけの子供が、内通者に関わりがあるとは考えにくい。そもそも、本当に内通者なら、わざわざこの屋敷にいない人物の名前を上げて、怪しまれるようなことはしないだろう。つまり、ふたりは関係ない。

 男もそれを理解し、怪訝そうな顔ではあるが手紙を持った腕を下げ、彼も安心したその時だ。

 

「そうだそうだ! 僕たちは関係ない!」

「ちょっとお婆ちゃんに親切しただけで、手紙の内容なんて知らなかったんだ!」

 

 彼の前に現れて、男に文句を言い始めてしまうふたりに、男は一度はなくなった眉間のしわがまた戻り始め、彼も慌てたようにふたりの肩に手をやった。

 

「君たち。疑って悪かった。さ、もう帰りなさい」

「そんな! ”先輩”は悪くないです!」

「そうです! 悪いのはこの人です! ”先輩”じゃありません!」

 

 ふたりが空気が氷ついたのを感じたのは、少し時間が経ってからだった。

 そして、気がついたのも、目の前で表情を強ばらせた、忍術学園の先輩である立花の表情のおかげだった。

 

「”先輩”だと? 妙に庇うと思ったが……貴様ら、やはり繋がっていたのか……!!」

「しまった……!」

「曲者だ! 曲者だ!!」

 

 立花もすぐにしんべヱと喜三太を自分の後ろにやるが、ここは庭。場所が悪い。

 仕方ないと、懐へ手をやった時だ。

 

「曲者だと!?」

 

 一番初めに来た男は、曲者だと騒ぐ男に駆け寄ると、立花たちに目をやる。

 

「!」

 

 男と目が合うと、手を使わずしんべヱと喜三太を後ろに押しやる。続々と集まってきた人。

 裾を掴まれる感覚がするが、立花は静かに刀を抜いた。

 

「刀を抜いたな……? みな――」

「こいつが曲者だ! 捕まえるのを手伝ってくれ!」

 

 その声は真後ろから聞こえてきて、振り返れば最初に来た男が自分を指さして曲者だと周りに叫んでいた。

 

「な、何を言っている!? 曲者は――」

「この子供たちが教えてくれたんだ! この屋敷の襲撃に手引きしている人がいると! 手紙に名が書かれていると!」

 

 周りに演説する男の手には、先程まで自分が持っていたはずの手紙。

 

「貴様も仲間か……!?」

「自分の悪事がバレると知って、子供を狙うとは! 許せん!」

「ち、ちが……! そっちこそ!」

 

 立花の言葉に、男は周りを見るが既に自分を見る目は、敵を見る目と同じだった。

 

「え? どういうこと?」

「よ、よくわかんない……」

 

 だが、さすがに今の状況で何も言ってはいけない空気は感じたらしく、しんべヱも喜三太も何も言わずに立花の後ろに隠れていた。

 縄に縛られていく男を見ていると、先程演説していた男が、ふたりの肩を叩く。

 

「さぁ、君たち。ここから先は俺たちの仕事だから、子供は帰るんだ」

 

 門の外まで連れていけば、ふたりはもう一度心配そうに、屋敷の中へ目をやると、男はふたりと視線を合わせるように屈む。

 

「仙蔵なら大丈夫だし、お婆さんももう店にはいない。だから、ふたりは大人しく帰ること。いいね?」

 

 小声でそういうと、ウインクをした。

 そこに来てようやくふたりは目を合わせると、同時に自分の手で口を押さえると頷いた。

 

***

 

「本当にあいつらと関わるといいことがない……今回は助かったぞ。青葉」

 

 変装を解いて、疲れたようにため息をつきながら、隣を歩く青葉へ目をやる。

 今回の実習の課題は、青葉と組んで行なっていた。仙蔵が屋敷へ潜り込み内部を調べ、青葉が町で調べる。

 

「いえいえ。アンラッキーズ(仙蔵専用)を見つけた時は、さすがに仙ちゃんのとこには行かないよなぁ~? とか様子見てたら、ドンピシャなんだもん。さすがにビビる」

「それで速かったのか」

 

 町の中で見かけていたからこそ、後をつけ、すぐに助けに入れた。

 

「というか、会話した」

 

 喜三太は気づいていないようだったが。

 

「さすがに、忍者に使われそうになってるのを放っておくのは……」

「やはりアレは別の城からの妨害か。もしかしたら、青葉が仕掛けたのかと思ったぞ」

「まさか! 今回の課題は、あの屋敷にいる内通者を暴けだよ? 仙ちゃんが難航してるならやるけど。ところで、優秀ない組さん。内通者はわかったんだよね?」

「あぁ。捕まったがな」

「……どおりで、ピリピリしてたわけだ」

 

 手紙ひとつで動揺して、子供を疑ってしまうほどの人物など、よほど余裕がない悪事を働いている人間くらいだろう。

 ふたりは無事終わった課題に安心していると、忍術学園の門の前に立っている小さなふたつの影。

 

「アンラッキーズのお出迎えみたいだけど」

「……まぁ、今はいいさ」

 

 手を振るふたりに、ふたりは手を振り返した。

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